Sightsong

自縄自縛日記

ヨニ・クレッツマー・トリオ@Children's Magical Garden

2017-09-11 23:53:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

Arts for Artの「In Gardens 2017」の第6弾は、ヨニ・クレッツマー・トリオ(2017/9/10)。

クレッツマーのCDのレビューや翻訳記事を「JazzTokyo」誌に書いたりして、やり取りは何度もしていたものの、直接会うのははじめてである。もっと重厚で怖い感じを想像していたら、スリムで人当たりもいい好青年。生まれたばかりの子どもを連れてきていてニコニコだった。

ベースは告知されていたシェイナ・ダルバーガーではなく、ショーン・コンリーだった。

Yoni Kretzmer (ts)
Sean Conly (b)
JP Carletti (ds)

驚いたことに、クレッツマーはかなり野性的な吹き方をする。前傾姿勢でテナーを抱え持ち、前後に大きく動きながらブロウする。その音は音源で聴いたとおり、さまざまな情や濁りが混じっており、深い良い音だった。

そしてショーン・コンリーのベースは不穏な音も交えて、それがクレッツマーとのインタラクションを生みだしていた。これがダルバーガーであればまた違ったサウンドになったに違いない。最後の「Song for Che」(チャーリー・ヘイデン)はとても良かった。

クレッツマーからは、この日の夜にウィリアムスバーグでのライヴがあると誘われたのだが、残念ながら不都合。またいつかどこかで観たい。新しいCDを出す予定もあるそうだ。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●ヨニ・クレッツマー
ヨニ・クレッツマー『Five』、+アジェミアン+シェイ『Until Your Throat Is Dry』(JazzTokyo)(2015-16年)
ヨニ・クレッツマー『Book II』(2014年)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/6/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/8/30)


ジェシカ・ジョーンズ・トリオ@Children's Magical Garden

2017-09-11 23:40:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

Arts for Artの「In Gardens 2017」の第5弾は、ジェシカ・ジョーンズ・トリオ(2017/9/10)。

Jesica Jones (ts)
Tony Jones (ts)
Bob Stewart (tuba)

確か事前の告知では、チューバがダン・ペックだったような気がするのだが、現れたのはボブ・スチュワート。20世紀に、レスター・ボウイ・ブラス・ファンタジーのBN東京公演で、ボウイに「He never stops!」と紹介されていた記憶がある。

最初は調子を合わせるようにゆるりと始めた。苛烈な要素はなく、リラックスして聴いていたが、実はそれが持ち味だった。サックスがふわふわと絡み合い、そこに「never stops」ではないが下から気持ちよくチューバが持ち上げ、サウンドをリズミカルに浮揚させた。ドン・チェリーの「Art Deco」やセロニアス・モンクの「Evidence」なんかを演奏した。あとで調べると、ジェシカ・ジョーンズにはドン・チェリーとの共演歴もあった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●ボブ・スチュワート
アーサー・ブライス『Hipmotism』(1991年)


ジェイソン・カオ・ファンの「Human Rights Trio」@Children's Magical Garden

2017-09-11 22:59:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

Arts for Artの「In Gardens 2017」の第4弾は、ジェイソン・カオ・ファンの「Human Rights Trio」(2017/9/10)。

ホイットニー美術館でのアート・リンゼイのイベントが押したため間に合わないかなと思っていたが、こちらも少し遅れていて、最後のあたりを観ることができた。

Jason Kao Hwang (vln)
Andrew Drury (ds)
Ken Filiano (b)

そんなわけで時間にして15分くらいだが、面白さがあった。

ジェイソン・カオ・ファンは中国系アメリカ人で、ヘンリー・スレッギルの『Too Much Sugr for a Dime』や『Carry the Day』でも演奏している。この人のサウンドは愉しさを出したもののようで、リラックスできた。

そして音のまんまの音を出すアンドリュー・ドルーリー。2015年に観たときには、直前にチャールズ・ゲイルとの共演がなくなり本人はがっかりしていた。終わったあとにそんな話をしようかと思ったがくだらないのでやめた。

Nikon P7800

●アンドリュー・ドルーリー
アンドリュー・ドルーリー+ラブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
アンドリュー・ドルーリー『Content Provider』(2014年)


アート・リンゼイ+グスタヴォ・ヂ・ダルヴァ@ホイットニー美術館

2017-09-11 22:35:51 | 中南米

ホイットニー美術館でブラジルのエリオ・オイチシカ回顧展が開かれている。それと連動させて、アート・リンゼイが「Myth Astray」という企画でトークショーやライヴを仕掛けており、足を運んだ(2017/9/10)。これが美術展のチケットで入れるのだからなかなかだ。

Arto Lindsay (g, vo)
Gusavo di Dalva (perc, vo)

定刻の13時になっても適当に準備などしていて、人もまばらである。スタジオの中にはウレタンフォームを折り曲げたものがいくつも置かれていて、みんなそこに座ってだらだらと待っている。

20分くらい経って、おもむろにアート・リンゼイとグスタヴォ・ヂ・ダルヴァが現れ、強烈な逆光のなかで演奏を始めた。

ダルヴァもまたブラジルのパーカッショニスト。叩き歌い、自由な雰囲気が場を支配する。

それに対し、今に始まったことではないが、アート・リンゼイは弱弱しく、ヴァルネラブルな印象があり、しかしそれとは対照的なノイズギターを弾いた。この相反する要素がリンゼイの魅力に違いない。沢山のスピーカーから声と音が遅れてやってきて、強烈で普遍的な懐かしさのようなものが訪れた。

