すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第11号 原発は幕を引こう

2004-08-10 11:56:30 | Tokyo-k Report
 関西電力美浜原子力発電所。ついに、痛ましい事故が発生してしまった。3号機が運転中に2次冷却水系の配管が破損、約140度に熱せられた高圧の水蒸気が噴出し、直撃を受けた作業員4人が死亡したのだ。長崎への原爆投下の日。日本中が核に対する怒りと恐怖を噛み締めている日に事故は起きた。国はエネルギー政策を大転換し、原発の幕引きを図るべきである。

 破損したのは2次冷却水系の配管であるから、理論上は放射能漏れは生じない。関電の採用している加圧水型システムは、東電系原発とは異なっており、今回の事故ではその点が幸いしたといえる。茨城県東海村の核燃料会社で発生した臨界事故とは事故の種類が異なる。しかし原発の営業運転中に11人もの死傷者を出したことは重大である。もう崩れているといっていい原発の安全神話は、これで崩壊したと言うべきだ。

 原発は、確かに電力の安定供給に寄与してきた。国はエネルギー政策の柱と位置付け、安全性、コスト面、地球環境対策のどれをとっても、優れた技術であると言い続けて来た。しかしいまや、CO2を排出しないという事実以外は、いずれも神話が揺らぎ、否定されつつある。しかもいったんチェルノブイリ化すれば、その処理は人知の及ぶものではないのが原子力なのである。

 エネルギー政策の最大の過ちは、こうした人間のコントロールの域を超えた技術を、株式会社という営利組織に丸投げしたことである。「万一事故が起きた場合、壊滅的な被害が出るかもしれない。しかしわれわれの社会生活を維持していくには、原発を建設するしかない」と、日本国民が覚悟を固め、社会的コンセンサスを作り上げているわけではない。そんな不安定な技術を、電力会社という営利企業に導入させたのだ。だから会社は「事故は起きないのです。最も優れたエネルギー源です」と言い続けて建設するしかない。

 そして最後はカネだ。国と株式会社が寄ってたかって立地を進めるから、原発の街にはとんでもない額の金が落ち、町や村の議会議場には足を挫きそうになるほどの厚い絨毯が敷き詰められることになる。必要供給量の数分の一の電力を確保するために、日本のあちこちの田舎の人心がこうやって荒廃し、事故の恐怖に曝される生活を強いられている。このことも考え合わせれば、原発導入は日本人を幸せにした選択だったのだろうか。

 これ以上危険と同居し続けることはやめたほうがいい。もう幕引きの時期ではないか。電力不足には懸命に節電し、代替エネルギーの開発を進めようではないか。電力会社に入ったばっかりに「原発は安全なんです」といい続けさせられる社員もかわいそうだ。東海地震の震源想定域のど真ん中に立つ中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)で万一のことがあれば、東京都民の皆様も被爆は避けられないのですよ。
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