W杯誤審問題とトーマス・ブルスィヒ『サッカー審判員 フェルティヒ氏の嘆き』

2014年06月18日 | スポーツ
 おお、これこそまさにトーマス・ブルスィヒ『サッカー審判員 フェルティヒ氏の嘆き』ではないか!

 そんな声が出たのは、ワールドカップのオープニングマッチ、ブラジル対クロアチア戦を観ていたときのことであった。

 この試合は、いきなりのオウンゴールでの幕開けや、その後のブラジルチームのあざやかなゴールもさることながら、日本の西村雄一主審のPKの判定が話題になった。

 「誤審だ!」と怒る人、「いや、あれはPKだ!」と擁護する人、「まあまあ、サッカーというか、スポーツの判定って、そういうものでしょ」とクールに振る舞う人など様々だが、ともかくも「熱い」幕開けとなり、やはりこういったカオスこそがワールドカップの魅力でもあろう。

 まあ、いろんな意見があるが、他のスポーツはいざ知らず、サッカーに関してはこれすべて、「判定はもらったもん勝ち」というのが原則であろう。

 私自身、アルゼンチンを取り上げたサッカー番組だったか、はたまた『アンダーグランド』で有名な旧ユーゴスラビアはサライェヴォ出身の映画監督エミール・クストリッツァが撮った『マラドーナ』というドキュメンタリー映画を観てからだったか、この手の騒動は特にそう割り切れるようになってしまった。

 つまりは、「誤審でなければ問題なし。仮に誤審だとしてもフレッジがうまくPKを取ったわけだから、《やられた》クロアチアは何を言ってもしょうがない。なので、PKでOK」

 「だましたほうがうまい」わけで、もしそれが「主審の拙さ」が原因としても、「それもコミ」でブラジル側が勝ち。

 この意見には反論はあって当然だとは思うし、私も是とは言わないけど、番組の中でのディエゴとアルゼンチン人スポーツ記者の語りを聞いていたら、なんかもうねえ、そう納得するしかないというか(笑)。

 ここで語られるは、1990年イタリア大会のアルゼンチン対ブラジル戦。

 この試合は開始前の下馬評ではブラジルが圧倒的に有利だったにもかかわらず、結果としてはアルゼンチンがマラドーナの見事なパス一発で宿命のライバルを1-0で沈めた。

 だが、この試合にはある疑惑があって、それは

 「アルゼンチン側が、ブラジルの選手に薬を盛った」。

 圧倒的に試合を支配しながら敗れたブラジルの選手は、試合の後半あたりで体が重くなったりといった、体調不良を感じる者がいたという。

 それは、疲れではなく、試合中にアルゼンチンの選手がさりげなく渡したドリンクの中に、睡眠薬が入っていたのではないかというだ。

 そういわれても、ブラジル側の証言だけでは「負け惜しみ」とも取れるし、下手するととんでもない中傷だ。仮にその可能性はあるとしても、証拠が挙げられなければ「推定無罪」であり、なにを言っても負け犬の遠吠え。

 だから、マラドーナをはじめとするアルゼンチンもこれに関しては、しかつめらしくか、もしくはしてやったりのニヤニヤ顔かはわからないが、「まさか、そんなヒドイことを、ボクたちがするわけないじゃないか」と、肩をすくめてでもいればいい。

 私などは、ごくナチュラルにそう思うわけだが、あにはからんや、ディエゴとアルゼンチン人記者は口をそろえて、こう言い放ったのである。



 (続く→こちら)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする