Sightsong

自縄自縛日記

スティーヴ・リーマン@Shapeshifter Lab

2015-04-01 22:45:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

ブルックリンのShapeshifter Labではスティーヴ・リーマンの演奏も観た(2015/3/31)。

Steve Lehman (as, ss)
Sam Pluta (electronics)
Dre Hocevar (ds)

これまでのディスクにおいて、リーマンの音楽とエレクトロニクスとの親和性が高いことは証明済みだが、ここでは、さらに両者が融合していた。つまり、リーマンの伴奏としてのエレクトロニクスではなく、もっと前面に出て、その磁場の中でリーマンがサックス演奏を展開するようなものである。

リーマンは、アルトでもソプラノでも、これ見よがしに独特なソロを見せつけることはなかった。理知的に断片性と連続性とを積み上げるようであり、それが大変な存在感を放っていた。狂や凶すら感じられるものだったとは言い過ぎか。

●参照
スティーヴ・リーマンのクインテットとオクテット
スティーヴ・リーマンのデュオとトリオ


クリス・ピッツィオコス@Shapeshifter Lab、Don Pedro

2015-04-01 21:43:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリス・ピッツィオコス(Chris Pitsiokos)というアルトサックス奏者が、日本でも話題になりはじめている。わたしもTwitter経由でかれの存在を知り、そのプレイをyoutubeで何本か観たのみだ。なお、名前の呼び方だが、Downtown Music Galleryのブルース氏によれば、「まずPit!だ、そのあとにSiokos」。ピット、シオコス、つまりピッツィオコス。(かれもDMGで働いている)

まずはブルックリンのShapeshifter Labに足を運ぶ(2015/3/31)。「Lester St. Lewis Large Ensemble」というグループにおいてピッツィオコスも吹くのだという。ちょうどすぐにわかる長身のピッツィオコスがいて準備中だった。

このアンサンブルは、チェロ、ヴァイオリン、ギター、フレンチホルン、チューバ、アルトサックス、フルート、手製のヘンな楽器の8人編成。全員20-30代だろうか。定められたアンサンブルというよりも、ルーズに順番と役割を決めて行う即興のようだった。それぞれの実験精神が実に愉しい演奏だったのだが、その中でも、ピッツィオコスの演奏は異質な強度を持っていた。

音量がひたすら大きいというわけではない。鳥のささやきのようでもあり、自身の内臓をすべて吐き出すようでもあり。はじめてナマで聴き、こちらの身体まで裏側にひっくり返ってしまいそうな感覚を味わった。マウスピースのくわえ方も独特で、ときに鼻の下を伸ばしたりして吹いていた。

終わってからあれこれと話をした。サックスはほぼ独学であるという(!)。とはいえ影響を受けたプレイヤーについては、思案して、アンソニー・ブラクストンとかジョン・ゾーンとか、といった答え。いや全然スタイルも違うし、自分はエヴァン・パーカーも思い出したけどと振ってみると、まあね、好きだけどね、と。

 

このあとにスティーヴ・リーマンの演奏があって、その前に、次の演奏場所への行き方を教えて先に立ち去った。やはりブルックリンにあるDon Pedroというバーで、ここから電車で1本。

着いてみるとピッツィオコスがもう準備していた。待つ間に話したところによれば、高校時代にジャズ・バンドのツアーで東京、京都、広島に行ったことがあるという。日本のプレイヤーで思い出すのは、吉田達也、灰野敬二、坂田明、メルツバウ、吉田野乃子。何でも最近ディスクユニオンにCDとレコードを取り次いだそうなので、日本で出回るのも時間の問題である。

先に3グループの演奏があって、23時半ころから、ピッツィオコスとグレッグ・フォックスとのデュオが始まった。アンサンブルでは出番も限られていたのだが、ここではずっと吹きまくり。体を前後に揺らして、さっき聴いた音よりもさらに振幅も強度も大きな音を発し続ける。バーで飲んでいた客もみんな出てきて、圧倒されて観ていた。

まだ24歳だという。

Chris Pitsiokos (as)
Greg Fox (ds)

以下、前に演奏していたグループ。


Needle Driver


Lucas Brode, Alex Cohen, John Budrow, Sam Hopkinsのグループ


フリック・コレクションのフェルメール

2015-04-01 20:37:43 | ヨーロッパ

ヨハネス・フェルメールの作品を観るため(だけ)に、フリック・コレクションに足を運んだ。文字通り、ヘンリー・クレイ・フリックという人物が住んだ邸宅において、かれのコレクションが展示されている。

3点のフェルメールとは、「中断された音楽の稽古」、「婦人と召使」、「士官と笑う娘」である。特に後者の2点が素晴らしい。「婦人と召使」は、薄暗がりの中に浮かび上がる人物のエッジが溶けるようだし、「士官と笑う娘」は、窓から差し込む光を受けた娘の描写が美しい。光の研究をしていたフェルメールならではだ。

