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Sightsong

自縄自縛日記

デイナ・スティーブンス『I'll Take My Chances』

2015-04-10 23:48:55 | アヴァンギャルド・ジャズ

デイナ・スティーブンス『I'll Take My Chances』(Criss Cross Jazz、2013年)を聴く。

Dayna Stephens (ts, bs)
Charles Altura (g)
Gerald Clayton (p, hammond B3 organ)
Joe Sanders (b)
Bill Stewart (ds)
Becca Stevens (vo)

ここでもデイナ・スティーブンスのテナーは「江川の剛速球」。悠然と懐の深い音を出しながら、まだまだ余裕がある。

特筆すべきは、ジェラルド・クレイトンのピアノであり、芸の細かい装飾音と繊細な強弱の変化が良い。また、ビル・スチュワートのドラムスは何気に複雑なリズムとパルスを提示しながら、隙間へ隙間へと入り込んでくる。

エリントンの「Prelude to a Kiss」では、ベッカ・スティーヴンスが歌っている。確かに突然これが耳に入ってきたら、のけぞる。ふと、マル・ウォルドロンとチコ・フリーマンによる『Up and Down』において「My One and Only Love」を歌っているティツィアーナ・ギリオーニを思い出した。

●参照
デイナ・スティーブンス『Peace』
ジョン・エイベア@The Cornelia Street Cafe(デイナ・スティーブンス参加)
テオ・ヒル『Live at Smalls』(デイナ・スティーブンス参加)
ベッカ・スティーヴンスの話と歌@ニュー・スクール
アンブローズ・アキンムシーレ『The Imagined Savior is Far Easier to Paint』(ベッカ・スティーヴンス参加)


アンドリュー・ドルーリー『Content Provider』

2015-04-10 06:09:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンドリュー・ドルーリー『Content Provider』(Soup and Sound Recordings、2014年)を聴く。

Andrew Drury (ds)
Briggan Krauss (as)
Ingrid Laubrock (ts)
Brandon Seabrook (g)

先日NYで観たこのライヴでも感じたこと。このグループは、まったく「深遠」とか「深淵」とかいったものと無縁である。向こう側の隠れたところに何かがありそうだと思わせるのも芸に違いないが、そんなことはしないのだ。ドルーリーのドラムスも非常にシンプルなもので、「見たまんま」である。ただし、ひたすら愉快痛快。

スピードスター的なクラウス、シーブルックの扇動に応じて妙に震える音を返してみせるラウブロック、これも愉快痛快。

それはそれとして、その日には、もともと、あのチャールズ・ゲイルが客演する予定だった。ドルーリーもメールで落胆したと言っていたし、わたしも本当に観たかった(昔、歌舞伎町で観たっきりだ)。もしゲイルが参入していたら、「見たまんま」の音楽に何か重力の特異点が現れたかもしれない。

●参照
アンドリュー・ドルーリー+ラウブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art
ブリガン・クラウス『Good Kitty』、『Descending to End』
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone
イングリッド・ラウブロック『Zurich Concert』
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』
トム・レイニー『Obbligato』(ラウブロック参加)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(ラウブロック参加)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces』(ラウブロック参加)


エディ・ヘンダーソン『Collective Portrait』

2015-04-09 07:46:36 | アヴァンギャルド・ジャズ

エディ・ヘンダーソン『Collective Portrait』(Smoke Sessions Records、2014年)を聴く。気になっていた盤であり、これを出している「Smoke」のバーで購入した。(実は、ライヴを聴く客にはチャージの他に最低20ドルの支払いが義務付けられているのだが、ジンジャーエール2杯ではそれに足りなかった。ちょうど良かった。)

Eddie Henderson (tp, flh)
Gary Bartz (as)
George Cables (p, rhodes)
Doug Weiss (b)
Carl Allen (ds)

別に何か新しい要素や革新的なものがあるわけではない。しかし、演奏は一級品である。それでいいのだ。(とはいえ、ゲイリー・バーツの音楽は、昔の「Ntu Troop」以外面白いと思ったことがないのだが。)

ヘンダーソンのトランペットは、理知的に抑制されていて、とても抒情的。大好きである。最後に、ウディ・ショウの曲「Zoltan」をもってきていることには意表をつかれてしまった。ヘンダーソンとショウの共通点はいかに。

