拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

This Is The One

2009-03-27 11:05:32 | 音楽
アルバム発売、10周年本発売、めざましテレビ出演、ラジオ復活、『ヱヴァンゲリオン新劇場版 破』主題歌ほぼ確定(予告でまた「Fly Me To The Moon」が流れてた)などなど、3月に入ってから色々ありすぎな宇多田ヒカル周辺。もちろん全てチェックしてるけど(めざましの佐野アナとの共演 in NYがシュール過ぎた)、何から書こうかなぁーとボンヤリしてるうちに3月が終わろうとしている。いい加減何か書かなければ。とりあえずUtadaの2ndアルバム『This Is The One』は良いぜ、と。宇多田史上初めてプロデュースを外部の人達に任せた(今までは宇多田本人や父親などなど、内輪でプロデュースしてた)良質なポップス集。デビューアルバム『EXODUS』は1stにしてセルフプロデュースだったためか、気合入りまくりのガッチガチな完全武装作品だったけど、今回は風通し良いよ~。ディープなんだけどサクっと聴ける。何度でも聴ける。
『EXODUS』は「どのジャンルにも属さないけど、アメリカに似合うような音楽を作りたい」という、雑種文化国・日本とアメリカの両国で育った宇多田の意志が漲る異物感溢れる奇妙な怪作だった。頻繁に聞きたくなるような音楽では無かったし、アメリカでのチャートアクションも地味だった(完全にプロモーション不足だよな。これからって時にデフジャムのトップが変わっちゃったので。かといって2004年のアメリカであのアルバムをバンバン宣伝してれば売れてたのか?と言われると微妙だが)。でも、あのアルバムで培ったアレンジ術はそのまま日本での傑作アルバム『ULTRA BLUE』『HEART STATION』に昇華されていった。で、自分一人で、密室状態で素晴らしい作品を作ったから、「一旦外の空気でも入れるか」みたいな感じで、アメリカでの2枚目をスターゲイトとトリッキーという、どうみても今が旬のプロデューサー(MTVでかかってる曲って検索するとこの人達の曲ばっかだよね)に任せたのだろう。まぁ、完全に丸投げではなくて曲と歌詞は当然宇多田が書いてるし、アレンジもネット等でやりとりしながら作っていったらしいけど。でも、個人的にベストトラックだと思ってる、坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」を大胆にサンプリングした「Merry Christmas Mr. Lawrence - FYI」はスターゲイトのアイデアだそうで。「これを日本人の君が歌ったら面白いんじゃないか」という提案が元で作った曲らしい。日本人なら誰もが聴いたことのあるあの曲の上に、どこかオリエンタルで懐かしくて、でも新しいフワフワしたメロディーが、つまり宇多田節が乗ってるの。これが聴けただけでも「あーもう、スターゲイト起用してよかったねー!!」って感じ。宇多田以外の日本人が先にスターゲイトと一緒にやってたら、その人にこの曲を取られちゃってたかもしんないし(そんなこと絶対無さそうだけど)。
「Merry Christmas Mr. Lawrence - FYI」以外では「Automatic PartⅡ」と「Dirty Desire」が特に好きだな。まさかのセルフアンサーソング「Automatic~」は、原曲と同じテンポだけど物凄くアメリカっぽい音作り。原曲の「It's automatic」「I can't help」というフレーズを引用しつつ自己紹介的な事を歌う、まさに第二のデビュー曲。「Use to be a Virgin,now I'm with Island Def Jam」って歌詞が好きだな。上手いこと言うなぁ。「Dirty Desire」はちょっとブリトニーっぽい、つまりザ・アメリカンポップスという感じの、シリアスでクールにハジけた曲。ここまで振り切った曲、日本の宇多田のアルバムじゃなかなか聴けなかったから嬉しい。
プロモーション全然して無いし、シングル曲も無いし、ってことで日本での売り上げは超地味だけど、「アメリカのiTunesで最高19位まで行った」という明るいニュースも入ってきたし(まだ配信だけ)、もう少し売り上げ伸びるんじゃないかな。日本人はこういうニュースに本っっ当に弱いですから。でもアメリカは日本とは違い、発売してから何ヶ月も経ってるアルバムが未だチャート上位に堂々と居座ってるような国だから、「初登場○位!」とかは実はどうでもよさそうだな。シングルを沢山切って、プロモーションも続けて…むしろこれからが勝負だろう(19位なんてまだヌルい!?)。今回はデフジャムが本気で宣伝してくれてるようだし、売れると良いよね。「Come Back To Me」とか、普通にスタンダードなアメリカのポップスって感じだし(アルバム全曲を聴いた今、普通すぎて個人的に結構どうでも良い曲になってきてるけど…)。



