「『HUNTER×HUNTER』連載再開時期は未定」
この情報を知り、目の前が一瞬真っ暗になってしまった。2月の初め、「約2ヶ月の休載を挟んで4月上旬に連載が再開する予定」という情報を聞いたとき、4月を待ち焦がれながらも「この作者が本当に4月に再開できるのか?もっと伸びるんじゃ…」と危惧していたが、まさか再開時期が未定とは…。このまま勝手に連載終了に収束していかないかどうかがとても気がかり。なんだか私の好きな漫画っていつ終わりが来るのか、いつ続きが読めるのかわからない不安定なものばっかりだ。休載しすぎてそのまま連載自体打ち切り。これだけはやめてくれよ、ジャンプ編集部。『HUNTER×HUNTER』の作者冨樫義博は、過去に大ヒット漫画『幽遊白書』を描いていた人である。90年代初頭に一世を風靡したこの漫画のおかげで冨樫は一躍人気作家の仲間入りを果たすが、毎週漫画の原稿の締め切りがあり、大原則として休むことは許されないという週刊少年ジャンプの連載スケジュールに疲弊し、連載終了間際には心身共にボロボロになってしまった。ジャンプに掲載されている漫画は、安定した一定数の読者人気がある限り最終回を迎えない。作者が「そろそろ話に区切りつけて連載終了させたい」と思っても、人気があれば編集部が辞めさせてくれない。さらに物語の続きを考えなければならなくなる。逆に、人気が落ちれば作者の意向を無視して強制的に連載打ち切りが決定し、無理やり最終回を迎えざるをえなくなるという、作家に多大なストレスを与えるシステムをとっている。『幽遊白書』はこのような過酷なシステムに飲み込まれ疲弊しきった作者が、編集部の意向を無視して無理やり連載を終了させた作品の走りとして知られている。作品を読めばわかるが、最終巻の19巻に近づくにしたがって絵や作風が荒くなり、最後は無理やり終わらせた感がプンプン漂っている。作品自体はずっと大人気だったので、打ち切られた、というのはまずない。作者がジャンプ編集部に反発して無理矢理終わらせたとしか言えないのだ。
この一件以降、冨樫はしばらく漫画家活動を休止し、一時は「消えた漫画家」として騒がれた。しかし1年後、週刊誌にも関わらず月一回しか掲載しない、実質月間誌並みのペースで発表された作品『レベルE』で再びジャンプに帰ってきた。この月一連載作品は、冨樫人気を手放すのが惜しいと考えた編集部が、彼を疲弊させずにジャンプで描かせる方法として生み出されたのだろう。その後、月一ではなく週刊連載である『HUNTER×HUNTER』の連載が始まる。「原則として休載はさせない」というジャンプシステムを破り、度々連載を休む冨樫に対し編集部は「休載されても奴の人気を失うよりはマシだ」という考えで黙認していたのだろう。実際単行本は初版発行部数が130万を越すほど売れまくり、集英社に利益をもたらす人気作なである。また、冨樫の休載は他の人気作家にも影響し、「休載させないジャンプ」は崩れた。適度に漫画家を休ませないと冨樫みたいにボロボロになってブチ切れられる、というのを学んだのだろう。
年を重ねる度にエスカレートしていく休載頻度。それでも衰えない人気。そんな衰えない人気に甘んじて休載を黙認する編集部。この悪循環ではいつまでたっても作品が前に進まない。この悪循環を生み出しているのは間違いなく私のような熱心なファン達である。我々が彼の作品を数字の面で支えるから、「いくら休んでも待ってくれるだろう」という安心感を作者と編集部に与えてしまっている。現在の悲惨な状態は、我々が作り出したものだと言っても過言ではない。『HUNTER×HUNTER』21巻にこんなセリフがある。
「どうしていいかわからないんだ オレ達が作り出した目の前の現実…」
自分らの非力さが原因で強敵ネフェルピトーの手にかかり、変わり果てた姿となった兄貴的存在のカイトと再開したゴンとキルアの心境を表すセリフ。無期限連載休止を知った今にぴたりと当てはまるセリフだと思ってしまう。
かの鳥山明先生も、読者の絶大なる人気に支えられ(毎週行われる読者アンケートで、「ジャンプ連載陣の中でドラゴンボールが一番面白い」という回答をする人が驚異の全体の約8割。こんな状態がずっと続いた。)、ちょうどピッコロとの戦いに決着がついたところで連載をやめようとしたがやめさせてもらえなかった、というのは有名な話。その後無理矢理つくりだした敵キャラのおかげでストーリーはさらに盛り上がり、連載が終わるに終われず、なんとか編集部に頼み込み、やっと連載が終了したのは鳥山先生本人が終了を決意した時から7年後の1995年。ただ、速やかにストーリーを考え、原稿をサッサと仕上げる事ができた鳥山先生は冨樫のように壊れたりはしなかった。こんな事態になった原因は、何度も書くが読者人気。絶大な読者人気が鳥山先生の意志に反してドラゴンボールを全42巻という大河ドラマにしてしまったのだ。冨樫の件や他、数多のジャンプ漫画とを併せて考えると、ジャンプ作品の「真」の作者は読者だとしか思えない。
この情報を知り、目の前が一瞬真っ暗になってしまった。2月の初め、「約2ヶ月の休載を挟んで4月上旬に連載が再開する予定」という情報を聞いたとき、4月を待ち焦がれながらも「この作者が本当に4月に再開できるのか?もっと伸びるんじゃ…」と危惧していたが、まさか再開時期が未定とは…。このまま勝手に連載終了に収束していかないかどうかがとても気がかり。なんだか私の好きな漫画っていつ終わりが来るのか、いつ続きが読めるのかわからない不安定なものばっかりだ。休載しすぎてそのまま連載自体打ち切り。これだけはやめてくれよ、ジャンプ編集部。『HUNTER×HUNTER』の作者冨樫義博は、過去に大ヒット漫画『幽遊白書』を描いていた人である。90年代初頭に一世を風靡したこの漫画のおかげで冨樫は一躍人気作家の仲間入りを果たすが、毎週漫画の原稿の締め切りがあり、大原則として休むことは許されないという週刊少年ジャンプの連載スケジュールに疲弊し、連載終了間際には心身共にボロボロになってしまった。ジャンプに掲載されている漫画は、安定した一定数の読者人気がある限り最終回を迎えない。作者が「そろそろ話に区切りつけて連載終了させたい」と思っても、人気があれば編集部が辞めさせてくれない。さらに物語の続きを考えなければならなくなる。逆に、人気が落ちれば作者の意向を無視して強制的に連載打ち切りが決定し、無理やり最終回を迎えざるをえなくなるという、作家に多大なストレスを与えるシステムをとっている。『幽遊白書』はこのような過酷なシステムに飲み込まれ疲弊しきった作者が、編集部の意向を無視して無理やり連載を終了させた作品の走りとして知られている。作品を読めばわかるが、最終巻の19巻に近づくにしたがって絵や作風が荒くなり、最後は無理やり終わらせた感がプンプン漂っている。作品自体はずっと大人気だったので、打ち切られた、というのはまずない。作者がジャンプ編集部に反発して無理矢理終わらせたとしか言えないのだ。
この一件以降、冨樫はしばらく漫画家活動を休止し、一時は「消えた漫画家」として騒がれた。しかし1年後、週刊誌にも関わらず月一回しか掲載しない、実質月間誌並みのペースで発表された作品『レベルE』で再びジャンプに帰ってきた。この月一連載作品は、冨樫人気を手放すのが惜しいと考えた編集部が、彼を疲弊させずにジャンプで描かせる方法として生み出されたのだろう。その後、月一ではなく週刊連載である『HUNTER×HUNTER』の連載が始まる。「原則として休載はさせない」というジャンプシステムを破り、度々連載を休む冨樫に対し編集部は「休載されても奴の人気を失うよりはマシだ」という考えで黙認していたのだろう。実際単行本は初版発行部数が130万を越すほど売れまくり、集英社に利益をもたらす人気作なである。また、冨樫の休載は他の人気作家にも影響し、「休載させないジャンプ」は崩れた。適度に漫画家を休ませないと冨樫みたいにボロボロになってブチ切れられる、というのを学んだのだろう。
年を重ねる度にエスカレートしていく休載頻度。それでも衰えない人気。そんな衰えない人気に甘んじて休載を黙認する編集部。この悪循環ではいつまでたっても作品が前に進まない。この悪循環を生み出しているのは間違いなく私のような熱心なファン達である。我々が彼の作品を数字の面で支えるから、「いくら休んでも待ってくれるだろう」という安心感を作者と編集部に与えてしまっている。現在の悲惨な状態は、我々が作り出したものだと言っても過言ではない。『HUNTER×HUNTER』21巻にこんなセリフがある。
「どうしていいかわからないんだ オレ達が作り出した目の前の現実…」
自分らの非力さが原因で強敵ネフェルピトーの手にかかり、変わり果てた姿となった兄貴的存在のカイトと再開したゴンとキルアの心境を表すセリフ。無期限連載休止を知った今にぴたりと当てはまるセリフだと思ってしまう。
かの鳥山明先生も、読者の絶大なる人気に支えられ(毎週行われる読者アンケートで、「ジャンプ連載陣の中でドラゴンボールが一番面白い」という回答をする人が驚異の全体の約8割。こんな状態がずっと続いた。)、ちょうどピッコロとの戦いに決着がついたところで連載をやめようとしたがやめさせてもらえなかった、というのは有名な話。その後無理矢理つくりだした敵キャラのおかげでストーリーはさらに盛り上がり、連載が終わるに終われず、なんとか編集部に頼み込み、やっと連載が終了したのは鳥山先生本人が終了を決意した時から7年後の1995年。ただ、速やかにストーリーを考え、原稿をサッサと仕上げる事ができた鳥山先生は冨樫のように壊れたりはしなかった。こんな事態になった原因は、何度も書くが読者人気。絶大な読者人気が鳥山先生の意志に反してドラゴンボールを全42巻という大河ドラマにしてしまったのだ。冨樫の件や他、数多のジャンプ漫画とを併せて考えると、ジャンプ作品の「真」の作者は読者だとしか思えない。