美術館を覗こうと
久しぶりに渋谷に出かけた。
西麻布からバスに乗ったらついウトウトしてしまい
眼が覚めるとそこは別世界だった。
見慣れた渋谷の街が一変している。
いつものスクランブル交差点と109を目印にしたのだが
それがどこだったかサッパリ見当がつかない。
あちこちでクレーンがうなりを上げ
ドンドン新しいビルが建って様相がすっかり変わってしまっている。
渋谷の街が再開発中なのは噂に聞いていたが
まさかここまでとは・・・
地下の入口もバス停もあちこちに移動してしまい
幅を利かせているは工事車両ばかり。
街全体が熱にうなされているような無秩序さで
思わず途方に暮れてしまった。
もともと渋谷の街の「熱気」は好きではないのだが
だんだんと腹が立って来た。
人に断りもなしに勝手なことをするんじゃねえよ!(笑)
とりあえず冷静にもう一度方向を確かめようと
見晴らしのいい陸橋に昇ってみる。
どこもかしこも地面がボコボコと掘り返されて
ここは遺跡の発掘現場か!と怒鳴りたくなってしまう。
この時点で「ああ、迷子になってしまった」と
情けないような気分になって来た。
道行く人にちょっと聞いたら済むようなこなのだが
ナメられたくない、おのぼりさんに見られたくないという
プライド(?)が邪魔して・・・
という訳で陸橋に昇ったのだが
方向を確かめようにも次から次へと人が押し寄せて来て
立ち止まることさえ出来ない。
ああ、このままでは美術館の開演時間が・・・
仕方なくありったけの勇気を奮い起こしてヤケクソで
可愛らしい女子大生風を選んで声をかけた。
「あの、109はどこでしたっけ?」
「ああ、(笑)こっちではなくて反対側なんですよ」
「え、反対側?」
「陸橋を降りてあのビルの中を抜けた向う側です」
「そうですか。いやあ、全然、勘違いしてました」
「私もよく迷うんですよ」
「ありがとうございます」
「お気をつけて」
笑うとえくぼが出来る可愛らしい女性だった。
やっといつものスクランブル交差点に到着。
この間、およそ30分。
このままでは「永遠の迷子」になるかと思ったが
なんとか無事に帰還できた。
その安心感からかセンター街のバカ者(いや、若者)たちも
この日ばかりは愛おしく思えたものである。