拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

月末日記

2008-10-31 08:51:49 | 日記
●HYDE率いるVAMPSのZeppツアー。私がこのライブを見たのは9月中旬だったが、それ以降に行われた大阪・東京のライブでは、「ちょ、それ羨まし過ぎるぞ…」みたいなセットリストが組まれてたようで、かなり切ない。なんかね、HYDEが映画『NANA』に提供した「GLAMOROUS SKY」と、相方のKAZが映画『デトロイト・メタル・シティ』に提供した「SATSUGAI」を、日替わりでカバーしてんだってさ。…どっちも超聴きてー。んー、惜しかったなぁ。ネットとかでセットリストがアップされた時「あ、今日グラスカやってるから明日サツガイだね~」みたいな会話が普通にされてるのをふと目にして、「え、いつの間にかそんな素敵な事になってんの…?」と軽く衝撃受けた。
そんなVAMPSのツアーもやっと終了。でもまだハロウィンライブ2daysがある。VAMPS主催で、土屋アンナやACID BLACK CHERRY、DAIGOのバンドなどと共演し、出演者はもちろん、見に来るファンも仮装しないと入れない特別ライブ。なんか昨日凄かったらしいねぇ、HYDEの仮装…。

●萩尾望都『ポーの一族』全話レビューがちっとも進まない。棺桶に入れて欲しいぐらい大好きな漫画なので、その思い入れを詰め込んだ記事を、時間のある今のうちに残しておきたくて書き始めたのだが、どのエピソードも好き過ぎて文章がまとまらない。書こうと思って作品読み返すと夢中になっちゃうし。そういえばこの前、ブックオフで文庫版の萩尾望都の読み切り集を買ったら解説が浦沢直樹で、「『ポーの一族』は少女漫画版『火の鳥』。これを読まずして漫画は語れない」とか書いてて妙に納得してしまった。なんで今まで気付かなかったんだろ。永遠の存在である主人公、時を越えて紡がれる物語、バラバラに見えて実は全てが繋がっている構成…う~む、『火の鳥』。話自体は全然違うんだけどね。

●ブックオフで萩尾望都や竹宮恵子の文庫版コミックを買い集めている。元々『ポーの一族』『トーマの心臓』『地球へ…』『風と木の詩』など、彼女達の代表作しか所有していなかったが、今年の春から自分の中で続く「少女漫画クラシックスブーム」の煽りを受けて他の漫画にも色々手を出してる。正直ハズレも少なくないが、アタリ漫画は無茶苦茶面白いな。「自分の中での『好きな漫画ランキング』が変動しそう」みたいな。

●もう今年も残り二ヶ月。時の流れのあまりの速さにビビるな。こりゃ、モタモタしてるとあっという間に4月だ…。去年の今頃はラルクの「Hurry Xmas」聴きながらアルバム『KISS』や、アリーナツアーを心待ちにしてたっけ。『HUNTER×HUNTER』はネテロやゼノじいちゃんが出て来て盛り上がってたっけ。今年は今年で色々あった。和歌山行ったり沖縄行ったり京都行ったり大阪行ったり…。宇多田ヒカルの「Kiss&Cry」という曲に「来年の誕生日までにこのままじゃ何も変わらない」という歌詞があって、これはここ1年の私の頭の中に常にあったフレーズなのだが、どうかしら。去年の誕生日よりも少しぐらいは進歩してるかしらねぇ。

「女たらし」連呼

2008-10-27 20:56:59 | 音楽
ブリトニー・スピアーズの新曲のPVが最高にいいじゃねーかよぉ!!