上本町→難波

2009-03-21 00:19:14 | 日記
大阪に行ってきた。最近よく行くなぁ、何故か。今回はゼミ(近世文学)の先生の案内でゼミ生達と大阪をまわる、結構真面目かつ楽しい旅。毎年春に近世文学のゆかりの地などをまわる旅が催されていて、去年は京都に行って『雨月物語』の上田秋成の墓とか島原の遊郭があった所、一昨年は井原西鶴の『武家義理物語』に出てくる詩仙堂(これも京都)や学校博物館などに行ったんだけど、今ブログ見たらその時の事は日記に書いてなかった。楽しかったっすよ。普段京都に遊びに行ってもまず足を運ばないであろう、ちょっと地味で静かな雰囲気の所だったしね。でも今回の大阪の旅は、人がごった返す街をグルグルと歩き回る旅。「え、適塾ってこんな都会のど真ん中にあったんすか!?」と衝撃を受けました。近松や西鶴の墓も、普通のビル街にひっそり佇んでる感じだしね。こりゃ案内して貰わないと辿り着けんわ、方向オンチの私じゃ…。
大阪に着いてまず行ったのは、梅田の近くにあるお初天神。近松門左衛門の『曽根崎心中』に出てくる場所。主人公の男女が愛を貫くために逃げて来た、切なく悲しい場所は、今は物凄く賑やかな街の中にひっそり存在している。パチンコ屋とかいっぱいあったな、周りに。超絶に賑やかなパチンコ屋の目の前に公立小学校があったりもしたな。あの小学校に通うってどんな気分なんだろう。ファンキーな心が育ちそうだな。そこから地下鉄御堂筋線に沿ってテクテク歩き、ビジネス街やスナック街(夜になると街並みは激変すんだろうなぁ)、カッコいい大阪市役所を通り抜け、江戸時代の町屋の姿を留めている、幕末に福沢諭吉らが学んだ蘭学塾「適塾」へ。都会のど真ん中とは思えない程落ち着いた風情ある雰囲気でかなり不思議な気持ちになった。塾生達は皆、難解なオランダ語の医学書や蘭和辞書を片手に猛烈に激烈に勉学に励みまくってたらしいっすよ…。
さらに市内を南下し、松尾芭蕉の終焉の地、本町へ。交通量の多い道路の真ん中付近の植え込みの部分という「な、なんでそこ!??」という場所に、ひっそりと碑が立ってました。その後やっと地下鉄に乗り難波まで行き、道頓堀川沿いを歩く。テレビでよく観る風景だ。阪神ファンが飛び込む所だ。真田広之の映画『道頓堀川』の舞台だ。『道頓堀川』、若き日の真田さんの不自然な関西弁がキュートなんだよ(故にネイティブ関西人にとってはイライラする喋り方であることでしょう…)。そいえばあの映画に出てくる大阪の街、多分全部行ったな、今日。淀屋橋とかも。で、緩やかな坂をのぼりつつ大阪をまたまた南下し、近松門左衛門の墓へ。ビルとガソリンスタンドの間の隙間にあるんですよ、彼の墓。地味過ぎる。でも、上田秋成の時も思ったけど、やっぱ墓に来ると「あぁ、この人は実在してたんだなぁ…」という実感が湧いて来て心が震えるね。近世の作家って写真が無いし、本名も謎の場合があるから架空の人にも思えてしまうんだよね。近松の墓の近くの寺に井原西鶴の墓もある。一般の人の墓石に混じって西鶴の墓があって驚きました。
最後は上本町の方までまたテクテク歩き、西鶴ゆかりの地である生玉神社へ。パンフによれば「西鶴は、当社の境内で一昼夜をかけて矢数俳諧を行い、一人で四千句を詠み上げた」とのこと。一句作るのに与えられた時間は10秒程だったらしい。なんだろ、エンドレスで大喜利の答えを発表し続けるみたいな感じかな、今で言えば。無限ダイナマイト関西みたいな?そして歩いてまた難波に戻る。この時、ブラックマヨネーズが2005年のM1グランプリでやってたボウリングの漫才での「俺の家、上本町っていう大阪の坂の上やぞ、あんな所で袋破れたら難波まで転がって行くやんか!」が実感出来た気がしたなー、今更(笑)。ず~っと緩やかな下り坂だもんね、難波まで。坂をゴロゴロ転がり続け、難波の地下街への入口付近でピタっと止まるボウリングの玉…。こんなこと知らなくても超笑えたんだけど、知るとさらにおかしいねー。
という感じの大阪ぶらり旅。次に大阪に行けるのはいつかな?



