某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

冬のビール

2009-12-24 00:46:30 | ぼやき
 まだ学部一年生だった昭和24年の冬。暖房が無いから(ラジエターがみな金属供出で取りはずされていたから、スチーム暖房が使えなかった。勿論燃料も無かったろう)えらく寒い。先生も学生も、教室で長く分厚い外套を着ていた。
 そんなある日、講義でいきなり先生が「日本でもそのうち冬にビールが飲めるようになる」と半ば絶叫した。びっくりした。こんなに寒いのに、ビールだなんて。
 大体、ビールなどという高級な飲み物は飲んだことが無かった。夏の大人の飲み物、と思っていた。先生はこう続けた。「日本の家屋はバラックで冬は寒い。だからコタツで体だけを温める。しかし、生産力が上がれば、家をもっと保温性の高いものにして、部屋ごと暖めるようになる。日本の冬は乾燥しているから、暖かい部屋で飲むビールが一番うまいのだ。冬はビールに限る。」と。
 「部屋ごと暖めるなんて」と福島育ちの私には信じられなかった。コタツに足を入れて寝ていたから、掛け布団に雪が積もっても暖かく寝られた。大人は熱燗を飲んでいた。冷たいビールを飲むなんて、風邪を引きたい馬鹿のすることだろうと思った。
 今夜は今まで、仲間と忘年会をしていた。最初は中ジョッキの生ビールで乾杯。誰も不思議に思わない。しかし、私はあの先生の絶叫をまた聞いたような気がした。
 「降る雪や 戦後は遠くなりにけり」
 
 
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