…何度観ても飽きない。12月発売のアルバム『CIRCUS』からの先行シングル「Womanizer」に最近ハマっている。曲自体、異様に中毒性高くて、耳にこびりついて離れないが(ニコニコ動画で流行るかも?)PVもまた味わい深い。昨年のシングル「Gimme more」にはあまりピンと来ず、アルバム『BLACKOUT』も買わなかったが、今思えばあれはチープなPVが悪かったんだな。やっぱ大事だなーPVって。
「Womanizer」のPVでは、冒頭でいきなり全裸のブリトニーが登場。「露出狂としてのブリトニー」を早速思い出させてくれる…露出狂は無いか(笑)。セクシーアイドル?で、次に出てくるのが、キッチンで夫のために朝食を作るブリトニー。「Womanizer」のPVのキモというか見所は、ブリトニーの夫役の男、サラリーマン風のイケメンである。Womanizer(女たらし)なイケメンはスーツを着て会社に行くと、黒髪メガネのセクシー美女(ブリが変装)に執心。ケツを触ろうとして失敗するシーンのアホっぷりが良い。…あんな目の前で堂々と、いけしゃあしゃあとお尻振って踊られたら、「触るな」ってのが無理だと思うが(笑)。次は黒髪ブリがコピー機に座り、生尻の画像を印刷…このシーンは、パパラッチにノーパンのスカートの中を激写されたかつてのブリを思い出すな。生尻画像に見入るイケメン。しかし画像を取り上げられ、ブリに突き飛ばされてコピー機に顔をベタッと押し付けられてしまう。画像を取り上げられた瞬間のイケメンの表情がこれまた良いんですよ、バカっぽくて。
以降も、変装したブリトニーとイケメンサラリーマンの、マヌケで楽しいやりとりが続く。ダンスシーンではかつてのキレの良さが戻ってて軽く感動。カッコイ~(笑)。で、ダンスするブリに付いてまわるイケメンがまた……。このPVは2003年のシングル「Toxic」の監督と同じらしい。あの時も思ったけど、この監督って相手役の男の見せ方上手いんだろうな~。
Britney Spears Womanizer
 
そういえばこの「Womanizer」、なんと10年ぶりに…デビュー曲「Baby one more time」以来のビルボード1位を獲得したようで。よくぞここまで盛り返したもんです…。ヒモ旦那と別れて裁判でモメて突然スキンヘッドにして酒に溺れて交通違反して子どもの親権とられて……一時はどうなることかと思ったが、ここ数年のジェットコースターのようなゴシップ祭を乗り越え、やっと完全復活?まぁ、アメリカのスターとかの過去の経歴見ると「暴力沙汰で…」とか「クスリに溺れて…」とか出てくるからねぇ。それでもみんななんとか復活してるし、ブリもなんとかなったのだろう。最近はお騒がせセレブ仲間のパリス・ヒルトンと引き合いに出されることが多いブリだが、やっぱパリスとは違うよ。パリスは都会育ちの根っからのお嬢だが、ブリはルイジアナからのし上がってきた猛者。しかも子役として幼い頃から芸能界にいるだけあって、長年培ってきたエンターテイメント根性(なんだそれ)は凄まじいものがある。「私は腐っても生粋のアイドルだから、脚光を浴びなければならない!」みたいなプライドがあるんだろうねぇ。私生活が荒んでも、本業ではビシっとキメるのである…去年よりも痩せたしね。
とりあえずアルバムの先行シングルは最高。『Circus』もかなり期待しちゃうぜー。世界ツアーも決まったらしいが、ぜひ日本にも……口パクでもいいよ(笑)。