傾向と対策?

2009-03-11 00:14:27 | 映画
9日の日記にも書いたけど、今1番気になる映画は色んな意味で『DRAGONBALL EVOLUTION』。これはぜひ劇場に足を運び、現場で観察したいな、みんなの反応を。みんな映画が終わった後どんな感じになるのかな。本気で憤慨したりするのかな。それとも「意外に悪くなかったじゃん?」なんて言いながら映画館を後にするのか。
さて、『DRAGONBALL EVOLUTION』を迎え撃つつもりの日本人のスタンスは、以下に分けられると思う。

(1)原作がどう実写化されてるか純粋に楽しみな原作ファン
(2)実写化で原作がどう改悪されるか恐る恐る、もしくは喧嘩腰で確かめに行く原作ファン
(3)初めからネタ映画として観る気マンマンの原作ファン
(4)何を出されても食う気マンマンの呑気な原作ファン
(5)監督がジェームズ・ウォンなので実は結構期待してる原作ファン
(6)原作には関心が無いけど話題作だから観に行く人
(7)原作には関心が無いけどジェームズ・ウォン監督や出演者のファンだから観に行く人

多分こんな感じ。私の場合は(3)(4)(5)だな。『ドラゴンボール』は幼少の頃から大好きだが、今は漫画としてではなく鳥山明のイラスト集として楽しんでるので、原作のストーリーへの思い入れは結構薄い(だから話が面白くて絵が超絶にカッコ良過ぎる『Dr.スランプ』こそ傑作だと思う)。かめはめ波とかで熱くなれるような年齢じゃないしね。故にハリウッド映画化が決まっても(2002年頃だったかな?確か完全版コミックが出始めた頃だった気がする)、「どんどんアメリカ流に料理しちゃってくれ」という感じだった。あんな荒唐無稽でハイパーな原作、忠実に実写化出来るわけないんだからガンガンやっちまえ、と。その結果、娯楽大作に化けたらこの上無いし、C級ネタ映画になってしまっても構わない。その程度で汚点が付くようなちっぽけな作品じゃないしね、『ドラゴンボール』は。私はティム・バートン監督による『猿の惑星』のリメイク『PLANET OF THE APES』みたいなノリなんじゃないかと予想…それってダメじゃん。とにかく楽しませてくれ!って感じですね。
監督が『ファイナルディスティネーション』のジェームズ・ウォンってのも地味に期待出来る。飛行機事故、交通事故、遊園地での事故を、血の気が引く程リアルに恐ろしく描いた傑作スリラー映画を撮った人。これを観ておけば、『DRAGONBALL EVOLUTION』の出来もある程度占えるかもしれない…占えないかもしれない。でもねぇ、やっぱ、アニメ『ドラゴンボールZ』での、テンポの悪いバトルよりは観やすいものになるような気はするんだよな(それでも子供の頃は普通に楽しく見てたんだけど)。あの無茶な引き伸ばしこそ原作に対する冒涜だよ。
ただ最近は時間があるような無いような中途半端な感じなので、映画館行けるかなー?来たる新生活への準備は地味に面倒なんだよな。荷物まとめて整理して掃除して、残り少ない自由時間を満喫すべく遊びまくって、読みたい本や漫画をとりあえず片っ端から読んで、テレビや映画のDVDを明け方まで見まくって、聴き忘れてた新譜をチェックして(主に電気グルーヴ)、時には何もせずボーっとして、ふと我に返って…そんな日々ももうすぐ終わり。あー、なんで4月公開なんだよ『スラムドッグ$ミリオネア』!観に行けないかもしれねーよ! 

