某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

昔の罪と罰―アイルランドの場合

2013-05-04 04:24:21 | ぼやき
 アイリッシュ・タイムズに面白い本の紹介があった。『ネヴァ号の難破』。オーストラリアのタスマニア島沖合でアイルランドからの船「ネヴァ号」が難破し、乗船していた241人中224人がおぼれ死ぬという大事故があった。1835年5月13日。乗船者の大部分はアイルランドの女性で、子供(幼児とよちよち歩きの赤ん坊)も30人いた。これまでこの事故は殆ど知られていなかった。実は、この船は「囚人船」で、乗せられている女性は皆囚人、流刑地であるオーストラリアのニュー・サウス・ウエールズに運ばれる途中であった。この件に関する文書は1922年の内戦で焼失してしまい、これまでアイルランドでは殆ど知られていなかったという。
 この本には、亡くなった人の氏名、年齢、犯した犯罪、課せられた刑罰の一覧があると言う。書評には其の一部が例示されている。
帽子を盗んだ33歳の女性、7年。偽物を作った47歳の女性、終身刑。衣類を盗んだ20歳の女性、7年。追剥をした37歳の女性、終身刑。盗んだ牛を持っていた21歳の女性終身刑。モスリン3ヤードを盗んだ18歳の女性7年。ハンカチを盗んだ19歳の女性7年。靴などを盗んだ23歳の女性7年。放浪する26歳の女性7年。シーツを盗んだ24歳の女性7年。28歳の女性、窃盗罪で14年。羊を盗んで終身刑になった女性もいる。
 これはイギリスのアイルランド支配の過酷さを示すものだろうか。確かにその面もあろう。ハンカチを盗んで7年の刑と言うのはひどい。しかし、今と違ってまだ大量生産大量消費の時代ではないから(まだ産業革命の恩恵が一般庶民には及んでいない、特にアイルランドでは)衣類などを盗まれると生活に大変な不便をきたす。何を盗んでも大体7年というのが相場だったのだろう。それでも、これより40年前に比べれば大分軽くなっているという。前には上記の犯罪でも死刑の場合が多かったという。オーストラリアへの流刑がはじまってから、刑は軽くなったと一般には思われていたらしい。確かに、流刑地では別に刑務所に入れられていたわけではなく、アイルランドに帰れないと言うだけだから、望郷の念に駆られたりはしたろうが、暮らしては行けただろう。売春婦になった人も多いらしいが。
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