すずめ通信

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第1431号 遠州平野ローカル線の旅

2016-02-27 12:20:45 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】「今日は、掛川にいます」というのは、いくらなんでも横着が過ぎると自分でも思う。何しろ掛川滞在は、東海道線から天竜浜名湖線に乗り継ぐ40分間ほどに過ぎず、ただ駅前通りをうろついただけなのだから。掛川から北西へ45分の二俣が本日の目的地。ここでは掛川から二俣までの沿線の記憶を綴ることにする。冒頭写真に抜擢したのは、そのエリアの中ほどに位置する遠州森駅だ。まだこんな懐かしい風景を残す街があるのだ。



太平洋に長い海岸線を有する静岡県だが、60%以上が山間地で、平野だと実感できるのは袋井以西、浜名湖以東あたりの遠州平野がせいぜいだ。天竜浜名湖線はその北辺を、掛川から東海道線のバイパスのように延び、浜名湖の北岸を回って静岡県最西の駅・新所原で再び東海道線に合流する。総延長は67.7キロ。国鉄時代は「二俣線」といったが、赤字ローカル線として切り捨てられたため、現在は第三セクター方式で運営されている。



単線・非電化の鉄路は心細いほど細く、波打つレールに合わせて1両だけの車両が揺れながら進む。駅はほとんどが無人で車両はワンマン。線路を渡る通路が遮断機で塞がれたことを確認して、運転士は出発する。パンフレットによると、天浜線は全線
が国の有形文化財に登録されているのだそうで、昭和のローカル線の匂いを残す遠州森駅も、有形文化財駅舎である。通勤通学を終えたこの時刻は、お年寄りがぽつぽつ乗り降りする。



遠州・森といえば石松。文化財の駅舎に「森の石松」と大書した看板が打ち付けてあるが、説明はない。車窓は概ね穏やかで平凡だ。桜が枝を伸ばすホームで「毛虫注意!」の看板が目をひく程度。次第に山並みが深くなり、「この奥に秋葉神社があるわけか」と考える。20年前に行ったことがあるのだ。「そのあたりを春野町といったな。宝塚歌劇のスミレの花の作詞者か作曲者ゆかりの山里だったはずだ」と、唐突に思い出したりする。



遠江一宮という駅があって、駅名にTOOTOUMIICHINOMIYAとルビがふってある。ちなみに遠州とは律令で言う遠江(とおとうみ)国のことであり、琵琶湖に対し都から遠い浜名湖を指して国名とした。だが何故この表記を「とおとうみ」と読むのかは私にとって長い謎である。正しくは「とほつあふみ」であろう。これなら「近飛鳥/遠飛鳥」と同じで得心がいく。といった迷路にはまり込んでいると、目的地の天竜二俣駅に着いた。



掛川についても書いておく。大井川と天竜川の間の、静岡県のほぼ中央に位置するなだらかな台地の城下町で、お茶どころ静岡でも荒茶生産が最も盛んな街だ。駅からは20年前に復元された掛川城の天守閣が遠望される。やり手と評された当時の市長は全国初の「生涯学習の街」を標榜、新幹線駅の誘致や天守閣復元など農業・工業・観光のバランスを目指した街づくりを進めた。人口は11万人を超え、今のところ成果はあったといえよう。



厚労省のデータで「日常生活に制限のない期間の平均」という健康寿命を比較すると、男は静岡県が71.68年で2位(1位は愛知県)、女は75.32年で1位(2位は群馬県)だ。これを掛川市は「緑茶を飲む習慣のおかげだ」として緑茶医療研究センターを設置、「健康医療日本一の街」を目指している。お茶と健康は確かに関係が深いようだ。この街はまた大日本報徳社の本社地で、駅前では二宮尊徳像が市民の営みを見守っている。(2016.2.17)








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