太宰治『走れメロス』のセリヌンティウスはサンタラの名曲『バニラ』くらい釈然としない その2

2016年07月25日 | 若気の至り
 前回(→こちら)の続き。

 読書感想文が苦手で、書き直しの常習犯であった子供時代の私は太宰治の名作『走れメロス』でも、やらかしてしまった。

 メロスといえば、ラストの

 「きみはまっぱだかじゃないか」

 が恥ずかしくて授業中朗読できなかったというのが、「あるある」ネタに頻出するが、それよりも気になったのが、王様に死刑を言い渡されるところ。

 そもそもメロスは考え足らずというか直情型の人間で、ややはた迷惑なところがある。

 たいして出来ることもないのに王様に「激怒」して、そのまま死刑を宣告される。

 ノープランでなにをやっとるのかという話だが、そこでメロスは

 「死ぬのはしゃあない、けど、どうしても妹の結婚式には出たいから、そこはなんとかしてチョ」

 などと、なにげにドあつかましいことを王にお願いする。

 勝手に城に乗りこんで、反逆者として捕まって、そこで泣いて「結婚式に出たい」。

 それやったら家で余興の練習でもしとけよ! という話だが、これでは王様も

 「よっしゃ。じゃあ、朕がカメラ回すからお祝いコメント撮ってYouTubeにアップしよーぜ!」

 なんてのってくるわけもなく、

 「わかっとるんやで。そんなんいうて逃げるつもりやろ。だれがだまされるかいな、おとといこいやベロベロバーカ」

 しごくまっとうに拒否。

 当然であろう。世の中なめまくりか、メロス。進退窮まった彼はおのれの誠実を示すために、代わってこう提案する。

 「わかった、それなら人質を用意しよう。もし帰ってこなかったら、わたしのかわりに親友のセリヌンティウスを殺してOK!」。

 感動の友情物語だ。これには心の冷たい王様も「おお、それなら許そう」とメロスのいうことを聞き、そこからは涙、また涙……。

 ……て、待て待て待て。納得できるか!

 オレが帰らなかったら友だちを殺してくれ。メロス、なにを言っておるのか。意味不明である。

 もし私がセリヌンティウスの立場だったら、

 「オレの意見は?」

 まずここを確認するし、「いいよな」と肩をたたかれたら、確実に「あかんやろ」と答える。

 なんでおのれの失態で友を命の危険にさらすのか。しかも、それが「結婚式に出たい」というワガママである。

 とどめには、メロスは式で浮かれ、飲み食いしすぎて寝坊。そのせいで遅刻しかけるのだ。こんなヤツ、信用でけるか!

 なんのかのいって、セリヌンティウスは人がいいのか、一応人質を承諾するんだけど、絶対に心からは納得していないのではないか。
 
 「なんか、こんなんホンマの友情とちゃう……」

 私だったら、牢の中で絶対にそう思うだろう。エゴすぎるだろ。こんなバカに命あずけたくないよ!

 この件に関して、なぜメロスがこのような提案をしたのか考えてみると可能性としては、


1「絶対に帰ってくるつもりであった」

2「一応、帰ってくるつもりであったが、友だちの気持ちについては、そんなに気にしなかった」

3「ノリと勢いの産物で、特に深く考えていたわけではない」

4「セリヌンティウスに、なにか含むところがあった」

5「王様もぐるになった壮大なドッキリ大成功」


 あたりが考えられ、個人的には5あたりが正解だと思うけど、先生はどうお考えですかと問うてみたところ、返ってきた答えは「放課後書き直し」の命のみであった。



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