カール・アレンのシンバルワークは鋭く爽快。ニコラス・ペイトンらとともにシーンに登場してきたころ、よく聴いたドラマーである。今回日程が合わず彼のプレイを観ることができなかったが、この「Smoke」において、アート・ブレイキーとエルヴィン・ジョーンズに捧げた企画のライヴをやっていた。CDを出してくれればぜひ聴きたいと思っている。

●参照
ジェレミー・ペルト@SMOKE(エディ・ヘンダーソンが遊びにきていた)
エイゾー・ローレンス@Jazz at Lincoln Center(エディ・ヘンダーソン参加)
ローラン・ド・ウィルド『セロニアス・モンク』(エディ・ヘンダーソンは精神科のインターン時にモンクを担当した)


ビョーク『Vulnicura』

2015-04-08 07:49:13 | ポップス

ビョークの最新作『Vulnicura』(2015年)を繰り返し聴いている。

まずはあまりにも強烈なジャケットに引いてしまうが(プラスチックのスリーブにはまた別の強烈なものがある)、これは、収録された歌の数々と密接に関係するものだった。すなわち、愛する者との別れをテーマとして、その前から別れのあとまでを順に歌った作品なのであり、ジャケットには、自傷と、外の世界に晒されるその傷とが描かれている。ヴァルネラビリティはビョークの作品に一貫してみられる特徴だと思うのだが、本作のタイトルもそれと関連するのだろうか。

いたずらに壮大なヴィジョンを過剰なビートとともに提示した近作とは異なり、一転して、肉声に近いストリングスを中心としたサウンドになっている。シンプルになった結果、ビョークの声の個性もあらためて感じることができるわけである(ところで、「r」の巻き舌が妙に目立つがどうだろう)。そして、それに伴って、順に提示されるビョーク自身の物語に耳を傾けなければならない。

1曲目の「stonemilker」では、単語を痛切に区切る「a juxtapositioning fate ...」から始まる。別れの9か月前だとしている。ニューヨーク・MOMA PS1において、曇天の海辺で歌う3Dのビョークを見せられた歌でもある(>> リンク)。一方、MOMA本館の「ビョーク展」において大画面のクリップを流していた曲は、別れの2か月後の「black lake」だった(>> リンク)。この2曲はたしかにとびきり印象的だ。この2曲以外ももちろん素晴らしい。

ちょうどニューヨークのカーネギーホールでは、ビョークのコンサートが開かれていたようで、それを絶賛するベッカ・スティーヴンスのツイートを見た。ぜひ日本でもコンサートを開いてほしいものだ。

●参照
MOMAのビョーク展
MOMA PS1の「ゼロ・トレランス」、ワエル・シャウキー、またしてもビョーク
ビョーク『Gling-Glo』、『Debut』
ビョーク『Post』、『Homogenic』
ビョーク『Vespertine』、『Medulla』
ビョーク『Volta』、『Biophilia』


空のストライプと山田正亮

2015-04-07 06:48:54 | アート・映画

カナダ上空あたりで、飛行機は夜の世界から朝の世界に突入し、そこで空の向こうに美しいストライプが見えた。

ストライプばかりを描いた山田正亮の絵を思い出した。何かに、氏はビル・エヴァンスを愛好すると書いてあった。いつだったか、氏がどこかの画廊で佇んでおられて、そのあたりを訊いてみようかと思いつつ機会を失った記憶がある。調べてみると、2010年に亡くなっていた。


ニューヨークの麺

2015-04-06 05:30:35 | 北米

ニューヨークに到着したら雪が降っていた。想定外に寒かった。もっとも冬の寒さはこんなものではなかったようだが。

もう、ラーメン屋を探すしかないのだ。と一度決めたら、麺ばっかり。やはり『美味しんぼ』での栗田さんの説のように、アジア人は本能的に麺に向かう。

■ 一風堂

最近アメリカ進出が大きな話題になっている。日本だけの話かと思ったら寒空の下この行列。東京で何度も食べたので入らないが、味は同じなのかな。

 

■  Nam Son (ベトナム料理)

もう寒くて寒くて汁麺ならばと思い、チャイナタウンのベトナム料理屋に入った。

普通のフォー・ボー。ハノイで食べるより牛肉の量が多い。旨かったがライヴに遅れそうになった。

■ Wok 88(アジア料理、アッパーイースト)

