この日、吹雪の航空自衛隊・三沢基地を発進した2機のF2戦闘機は、戦技訓練を開始するまえに翼を至近距離で並べました。
敵機役を務めるF2A戦闘機から、若い大尉(空自の現在の表現では一尉)が撮影してくれました。
写真が素晴らしいのは、ふだんから撮影が任務の一つだからです。祖国の領空に侵入する不審機に即応し、その情報も把握するのが、この三沢のF2戦闘機隊(第3航空団)の任務です。
動画を公開するのは禁止です。F2の空中能力の精密な分析に繋がってしまうからです。静止画のみ、航空自衛隊から公開許可を得ています。
雲の下は、吹雪が続いています。
雲上は、言葉を喪うような、蒼い全天でした。
戦闘機は、コックピットに身を沈めてみるとキャノピー(風防)の存在を通り越して、一身がそのまま裸で、宇宙に続く空間に投げ出されているような感覚です。
戦闘機乗りたちによると、これだけで吐いてしまうひとも、そう珍しくはないそうです。
ぼくは、このあたりまで快適そのものでした。
もっと烈しく揺れることを考えていましたが、まるで大空を自由に、両手を広げて滑らかにみずから飛ぶような感覚でした。
しかし、意識はその一方で、次に来るだろう過酷なドッグファイト(戦闘機が一対一で戦うこと)に備えています。
面白いもので、ぼくは無意識に、サーキットをレーシングカーで走るときの癖が出てしまっています。
サーキットの高速コーナリングで、強烈なG(重力加速度)の圧迫に耐えるとき、ぼくは背筋を伸ばすのではなく、いくらか背を丸めて、背筋、腰回りの分厚い筋肉、腹筋で耐えようとする癖があります。
このコックピット内のぼくの姿勢は、それです。
けれども、この直後から襲ってきた戦闘機の空中戦のG(重力加速度)の衝撃は、レーシングカーの比ではありませんでした。
(* 写真の撮影、提供は、航空自衛隊)
…これら写真の一部は、きょう3月12日の関西テレビの報道番組「水曜アンカー」でも放送する予定です。
戦技訓練を体験した詳細は、次回の独立講演会で話します。(ここです。申込は、きょう12日水曜の正午までです!)
また、会員制の東京コンフィデンシャル・レポート(TCR)で書きます。(ここです)