Nikon P7800


ベン・モンダー・トリオ@Cornelia Street Cafe

2017-09-11 21:30:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

濃密なNY初日の最後に、Cornelia Street Cafeにてベン・モンダー・トリオ(2017/9/9、2nd)。

Ben Monder (g)
Tony Malaby (ts, ss)
Andrew Cyrille (ds)

どこからみても凄い組み合わせのトリオなのだが、演奏は名前によるフェティシズムを遥かに凌駕していた。

全員が同時にゆるりと始めた。ベン・モンダーのギターはバッキングでもあり前面にも出てくる。ときにオーケストラ的にもなり、そんなときは音がとても大きいのだが、他のふたりが音量で消されることはない。

アンドリュー・シリルのドラミングを3年前にVillage Vanguardで観たときには、武術の達人のような半端ないキレに感激した。この日もそれは健在としか言いようがなかった。スティックの自重で叩いているように見えるほど無駄がなく、シンバルを叩く音の綺麗さは特筆ものである。まさに口を開けてずっと眼と耳で追いかけてしまうドラミングなのだ。

モンダーがカントリー風のコードから始め音を積み重ねてゆくと、トニー・マラビーのテナーがギター化しハウルとも錯覚させる音を発した。マラビーはときにテナーのマウスピースを深くくわえグロウルするような深い音も出し、またそれがソプラノであると敢えて周波数をチャルメラのようによれさせもするのだった。この人のとらえきれなさと深さといったらない。

もちろんシリルは淡々と叩いているだけではなく、激しくスティックで強打したり、タイコを下から手で叩いたりと(これは隣に居合わせたヘンリー・グライムスの奥様のマーガレット・デイヴィスさんがほらほら見なさいと突っついてくれた)、過激なふたりに介入し通じ合う。

バンドの音は常にピークであり、連続的であった。最初の演奏が終わったとき、多くの人の口から自然な歓声が漏れた。あまりにも素晴らしかった。

次の曲は、マラビーがソプラノを共鳴させず息遣いだけを増幅させ、モンダーがアンビエントにそれを包む。シリルは最初はブラシ1本、やがて2本。これが重層的になってきて、高音でギターとソプラノが重なるところなんて悦楽的でもあった。シリルのブラッシュワークも見事。

3曲目はシリルのスティックさばき、その中にモンダーとマラビーが相次いでぐきゃりと介入してくる。テナーが主導するピーク、ギター1本のオーケストラサウンド、激しいシリルのドラミング、これらが大きな響きをさらに大きくしていった。一転し、静かになり、アンビエント的なギターの中を、マラビーがテナーで「Moon River」ふうの小唄を吹いた。

ところで、演奏の前にヘンリー・グライムスが隣の席に座ろうとしていて仰天した。奥様のマーガレットさんと、もう10年前の「KAIBUTSU LIVEs!」(2007年)の話なんかをした。韓国での演奏は故あってイマイチだったというのだが、日本の演奏はとても印象的だったようで、原田依幸、トリスタン・ホンジンガー、ルイス・モホロと名前を挙げては愉快そうだった。またお弟子さんからはCDをいただいた。

(マーガレットさんが紹介してくれて)アンドリュー・シリルと話をした。シリルは、また日本に行きたいと言った。高橋悠治、(お互いに名前が出てこなかったが)三宅榛名、富樫雅彦との共演を懐かしそうに口にした。悠雅彦さんは元気かとも言った。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●ベン・モンダー
マリア・シュナイダー・オーケストラ@ブルーノート東京(2017年)
ベン・モンダー『Amorphae』(2010、13年)
ビル・マッケンリー+アンドリュー・シリル@Village Vanguard(2014年)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)
ビル・マッケンリー『Ghosts of the Sun』(2006年)

●トニー・マラビー
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas V』(JazzTokyo)(2016年)
トニー・マラビー+マット・マネリ+ダニエル・レヴィン『New Artifacts』(2015年)
トニー・マラビー『Incantations』(2015年)
チャーリー・ヘイデンLMO『Time/Life』(2011、15年)
アイヴィン・オプスヴィーク Overseas@Seeds(2015年)
ハリス・アイゼンスタット『Old Growth Forest』(2015年)
ジェシ・スタッケン『Helleborus』(2014年)
クリス・ライトキャップ『Epicenter』(2013年)
トニー・マラビー『Scorpion Eater』、ユメール+キューン+マラビー『Full Contact』(2013、08年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、13年)
リチャード・ボネ+トニー・マラビー+アントニン・レイヨン+トム・レイニー『Warrior』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas IV』(2011年)
ポール・モチアンのトリオ(2009年)
ダニエル・ユメール+トニー・マラビー+ブルーノ・シュヴィヨン『pas de dense』(2009年)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas III』(2007年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』(2007年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas II』(2004年) 

●アンドリュー・シリル
トリオ3@Village Vanguard(2015年)
アンドリュー・シリル『The Declaration of Musical Independence』(2014年)
アンドリュー・シリル+ビル・マッケンリー『Proximity』(2014年)
ビル・マッケンリー+アンドリュー・シリル@Village Vanguard(2014年)
ベン・モンダー『Amorphae』(2010、13年)
トリオ3+ジェイソン・モラン『Refraction - Breakin' Glass』(2012年)
アンドリュー・シリル『Duology』(2011年)
US FREE 『Fish Stories』(2006年)
アンドリュー・シリル+グレッグ・オズビー『Low Blue Flame』(2005年)
バーグマン+ブロッツマン+シリル『Exhilaration』(1996年)
ビリー・バング+サン・ラ『A Tribute to Stuff Smith』(1992年)
1987年のチャールズ・ブラッキーン(1987年)
アンドリュー・シリル『Special People』(1980年)
アンドリュー・シリル『What About?』(1969年)