エロと下品で勝負-『ヤッターマン』

2009-03-09 21:52:50 | 映画
『ヤッターマン』観た。『CASSHERN』、『キューティーハニー』、『デビルマン』、『NIN×NIN』、『ゲゲゲの鬼太郎』、『どろろ』、『20世紀少年』……日本の漫画・アニメの実写映画は基本的に期待外れなものが多いが、『ヤッターマン』は違ったぜ。最高!なにあの下品ギャグの数々。深田恭子のセクシーなドロンジョ様のボンテージ姿なんて序の口。メカニック、武器、小道具、攻撃技などなどに、昔のケンドーコバヤシのような…関西のインモラル芸を一人で背負ってた頃の彼のエロ漫談のような下品さがちりばめられている。あ、ケンコバが演じてるドロンジョの手下・トンズラーは別にエロキャラじゃないよ、念のため。
これ、家族連れが多そうな土日に観に行けば良かったなぁ。一応子供向けアニメの実写化だから多分PG12すら付いてないけど、良いのかこんなの子供に見せて。大丈夫か映倫!…まぁ子供には全ては伝わらないだろうな、下品ギャグは。一緒にいる親は慌てるだろうけど。とりあえず櫻井翔はジャニーズ史に残る下品シーンを演じたと思う。サソリに刺された女の子を助けるシーンでの、客席を埋める嵐ファン達(多分殆ど嵐ファンだったかも。二宮君が出てるauのCM流れた時、急に盛り上がってたし)の戸惑い気味のどよめきと笑いは忘れられない。嵐ファンには小中学生だって居るのよ、櫻井君(笑)!
…なんか「下品で楽しかった」って事しか書いてないな。でも、この映画から下品さを取ったら何も面白くないと思う。アニメと実写映画は違うんだから、普通にヒーローものとして実写化したって寒いだけだよな。実写ならではの味を足さないと。かといって『CASSHERN』みたいに息苦しくメッセージ性を込めた実写化なんてウンザリだし(あれは拷問のような映画体験でした。初めの5分ぐらいはドキドキしたんだけどな)。その点『ヤッターマン』の下品描写は、作品のテンションを活性化させるカンフル剤として機能しまくってたし、なにより監督・三池崇史の「邦画の最大のウリはエロだろうが!」という心の叫びを聞いた気がしたよ。
そもそも日本の映画やアニメが世界のヲタク達に熱く愛されたのは、エロくて下品でグロいから。この要素を全て持つ三池崇史のバイオレンスな映画は世界中の映画ヲタに愛されまくりだし(まぁ、監督作品が大量にある方なので当たりハズれがあるが)、海外で人気のある邦画クラシックたちは軒並み暴力的で、何より女優さん達がセクシー。アニメだってエロシーン多めのものが海外の市場を支えているらしいよ。世界を代表するヲタ監督タランティーノの映画『キルビル』で栗山千明が演じた「ゴーゴー夕張」は、外国人ヲタが感じている邦画の魅力が詰まったキャラクター。「美女が血まみれでアクション!邦画サイコー!」って事でしょ、要は。それが観られないなら、邦画になんて用は無いんでしょ。実際。ところが最近の邦画はセクシー濃度が底辺スレスレ。これじゃあ誰も見向きしない。『おくりびと』なんて例外中の例外。今の邦画は、おそらく世界的に見て死滅寸前だ。
『ヤッターマン』は、そんな現在の邦画の惨状を打破しようとして生まれたような、下品で楽しい悪ノリアイドル映画。ヤッターマン1号&2号によるキメゼリフが微妙に寒かったり(そもそもあんなセリフをキメられる奴アニメ界にしか居ない気が…)最後はモタモタしてて少しダレるけど(阿部サダヲの芸達者ぶりが逆に良くなかった気が…)、それでも全体的に楽しめた。エンディングで流れる嵐が歌う主題歌「Belive」も思いの外アガったなー。観る前は「『ヤッターマン』のエンディングで嵐が流れるってどうなの?」と思ってたけど、全然良かったよ。
とにかく春の映画大本命は『ヤッターマン』ですよ。あと『DRAGONBALL EVOLUTION』か。原作『ドラゴンボール』は普通に好きだけど、熱い思い入れはもう無いので普通に楽しみ。悟空が白人だからって別に不満は無いし、超可愛いじゃん、実写版ブルマ。あゆの主題歌も無駄にテンション高くて良い感じ。それに意外とファンが杞憂する程ヒドい出来じゃないと思うなー。アニメでの悟空とフリーザのグダグダの戦いよりは面白いだろ、多分。


Tommy heavenly6

2009-03-06 00:05:59 | 音楽
最近Tommy heavenly6にハマっている。トミーのもう一つのソロプロジェクト(つーか実は音を作ってたのはブリグリメンバーらしいから、実質ブリグリの変名ユニットだわな)で、80年代シンセポップスを唐突に甦らせたTommy february6の方は高校時代、リアルタイムで愛聴していたが、グランジ(死語?)でゴスでたまにメタルなheavenlyの方は今まで何故かなんとなくスルーしてて。でも先月、スペースシャワーTVでheavenlyの「Lollipop candy bad girl」という曲をチラっと聴いて興味を持ちまして。しかも、まるで図られたかのようにfebraryとheavenlyベスト盤が出る、と。「おし、これを機に2枚仲良くお買い上げしたろか」とソニーの戦略に乗ってみようかと思ったが、februaryの方は旧譜2枚両方持ってるし、18曲も入ってるのに私の大好きな「Hey Bad Boy」と「SEPIA MEMORY」が入ってないので魅力を感じず。heavenlyも旧譜は2枚しか出てないので、2枚共サクっとレンタルで済ませてしまった。あのベスト盤はDVDが欲しい人向けだよなー。
で、heavenly。アルバム『Tommy heavenly6』『Heavy Starry Heavenly』、2枚共良いっすね~。少しハードなthe brilliant greenって感じで。作曲だけじゃなく演奏してんのもブリグリのメンバーなのかな?ブリグリは90年代のイギリスのギターロックを日本語でやってるってイメージだったけど、海の向こうのアメリカで起きたグランジブームの頃の音を主に再現したTommy heavenly6でも、ブリグリらしい湿り気のある哀愁が漂ってますね。アッパーでカラっとした、まるでグッドシャーロットみたいな曲もあるけど、何故か湿ってる(笑)。トミーの不可思議にチャーミングな声のせいですかね。やっぱ技術的な上手さのあるボーカリストよりも、こういった不安定で特徴のあるボーカリストの方が好きさ。hydeとかヒッキーとか小沢健二とかロバートスミスとかビリーコーガンとかデヴィッドシルヴィアンとか。
曲はどれも良いが、ちょいアニソン風味の「Heavy Starry Chain」、バンドマンを一途に追っ掛けるグルーピーの姿を描いた「Wanna be your idol」、くせのあるメロディとギターのリフが素敵な「I'm Gonna Scream+」「DOOR MAT」、もろブリグリな「ABOUT U」、木漏れ日のように明るく可愛い「LCDD」、そしてやっぱり「Lollipop candy bad girl」あたりが特にツボでした。
「Lollipop candy bad girl」とか「+gothic PINK+」とか聴いてて思ったが、ゴシックな雰囲気の曲でも、本場ヨーロッパのゴスじゃなくてアメリカのゴスっぽいですね(さっきは「湿っぽい」って書いたけども)。ティムバートンの映画や『インタビューウィズバンパイア』観てゴスに染まった不器用で突飛なアメリカ人って感じがします。特にハイスクールに通うティーンエイジャーの子がゴスに染まったら完全に異物でしょうね、学校では。映画とか観てればわかるけど、男子はスポーツ選手、女子はチアガールじゃないと居場所無いみたいな感じだもんね、アメリカの高校。Tommy heavenly6はそんな高校に馴染めない、不器用で個性的なゴス少女のイメージなのでしょう。対してTommy february6。こっちはPVでチアガールをバックに歌ってたりするので一見学園のアイドルっぽいが、歌の内容は超内気で奥手なので、利発的なチアガールへの憧れを夢想する、夢見がちな女の子って感じか。
今年の2月6日で34歳になったというのに、未だにアメリカンハイスクール的なキャラクターを演じる事が出来るトミー。あっぱれです。アメリカのニュースチャンネルCNNでは、ピンクレディーや黒木瞳など妙齢だが美しい方々を例に取り上げ、「なぜ日本人は老けないのか」について特集した番組が放送されたらしい。特にピンクレディーは、全米で幻の冠番組を一瞬だけ担当し(謎過ぎる…)、その番組が未だにカルト的人気を誇りDVDまで全米リリースされてるだけあり、当時を知るアメリカ人が現在のピンクレディーの二人の姿を見ると驚愕するらしい。「何十年も経ってるのに殆ど変わってないやんけ!」と。まさに『ポーの一族』!…この例え使うの何度目だよ(笑)。で、トミーもこういう人達と肩を並べられるよね、あんなに若々しいしさ。


 

炸裂する職人魂-『CHRONICLE4』

2009-03-04 16:54:17 | L'Arc-en-Ciel
先月出たばかりのラルクのPV集『CHRONICLE4』の感想を。つーか今時居るのかね?わざわざPV集出すミュージシャン。PVを収録したDVDがシングルやアルバムに、当たり前のようにパッケージされる時代でしょ?PV集なんて完全に前時代の商品だよね。そんなものをラルクが出すのは、当然『CHRONICLE』というPV集シリーズを残す事にこだわりがあるからだろう。PVを収録したDVDなんて付いてこないからね、ラルクのシングルやアルバムには。唯一「Hurry Xmas」クリスマス限定盤には付いてたけど、基本的には「PVを安売りしてたまるかコラ」って事かしら。時代遅れです。でも素敵です。
各曲のPVとPVとの間に挿入される映像が充実してる、というかこの映像に命懸けてるとしか思えない『CHRONICLE』シリーズ。これこそ時代遅れのPV集を作り続ける最大の理由だよね。99年リリースの第一弾は「HONEY」から「Driver's High」までのハイグレード映像美を誇るPV達を、チープなしりとりムービーで繋いだ衝撃作。21世紀を迎えてすぐに出た第二弾は「誰もが思い描いた未来の暮らし」をシニカルに描く。2007年の暮れに出た第三弾はラルクの曲名が付いた珍奇な商品を陽気な外人二人が紹介していくという、深夜の通販番組のパロディー。この中で最高傑作だと思うのは、やっぱり第一弾。初めて見た時「え、え、え~~!?」と絶叫したよ、ビデオデッキの前で(当時はビデオでのリリースだった)。そして感激した。電気グルーヴみたいなセンスをサラっとさらけ出すラルクに。
さて。今回の第四弾は、始まって数分のインパクトは第一弾に近い。いやぁ、驚いた。「CHRONICLE4」のロゴが出たと思ったら、何故か大漁旗に絵を描く職人が、仕事場で熱心に作業してる映像が淡々と流れ出すんだもん。映像に「大漁旗とは、船を新しく造った時に大漁を祈願して作られる飾り旗の事…」「大漁旗の作業行程は江戸時代から変わらない。全てが手作業…」と真面目なナレーションが被さり、職人の繊細な技に迫っていく作りはまさに「NHKスペシャル」のノリ。そして「今日もまた、新たな一枚が染め上がった」というナレーションの直後に出て来たのは、ラルクメンバーの似顔絵と「L'Arc-en-Ciel SEVENTH HEAVEN」という文字が踊る大漁旗を掲げた漁船が海原を疾走する映像、そして「SEVENTH HEAVEN」のPVになだれ込む…!次に出て来たのは銭湯に富士山などの絵を描く絵師。日本に3人しか居ないという銭湯絵師の中で最も古株の職人が、「一番難しいよ、ごまかしが効かないんだ。同じのは二度と描けないね」と言いながら銭湯の壁に富士山を描いていく。完成したのは富士山をバックに「MY HEART DRAWS A DREAM ラルクアンシエル」という文字が浮かぶ壁画。い、行きてぇ…この銭湯(笑)。まだあるのかなこの絵…。
というように、以下、日本の宝とも言うべき伝統工芸の職人とラルクという、異色コラボが延々続いていく。米粒に般若心経を書き入れる世界に一人だけのミクロ工芸職人、仕掛け花火職人、寿司職人、提灯絵付け職人、凧に絵を入れる職人…よく見たらDVDには「petits films a sept maitres japonais」という文字が。フランス語ですね。去年は世界ツアーもやったし、世界中のファンに向けて日本の職人…いや、匠の、マエストロ達の素晴らしい技を見せ付けようということか。いやいや、日本人の私だってこんなの見せられたら感動だよ。しかもこんな凄い人達が誠心誠意を込めて作ったんだよ?ラルクとのコラボ作品を。たまらんよ…。先代から受け継がれた技を、丹念に磨き続けるマエストロ達。それは、こんな時代になっても微に入り細に入りこだわりまくった高品質なPV集を作ったりするような、脇道に逸れるような事を真剣にやり続けるようなラルクの相変わらずマイペースな活動ぶりにも、ある意味通じるものがあるかもしれない。「形あるものに永遠は無い」と言い、変化し続ける道を選んだのは某EXILEのリーダー。でも、永遠が無いからこそ気を抜けば嫌でも変化してしまうものを、長い年月に渡って保持していく事も、充分カッコいいと思うのです。こっちの方が難しいしね。てことでラルクさんこれからも頑張ってください。

名著?珍著?ラルク本(2)

