Sightsong

自縄自縛日記

ニーナ・シモンの映像『Live at Ronnie Scott's』、ミシェル・ンデゲオチェロ『Pour une ame souveraine』

2016-05-03 09:21:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

たぶん東京MXテレビが放送を開始した頃だと思うが、ジャズの映像を流す番組があって、マルサリス兄弟が参加したジャズ・メッセンジャーズのライヴだとか、チコ・フリーマンのライヴだとかを放送していた。その中に、ニーナ・シモンのライヴもあって、当時のわたしとは世界が違い過ぎるものゆえ、録画したもののほとんど観ることはなかった。最近、あらためてそのDVD『Live at Ronnie Scott's』(1985年)を観た。

Nina Simone (vo, p, key)
Paul Robinson (ds)

とにかく民族も文化も宗教も個人的背景も異なるわたしにとって、1曲目の「God, God, God」という、ひたすらに呟き祈る歌が、見続けることの「障壁」となっていたのだった。いま観ると、もちろん無防備にではないものの、意外なほど素朴なニーナの声質とともに、少なからず沁みこんでくるような気がする。

カミへの祈りはヒトへの切なる想いでもあって、「Be My Husband」や、有名な「I Loves You, Porgy」(歌い始めた途端にロンドンの聴衆からも拍手が起きる)などでは、切実さからの痛さと同時に、ニーナの可愛らしさにも気付かされる。

そしてただピアノを弾きながら一心に歌っているばかりでなく、ドラムスのポール・ロビンソンの見せ場を作ったり、躍りながら歌ってみたりと、当然ではあるがエンターテイナーでもあったのだった。時間を置いてみるものだね。

そんなわけで、前から聴いてみようと思っていた、ミシェル・ンデゲオチェロ『Pour une ame souveraine - a dedication to Nina Simone』(Naive、2012年)を入手して聴いた。

Meshell Ndegeocello (vo, b)
Chris Bruce (g)
Deantoni Parks (ds)
Jebin Bruni (key, p)
Guests:
Toshi Reagon (vo)
Sinead O'Connor (vo)
Lizz Wright (vo)
Valerie June (vo)
Tracey Wanomae (vo)
Cody ChesnuTT (vo)

ミシェルのベースがクールなのは当然だとして、このアルバムは、むしろ彼女の歌声に焦点を当てているように思える。曲は、タイトル通り、ニーナの歌ってきたものばかりなのだが、声質と雰囲気はまったく異なる。まるで冷たかったり微温がしたりする掌で、直接肌をさらりと触られるような、ぞくりとする感覚がある。切実さも惜しみなく発しつつも、その想いを残してさっと去って行ってしまったりして、聴く者はどうすればよいのか。

最後の曲「For Women」では、肌の色がそれぞれ異なる4人の女性の独白のような歌詞である。そして4人目だけ、自分の名前を名乗らずに去っていく。この宙ぶらりんの哀しさといったら。

●参照
テリ・リン・キャリントン『The Mosaic Project: Love and Soul』(2015年)(ミシェル・ンデゲオチェロ参加)
ミシェル・ンデゲオチェロ『Comet, Come to Me』(2014年)
ミシェル・ンデゲオチェロの映像『Holland 1996』(1996年)


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