拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

カ、カムバーック(涙)!

2010-11-23 00:37:42 | 音楽
無期限活動休止宣言をした宇多田ヒカルのベスト盤『UTADA HIKARU SINGLE COLLECTION VOL.2』をフラゲした。「誰かの願いが叶うころ」~「Prisoner Of Love」までのシングル、そして配信限定だった『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 破』の主題歌だった「Beautiful World」のリミックス版を収録したDisc1と、未発表の新曲を収録したDisc2の二枚組。ぶっちゃけDisc1は殆ど聴かないんだろなー。今まで散々ヘビロテしてきた曲たちがずらっと並んでて、なんというか、曲目見てるだけで圧迫感があるというか、お腹一杯というか。とにかく今は聴く気にならん。とにかく目玉はDisc2。まるで今年いっぱいで音楽活動に区切りをつけて何処かに行ってしまう宇多田からの置き手紙みたいな全5曲。堪能しまくってます。

5曲中、一番人気曲っぽいのが、本人が監督したミュージックビデオが可愛すぎる「Goodbye Happiness」。ポップだが切ないメロディー、フワフワしたシンセ、思いがけない方向から飛び込んでくるコーラス…「こ、これぞ宇多田ヒカルの黄金律!」と絶叫したくなるような鉄板の4つ打ちの名曲だ。
実写版『あしたのジョー』(大丈夫か!??)の主題歌に決定した「Show Me Love(Not A Deream)」は一番好きな曲かも。最近の彼女には珍しく生バンドをフィーチャーしたアレンジで、低音がずっしり効いてる。本人による打ち込みアレンジだと、意図的にベース音無くしたり、控えめにしたりするから、独特の浮遊感が出るけど物足りないと感じる時もあったが、これはバッチリだ。歌詞も刺さるフレーズだらけで最高。バンドサウンドとコーラスの絡みがめちゃくちゃ相性良くて、この人本当に引き出しあるなぁと感動。こんな良い曲がエンドロールで流れたら、映画自体の出来なんて帳消しだよ!多分!
母親への思いを率直に歌詞にした「嵐の女神」も生音アレンジでこれまた良い感じ。やっぱ復帰作は生バンドと組んで欲しいな。思い切って打ち込みは無しの方向で…って気が早いかぁ。「Can't Wait 'Til Christmas」は、素朴ながらも感動的なピアノ主体のバラード。ラルクの傑作冬バラード「雪の足跡」と併せて聴きたい感じ。「目移りせずに目の前の大事なものをちゃんと大事にしよう」的な歌詞の世界観がそっくりな気がする。
仮に新曲たちが微妙な出来だったら「さすがの彼女も才能が枯れたか…ゆっくり休業して充電してまた良い曲作ってね」なんて余裕ある態度で彼女を見送れるけど、こんなに良い曲ばっかだと「ばっかやろー!何勝手に休業宣言してんだよ!アンタが休んだら他に聴くもんねーよ(涙)!」って感じ。「Goodbye Happiness」の「あなたと出会う前の私にはもう二度と戻れない」という内容の歌詞は、「宇多田ヒカルの音楽に出会う前の自分にはもう戻れないんだよー、だから、アンタの新曲をしばらく聴けないなんて本気で困るんだよー」という個人的な思いにガバっとリンクしてしまう。「偏った人生経験をしてきたから、人間として欠けてる部分の多いまま大人になってしまったので一旦アーティスト活動から離れて自分自身を成長させたい」という旨で活動休止期間に入る宇多田ヒカル。休止の理由としては結構まともだなと頭では理解できても、往生際悪くウダウダ言いたくなってしまうよ…。
先日、宇多田がクリス・ペプラーのラジオ番組に出演した際、彼女は「私に指示をしたり、叱ってくれたりする人は周りに誰もいない」という趣旨の発言した。故に「このままではいけない」と思ったのだと。これを受けて私が思い出したのは、彼女が離婚した直後に受けたインタビュー。結婚生活を振り返り、「紀里谷さんは厳しかった。時間にルーズだったりちゃんと挨拶ができなかったりする私に対して『宇多田ヒカルだから許されてると思うな』とよく叱られた。その度に『あぁ、自分はダメ人間だ』と自己嫌悪」「でも、そんなダメな自分を受け入れることでラクになれた。離婚で重荷が降ろせた」(かなり要約。2007年発売の『MUSICA』創刊号や『ORICON STYLE』あたり参照)と語っていた宇多田ヒカル。今思えば、紀里谷さんは宇多田ヒカルを叱れる殆ど唯一の人間だったのかもしれない。じゃ、もしこの人と別れてなければ、わざわざ活動休止なんてしなくても人間的に成長できたのでは…?……いやいや、下衆の勘ぐりはよそう。離婚があったからこそ生まれた物も確実に沢山あったはずだしね。
とにかく本当に寂しいんですよ、早く帰ってきてねー。