2009-03-02 19:15:19 | L'Arc-en-Ciel
(1)に引き続きラルク本を紹介。

■『L'Arc-en-Ciel kenのアイアン・メイケン』(ぴあ、2008年2月)
コレはラルク本の中でも超イチオシ。情報誌『ぴあ』に地味に連載されていた、kenとキューンレコードに所属するミュージシャンとの対談を単行本化。チャットモンチー、HOME MADE 家族、FLOW、RHYMESTER、HIGH and MIGHTY COLOER、ポリシックス、Puffyなどなど、同じレコード会社に所属していながらラルクと全く交流の無かったミュージシャンが集結しております。あと電気グルーヴが居たら完璧なのになぁ。で、彼らとkenが「ヘヴィメタル」をテーマに対談する、と。kenがメタル好き、ということでそんなテーマが設定されたらしいが、蓋を開けてみれば特にディープなメタル談義が繰り広げられているわけではなく、色々なジャンルの音楽についての楽しげな会話が中心。kenが事前に対談相手の新譜を聴いて予習して、相手の引き出しを良い感じに開けてあげるという紳士的なスタイルに、「本能のアナーキスト」tetsuの『哲学。』には無い読み心地の良さを感じる。ポリシックス・ハヤシとの対談なんて、ほぼ全編ハヤシのギター遍歴だぜ(笑)。ハヤシは最後に「うわ、何か自分のことばっかりたくさん話しちゃってすみません。ありがとうございました。あー、楽しかったぁ」と締め括った。ken、インタビュアーに向いてるかも…つーか聞き上手なんだろうね。
相手を立てるだけじゃなく、ken本人のオモロ話もチラホラ。チャットモンチーとの対談では「ライブ中に特効で客席に飛ばす銀テープに打たれた事がある」という珍体験を告白したり。「あれ、思いっきり飛ぶでしょ?打つ時にアレの前に立ってたんだよね。そしたらバーンって当たって。近くに銀テープが50メートル分ぐらいグシャグシャと…(笑)」との事。そういえば記念すべきパリでの初ライブでも銀テープに打たれてたね。ちなみにチャットモンチーはラルクの「AWAKE TOUR 2005」に行き、「L'Arc-en-Ciel」のロゴ入り銀テープを拾ったんだってさ。いいなー、私あの手のモノ、未だに拾った事ないよ。
読んでて一番楽しかったのは、ヒップホップという、ラルクとは完全に畑違いのアーティストであるRHYMESTERの宇多丸との対談。色んなジャンルが巧妙に混ざり合うラルクの音楽だが、ヒップホップはラルク的には完全に異物だよね。しかも相手は宇多丸師匠だよ!RHYMESTERは私が聴く数少ないヒップホップ畑の人達だし、「第三会議室」「ウィークエンドシャッフル」ファンである私的に、この対談は夢の共演。
kenと宇多丸…完全に同世代のはずなのに、互いの趣向に全く共通点なさげなのが面白いわ~。EMINEMが流行って初めてヒップホップを聴いたken、思春期にメタルどころかロック自体殆ど聴いてなかった宇多丸。単に趣味の違いってのもあるだろうけど、生まれ育った場所も影響してるのだろう。ヒップホップの人に東京生まれが圧倒的に多いのに対し、ロックの人は東京生まれが超少ないの。関東近郊はゴロゴロいるけど。滋賀県出身のkenに対し、東京都文京区出身の宇多丸。二人が青春時代を過ごした80年代、滋賀にはヒップホップどころかダンスミュージックを楽しむ風潮は無かったのだろう。だからこそ、ken×宇多丸対談はとても面白い。「ドクタードレー、暴力的でかっこいいなぁと思って。それと同じ感じをRHYMESTERの新譜にも感じて」とkenに言われ、素直に喜びまくる宇多丸。これは正直私も嬉しかった。「わぁ、kenが私の好きなRHYMESTER褒めてるよぉ?」的な、よくわからない嬉しさってあるじゃない?
また、ヒップホップの知識が殆ど皆無のkenに対し、その方法論や代表的なアーティストについて宇多丸が自身の音楽遍歴を交えて解説したり、宇多丸が抱えるルサンチマンの原点と言えそうなディスコでのトホホ話、チークタイムを巡る論争など、ワイワイ喋る二人の姿が目に浮かぶ程、対談は盛り上がりまくり。宇多丸は対談を振り返り、ブログで「ナイスバカ会話!」と述べていた(あと、「やっぱこの人はモテる、と思った」とも)。聞き上手のkenと「説明の鬼」宇多丸、二人の相性も良さ気だぞ。この二人で対談の連載とか持ったらどう?ロックの名盤とヒップホップの名盤を交互に紹介しあう、みたいな。
他にも、DISCO TWINSからテクノを学んだり、ガチでメタル小僧だったMCUとハードコアメタル談義に花を咲かせたり、二回り近く年下の女性シンガー相手にジェネレーションギャップを感じまくったり、kenならではの愉快な対談が満載。良い本ですよぉ。

