思惟石

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『それからはスープのことばかり考えて暮らした』良い!!

2021-10-26 12:24:19 | 日記
『それからはスープのことばかり考えて暮らした』
吉田篤弘

この作者の作品はお初だけれど、
名前には見覚えあるぞ…!!

と思ったら、クラフト・エヴィング商會の人では
ありませんか。
小説も書くんですね…。
多才である。

しかも、あとがきを読んで知ったのだけれど、
岸本佐知子氏と同郷(どころか、幼少期に
同じ通り沿に住んでいたらしい)だとか。

そういえばエッセイの挿画をしてましたね!
(『なんらかの事情』岸本佐知子)
好きな作家同士の繋がりを知るのは、楽しい。
(そういや北村薫『太宰治の辞書』のあとがきにも
 吉田氏は登場している。
 北村薫が探していた”太宰治の辞書=『掌中新辞典』”
 の現物をお持ちだったという話。すごいな!)

そんな彼らが育った街がモデルの架空の街「月舟町」三部作の、
2作目です。

舞台は月舟町の、ひと駅となり

路面電車が走り、おいしいサンドイッチ屋があり、
アパートからは小さな教会が見える。

主人公の「僕」がささやかに暮らす、ささやかな日常の連作短編。

どの篇も、とにかく1行目が良い!!
”茶色の紙袋に白いインクで数字の「3」がひとつ剃ってある。
(サンドイッチ)”
”どうもストーブを消し忘れてきたような気がしてならなかった。
(うわの空)”
”気がつくと口笛ばかり吹いていた。(口笛)”

もちろん物語も良い!!
サンドイッチ屋のご主人・安藤さんも、
息子のリツくんも、大家さんのマダムも
月舟シネマも、みんな愛おしい。
ほっこりあったかい。

初出は『暮らしの手帖』に連載されていたそうで、
なるほどと思える、良い雰囲気の脱力感と飾らなさ。

あったかいスープが恋しい季節になってきましたね。
コメント
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