すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第656号 「天地人」と原作者・火坂雅志

2009-01-17 19:11:35 | Mie Report
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【Mie】NHKの大河ドラマ「天地人」が年明けから始まった。初回は主人公・直江兼続の幼少時(5歳)のドラマで、舞台は新潟県南魚沼市(旧六日町市、塩沢町)である。戦国時代の越後の代表的な武将と言えば上杉謙信であるが、直江兼続という武将のことは今まで全く知らなかった。

この武将は兜の前立てに「愛」という文字を掲げたが、そんな劇画の世界のような武将なんて今まで聞いたことがなかった。直江兼続は戦国の義将といわれた上杉謙信の一番弟子で、謙信から「義」の精神を受け継ぎ、それを兼続が自分なりに解釈して見出したのが「愛」だという(著者談)。

著者によれば、上杉謙信の「義」とは私利私欲を捨て、人の信義を大切にして公の精神をもって物事に当たることであり、一方、直江兼続の「愛」とは、家臣への労わりと民への思いやりをもって政治を行うことである。

「愛」とは「仁愛」の「愛」であり、思いやりの心や武士の情けを表し、弱い者や目下の者への仁愛の思想だという。兼続は、上杉謙信の養子となった上杉景勝の家臣で、智勇兼ね備えた武将だったというが、その兼続の生涯をドラマ化したのが「天地人」である。

私がこのドラマに興味をもった理由は、舞台が故郷・新潟であり越後の武将が主人公であるのはもちろんだが、そのほかに原作者の火坂雅志氏が同じ新潟市出身であり、しかも私やTokyo-k雀氏と同じ高校出身で私たちの10年後輩だからである。同じ高校出身の作家としては坂口安吾が先輩にいるが、他にはこの火坂雅志氏くらいしか私は知らない。

火坂氏はこれまでに、豊臣秀吉の侍医兼参謀として暗躍した施薬院全宗を描いた「全宗」や徳川家康の側近・金地院宗を描いた「黒衣の宰相」、藤堂高虎の実像に光を当てた「虎の城」など、一般にはあまり知られていない歴史上の人物に光を当て、その実像を描いて歴史小説の分野に新風を吹き込んだという。

とくに藤堂高虎を描いた「虎の城」は私の地元・三重県津市が舞台であり、以前この本が出版された時に津で講演会が行われた記憶があり、また昨年暮れにも津のNHKローカル番組に出演し、高虎のことを話題にしていたのを覚えている。

というわけで新潟と三重の双方に縁があり、しかも私と同郷で同じ高校の後輩となれば、なお一層親しみが湧くというものだ。しかし実をいうと、NHKの大河ドラマ「天地人」の原作者が「虎の城」を書いた火坂氏であることを、つい最近まで私は知らなかった。

著者のインタビューの中で、彼が中学の野球部で、野球帽のツバの裏に「愛」という文字を書いたら監督に怒られたことがあったという。その後、歴史小説を勉強中に兜の正面に「愛」という文字をつけた武将がいることを知り、「この男を書けるのは自分しかいない」と思ったそうである。

火坂氏と直江兼続は何かしら不思議な縁でつながっているように思われるし、その火坂氏と私も何か縁がありそうな気がする。氏はインタビューの最後に、この作品が世に出たのは、まさに「天の時、地の利、人の和」が整った幸せな小説だったからではないか、と述べている。

つまり、利益ばかり追い求めて「義」の心が失われた今の世の中で、時代に合っていたというか、時代がこの作品を呼んだのではないか、と述べている。「天地人」のテーマは「義」と「愛」だから、まさに彼の言うとおりかもしれない。

そういえば、私の地元・津市でも火坂氏の「虎の城」を是非NHKの大河ドラマに、という強い思いがあるようで、ひょっとしたら藤堂高虎の実像を描いたこの作品が、火坂氏にとって2回目のNHK大河ドラマとなるかもしれない。またそうなってほしいと思う。

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