Udonという名の焼うどん。ちょっと油っぽかったが懐かしい感じの味。

そういえば、汁もののうどん屋はあるのかな。剛腕投手の伊良部がアメリカのどこかで経営していたのは、うどん屋ではなかったか。

■ Naruto Ramen(アッパーイースト)

前を通りがかるたびに人が順番待ちをしていた。

黄色くコシのある麺に鶏ガラのスープ(みんなチキンブロスと呼ぶ)。普通に旨い日本のラーメンである。半熟卵にもう少し熟練が欲しいが、それは望みすぎか。チャーシューが厚い。

つい餃子まで付けてしまった。向こう側でタレを入れてくれるので、待っている間に、自分で醤油と酢とラー油をブレンドする楽しみはない。

店員はアラーム付きできびきびと麺をゆでたり餃子を焼いたりしている。

 

■ Yasha Ramen(アッパーウェスト)

デューク・エリントン通りの近くにある。豚骨味(ポークブロス)、頼むとすぐに出てきた。細麺が柔らかいのはこちらの嗜好に合わせているのだろうか。今後は「バリカタ」とか流行ったりして。

■ Dassara Ramen(ブルックリン)

カタカナで「ダツサラ」とか書かれている。脱サラした方が始めたのかどうか不明だが、ちょっと独創的だった。

「デリラーメン」なるものを注文すると、チキンブロス(ブロスと書くと昔スワローズにいた投手を思い出してしまう)のスープに、セロリ、グリルした牛肉、さらにマッシュポテトの団子(これは合わないと思う)。麺が柔らかすぎたが好みによるだろう。やはり課題は半熟卵の作り方か。今後ニューヨークに進出するラーメン店は、バッチリした半熟卵を供すると差別化できるに違いない。

大相撲湯呑で水を飲んでいると不思議な気分。

■ Meijin Ramen(アッパーイースト)

牛骨スープ(ビーフブロス)の麺を注文したところ、予想以上にテイストが牛牛していた。ついでにミニカレーを付けた。

せっかく旨いのに、入りにくい雰囲気のせいか客が少なかった。

■ Ivan Ramen(ロウワーイースト)

あの有名店アイバンラーメンである(日本で食べたことがないので違いがわからない)。完全にバーの作りで、奥に個室まであり、みんな酒を飲んでいる。夜中にラーメンだけ食べるのは申し訳ない感じ。

塩ラーメンを食べた。チキンブロスと魚介系のダブルスープで、わたし的には嬉しい。もう少し熱ければよかった。やはり半熟卵が(以下略)。

■ Gong(タイ料理)(アッパーイースト)

こじゃれたタイ料理屋。タイであろうとどこであろうと、わたしはいつもパッタイを食べる。タイ料理であれば必ずあり、まずい味にはなりようがないからだ。当然、予想通り旨かった。

■ Momofuku Ramen(イーストヴィレッジ)

やややわらかめの麺に、ほぐしチャーシューに、角煮。近所にあったらしょっちゅう通う味だろうね。やはり順番待ちが多かった。温泉卵がユニークだがやはり半熟卵のほうが(以下略)。

■ Ramen-ya(グリニッジヴィレッジ)

グレッグ・ハッチンソンのライヴがソールドアウトで入れず、ふて腐れてラーメン。去年もここにあったっけ?

すべて豚骨ベースの塩や醤油や味噌(と、日本人の店員さんが教えてくれた)。この界隈のライヴハウスに行くときにはぜひ。

●参照
ニューヨークのハンバーガー、とか
ラーメンは国境を超える(笑)
旨い札幌(2)(すみれ)
「らーめん西や」とレニー・ニーハウス
今田敬一の眼(五丈原)
北海道版画協会「版・継承と刷新」、杉山留美子(えぞっ子、雪あかり)
「屯ちん」のラーメンとカップ麺
「東京の沖縄料理店」と蒲田の「和鉄」
海原修平写真展『新博物図鑑』(凪)
海原修平写真展『遠い記憶 上海』(凪)
「ますたに」のラーメンとカップ麺
博多の「濃麻呂」と、「一風堂」のカップ麺
恵比寿の「香月」
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(ひごもんず)
18年ぶりくらいの「荻窪の味 三ちゃん」
沖縄そば(2)
沖縄そばのラーメン化
伊丹十三『タンポポ』、ロバート・アラン・アッカーマン『ラーメンガール』
旨いジャカルタ その4(カレーラーメン)
旨いハノイ(「フォー24」)
ミャンマーの麺
韓国冷麺
上海の麺と小籠包(とリニア)
北京の炸醤麺、梅蘭芳
中国の麺世界 『誰も知らない中国拉麺之路』


