Sightsong

自縄自縛日記

アーチー・シェップの映像『I am Jazz ... It's My Life』

2009-08-04 00:46:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

愛しのサックス吹き、アーチー・シェップの映像作品『I am Jazz ... It's My Life』(Frank Cassenti、1984年)は随分前から何度も観ている。もちろんVHSだが、たしかDVDでも再発されていたはずだ。ちょっと前の『Imagine the Sound』(1981年)にもシェップの姿がある。願わくば、70年代初頭までのインパルス時代の映像も観てみたいところだが、あるのだろうか。

冒頭からふるっている。監督は、ジャズフェスでサン・ラをつかまえようとするが居場所知れず。そこにシェップが現われ、「ジョン・カサヴェテスの登場人物のように走り寄った」。シェップは、ドン・チェリー、フィリー・ジョー・ジョーンズらとともに、サン・ラの率いる豪華バンドの一員として参加していたのだ(何それ?)。シェップは映画化をその場で快諾する。

こうなるとシェップの思い入れが溢れ出す。アフリカをルーツとして、ジャズは米国で産まれたんだよ。チャーリー・パーカーは私のバッハだし、コルトレーンはベートーヴェンだ。エリントンが現われ、フレッチャー・ヘンダーソンも・・・。そう言いながら、悪乗りというか、パーカーと呟きながら、パーカーのオリジナル曲「Billie's Bounce」を、テナーで小気味良くジャンプするパーカー・フレーズで吹きまくる。しかしどうしてもシェップのサウンドになっているのは面白い。

黒人であることや政治への意識も幾度となく吐露する。車の中では、アルチュール・ランボオの『地獄の季節』を口ずさんだりもする。そこで仰天する話。シェップの曲「Mama Rose」は、ジェームズ・ブラウンの「Papa Don't Have a Brand New Bag」からインスパイアされて生まれたのだ。自分を含め、あまり歓迎されているとは言えないだろうヴォーカルは、ブラウンのことも意識しているのだろうか?

テナーサックスによる「In a Sentimental Mood」「Billie's Bounce」、ソプラノサックスとヴォーカルによる「Mama Rose」など演奏は長く収録されている。また、ウィルバー・リトルのベースを聴けることも嬉しいところだ。

サックスを吹くシェップのアンブシュアを見ていると、口まわりを緊張させるクラシックのそれとは対極にある。息継ぎせず吹き続ける循環呼吸奏法のときは仕方ないとして、そうでなくても、ぶほぶほと動いて非常にゆるい。10年前にシェップの真下で演奏を観たとき、それどころか、涎がたれまくり(!)、私の上にほとんど雨あられであったことを思い出す。あの独特な音の秘密はいかに。

●参照 イマジン・ザ・サウンド


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8 コメント

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Unknown (YK)
2009-08-04 19:33:51
暑くなってきましたね。こんな時季のシェップは暑気払いに最悪です。シェップのアンブシュアはきっとリードを薄くしているのでしょう。
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Unknown (Sightsong)
2009-08-04 23:58:18
YKさん
なるほどリードですか。
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Unknown (FN)
2009-08-05 05:32:16
横槍になってしまい恐縮ですが、ダブルリップのアンブシュアである程度開きのあるマウスピースの設定であれば物理的条件は満たされると思います。これであれば涎はともかくとして、ポジションは普通にビブラートをかけただけでも動きます(笑)。
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Unknown (Sightsong)
2009-08-05 07:37:05
古谷さん
マウスピースの選択いかんでリードの可動性が大きくなるということですね。ダブルリップというのは凄いですね・・・シェップの唇は向いていそうな。
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Unknown (FN)
2009-08-05 10:04:09
マウスピースというよりも、ダブルリップはそれだけで大きな差が生まれるほど決定的なスタイルであると思います。昔は当たり前にだれもがこれで吹いていたわけですが、ウェブスター、ヤングなどの演奏スタイルがコルトレーンに取って変わられたように、音楽の流行りがテクニックを発展/退行させることはよく起こるようです。リード、マウスピースはもちろん重要ですが、ある程度の音楽家であれば、大体どれを使っても同じような音がでてしまうので、そう考えると基礎的/身体的な要素が最終的
に優勢に残るということでしょうか。
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Unknown (YK)
2009-08-05 18:43:45
たしかにダブルです。マウスピースは浅めにくわえてますが、というより置いただけという感じです。ブランフォード・マルサリスもリンクなら10番を使用してダブルリップでした。彼の場合は横隔膜を効率良く利用して、音程や音色をコントロールしていました。ダブルリップって、かなり腹筋とリンクしてませんか?
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Unknown (Sightsong)
2009-08-06 00:05:29
古谷さん YKさん
いまでもダブルリップ派はいるのですね。ジョニー・ホッジスのような、音色を柔軟に変えるエリントニアンもそうだったのでしょうかね。
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Unknown (YK)
2009-08-06 02:48:46
サックスのような曖昧な性質の楽器は、その機能性よりも使用者のスキルによって奏法が変化する。個性を重んじるジャズには最適な器ですね。シェップもブランフォードもベン・ウェブスターを相当研究したと思います。奏法ばかりではなく、彼らは器の選択にもこだわりがあったはずです。ブランフォードはオタクですからね。シェップは異常なくらいにリードに対して神経質でした。ぬるま湯にリードを漬け込んでいるのを目撃したことがあります。みんな豪放なサックスを吹きますが、事前作業はけっこう細かいのです。
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