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思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

ウッドハウス『ジーヴズの事件簿-才智縦横の巻-』入門編はこちら

2019-05-10 12:17:13 | 日記
なんだか近ごろ話題のようですが、
P・G・ウッドハウスの人気シリーズ“ジーヴス”ものを
時流の乗っかって読み始めました。

入門篇としては
『ジーヴズの事件簿 -才智縦横の巻-』
がおすすめ。
文春文庫にて全二冊、めちゃくちゃわかりにくいタイトルで
出版されています。
『ジーヴズの事件簿 –大胆不敵の巻-』
は2冊目です。お間違いなく。

物語の構成は、
人が好いけど優柔不断な貴族のバーティーが毎度ドタバタに巻き込まれ、
執事のジーヴスが頭脳と機転で鮮やかに解決するというもの。

ジーヴスの主人を主人と思わぬ慇懃無礼な態度と、
たまーに抗おうとしつつ甘んじてしまうバーティーの
やりとりは読んでいて楽しいです。
バーティーのファッションセンスの悪さで何度もケンカしつつ、
和解のシルシとして毎度毎度バーティーが涙を呑むのです。
「捨てていいぞ(涙!」
「ありがとうございます。もう捨てました」
みたいな。
主人の許可をもらう前に捨てるなよ。

何かと「頭脳は空っぽ」と称されるご主人のバーティーですが、
ジーヴスの才覚を早々に見抜いたし、全権委任する度量の広さも持っているし、
なかなか優秀な雇用主ではないだろうかと思います。
私も上司に欲しい。

日本での知名度はそこまででも無かったジーヴスですが
本国イギリスではシャーロック・ホームズと並び称される
有名探偵でもあるそうで。
アガサ・クリスティも愛読していたとか。

インターネット黎明期からある検索ポータルサイト
「AskJeeves(アスクジーブス)」は、
見ての通り「わからないことはジーブスに聞こう」というネーミング。
もはやサービス名も変わってしまいましたが、
当初は執事のミスター・ジーブスがシンボルキャラクターでした。

ちなみに余談ですが、
文春文庫版(岩永正勝・小山太一訳)は「ジーヴズ」ですが、
古参の国書刊行会版(森村たまき訳)は「ジーヴス」です。
上記の検索サイトは「アスクジーブス」表記が一般的。
統一してくれ。
個人的には「ジーヴス」かなあと思うので、それで。

ちなみにちなみにですが、
私がジーヴスを知ったのはアイザック・アシモフの推理短編小説
『黒後家蜘蛛の会』から。アシモフもジーヴスの愛読者だったそうで。
このシリーズは、おっさんたちが美味しいごはんを食べながら
「不思議なことがあってさあ~」と提示する謎を
給仕のヘンリーが鮮やかに解く、という構成なのですが。
作者曰く、この給仕ヘンリー・ジャクスンのモデルが
執事ジーヴスなのだそうです。
言われてみれば印象が似てるかもですが、
ジーヴスの方が性格悪いですね。私は好きです。

さらにどうでもいい話しですが、
私はこういうフォーマットが好物のようで。
安楽椅子探偵モノに分類されることが多いみたいですが、
その代名詞でもある“ネロ・ウルフ”シリーズとは
ちょっと違う気がするんですよね。
探偵仕事っていうより、日常のおしゃべりの延長というか。
ロジカルゲームとか言う方がピンとくる感じがあります。

定義が曖昧ですが、そういうのがお好きな人には、
下記もおすすめしておきます。
そういう人は既に読んでると思うけど…。

『麦酒の家の冒険』
大学2年の四人組がヘンテコな山荘に迷い込み、
ひたすらビールを飲み続けながらずーっと推理を披露し合う
という一冊です。ホントに。
私のなかの西澤保彦ブームは終焉しましたが、この一冊はずっと好き。

『九マイルは遠すぎる』ハリイ・ケメルマン
こちらは有名すぎる短編ですね。
「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない。
まして雨の中となるとなおさらだ」
の一言から推理する。って、すごくないか。


脱線しまくりましたが、なにはともあれ。
“ジーヴス”シリーズは長編も多数ありますが
まずは文春文庫の短編集2冊から始めるのが良いんじゃないかと。

【読書メモ】2010年12月 ②

2019-05-09 11:39:52 | 【読書メモ】2010年
<読書メモ 2010年12月 ②>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『タイムスリップ・コンビナート』 笙野頼子
この人、苦手なのに懲りずに読んでしまった。
マグロと恋愛する夢を見たことを、ずっと引きずっているのが良かった。
絲山秋子とたまに印象が被るけど、こちらの方が崩壊していて着いていけない。

(『タイムスリップ・コンビナート』は第111回芥川賞受賞作(1994)。
 これ以前に、『金毘羅』(2005)を読んでいます。
 くり返しになりますが、難解すぎて7割以上わからなかった。
 あと、9年前の私に伝えたいが、絲山秋子とは印象被らんよ)


『f植物園の巣穴』 梨木香歩
主人公が女の子だと、ちょっとウェットになりがちな人だと
個人的に思っている。
(西の魔女とか。そっちの方が売れてるけど)
なので、主人公が男だった時点でホッとして読んだ。

(ウェットというか、私は思春期の女子が主人公の物語が
 本能的に苦手で読みたくないのです。
 自分の10代の頃の痛々しさと暗さを思い出すからね!
 『西の魔女が死んだ』とか湯本香樹実『夏の庭』とか
 とにかく苦手。作家さんとしては良いのだけど、テーマが苦手。
 完全に個人的な問題である)


『私が殺した少女』 原りょう
ハードボイルドもの。面白かった。
なんでハードボイルド探偵はよくわからない悪態をついたり、
敢えて殴られたりするんだろうね。
という理解できなさも込みで、なんか良かった。

(第102回直木賞受賞(1989)。
 <私立探偵沢崎シリーズ>の第2作目。
 作家の真壁氏からの依頼で、誘拐された一人娘(天才ヴァイオリニスト)
 の身代金を運んでほしいと頼まれ…。
 というお話し。
 ちなみに沢崎の下の名前は非公表。猿渡くんと同じですね。

 この作品、ミステリ名作枠に入っているようで、
 <文春ミステリー20世紀国内編>で14位とか、
 <このミステリーがすごい!ベストオブベスト>
 (2008年までの20年分のベスト20内が対象)で3位とか、
 ロングスパンでのミステリランキングでよく見かけます。

 おもしろかったです)


『生ける屍の死』 山口雅也
アメリカの小説を翻訳した風の文体が上手い。けど、鼻につく。
アメリカンコメディ風なのか、くだらない演出が多かった。
棺桶特急とか。

(総じて、なんだこれ、って感想でした。
 しかし前述の <このミステリーがすごい!ベストオブベスト>で
 堂々の2位である。なんだそれ)