トニー・マラビーがベース、ドラムスと組んだトリオによる作品『Adobe』(JPR Productions、2003年)、『Somos Agua』(Clean Feed、2013年)を、繰り返し聴いている。
『Adobe』では、ポール・モチアンの伸縮するドラムスに、また、『Somos Agua』では、ナシート・ウェイツのヴァイタルなドラムスとウィリアム・パーカーの文鎮のように下支えするベースとに包まれて、マラビーが妙なテナーソロを展開する。
敢えて「朗々と吹く」という幹を取っ払ったような感覚である。そのイメージを続けて夢想するなら、かれの音は森のさまざまな存在を収集したようなものに聞える。葉叢がざわめいたり、鳥や虫が居場所を変えてみたり、なにものかが踏み入って口笛を吹いてみたり。そんなわけで、着地点を見出せないような不可思議な音楽なのであり、聴く方もどこかをあてもなく彷徨する。10年間を挟んだ演奏だが、その個性はより強まっているように思える。
Tony Malaby (ts, ss)
Drew Gress (b)
Paul Motian (ds)
Tony Malaby (ss, ts)
Willam Parker (b)
Nasheet Waits (ds)