Sightsong

自縄自縛日記

ティム・バーン Snakeoil@Jazz Standard

2017-09-14 20:35:47 | アヴァンギャルド・ジャズ

Jazz Standardに足を運び、ティム・バーンのSnakeoil(2017/9/13 1st)。18:15開場のところ18時に行くと2番目だった。

Tim Berne (as)
Oscar Noriega (cl, bcl)
Matt Mitchell (p)
Ches Smith (ds, vib, perc)

ギターのライアン・フェレイラ抜きのスネークオイルだが、十分すぎるほどのスーパーグループ。ティム・バーンは相変わらずむさ苦しく飄々とギャグをかましていて、いきなりツボを突いてくる。

手でタイコを叩き始めるチェス・スミス。ここにティム・バーンのアルトとオスカー・ノリエガのクラとがユニゾンで入ってくる。ユニゾンとは言っても音色勝負のようなところもあるし、緊密な自由さをもって離れていったりもする。マット・ミッチェルのピアノとノリエガのクラとが甲高い音でシンクロし、また、ピアノとドラムスとが隘路から音を散らす。スミスは弓でヴァイブを擦る。バスクラに持ち替えたノリエガとミッチェルとが単調なリズムを刻み始めるのだが、ミッチェルは、そこから重厚な和音を活かしたソロに移行した。

バーンの、長いアルト。もうこれを聴くだけで快感中枢を刺激される。やがてバスクラとピアノが入り三つどもえ、そしてヴァイブが入り四体問題へ。

2曲目は「Surface Noise」だと言った。スミスはヴァイブとドラムスでミッチェルのピアノと会話をするようだ。しばらくしてバーンが介入し、ノリエガのバスクラとともにサウンドを主導する。スミスはヴァイブで激しく暴れもした。やがてバスクラとピアノ、そしてバスクラだけが残され、執拗に同じ旋律を繰り返す。ここでまた、落ち着かせるようにアルトが入り、ピアノは思索的な旋律。しかし、収束に向けて萎んでいくのではなく、全員で高みへと昇っていった。最終的にテーマに収斂したときの快感と言ったらない。

3曲目、まずは、アルトとバスクラとがお互いに補足し絡みあう。ピアノが低音から入ってきて、スミスがブラシから初めて激しくドラムスを叩いた。残るのはピアノとドラムス。ミッチェルがコアをもとに執拗に発展形の数々を提示する。

ここでスミスがドラムスからヴァイブに移行し、音風景が転換した。クラが伴奏のように加わったが、またスミスだけ残り、マレットで鐘やヴァイブの丸い音色を発しつつ、シンバルの歪んだ音も出す。少々の間を置いて、全員が介入、そして前の曲と同じく、突然終わった。

4曲目、全員のユニゾンから、バスクラのソロ。バスクラとピアノとの対峙もある。アルトとヴァイブとが戻ってきて、不穏なうなりのようなものを創出した。ここで妖しい光を放つピアノとヴァイブ、その中で粘っこく吹くアルトが実に気持ちいい。バーンのブロウは熱を帯びてきて、やがて、奇妙な希望を感じさせるアンサンブルで終わった。

それにしても、聴いている間ずっと、バーンのアルトによって完全に武装解除され、腹を上に向けた犬のようになってしまった。粘っこく、エンジンが強力で、猛禽類のように力強く旋律とともに突き進む。ミッチェルの独創的なピアノも素晴らしいし、ドラムスとヴァイブを同列のものとして扱うスミスの音の拡がりにも魅了された。

Nikon P7800

●ティム・バーン
イングリッド・ラブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
イングリッド・ラブロック『ubatuba』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)
ティム・バーン『The Sublime and. Science Fiction Live』(2003年)
ティム・バーン+マルク・デュクレ+トム・レイニー『Big Satan』(1996年)
ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』(1988年)

●オスカー・ノリエガ
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
エド・シュラー『The Force』(1994年)

●チェス・スミス
チェス・スミス『The Bell』(2015年)
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年) 

●マット・ミッチェル
マット・ミッチェル『Vista Accumulation』(2015年)
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
マリオ・パヴォーン『Blue Dialect』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年) 


グッゲンハイム美術館のマウリツィオ・カタラン「America」、神秘的象徴主義、ブランクーシ

2017-09-14 19:25:24 | アート・映画

グッゲンハイム美術館を再訪(2017/9/13)。中は工事中でスパイラルの坂を下から昇ることはできない。また展示も準備中のものが多かった。

■ マウリツィオ・カタラン「America」

とりあえず目玉を観ようと5階までエレベーターで昇ると、何やら行列。それはマウリツィオ・カタランのレディメイド作品「America」に向かっていた。行列の人数は少ないがほとんど動かない。というのも、この作品は金で作られた便器なのであり、何をしてもよいというコンセプト(便器を持ち上げる以外は)。ひとりひとりがトイレに入って何かをするので時間がかかる。

