Sightsong

自縄自縛日記

トム・レイニー・トリオ@The Jazz Gallery

2017-09-10 22:57:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

The Jazz Galleryにてトム・レイニー・トリオ(2017/9/9)。

Tom Rainey (ds)
Ingrid Laubrock (ts, ss)
Mary Halvorson (g)

シンバルを斜めに斬るようなトム・レイニーの動きからはじまり、イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソンのふたりが両翼からサウンドを厚塗りしてゆく。それはレイニーがマレットを持ったところから前進を始め、ハルヴァーソンのギターはベースのように駆動する。ソロになったときの彼女の常ならぬ時空間の歪ませぶりといったら筆舌に尽くしがたい。ルーパーも使い、何が何やらわからずつい笑ってしまう。

ラウブロックのテナーは相変わらず豊潤であり、ハウリングのような効果も出し、それをハルヴァーソンがシンクロさせる。レイニーのドラムスを観るのははじめてではないのだが、光る撒き菱のような印象とは違って、ここまで力強いものだったかと驚いた。まるで斧のような瞬間も少なくない。

2曲目で変態度が増した。ギターだと思ったらレイニーが手でタイコを擦っており、それがテナーと同調した。ギターは一転してコードを弾く。ラウブロックの地を這うような低音。そしてハルヴァーソンは左手で弦を抑え右手で鍵盤を速弾きするようにしたり激しくスライドしたりとわけがわからない。

3曲目はテナーとドラムスとが中心となってはじまり、やがて、ラウブロックが「Donna Lee」のようなバップ曲的な旋律を吹き、愉快な意外感に襲われる。それもダークな。待って満を持して入ったハルヴァーソンの指はまるでジャコパスであり、彼女もダークなバップを執拗に繰り返す。まるで悪夢だ。互いの役割が固定されず入れ替わり、魔術のようだった。

4曲目、遊ぶような、きらめくような、レイニーのスティックさばき(これが今までの印象だった)。それとともに、ラウブロックが持ち替えたソプラノを吹く。はじめは一筆書きのように長く、やがてじわじわと細分化されていく。ハルヴァーソンは丁寧にコードをのせるようでいて、そこは当代一の変態、きらびやかに歪ませてゆき、こちらは歓喜で顔が歪んだ。

アンサンブルというにはあまりにも個人的であり過ぎて、しかもサウンドが一体化していた。完璧だった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●トム・レイニー
イングリッド・ラウブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
イングリッド・ラウブロック『ubatuba』(2014年)
イングリッド・ラウブロック+トム・レイニー『Buoyancy』(2014年)
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
トム・レイニー『Obbligato』(2013年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、2012年)
イングリッド・ラウブロック『Zurich Concert』(2011年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)
ティム・バーン『The Sublime and. Science Fiction Live』(2003年)
ティム・バーン+マルク・デュクレ+トム・レイニー『Big Satan』(1996年)

●イングリッド・ラウブロック
イングリッド・ラウブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラウブロック@Arts for Art(2015年)
アンドリュー・ドルーリー+ラウブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
イングリッド・ラウブロック+トム・レイニー『Buoyancy』(2014年)
イングリッド・ラウブロック『ubatuba』(2014年)
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces』(2014年)
アンドリュー・ドルーリー『Content Provider』(2014年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
トム・レイニー『Obbligato』(2013年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、2012年)
イングリッド・ラウブロック『Who Is It?』(1997年)

●メアリー・ハルヴァーソン
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
『Illegal Crowns』(2014年)
トマ・フジワラ+ベン・ゴールドバーグ+メアリー・ハルヴァーソン『The Out Louds』(2014年)
メアリー・ハルヴァーソン『Meltframe』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
『Plymouth』(2014年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
イングリッド・ラウブロック『Zurich Concert』(2011年)
メアリー・ハルヴァーソン『Thumbscrew』(2013年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ステファン・クランプ+メアリー・ハルヴァーソン『Super Eight』(2011年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
アンソニー・ブラクストン『Trio (Victoriaville) 2007』、『Quartet (Mestre) 2008』(2007、08年)


