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松田青子『スタッキング可能』

2018-04-10 16:17:15 | 日記
松田青子(あおこ)『スタッキング可能』を読みました。
単行本は、中篇集になっていて、
表題作が冒頭に収録されています。

『スタッキング可能』は、とあるオフィスビルの
人間模様が細かい章立てで描かれています。
章の始まりには、エレベーターの階数ボタンが書かれていて、
あ、今は4階のオフィスのお話しなんだな
と分かるようになっています。

各階の仕事や人間関係なんか覚えられないし
興味ないわ!と言うなかれ。

どのフロアにもA田くん&B田くんという女子品評コンビや
(フロアによっては彼らの名前はA山&B山などに変わる。
 彼らの本質というか、人間的ジャンルは変わらない)
ゆるふわ系のCちゃんや
(フロアによっては頑張りが空回りしたりもする)
疲れた上司のE山さんなど
(フロアによってはオランウータンになる。
 いや、オランウータンってなんだよ)
がいて、
単なる記号であり、代替可能であり、スタッキング可能な
「人間性」があふれている。

とはいえ、どいつもこいつも、そこはかとなく人間臭い。
オランウータン混ざってるけど。
人間臭さが、面白い。

各オフィスでの描写も面白いです。
著者の来歴は知りませんが、
オフィスの日常の、すごい狭いところをよく見ていて
そこを拾うか〜という面白さがあります。
エレベーターを使わず階段で誰かとすれ違うと
なんとなく通じ合った気になる、とか。

仕事を回している先輩はかっこいい、の描写とか。

 敬語を自由に操れるのってかっこいい。英語のほかにフランス語を
 話せるくらいのかっこよさだ。自分のたどたどしい、板についてい
 ない、尊敬語も謙譲語もごっちゃになった敬語とはぜんぜん違った。
 これはこうこうこういうかたちになっておりまして、こちらはこう
 いうかたちになっております。そうですね、そういうかたちになり
 ます。ええ、ええ、そういうかたちでおねがいします。そのかたち
 ですね、そのかたち。


敬語を流暢に使える先輩、かっこいいですよね!
そして、「かたち」って連呼する人いますよね。
その日本語どうなのよ、って思いつつも
トークになめらかに組み込まれると
なんか気持ちいいくらいですよね。

って、本当に先輩のことかっこいいって思ってる?
尊敬してる?!

という感じで、マジメな文学チック文章で
なかなかふざけたことを書いていたり、
たまにいきなり鬱屈した乱暴な語調になったり。

町田康をちょっと連想させられつつも、
私は年代も近いし同性ということもあるのかもしれません、
『スタッキング可能』の方が良作だと思うし、好きです。

結構、好き嫌いのわかれる小説、というか、
ちょっと前衛が入っていて体質に合わない人もいると思いますが、
面白いので、興味がある方には是非、
お味見していただきたい作品でした。

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