<葛城・一言主神社 ひとことぬしじんじゃ>
アメノワカヒコの友人であり、
シタテルヒメの兄でもあったアジスキタカヒコネは、
天上で行われたアメノワカヒコの葬儀に出向いた際、
死んだはずのアメノワカヒコと間違えられ、
怒りをあらわにしました。 このときアジスキタカヒコネが、
喪屋を壊すほど激怒した背景には、
いったいどんな理由があったのでしょうか……。
この話を読んで思い出したのは、
大和葛城を舞台にして描かれた
一言主神と雄略天皇の一件です。
史書によって、多少ニュアンスが異なるものの、
雄略天皇が自分にそっくりの姿形をした神に出会い、
諸々のやり取りをする部分は各文献ともに共通しています。
(ちなみに続日本紀の記述では、一言主神と狩りをした雄略天皇が、
一言主神の態度に腹を立て、神を土佐国へと追いやったのだとか……)
恐らく、自分の分身と出会うということは「死」
もしくは「権威の喪失」を意味したのでしょう。
自らの和魂に出会った大国主神が、この先の展開を悟ったように、
アジスキタカヒコネも自分の分身と出会ったことで、
自らが背負う因果を垣間見たのかもしれません。
もしかすると、気性の激しさで知られる雄略天皇も、
自分の分身に出会い平常心を失ってしまったのでしょうか……。