思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

“ジーヴス”シリーズ刊行状況の備忘録

2019-05-10 16:49:50 | 日記
おもむろに読み始めてどっぷり浸かってしまった
“ジーヴス”シリーズ。
おもしろいですよ!未読の人は、まず
文春文庫の『ジーヴズの事件簿-才智縦横の巻-』だ!

と言いつつ、私は読み始める前に
「何をどんな順番で読んだらいいのかわからん…」
と、困惑したので備忘録も兼ねてメモメモしておきます。

とにかくぜんぶ読む!ということなら、
「完訳版」と言われている国書刊行会の全14冊で良いのですが。

ちょっと紛らわしいことがあるので補足すると。

こちらのシリーズ1冊目『比類なきジーヴス』は
本国イギリスではシリーズ2作目となる短編集
『The Inimitable Jeeves』(1923)の邦訳です。
本国のシリーズ1作目は『My Man Jeeves』(1919)ですが、
この本そのものは邦訳されていません。
(という事実を知り「完訳じゃないのか…、完訳はどこだ…?」と戸惑った)

が、この『My Man Jeeves』に収められた作品の一部はリライトされて
3作目の短編集『Carry On, Jeeves』(1925)に収録されているようで。
これの邦訳が、国書刊行会シリーズ3冊目の『それゆけ、ジーヴス』。

という事実から推察するに、1作目の『My Man Jeeves』は
完訳シリーズに必須とは言えない内容というか、
設定とかシリーズ感がふんわりしていたのかな。

そんなこんなで、時系列的に見ると最初のお話しである
ジーヴスとバーティーの出会いが描かれた「ジーヴス登場」は
『それゆけ、ジーヴス』に収録されております。

そういうアレコレが気になる方のために!ということでしょう、
文春文庫版『ジーヴズの事件簿』(全2冊)は
「ジーヴズの初仕事」(「ジーヴス登場」の改題。訳者が違うから…)
から始まるありがたい構成になっております。

というわけで入門とか味見とかの観点では
文春文庫の『ジーヴズの事件簿-才智縦横の巻-』がお薦めですが、
こちらは全ての短編が収録されているわけではありません。
いわゆる「よりぬき傑作選」ですね。

しかしだね。
国書刊行会の全14冊中、短編集は3冊だけである。
2冊読むのも3冊読むのも変わらんな。
じゃあ、さっさと国書刊行会全14冊を読んだら良いじゃないか!
と自分に言い聞かせて、私は文春版から国書版へ路線変更しました。

以下、タイトルメモ。

国書刊行会
1.『比類なきジーヴス』(短編集)
2.『よしきた、ジーヴス』
3.『それゆけ、ジーヴス』(短編集)
4.『ウースター家の掟』
5.『でかした、ジーヴス』(短編集)
6.『サンキュー、ジーヴス』
7.『ジーヴスと朝のよろこび』
8.『ジーヴスと恋の季節』
9.『ジーヴスと封建精神』
10.『ジーヴスの帰還』
11.『がんばれ、ジーヴス』
12.『お呼びだ、ジーヴス』
13.『感謝だ、ジーヴス』
14.『ジーヴスとねこさらい』


文春文庫(短編選集)
1.『ジーヴズの事件簿-才知縦横の巻-』
2.『ジーヴズの事件簿-大胆不敵の巻-』
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ウッドハウス『ジーヴズの事件簿-才智縦横の巻-』入門編はこちら

2019-05-10 12:17:13 | 日記
なんだか近ごろ話題のようですが、
P・G・ウッドハウスの人気シリーズ“ジーヴス”ものを
時流の乗っかって読み始めました。

入門篇としては
『ジーヴズの事件簿 -才智縦横の巻-』
がおすすめ。
文春文庫にて全二冊、めちゃくちゃわかりにくいタイトルで
出版されています。
『ジーヴズの事件簿 –大胆不敵の巻-』
は2冊目です。お間違いなく。

物語の構成は、
人が好いけど優柔不断な貴族のバーティーが毎度ドタバタに巻き込まれ、
執事のジーヴスが頭脳と機転で鮮やかに解決するというもの。

ジーヴスの主人を主人と思わぬ慇懃無礼な態度と、
たまーに抗おうとしつつ甘んじてしまうバーティーの
やりとりは読んでいて楽しいです。
バーティーのファッションセンスの悪さで何度もケンカしつつ、
和解のシルシとして毎度毎度バーティーが涙を呑むのです。
「捨てていいぞ(涙!」
「ありがとうございます。もう捨てました」
みたいな。
主人の許可をもらう前に捨てるなよ。

何かと「頭脳は空っぽ」と称されるご主人のバーティーですが、
ジーヴスの才覚を早々に見抜いたし、全権委任する度量の広さも持っているし、
なかなか優秀な雇用主ではないだろうかと思います。
私も上司に欲しい。

日本での知名度はそこまででも無かったジーヴスですが
本国イギリスではシャーロック・ホームズと並び称される
有名探偵でもあるそうで。
アガサ・クリスティも愛読していたとか。

インターネット黎明期からある検索ポータルサイト
「AskJeeves(アスクジーブス)」は、
見ての通り「わからないことはジーブスに聞こう」というネーミング。
もはやサービス名も変わってしまいましたが、
当初は執事のミスター・ジーブスがシンボルキャラクターでした。

ちなみに余談ですが、
文春文庫版(岩永正勝・小山太一訳)は「ジーヴズ」ですが、
古参の国書刊行会版(森村たまき訳)は「ジーヴス」です。
上記の検索サイトは「アスクジーブス」表記が一般的。
統一してくれ。
個人的には「ジーヴス」かなあと思うので、それで。

ちなみにちなみにですが、
私がジーヴスを知ったのはアイザック・アシモフの推理短編小説
『黒後家蜘蛛の会』から。アシモフもジーヴスの愛読者だったそうで。
このシリーズは、おっさんたちが美味しいごはんを食べながら
「不思議なことがあってさあ~」と提示する謎を
給仕のヘンリーが鮮やかに解く、という構成なのですが。
作者曰く、この給仕ヘンリー・ジャクスンのモデルが
執事ジーヴスなのだそうです。
言われてみれば印象が似てるかもですが、
ジーヴスの方が性格悪いですね。私は好きです。

さらにどうでもいい話しですが、
私はこういうフォーマットが好物のようで。
安楽椅子探偵モノに分類されることが多いみたいですが、
その代名詞でもある“ネロ・ウルフ”シリーズとは
ちょっと違う気がするんですよね。
探偵仕事っていうより、日常のおしゃべりの延長というか。
ロジカルゲームとか言う方がピンとくる感じがあります。

定義が曖昧ですが、そういうのがお好きな人には、
下記もおすすめしておきます。
そういう人は既に読んでると思うけど…。

『麦酒の家の冒険』
大学2年の四人組がヘンテコな山荘に迷い込み、
ひたすらビールを飲み続けながらずーっと推理を披露し合う
という一冊です。ホントに。
私のなかの西澤保彦ブームは終焉しましたが、この一冊はずっと好き。

『九マイルは遠すぎる』ハリイ・ケメルマン
こちらは有名すぎる短編ですね。
「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない。
まして雨の中となるとなおさらだ」
の一言から推理する。って、すごくないか。


脱線しまくりましたが、なにはともあれ。
“ジーヴス”シリーズは長編も多数ありますが
まずは文春文庫の短編集2冊から始めるのが良いんじゃないかと。
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