思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

【読書メモ】2011年1月③『阿修羅のごとく』

2019-05-17 10:44:41 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年1月③>
『阿修羅のごとく』向田邦子
タイトルで敬遠してたけど、すごく面白かった。
友人にいつも四姉妹もの読んでいると言われたが、
これと『細雪』くらいだろう。

(以下、2019年現在の補足コメントです。

 有名なので言わずもがなかもしれませんが、
 オリジナルは1980年に放映されたNHKドラマ。

 父の愛人問題にふりまわされる四姉妹の物語ですが、
 四姉妹それぞれも実は異性の問題を抱えています。
 テーマの割にドロドロした感じが少ないのは、
 女ばかりの家庭で育った姉妹の歯に衣着せぬ会話や関係性のおかげでしょうか。

 で、私が読んだのは文春文庫の小説版。
 表紙に大きく向田邦子の名前が書かれているのですが、
 よくみると「向田邦子 原作」となっています。
 原作…?
 そうなのです。これ、小説化したのは別の人なんです。
 ちゃんと表紙に書け…!! 
 私はご本人による小説化だと、ずっと、思い込んでいました。
 まあ、私は映像作品は観ていませんが脚本にだいぶ忠実な内容らしいです。
 読みやすい文章でもあります。

 新潮文庫からは、シナリオ形式の「向田邦子 著」版が出ています。

 ちなみに四兄弟フラグの友人から3度目の妊娠報告頂きました。
 絶対に男子だな…)
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アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』フツーにおもしろいけど

2019-05-16 17:22:37 | 日記
アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』
文庫の上下巻で読みました。

売れてるみたいですね〜。

普通におもしろいです。
読んで損はないと思います。

ただ、ちょっと煽りすぎじゃないか?
まあ、おもしろい本はとことん売った方が良いんだろうけど…。
解説にまで「翻訳ミステリーの史上最高傑作」みたいなこと
織り込まなくても良いと思う。
ひねくれているので、
史上最高?本当に?と思って読んじゃうからなあ。


と、売り方に対しては文句たらたらですが、
内容はきちんとおもしろいです。
数日で上下巻を一気読みできる楽しさです。

主人公は女性編集者なんですが、
彼女が担当編集している作家の原稿『カササギ殺人事件』を読む、
という体裁で、上巻はほぼほぼ作中作です。
この作中作の『カササギ殺人事件』が
古き良き英国ミステリへのオマージュとなっていて
なかなか読み応えがあります。

その外側にもうひとつ、女性編集者が担当作家の死と
原稿の欠落に関して調査する、という現代のミステリがある。

入れ子構造の、どちらにもちゃんと謎があって、謎解きがあって、
一作で2度美味しいミステリですね。

外側の物語のたたみ方は少々バタバタだったかなという印象ですが、
作中作の
「英国の風習や風景」「田舎の人間関係(怪しい人だらけ!)」「探偵!」
「凡庸な助手」「言葉遊び」「不吉なわらべ歌」
等々のお約束はいい感じに満載で、楽しめました。

女性編集者の性格は、好き嫌いが分かれるところかもしれませんが、
クレバーに見えて恋愛感覚がちょっとポンコツというか、
最終的にそこでグッときてそっちいくんかーい、って感じ、
私は結構いいんじゃないかなと思いました。


個人の感想としてはやっぱり「翻訳ミステリ史上最高傑作」とは言えないけど、
まあ、普通におもしろい、よくできたミステリです。
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【読書メモ】2011年1月 ②

2019-05-15 16:02:07 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年1月 ②>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。

『貴婦人Aの蘇生』小川洋子
独特の世界を持つおばあちゃんと、それを見守る若い女性。
おもしろかった。アナスタシアが出てきたのは意外だったけど。

(古い剥製だらけの古い洋館に住む、自分のイニシャル「A」をひたすら
 刺繍し続ける老女。って、ホラーかよ、という舞台設定ですが
 そんな奇妙な設定で、なぜか魅力的で美しい物語を紡ぐ小川洋子さん。
 すごいわ。
 『博士の愛した数式』が売れすぎてしまいましたが、こういうシュールで
 ヘンテコだけど、静謐で寛容な世界観、好きなんですよね。
 『沈黙博物館』とか。)



『カルトローレ』長野まゆみ
空想の料理だろうけど、出てくる食事のレシピがおいしそうだった。
こどもの頃は、ヨーロッパの耳新しいスイーツとか、
どういうもんか分かってないのに憧れたみたいな。
昔のマカロンは不味かったなあ。

(小川洋子からの長野まゆみである。私、疲弊していたんだな…。
 ふんわりした物語に癒されたかった時期だったようです。

 長野まゆみはさほど読んではいませんが、10代のころに読んだ
 『月の舟でゆく』がとにかく印象的でした。
 ご本人も意識していたみたいですが、宮沢賢治の童話っぽい感じに加え、
 独特の世界観やモチーフ、ちょっと古い言葉遣い等が
 すごく魅力的且つ衝撃的だったんですよね。

 『カルトローレ』も架空の世界が舞台の、幻想的でおとぎ話的な物語。
 内容紹介に「秘密が明らかになる」的な煽りがありますが、
 そんなにスッキリ明らかになりません。
 それが良い、と思える不思議な世界観と、地に足着いた日常。
 暮らしのディテールが良いんですよね。
 架空の植物や沙漠の砂や料理のレシピ…。うっとり。