ジョニー・トー(21) 『単身男女2』

2015-04-06 01:14:19 | 香港

機内では、ジョニー・トーの最新作『単身男女2』(2014年)も観ることができた。

実はこの下敷きになっている『単身男女』を観ていないのだが、それでも巧妙に前作のプロットを取り込んでいるので問題はない。

何股もかける恋多き色男。その元カノは、「火星人」と呼ばれる男と結婚しようとしている。彼女が憧れる女上司は、癖しかないようなその男ふたりに結婚を申し込まれる。もうハチャメチャ。

登場人物たちが働くオフィスが入った高層ビルが向かい合って建っており、ジェスチャーで色恋の合図をしまくる工夫なんて、さすがのジョニー・トーである。隣り合う工夫はオフィスだけでない。色男は元カノのことが忘れられずかつて彼女がいたアパートに住んでおり、彼女は同じ部屋に戻ろうとしたら塞がっていたので、それと知らず隣の部屋に住んでいたりする(『ターンレフト・ターンライト』に似たような設定があった)。

色男はロッククライミングが得意。岩登りをしながらプレゼントを渡したり、さらには、元カノの結婚を阻止すべく高層ビルをよじ登っていく。いうまでもなく、『卒業』の高層ビル版である。この過激な無意味さこそトーの真骨頂。

●ジョニー・トー
『城市特警』(1998年)
『ザ・ミッション 非情の掟』(1999年)
『暗戦/デッドエンド』(1999年)
『フルタイム・キラー』(2001年)
『デッドエンド/暗戦リターンズ』(2001年)
『PTU』(2003年)
『ターンレフト・ターンライト』(2003年)
『スー・チー in ミスター・パーフェクト』(2003年)※制作
『ブレイキング・ニュース』(2004年)
『柔道龍虎房』(2004年)
『エレクション』(2005年)
『エレクション 死の報復』(2006年)
『エグザイル/絆』(2006年)
『僕は君のために蝶になる』(2007年)
『MAD探偵』(2007年)※共同監督
『スリ』(2008年)
『アクシデント』(2009年)※制作
『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(2009年)
『奪命金』(2011年)
『高海抜の恋』(2012年)
『ドラッグ・ウォー 毒戦』(2013年)
『名探偵ゴッド・アイ』(2013年)


ヤン・オーレ・ゲルスター『コーヒーをめぐる冒険』

2015-04-06 00:55:00 | ヨーロッパ

ヤン・オーレ・ゲルスター『コーヒーをめぐる冒険』(2013年)。

一応は飽きずに最後まで観たけれども。どうしても、ダメ男が出てくる映画は(それが自分に似ている要素があろうとなかろうと)、胸が痛くなるか苛々するか。この映画はその両方だった。何が「自分探し」だ。

それに原題の『OH BOY』が、なぜこの邦題になるのか。ポップなコメディでもなんでもないし。


クリストファー・ノーラン『インターステラー』

2015-04-06 00:36:50 | アート・映画

飛行機の中で、いまさらながら、クリストファー・ノーラン『インターステラー』(2014年)を観る。

いや面白い面白い。明らかに、スタンリー・キューブリック『2001年宇宙の旅』をギンギンに意識した作品であり、オマージュらしき箇所も散見される。要はどんな面白い作品を創ろうと、なかなか歴史を変えるような映画にはならないのだ。

そういえば、劇中で重要な役割を果たす腕時計がハミルトン。ユーザーとしてはちょっと嬉しかったりして(もっとも、見えたのは「Khaki」であり、わたしの「Jazzmaster」とは違う)。

それはともかく、マシュー・マコノヒーで宇宙といえば、ロバート・ゼメキス『コンタクト』(1997年)をどうしても思い出してしまう。ずいぶんと色男からワイルド化したものだね。


ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラウブロック@Arts for Art

2015-04-04 15:44:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

この日(2015/4/3)のプログラム第3弾は、管のトリオ。非常に天井が高い部屋で、みんなアンプなしである。

Vincent Chancey (french horn)
Josh Sinton (bcl, bs)
Ingrid Laubrock (ts)