スティーヴ・スウェル・トリオ@Children's Magical Garden

2017-09-10 22:20:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

Arts for Artの「In Gardens 2017」の第3弾は、スティーヴ・スウェルのトリオ(2017/9/9)。

Steve Swell (tb, recorder)
TA Thompson (ds)
William Parker (b)
Guest:
Dave Sewelson (bs)
Unknown (cl)
Unknown boy (g)
Unknown boy (vln)

先のクーパー・ムーアにも、デイヴ・セウェルソンにも、公園にいるスウェルに対して何やらツッコミを入れていたが、そういうキャラなのか。

スウェルのトロンボーンは、蛇のように長く、とにかくエネルギーを楽器に込めるのだという気概に満ちていて素晴らしい。身体を折り曲げ、トロンボーンを上下に振りもし、でかくなめらかな音とともに念が放出された。

そしてふたたび巨匠ウィリアム・パーカーの登場、待ってましたのコントラバス。それは決して轟音で地響きするようなものではなく、強くもあり柔らかくもあり、やはり聴き惚れてしまう。何となく、パーカーはそのイメージとは異なり、自分をことさらに前面に出す人ではないのではないか。

ところで、演奏の途中で、楽器を持った少年ふたりが公園に入ってきた。小さいほうは照れて出なかったが、大きい少年がヴァイオリンを持って颯爽と加わり、ごく短いソロを弾いた。スウェルたちはそのフレーズを発展させた。そして休憩時間に準備し、「Purple Haze」なんかを爪弾いていた少年はもっとがっちり加わり、スウェルがアンプの調整をしていた。映画やゴシップのスパルタとえらい違いであり、いいものを見せてもらったような気になった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●スティーヴ・スウェル
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』
(2016年)
ヨニ・クレッツマー『Five』、+アジェミアン+シェイ『Until Your Throat Is Dry』(JazzTokyo)(2015, 16年)
ウィリアム・パーカー『Essence of Ellington / Live in Milano』(2012年)

●ウィリアム・パーカー
ウィリアム・パーカー+クーパー・ムーア@Children's Magical Garden(2017年)
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』(2016年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
イロウピング・ウィズ・ザ・サン『Counteract This Turmoil Like Trees And Birds』(2015年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、2013年)
ウィリアム・パーカー『Essence of Ellington / Live in Milano』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』(2010年)
DJスプーキー+マシュー・シップの映像(2009年)
アンダース・ガーノルド『Live at Glenn Miller Cafe』(2008年)
ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』(2008年)
ウィリアム・パーカー『Alphaville Suite』(2007年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2006、2003年)
ウィリアム・パーカー、オルイェミ・トーマス、ジョー・マクフィーら『Spiritworld』(2005年)
ウィリアム・パーカー『Luc's Lantern』(2005年)
By Any Means『Live at Crescendo』、チャールズ・ゲイル『Kingdom Come』(1994、2007年)
ウィリアム・パーカーのベースの多様な色(1994、2004年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)
ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(2001年)
ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』(2000年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2000年)
ザ・フィール・トリオ『Looking (Berlin Version)』
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
ウェイン・ホーヴィッツ+ブッチ・モリス+ウィリアム・パーカー『Some Order, Long Understood』(1982年)
『生活向上委員会ニューヨーク支部』(1975年)


ザ・デイヴス@Children's Magical Garden

2017-09-10 21:57:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

Arts for Artの「In Gardens 2017」の第2弾は「ザ・デイヴス」。

The Daves:
Dave Sewelson (bs)
Dave Hofstra (b)
Special guest:
Bobby Kapp (ds, harmonica)

デイヴ・セウェルソンがバリサクを吹き、デイヴ・ホフスタがベースを弾く。これがザ・デイヴス。

はじめて聴くセウェルソンのバリサクは意外に軽やかで良い。いきなり爆笑世界に突入し、先のライヴをネタに、「What's the matter with Cooper-Moore?」とぶち上げ、「I don't know (what to do)」を観客との間でコール・アンド・レスポンス。このおそるべき地元密着型は何か。そのうちに観客が連れてきていた白い大きな犬がバリサクに反応してわんわんと吠えはじめ、犬とのコール・アンド・レスポンスになった。

ところでスペシャルゲストだと言われてやっと気が付いたのだが、ボビー・カップはノア・ハワードと何枚も共演しているドラマーだった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4