1時間待ってようやくわたしの番。別に用を足したいでもなし、無理に何かをするでもなし、呆然と眺めて水だけ流した。それも含めて「America」なのかどうか考える気もないのだった。そういえばこっちで野菜を食べていないせいか不規則なせいか便秘だと気が付いた。

■ 神秘的象徴主義

「Mystical Symbolism: The Salon de la Rose+Croix in Paris, 1892–1897」と題された展示。「Rose+Croix」とは薔薇十字団。作家ジュゼファン・ぺラダンはその思想に基づき毎年展覧会を開いていた。

とは言っても、薔薇十字団については、ウンベルト・エーコ『フーコーの振り子』を読んだときに適当に調べた程度の知識しかない。象徴主義だって自分とは無縁の世界。J・K・ユイスマンス『さかしま』(1884年)だって、ああ変態だなという・・・。

そんなわけで知的にも美的にもいまいち惹かれず観たのだが、唯一面白いなと思った作品は、アルベルト・トラックセルの「The Real Celebrations」連作の1枚。なんでもこの人は「建築界のエドガー・アラン・ポー」と称されたそうである。ぺラダンが求めるようなものは、このようなイカレポンチの宮殿だった。

■ ブランクーシ

コンスタンティン・ブランクーシの作品いくつか。なにかが憑依したように丸っこいものばかりを創り続けた人であり、わりと共感できるのだ。ポンピドゥー・センターにあったアトリエを観たときにはかなり夢中になってしまった。

今回の中では「The Miracle (Seal [I])」がとびきり愉しい。石灰石ベースの大理石仕上げ。触ったら気持ちいいだろうな。しかし、どうしても『ウルトラQ』のナメゴンを思い出してしまう。


エイブラハム・バートン・カルテットとアフターアワーズ・ジャムセッション@Smalls

2017-09-14 00:09:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

お高くとまったハコで中身の薄いジャズを聴いてしまい、また熱くならないと気分がすぐれない。そんなわけで、またダウンタウンに戻り、1時にSmallsに入った(2017/9/13)。まだエイブラハム・バートン・カルテットが演奏している。これで10ドル。

Abraham Burton (ts)
David Bryant (p)
John Hebert (b)
Eric McPherson (ds)

この最高のメンバー。Smallsの喧騒の中で聴く熱いどジャズ、これである。

とは言えバートンは熱さ一本やりではなく(それがかれの魅力なのだが)、しっとりしたバラードも吹いた。デイヴィッド・ブライアントは耳が吸い寄せられる煌びやかなソロを弾いた。エリック・マクファーソンのドラムソロもまた見事。30分ほどしか聴けなかったが大満足。

ブライアントについては以前にレイモンド・マクモーリンのライヴレビューを書いたこともあり、終わった後に少し話した。来年の2月か3月にまた日本に行くかもしれないとのこと、また観に行きたい。Body & Soulかな。

この後ジャムセッションとなり、入れ替わりたちかわりミュージシャンがジャズスタンダードを演奏した。

そのような場だからイマイチな演奏もあるのだが、堂々として目が醒めるようなアルトを吹いた男がいて、次にSmallsに来たときに名前付きのステージに立っていたら愉快だなと想像した。1時間ほどいて地下鉄で帰った。

Nikon P7800

●エイブラハム・バートン
ルイ・ヘイズ『Serenade for Horace』(-2017年)
ジョシュ・エヴァンス@Smalls(2015年)
ルイ・ヘイズ@COTTON CLUB(2015年)
ルシアン・バン『Songs From Afar』(2014年)

ジョシュ・エヴァンス『Hope and Despair』(2014年)
ルイ・ヘイズ『Return of the Jazz Communicators』(2013年)

●デイヴィッド・ブライアント
ルイ・ヘイズ『Serenade for Horace』(-2017年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
レイモンド・マクモーリン『RayMack』、ジョシュ・エヴァンス『Portrait』(2011、12年)

●ジョン・エイベア
ジョナサン・フィンレイソン『Moving Still』
(2016年)
ジョン・エイベア@The Cornelia Street Cafe(2015年)
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
ルシアン・バン『Songs From Afar』(2014年)

イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』
(2014年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
Book of Three 『Continuum (2012)』(2012年)

●エリック・マクファーソン
ジョン・エイベア@The Cornelia Street Cafe(2015年)
ジョシュ・エヴァンス@Smalls(2015年)
ジョシュ・エヴァンス『Hope and Despair』(2014年)
ルシアン・バン『Songs From Afar』(2014年)