ところで、1999年に「手紙を書く女」、2000年に「恋文」が来日し足を運んで以来、「真珠の耳飾りの少女」も「牛乳を注ぐ女」も見逃している。いまはルーヴルで観た「天文学者」が来日中、また観に行こうかな。何しろ日本のフェルメール人気は大したものなので、混雑しているのかと思うと出かける気にならないのだが。


フリックのフェルメール3点

●参照
テート・モダンとソフィアのゲルハルト・リヒター


ガブリエル・フィゲロア展@エル・ムセオ・デル・バリオ

2015-04-01 20:14:56 | 中南米

NYのエル・ムセオ・デル・バリオ(El Museo Del Bario)にて、映画カメラマンのガブリエル・フィゲロアについての展示「Under the Mexican Sky」が開かれている。日本でも90年代後半に、どこかで回顧上映があったように記憶しているがどうか。

会場に入ると、いきなり三船敏郎のど迫力の顔が写し出されていて仰天。かれがメキシコ人を演じた『価値ある男』であり、フィゲロアが撮影を担当している。ピーカンであの顔であるから当然迫力も出ようというものだが、フィゲロアの一貫した撮影方針もそれに貢献していた。

つまり、ハイコントラストなフィルターワークと構成で、活劇のようにドラマチックな絵を撮ることが、フィゲロアが担当した多くの作品に見られる特徴なのだった。セルゲイ・エイゼンシュテイン『メキシコ万歳』もまさにそのような作品であり、これをこけおどしと捉えてはつまらぬことになる。

会場で示されていたのは、メキシコ革命というアイデンティティ、死を正面から凝視すること、リベラ、オロスコ、シケイロスらによる芸術運動に影響を受けたこと、など。リベラらの作品が併せて展示され、またかれが撮った映像がいろいろと上映されており、良い展示だった。


『メキシコ万歳』(右)と、フィゲロアの雲(中)


ライカIIIfあたりか?


アリ・ホーニグ@Smalls

2015-04-01 00:39:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリス・チークらのセッションが終わって、すぐ近くにあるSmallsへ移動(2015/3/30)。ちょうどアリ・ホーニグのセッションが盛り上がっているところで、ライヴハウスの中は観客で一杯だった。しばらく立ち見だったが、12時頃の休憩時間に前の席が空いた。

Ari Hoenig (ds)
Edmar Castaneda (harp)
guest: 不明 (tp)

ホーニグのドラムスはラップのしゃべりのようであり、快速で多彩だ(その一方、異次元な感覚はない)。

今回圧倒されたのが、エドマール・カスタネーダによるハープ。名前だけは聞いたことがあったものの、プレイを聴くのははじめてだ。いやもう、凄まじいテクニックである。何のためらいもなく、南米とジャズのフレーズを次々に繰り出してくる。はじめてラヴィ・シャンカールのプレイを目の当たりにしたときの衝撃を思いだした。ジャズ・ハープ奏者は何人か知られた人がいたが、ここまで自在に前面に出てきて即興を展開した人などいたのだろうか。

そのウルトラテクニックとは対照的に、この日が誕生日だったようで、みんなに声をかけられて終始ニコニコしていた。

●参照
ジャン・ミシェル・ピルク+フランソワ・ムタン+アリ・ホーニグ『Threedom』


The Bloomdaddies @55 bar

2015-04-01 00:15:44 | アヴァンギャルド・ジャズ

ダウンタウンに戻り、55 barにて、夜10時からのThe bloomdaddies。クリス・チークのテナーが目当てである。

The Bloomdaddies:
Seamus Blake (ts, EWI)
Chris Cheek (ts)
Jesse Murphy (b)
Dan Reker (ds)
Tony Mason (ds)

意外なことに、フロントのふたりともエフェクターを使いまくり。シェイマス・ブレイクなんていきなりEWIだし。

バーは大声で喋る客が多くやかましかったが、演奏もすぐに熱を帯びて大音量になってきて、そのようなノイズはかき消された。ツインドラムスはベタベタのロックビートで、これがまた愉快。そしてツインテナーも熱かった。チークの甘酸っぱいような音色もしっかり聞こえた。

終わったあとに、チークに、スティーヴ・スワロウの『Into the Woodwork』が素晴らしかったと言ったところ、カーラ・ブレイとの共演ならば、先日チャーリー・ヘイデン追悼として行ったリベレーション・ミュージック・オーケストラの演奏が、今年リリースされるはずだと教えてくれた。

●参照
クリス・チーク『Blues Cruise』
フィリップ・ル・バライレック『Involved』(クリス・チーク参加)
スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』(クリス・チーク参加)