某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

砂糖と紅茶 その2 

2009-10-29 15:11:44 | ぼやき
 紅茶やコーヒーに砂糖を入れるのは当たり前、と私はズーット思い込んでいた。日本の人は以前は皆そう思っていたろう。だから、戦争中のある日偉い人が中学に来て講演した時、なるほど、と感心したのだ。彼はこう言った「いまやイギリスは敗戦直前です。その証拠に、彼らは紅茶に砂糖も入れないで飲んでいる。それほど物資が欠乏し、生活に困っているのです。」なるほど、もうイギリスには勝ったのだ、後はアメリカだけだ、と単純な私は嬉しくなった。もう日本人も紅茶に砂糖を入れて飲むのは困難になっていたけれど、日本人には砂糖のいらない緑茶があるから大丈夫なのだ。私はそう考えて納得した。おめでたい中学生。
 戦後大分たってから、コーヒーを砂糖なしで飲む人が増え、それをブラック・コーヒー(単にブラック)と言うようになった。本当は、この「ブラック」に砂糖抜きという意味は無い。ミルクを入れないだけ。砂糖は入れても入れなくても、ミルクを入れなければブラック。砂糖抜きを意味するのは日本だけの和製英語。あるとき、アイルランドの歴史書の翻訳に「砂糖なしの紅茶」とあるのに気がついた。農民の貧しさを叙述した箇所。びっくりして原文を見たら、black tea(=紅茶)だった。訳者はブラック・コーヒー=砂糖なしのコーヒー、と言う日本語から連想して、ブラック・ティーは砂糖なしのお茶と思ったのだろう。ひょっとすると、あの訳者も戦時中私と同じ講演を聴いて、砂糖抜きの紅茶は貧しさの象徴、と思っていたのかも知れない。子供に嘘を教えてはいけません。誤解が一生付いて回る。
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