はじめて観るシントンのプレイは独特だ。なかなか管をフルに鳴らそうとせず、キーを叩く音や、マウスピースでの爆発的な音などを活かして、じりじりと「次」なるものへとにじり寄る。ラウブロックは対照的であり、柔軟にサックスの範囲内の音を出す(前々日は、シーブルックのノイズに抗して痙攣するようなヘンな音も出していたのだが)。

そしてフレンチホルンを加えた3人のメロディーもない即興が展開されていく。これがいかに異常で愉快なことか。終わったあと、チャンシーが他の2人に「会話をありがとう」と話しかけていた。

●参照
Ideal Bread『Beating the Teens / Songs of Steve Lacy』(シントン参加)
アンドリュー・ドルーリー+ラウブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone
イングリッド・ラウブロック『Zurich Concert』
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』
トム・レイニー『Obbligato』(ラウブロック参加)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(ラウブロック参加)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces』(ラウブロック参加)


ジョー・モリス+ヤスミン・アザイエズ@Arts for Art

2015-04-04 15:23:33 | アヴァンギャルド・ジャズ

この日(2015/4/3)のArts for Artにおけるプログラム第2弾は、ずっとナマで観たかったジョー・モリス。

Joe Morris (g)
Yasmine Azaiez (vl)

モリスのギターは、休む間もなく微分的な音で時空間を埋め尽くしていく。しかもそれが全体としてマッスを構成する。この圧倒的なギタープレイを聴くと、アンソニー・ブラクストンやイーヴォ・ペレルマンといった尋常でない強度を持つプレイヤーと対峙しえたことも、納得できるというものだ。

ずっと聴いていたかったが、45分があっという間に過ぎ去った。


ダロ・ベルージ+アーロン・ジョンソン+スティーヴ・ウッド+マーク・ジョンソン@Arts for Art

2015-04-04 14:49:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

Arts for Artを再訪してみると(2015/4/3)、レコードショップでもライヴ会場でもやたらと出会ってしまう夫婦とまた再開し、顔を見合わせてハハハと笑ってしまった。何でもバルセロナで音楽の機関紙を出しているそうで、この間はイングリッド・ラブロック、トム・レイニー、クリス・デイヴィスがスペインに来てくれたんだよと愉快そうに話していた。

この日の最初のプログラムは、ドラムスのマーク・ジョンソン以外、知らないプレイヤーだ。しかもサックスのふたりは黒ずくめの衣装、片方はサングラスもかけており、ブルース・ブラザーズにしか見えない(名前もベルーシっぽい)。

Daro Behroozi (ts)
Aaron Johnson (as, ss)
Steve Wood (b)
Marc Johnson (ds)

マーク・ジョンソンは、昔、デイヴィッド・マレイと来日したときに新宿ピットインで観た記憶がある。そのときと同様にドタバタと叩くスタイルだった。

そしてサックスのふたりは、言ってみれば伝統的なフリージャズ。今となってはフリーにも分類されないかもしれない(「Scrapple from the Apple」なんかも吹いていたし)。しかし、聴いていると、妙に安心する精神状態に持っていかれるのはなぜだろう。もはや米の飯なのか。


ベッカ・スティーヴンスの話と歌@ニュー・スクール

2015-04-04 14:07:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

ベッカ・スティーヴンスが、母校のニュー・スクール(2004-07年に在籍)で無料ライヴを行うというので、行ってみた。大学の5階で待っていて、えらく可愛い学生がいるものだなと思ってよく見るとベッカだった。

ろくに告知もされていなかったのか、おそらく大学の関係者を中心に20人程度。もったいないな。

2時間ほど、会場からの質問に答えたり、ギターやバンジョーを持って歌ったり。すごくもてはやされている理由がまだピンとこないのではあるが、確かに透き通って音域が広く、良い声だ。フォーク色が入っていることもウケている理由のひとつに違いない。

質疑応答は、たとえば。

Q. ビジネスとして歌うことについてどうか。
A. 凄くストレスがあってなかなか大変。

Q. 声をどうやって調整しているのか。
A. 睡眠。それからハーブティーを飲んだり、ヨガをやったり、入念にウォームアップしたり。

Q. 1日をどう過ごしているのか。
A. 作曲と、パフォーマンスと、人間らしくあることとをバランスを取って。

Q. アンブローズ・アキンムシーレ『The Imagined Savior is Far Easier to Paint』に参加したときはどうだった。
A. リハーサルをしているときにピアノを弾いたら、アンブローズの感覚にあって、それで創り上げていった。

