思惟石

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『透明な夜の香り』出会いは大事にしないとですね

2021-10-12 10:25:56 | 日記
『透明な夜の香り』千早茜

主人公の一香は、明らかに何らかのトラウマを抱えた
不自然に無気力な20代の女性。

そんな彼女の一人称で物語が語られるので、
物語を動かすのは、
謎の洋館に住むオーダーメイド調香師の小川朔と
その相方で探偵の新城になる。

生活費のために始めた不思議なバイト(洋館の家政婦)。
感情の起伏に乏しい主人公が、淡々と日々を紡いでいく。

各章では、調香にまつわるいくつかの事件が描かれます。
すこしずつ主人公の過去や本質が見えてくるし、
本人も向き合うようになる。
というお話し。
文章もきれいで、細部の展開も良くて、
読んでいる間の読書時間が、まるっと、いい感じ。

最初はただのゴロツキ感満載だった新城が
どんどんイイヤツに見えてくるのが不思議である。

ちょこちょこ挟まれるハーブの知識はおもしろい。
いちごのスープと焼きアスパラはおいしそう。
粕汁も好きだ。

実質主人公の小川朔は、天才的嗅覚を持っている故の
辛さを抱えていて、『香水』の主人公と似た特性ですね。
『香水』は犯罪者になっちゃいましたけど、
こちらの主人公がなんとか社会と折り合っていけているのは
新城やお爺ちゃんに出会えたからだと思う。
一香にも出会えて良かったね。

そして一香はバイト先の友人に感謝すべきだ。
友だちは大事だな。
と、中年になった私はしみじみ思う次第です。

第6回渡辺淳一賞受賞作。
コメント
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