『BILLY BAT』第2話

2008-10-23 15:51:00 | 漫画
浦沢直樹の新作『BILLY BAT』の感想をネタバレ有りで。


…やっぱ劇中漫画でしたね。正直ホっとしました。連載開始直後から「あの浦沢が、犬が主人公のベタな漫画を連載するはずが無い!何か仕掛けがあるはずだ!」とネット上の浦沢マニア達に指摘されていたが、やっぱり単なるアメコミ風探偵物語ではなかった。『BILLY BAT』第2話は、『MONSTER』や『20世紀少年』、『PLUTO』に次ぐ、新たな長編ミステリーの始まりを予感させるような展開だった。
第2話も初回と同様、古びた雑誌風のレトロ仕様の紙にカラーで掲載された『BILLY BAT』。今回は、この漫画の作者「KEVIN YAMAGATA」のプロフィールが紹介されていた。彼は日系アメリカ人2世の漫画家。また、GHQの通訳係として終戦直後の日本に渡る、という経歴もある。プロフィール紹介の後、ビリーバットの事務所に美女が忍び込んで来て……と、前回の続きのストーリーが始まる。しかし、途中でレトロ仕様の紙質だったのが、突然普通の漫画と同じ紙に変わり、『BILLY BAT』の作者ケヴィン・ヤマガタの物語に切り替わる。「こんなベタな展開で良いのかな…ダメだよな…」みたいな感じで悩みながら『BILLY BAT』の原稿を描くケヴィン・ヤマガタ。
冒頭でいきなり劇中漫画をドーン!と出してから本編に入る…これは売れっ子作家である浦沢だからこそ許された展開の仕方だろう。もし『BILLY BAT』第1話を描いたのが名も無い漫画家だったら、「モーニング」読者は即、見切りを付けるだろう。というかこんな始まり方、編集者が許さないだろう。第1話は、沢山の読者の心を作品世界に引き込めるように、作品の魅力や今後に繋がる伏線などをドバーっと詰め込むのが普通だ。しかし『BILLY BAT』の第1話はそんな展開じゃなかった。それでも浦沢直樹だから、「何かあるんじゃないか」と期待を煽られてしまうわけだ。浦沢漫画読者なら、あの第1話を読んで「浦沢もなんだか冴えない漫画始めたなぁ」なんて感想を持つ人は少ないはずだ。ゆえに浦沢に関する予備知識の無い人は、第2話にはかなり驚かされたかもしれない。そして我々浦沢マニアは、憶測に走るあまりサプライズし損ねたわけだ!…いいもん、『20世紀少年』12巻で心臓が止まりそうになるほどサプライズしたもん(12巻が頂点だったな、あの漫画の。映画では絶対に出来ないであろう演出)。
『BILLY BAT』の作者ケヴィン・ヤマガタは、担当編集者に「とりあえず敵はソ連にしろ。売れるから」と指示されるが、気が進まない。どうやら物語の舞台は1940年代後半。第二次世界大戦でナチス・ドイツや大日本帝国を倒した当時のアメリカは、次なる敵として共産主義国家のソ連を挙げ、冷戦に突入。国内では少しでも反政府的な事を言う人間を「共産主義者だ!」と排斥するアカ狩りが始まる。実際は反政府=アカなんて単純なモンじゃないのだが…。このような社会情勢を受け、アメコミ界でも「ヒーローがソ連と戦う漫画」が流行るようになる。元々アメコミ界は世相をそのまま漫画に反映させるのが常らしく、第二次大戦中はスーパーマンやスパイダーマンがナチスや旧日本軍と戦う漫画が描かれていたらしい。また、911同時多発テロの後は「何故あの日、ヒーローは無力だったか」をテーマにした作品が描かれた。「助けに行こうとしたが、他の現場に居たので間に合わなかった」「間に合わなかったので瓦礫の片付けを手伝った」など、「結局ヒーローもテロには勝てない」みたいな寂しいコミックが沢山発表されたそうな。
ビリーバットの事務所を訪れた美女は、ソ連のスパイだった!みたいな漫画を描かされて浮かないケヴィン。しかし彼は、ひょんな事から『BILLY BAT』と全く同じ絵柄で漫画を描いているらしい日本人の存在を知る。そういえば冒頭の『BILLY BAT』と、ケヴィン・ヤマガタの仕事机に散乱してる描きかけの『BILLY BAT』の原稿、よく見比べてみると別物だということに気付く。絵柄は全く同じだが、コマの進み方が左右逆なのだ。ケヴィンの仕事机にある漫画は、左→右、つまり日本の漫画と逆向きにコマを読み進めていくスタイル。じゃあ、第1話、そして2話で我々が読んだ漫画を描いたのは?…ってケヴィンだよな、表紙に名前書いてあるし。じゃあこれ、ケヴィンが何らかの理由でアメコミ界でなく、日本向けに描いた漫画?それともケヴィンと同じ絵を描く謎の日本人作家が描いた漫画?だとしたらそいつは何故「ケヴィン・ヤマガタ」を名乗る?………こ、このノリ!いつもの浦沢だ(笑)!嬉しい?もうウンザリ?とりあえず連載追っかけます。

