仲里効『眼は巡歴する 沖縄とまなざしのポリティーク』(未來社、2015年)を読む。
同じ著者の『フォトネシア』に続く沖縄写真論、『オキナワ、イメージの縁』に続く沖縄映画論ということになる。
冒頭の山田實論。シベリア抑留を戦後沖縄において隠さざるを得なかったこと、それによる視線の変わりようを説いた評価は、なるほど、納得できる。しかし、返す刀で比嘉豊光による山田實への評価を酷評するやり方には異様な印象を覚える。ほとんど私怨を晴らしているようにしか見えないのだ。実際、『フォトネシア』では比嘉豊光を肯定的に評価しているにも関わらず、ここではそれ以外まったく言及していない。
それ以外には、東松照明、比嘉康雄、大城弘明、伊志嶺隆、森口豁、岡本太郎、島尾敏雄、『沖縄人類館』、台湾映画『無言の丘』などについての批評を集めている。「ヤマトンチュー」としての東松照明や森口豁の沖縄との距離感を説いた部分は、なかなか見事でもある。それ以外は敢えて言うこともない。
●参照
仲里効『フォトネシア』
仲里効『オキナワ、イメージの縁』
仲里効『悲しき亜言語帯』
『山田實が見た戦後沖縄』
平良孝七『沖縄カンカラ三線』
平敷兼七、東松照明+比嘉康雄、大友真志
『LP』の「写真家 平敷兼七 追悼」特集
比嘉豊光『赤いゴーヤー』
比嘉豊光『光るナナムイの神々』『骨の戦世』
伊志嶺隆『島の陰、光の海』
東松照明『光る風―沖縄』
「琉球絵画展」、「岡本太郎・東松照明 まなざしの向こう側」、「赤嶺正則 風景画小品展」
森口豁『沖縄 こころの軌跡 1958~1987』
森口豁『毒ガスは去ったが』、『広場の戦争展・ある「在日沖縄人」の痛恨行脚』
森口豁『アメリカ世の記憶』
森口豁『ひめゆり戦史』、『空白の戦史』
森口カフェ 沖縄の十八歳
久高島の映像(6) 『乾いた沖縄』
石川真生『日の丸を視る目』、『FENCES, OKINAWA』、『港町エレジー』
石川真生『Laugh it off !』、山本英夫『沖縄・辺野古”この海と生きる”』
豊里友行『沖縄1999-2010』、比嘉康雄、東松照明
豊里友行『沖縄1999-2010 改訂増版』
『LP』の豊里友行特集
石川文洋講演会「私の見た、沖縄・米軍基地そしてベトナム」
石川竜一、サクガワサトル
大隈講堂での『人類館』
沖縄・プリズム1872-2008
高良勉『魂振り』
鹿野政直『沖縄の戦後思想を考える』
岡本恵徳『「ヤポネシア論」の輪郭 島尾敏雄のまなざし』
島尾敏雄対談集『ヤポネシア考』 憧憬と妄想