Q. どんな子どもだったのか。
A. 親も音楽をやっていて、「ファミリー・バンド」としていろいろなところで歌った。(ここで、その時の録音を会場で流し大爆笑)

何だか真面目なイマドキの人なのだった。こんど来日するときこそ観に行こう。


トム・ハレル@Village Vanguard

2015-04-03 16:09:52 | アヴァンギャルド・ジャズ

次にVillage Vanguardに移動したところ(2015/4/2)、22時の開場の40分前だというのに既に列が出来ていた。トム・ハレル、凄い注目ぶりである(結局この回はソールドアウトとなった)。というのも、アンブローズ・アキンムシーレとのツイントランペットという仰天する組み合わせだからに違いない。この新グループは「Something Gold, Something Blue」と名づけられている。

しかも、運よくふたりのラッパの中まで見える最前列に座ることができた。

Tom Harrell (tp, flh)
Ambrose Akinmusire (tp)
Charles Altura (g)
Ugonna Okegwo (b)
Johnathan Blake (ds)

アキンムシーレのトランペットはじつに輝かしいもので、ダイヤモンドが飛び出してくるようだった。理知的であり、ソロのイメージがこんこんと溢れ出るように見えた。音も非常に多彩であり、キレもあり、ソロの終わりは潔い。誰もがソロの間と後に感嘆の溜息をついていたに違いない。

前日にThe Stone開場を待っている間、隣にいたポーランド人の女の子と話していたところ、既に彼氏に無理やり連れていかれたとのこと。彼女は、アキンムシーレの創り出す雰囲気がとても良かったと言った。

しかし、ハレルのソロはさらに別次元だった(本当)。震える手で、こもったような音を発しており、それは病のためかどうかわからないのだが、素晴らしく人間的なものだった。まるで雲の中で、帯電したイオンの群れが次々に形を成すようだった。そして、ふわりと小節の途中から入って出ていく独特のフレージング。どれだけの人がこの凄みと底無しの深さを体感したのだろう?気のせいか、アキンムシーレがハレルのソロを聴いて涙ぐんでいるように見えた。

最後は、意表をついたスタンダード曲「There Will Never Be Another You」。

この新グループでの録音はなされるのだろうか。一刻も早く出してほしい。

●参照
トム・ハレル『Trip』
トム・ハレル『Colors of a Dream』
アンブローズ・アキンムシーレ『The Imagined Savior is Far Easier to Paint』
アンブローズ・アキンムシーレ『Prelude』
ヴィジェイ・アイヤー『In What Language?』(アキンムシーレ参加)


ランディ・ウェストン African Rhythms Sextet @Jazz Standard

2015-04-03 15:38:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

Jazz Standardにて、ランディ・ウェストンのAfrican Rhythms Sextetを観る(2015/4/2)。ウェストン89歳のお祝いも兼ねているようだ。

目玉は、われらがビリー・ハーパーである(実はわたしのアイドルだった)。

Billy Harper (ts)
TK Blue (as, fl)
Randy Weston (p)
Alex Blake (b)
Neil Clarke (perc)
Lewis Nash (ds)

ランディ・ウェストンがずっと昔から取り組んでいるアフリカ回帰をテーマとした音楽である。これまで何枚かのディスクで聴いてきた曲も、モンク曲のピアノソロもあった。これこそが聴きたいものであったはずなのだが、喜びが半分、残りの半分は肩透かしだった。

つまり、テーマを選択し押し出していくことが力として感じられるのではなく、もはや余裕を持ったエンタテインメントに他ならなくなっているということだ。アーシーなウェストンのソロは良い。アレックス・ブレイクの大暴れしてみせるベースも良い。ニール・クラークのアフリカン・パーカッションもエキサイティングだ。しかし、これは伝統芸能であった。先鋭なるものを、このように洗練されたジャズクラブにおいて期待するほうが間違いなのかもしれない。

ところで、ビリー・ハーパーのテナーの粘っこさは健在で、こればかりは無条件に嬉しかった。かつての演奏のように粘りすぎるとまでは言えなかったが。

●参照
ランディ・ウェストン+ビリー・ハーパー『The Roots of the Blues』
ランディ・ウェストンの『SAGA』
ビリー・ハーパーの新作『Blueprints of Jazz』、チャールズ・トリヴァーのビッグバンド
ビリー・ハーパーの映像