 ちなみに「昔のマカロン」は、メレンゲクッキーの間違いです。
 こどもの頃に初めて見たメレンゲクッキーが、とても軽やかで
 不思議な質感でとにかくおいしそうで、衝撃的だったんです。
 食べてみたら期待したのと違う味と食感で、さらに衝撃だった…)



『紙魚家崩壊 九つの謎』北村薫
いまいちです。

(癒されたい気分だったので、不満があったのでしょう。
 表紙からして癒しとは程遠いけどな。むしろ、なんで読んだんだろう。

 「ミステリ短編集」を謳っていますが、作風はバラバラです。
 サイコサスペンス系もあれば日常の謎系もあります。
 98年以降、新作がまったく出る気配のなかった「円紫さんと私シリーズ」の
 『白い朝』もこちらに収録されています(2006)。が、
 本来納まるべきシリーズ最新刊『太宰治の辞書』に再収録されました)
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【読書メモ】2011年1月 ①

2019-05-13 13:56:09 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年1月 ①>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『震える岩 霊験お初捕物控』宮部みゆき
忠臣蔵の100年後の江戸の話し。
死霊が人に憑いて子供を殺すってのはベタな気がするが、
赤穂浪士の話しは面白かった。

(「霊験お初」シリーズ第一弾。
 主人公のお初は見えないものが見える不思議な力を持っています。
 というわけで、「怪異」ありきの世界観です。
 宮部さんは「怪異」系と「人間(本当に怖いのは人間でした)」系
 どっちもありますよね。
 どうでも良いけど『本所深川ふしぎ草紙』を読んだときは
 タイトルで「怪異」アリだな、と勝手に思い込みましたが、無かった。
 まあ、おもしろかったから良いんですが。
 心の準備が的外れだったという、小さな寂しさがさ…。

 ちなみに赤穂浪士の討ち入りは1703年、元禄の時代です。
 人形浄瑠璃で近松門材衛門『曽根崎心中』が初演された頃。
 本作の舞台は1803年、享和、十返舎一九『東海道中膝栗毛』が
 流行っていた頃。江戸時代って長いですねえ)
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“ジーヴス”シリーズ刊行状況の備忘録

2019-05-10 16:49:50 | 日記
おもむろに読み始めてどっぷり浸かってしまった
“ジーヴス”シリーズ。
おもしろいですよ!未読の人は、まず
文春文庫の『ジーヴズの事件簿-才智縦横の巻-』だ!

と言いつつ、私は読み始める前に
「何をどんな順番で読んだらいいのかわからん…」
と、困惑したので備忘録も兼ねてメモメモしておきます。

とにかくぜんぶ読む!ということなら、
「完訳版」と言われている国書刊行会の全14冊で良いのですが。

ちょっと紛らわしいことがあるので補足すると。

こちらのシリーズ1冊目『比類なきジーヴス』は
本国イギリスではシリーズ2作目となる短編集
『The Inimitable Jeeves』(1923)の邦訳です。
本国のシリーズ1作目は『My Man Jeeves』(1919)ですが、
この本そのものは邦訳されていません。
(という事実を知り「完訳じゃないのか…、完訳はどこだ…?」と戸惑った)

が、この『My Man Jeeves』に収められた作品の一部はリライトされて
3作目の短編集『Carry On, Jeeves』(1925)に収録されているようで。
これの邦訳が、国書刊行会シリーズ3冊目の『それゆけ、ジーヴス』。

という事実から推察するに、1作目の『My Man Jeeves』は
完訳シリーズに必須とは言えない内容というか、
設定とかシリーズ感がふんわりしていたのかな。

そんなこんなで、時系列的に見ると最初のお話しである
ジーヴスとバーティーの出会いが描かれた「ジーヴス登場」は
『それゆけ、ジーヴス』に収録されております。

そういうアレコレが気になる方のために!ということでしょう、
文春文庫版『ジーヴズの事件簿』(全2冊)は
「ジーヴズの初仕事」(「ジーヴス登場」の改題。訳者が違うから…)
から始まるありがたい構成になっております。

というわけで入門とか味見とかの観点では
文春文庫の『ジーヴズの事件簿-才智縦横の巻-』がお薦めですが、
こちらは全ての短編が収録されているわけではありません。
いわゆる「よりぬき傑作選」ですね。

しかしだね。
国書刊行会の全14冊中、短編集は3冊だけである。
2冊読むのも3冊読むのも変わらんな。
じゃあ、さっさと国書刊行会全14冊を読んだら良いじゃないか!
と自分に言い聞かせて、私は文春版から国書版へ路線変更しました。

以下、タイトルメモ。

国書刊行会
1.『比類なきジーヴス』(短編集)
2.『よしきた、ジーヴス』
3.『それゆけ、ジーヴス』(短編集)
4.『ウースター家の掟』
5.『でかした、ジーヴス』(短編集)
6.『サンキュー、ジーヴス』
7.『ジーヴスと朝のよろこび』
8.『ジーヴスと恋の季節』
9.『ジーヴスと封建精神』
10.『ジーヴスの帰還』
11.『がんばれ、ジーヴス』
12.『お呼びだ、ジーヴス』
13.『感謝だ、ジーヴス』
14.『ジーヴスとねこさらい』


文春文庫(短編選集)
1.『ジーヴズの事件簿-才知縦横の巻-』
2.『ジーヴズの事件簿-大胆不敵の巻-』
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