ウィリアム・パーカー+クーパー・ムーア@Children's Magical Garden

2017-09-10 21:20:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

2年ぶりのニューヨーク。去年はアメリカの法制度が改悪され、わたしはイランに入国したので、ESTAを取ってヴィザ無しでアメリカに入ることができなくなった。それに体調も崩してしまっていた。気を取り直して、今年、短期の非移民ヴィザ(10年間有効)を取得した。

とは言え入国時にどうのという話を聞いたこともあり、微妙に緊張していたが、何のことはなかった。

宿に荷物を置き、すぐに、Children's Magical Gardenに向かった。Arts for Art(Vision Festivalを主催する団体)が公園シリーズを続けており、以前にもここでライヴを観た。この日いきなりの目玉は、クーパー・ムーアとウィリアム・パーカーとのデュオである。

Cooper-Moore (perc, fl, 1-string instrument)
William Parker (6-string instrument and 2-string instrument)

準備かと思っていたらそのまま演奏が始まった。最初はウィリアム・パーカーは大きな丸い胴を持つ6弦の楽器を操る。そしてクーパー・ムーアは丸く張られたドラムのヘッドだけを2枚とスティックを手に持ち、1枚のシンバルとともに、巧妙なリズムを繰り出してゆく。ときに小さな横笛も吹く。

やがてクーパー・ムーアは自作なのか1弦だけが張られた奇妙な楽器を取り出した。片方は口に付け、口琴のような音までも出る。一方のパーカーは二弦の楽器に持ち替えた。6弦もそうだが、これも不協和音が出される。それというのも、先には金属板が付けられ、その端にはいくつもの金属片がぶら下げられているからなのだった。

この、素朴でも巧妙でもあるデュオが一転した。クーパー・ムーアが、「I don't smoke any more...」と始め、そして、「What's the matter with me?」というフレーズをモチーフにして、コミカルなかけあいを展開した。観客も愉しく応じる。パーカーさえ、「What's the matter with him?」なんて呟いたりして。

この愉快なデュオは一旦は終わったのだが、遊びにきていた子どもたち3人にパーカッションを持たせ(公園の名前の通り、そのような場である)、再び、かれらふたりがサウンドを創り出していった。

ここで世話係を務めるトッド・ニコルソンさんは元気で、いまは忙しいが来年にでも日本に行けるかなどうかな、と話した。「Jazz Right Now」を展開するシスコ・ブラッドリーさんはお子さんを連れて遊びに来ていた。Talibam!のキーボード奏者マット・モッテルとはSNSでしかやり取りしたことがなかったのだが、今回いろいろと話しこむことができた(日本にも何度も来ていて詳しい)。そしてウィリアム・パーカーにサインをいただきながらエヴァン・パーカーらとの来日の話をしていると、隣にいたマシュー・シップをいきなり紹介してくれた。NYだからか凄く強い磁場である。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●ウィリアム・パーカー
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』(2016年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
イロウピング・ウィズ・ザ・サン『Counteract This Turmoil Like Trees And Birds』(2015年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、2013年)
ウィリアム・パーカー『Essence of Ellington / Live in Milano』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』(2010年)
DJスプーキー+マシュー・シップの映像(2009年)
アンダース・ガーノルド『Live at Glenn Miller Cafe』(2008年)
ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』(2008年)
ウィリアム・パーカー『Alphaville Suite』(2007年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2006、2003年)
ウィリアム・パーカー、オルイェミ・トーマス、ジョー・マクフィーら『Spiritworld』(2005年)
ウィリアム・パーカー『Luc's Lantern』(2005年)
By Any Means『Live at Crescendo』、チャールズ・ゲイル『Kingdom Come』(1994、2007年)
ウィリアム・パーカーのベースの多様な色(1994、2004年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)
ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(2001年)
ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』(2000年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2000年)
ザ・フィール・トリオ『Looking (Berlin Version)』
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
ウェイン・ホーヴィッツ+ブッチ・モリス+ウィリアム・パーカー『Some Order, Long Understood』(1982年)
『生活向上委員会ニューヨーク支部』(1975年)

●クーパー・ムーア
ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』(2010年)
ダリウス・ジョーンズ『Man'ish Boy』(2009年)
クーパー・ムーア『The Ceder Box Recordings』
(2008年)