デューク・エリントンがチャールス・ミンガス、マックス・ローチという「異種」のふたりと吹き込んだアルバム『Money Jungle』(Blue Note、1962年)には、聴くたびに感動させられる。エリントンは1899年生まれ、ローチが1924年、ミンガスが1922年生まれ。およそふたまわりも離れている。ただ、どちらが獰猛かというと必ずしもバップ派とは限らない。
Duke Ellington (p)
Charles Mingus (b)
Max Roach (ds)
この名盤へのオマージュとして吹き込まれたアルバムが、テリ・リン・キャリントン『Money Jungle: Provocative in Blue』(Concord Jazz、2013年)である。
余談ではあるが、今年の7月にニューヨークのStoneで彼女のプレイを観たときに、共演したカーメン・ランディから「テリ・リンはグラミー賞だからねえ」と言われ、厭そうな顔をしていたのを覚えている。調べてみると、この「Best Jazz Instrumental Album」部門の受賞作は広く受ける作品が多いような印象がある(もてはやされていた時期のウィントン・マルサリスが3年連続で受賞したり、ハービー・ハンコックやパット・メセニーが常連であったり)。この盤も、「ジャズの歴史へのリスペクト+現代」というコンセプトが刺さったのかなとも思える。
それはともかく、これも良い演奏だ。テリ・リンのドラムスは軽く鋭い。ゲストも多士済々で、特にクリスチャン・マクブライド(ベース)のテクニシャンぶりが痛快である。
曲は、ほとんどエリントンの盤を踏襲している(CDでの追加曲もカバー)。テリ・リンのオリジナルが2曲ある他に、ジェラルド・クレイトン(ピアノ)のオリジナル曲「Cut Off」が入っているのだが、これは、カバーされていない「Solitude」に曲想が似ている。
そんなわけで、1曲ずつとっかえひっかえ聴き比べるのが愉しい作業なのだ。わたしの判定は、エリントン盤の圧勝。ピアノのアタックの強度や和音の分厚さ、サイドメンとはとても呼べないローチとミンガスの個性の爆発ぶりは、こうして比較しても素晴らしいものだ。
Terri Lyne Carrington (ds)
Gerald Clayton (p, rhodes)
Christian McBride (b)
Robin Eubanks (tb)
Tia Fuller (as, fl)
Antonio Hart (fl)
Nir Felder (g)
Arturo Stable (perc)
Shea Rose (voice; 11)
Lizz Wright (voice; 3)
herbie Hancock (voice of Duke Ellington; 11)
Clark Terry (tp, voice; 2)
ジャケットの裏側にはパロディ
テリ・リン・キャリントン(NY、2014年7月)
●参照
デューク・エリントン『Live at the Whitney』
ジェリ・アレン、テリ・リン・キャリントン、イングリッド・ジェンセン、カーメン・ランディ@The Stone