名著?珍著?ラルク本(1)

2009-03-01 21:20:25 | L'Arc-en-Ciel
今日はラルクのメンバーが出した本を紹介。写真集とかは欲しくないから買ってないんだけど、インタビュー本とかは興味深いから即買ってますね。その中で特に注目したい本をいくつか紹介。

■『哲学。』(ソニーマガジンズ、2004年3月)
ラルクのリーダーtetsuが「ベース」「幼少時代」「新世紀エヴァンゲリオン」「L'Arc-en-Ciel」などなど、全69個のキーワード(あの、みなさん「TETSU69」って覚えてますかー?)について語りまくるインタビュー本。本のタイトルにある通り、彼の人生哲学が詰まってますよ、息苦しい程に。本から見えてくるtetsuの人物像は、合理主義者で、神経質で、理屈っぽくて、超ミーハーなのにマニアックな気質も供えている………うーん、なんと言うか、発言パターンに一貫性があまりない。「売れてるものにしか興味ない」と言いつつ、「売れてる物が良い物とは限らない」とも言うんだぜ?多分その場のノリで、思うままに質問に答えたのだろう。なんか、「tetsuさんて○○なんですよね?」とインタビュアーに言われる度に「そんなことないです」と反論してるような感じ。これほどの地位に居ながら、未だに反骨精神を失っていないというのはある意味凄いよな。まぁ「ひねくれ者」ということだろうか。でも仮に「tetsuさんてひねくれ者ですよね?」とか聞いたら「いや、僕は素直な人間ですよ。赤が好きってだけで『エヴァ』のアスカのファンだもん」的な答えが返ってきそう。とにかく「なんか関わると面倒くさそうな人ですなぁ」という印象を受けた。でもその一筋縄では行かない所がこの人魅力であり、それがラルクの楽曲や戦略にも色濃く出ているのは確実でしょう。ポップでサラっと聴けるのに実は微妙に複雑な構造を持ってるのがこの人の作る曲の特徴だし、全盛期ラルクが世に放ちまくった奇怪なCMの数々(風間杜夫がラルクについて語るCMが大好き。あれ、CDの宣伝に芸能人を使う風潮の先駆けだよね)はtetsuの「ちょっと変わった面白いCMを流そう」という発案に基づいてるそうだし。
ファン的に読んでてジーンと来るのはラルク結成秘話などが語られる「大阪時代」という項。昔hydeがロッキングオンジャパンの「4万字インタビュー」(普通は2万字なので特例ですかね。浜崎あゆみも4万字だったな)の時、インディーズ時代について聞かれて「どうだったっけ…」と頼りない返答をしていたが、tetsuはリーダーだけあって当時を詳しく記憶しているようだ。「運命に導かれるまま」としか言いようがない、結成からデビューまでの道程が興味深すぎる。とりあえず、hydeがバンドに入ってくれてよかった!そして幼なじみにkenが居てよかった!別の項ではsakura事件やyukihiro加入の事も語っている。本当に波瀾万丈やねぇ。余談だが、ケンドーコバヤシは、大阪時代のtetsuを良く知る元バンドマンが大阪で経営してる焼鳥屋によく行ってたそうな。

■『ラルクぴあ』(ぴあ、2004年5月)
情報誌『ぴあ』とL'Arc-en-Cielの、まさかのコラボ。当時のアリーナツアー「SMILE TOUR 2004」の会場となった横浜、名古屋、仙台、札幌、大阪、東京のグルメガイドとラルクが合体した奇妙な雑誌だ。悪ふざけ気味のハジけた笑顔でポーズを取りつつ「ここおすすめやで」と案内してくれるラルクのみなさん…なにやってんすか。グルメガイドとしては情報量少なめだけど、街マップや各会場の概要、座席表など、資料として意外に使えたりもするんだよなー。実際、去年と今年に大阪行った時はパラっと読み返しましたよ。「あ、なんばグランド花月ってこの辺なのね~」とか。