たびたび神社

ライターあかりの神社ブログ

記紀編纂の裏側

2018-10-17 09:40:36 |  出雲の神話

<出雲市・屏風岩>

 

出雲神話のクライマックス「国譲り」の件において、

天上の神々が最後の使者としてフツヌシを指名したとき、

「フツヌシだけが丈夫(ますらお:一人前の男)で、

私は丈夫ではないというのか」とタケミカヅチが怒ったため、

この二神を一緒に派遣したと『日本書紀』は記しております。

さらに、『古事記』の中ではフツヌシの名前さえ登場せず、

まるで国譲りの場面はタケミカヅチの独り舞台のように、

華々しく描かれているのが印象的です。

 

ちなみに、よく知られた話でありますが、

記紀(特に『日本書紀』)の内容には、

当時大きな権力を誇っていた藤原不比等の思惑が

反映されたという説があるのをご存知でしょうか……。

もしそれが本当だとするならば、

記紀神話の名場面でもあるこのシーンに、

自らの氏神(に設定した)タケミカヅチの名前を、

あえて加えたと考えても不思議ではありません。

 

『古事記』の編纂者・太安万侶は、

多氏の流れを汲むとも言われる人物です。

そして、藤原氏(中臣氏)の氏神、

鹿島神宮にもともと祀られていたのは、

タケミカヅチではなく多氏の祖先である

「タケカシマノ命」だったのだとか。

つまり、太安万侶および多氏は、

何らかの理由で藤原不比等や中臣氏の意向を

無視できない立場に置かれていた可能性があります。