名曲「綺麗ア・ラ・モード」

2008-10-17 18:27:40 | 音楽
こりゃもう別格だろう。中川翔子の新曲「綺麗ア・ラ・モード」は、これまで彼女が歌ってきた曲たちの中でもダントツの名曲。今まで出してきた曲は、この曲の世界を表現する力を付けるための練習曲だったんじゃないかとすら思えてしまうよ。
ご存知の通り、しょこたんはアニメ、漫画ヲタクという異色のグラビアアイドルとしてブレイクした。2006年の夏には「Brilliant Dream」で歌手デビューしたが、この曲も本人の趣味を反映したのかアニソン風のキャッチーでわかりやすいメロディーの曲。以降のシングルもそのようなアニソン路線を連発し、実際にいくつかの曲はアニメの主題歌に起用された。本人の趣味に基づいて制作されたアニソンクラシックスのカバーアルバムを2枚出したりもした。今年3月に発売されたアルバム『Big☆Bang!』も、やっぱりアニソンみたいなパワフルでポップな曲が集まった作品だった。『Big☆Bang!』を聴いた時は、彼女の趣味にぴったりな曲が並びまくっていたので「もう1stにして全てをやりつくしてしまったのでは?」と思ったものだ。こんなに本人の好きなタイプの曲を沢山歌えたら歌手冥利に尽きるだろう。以降はこの1stアルバムの楽曲たちと似たような曲を連発していくのだとしたら、私の「アイドル歌手・しょこたん」への興味も薄れていくだろう…。
実際、アルバム後に出たシングル「Shiny gate」「続く世界」は、一聴して「あー、またこういうタイプかぁ」とがっかりしてしまった。特に「続く世界」は「もういいよ『グレンラガン』タイアップでロックってパターン…」と落胆。こりゃ2ndアルバムは期待薄いぞ…。
なんて思ってた所に突如現れた新曲「綺麗ア・ラ・モード」。作詞は松本隆、作曲に筒美京平。邦楽ポップス界の大御所コンビによって提供されたこの曲は、今年のシングルの微妙っぷりが嘘のような出来の良さ。秋~冬の始まりの時期の空気感をそのままパッケージングしたような、往年の歌謡曲テイスト全開の名曲である。忘れてた、しょこたんはアニソンだけじゃなくて歌謡曲も好きだったんだよな。そんな人が、この黄金コンビから楽曲提供を受けるなんて…幸せ者だな、本当。この「綺麗ア・ラ・モード」のような歌謡曲趣味全開の曲、今後どんどん歌って欲しい。
実はサビをCMで聴いただけの段階では、そこまでピンと来なかった。「黄金コンビが楽曲提供っつっても、結構普通のバラード系の曲じゃん」と、恐れ多くも思ってしまった。しかしMTVでフルで聴いてみて、放心。レトロな印象のピアノのイントロや、言葉の一つひとつをじっくりかみしめるように歌うAメロ、胸をキュンと締め上げながら少しずつ盛り上がるBメロ…この流れをきちんと踏まえてサビを聴いてみると、もう目には涙が…。ふわふわとしたメロディーと呼応する優しくもグルーヴあるベースラインもたまらない。着うた全盛で、楽曲を「サビVer」とかパート毎に切り売りするような今の時代に完全に逆行する曲だが、こういう、全体の流れの美しい曲こそヒットするべきだろう。
それにしても、しょこたん、本当に歌の表現力がレベルアップしたな。秋風のように爽やかで、秋冬メイクのように艶っぽくて。大好きな歌謡曲の世界を全身で堪能してる感じ。あと、沢山のライブやイベントでボーカルを鍛えたせいか、サビのファルセットの部分がとても綺麗に出てる。「ストロベリmelody」での、可愛いけど固くて微妙にぎこちないハイトーンボイスから、大分成長してる。まぁ、あれはあれで「不器用で内気な女の子感」が出ててよかったのだが、今の実力ならもっと素敵に「ストロベリmelody」を歌いこなせるだろう。
というわけで、久々にしょこたんのシングルを買ってみようと思う。余談だがこの曲とタイアップしてる不二家LOOKのチョコレート「茶A La Mode」も美味。上品な味よ。


浦沢直樹新連載『BILLY BAT』

2008-10-16 20:13:42 | 漫画
浦沢直樹が今日発売の講談社「モーニング」で新連載を始めた。『20世紀少年』完結以降、月一連載の『PLUTO』に全力投球してきた浦沢が、またもや二足の草鞋体制に入った。そもそも、彼のキャリアは常に連載掛け持ち状態。『YAWARA!』と『MASTERキートン』、『HAPPY!』と『MONSTER』、『MONSTER』と『20世紀少年』、『20世紀少年』と『PLUTO』…これらを別の雑誌に同時連載してきた浦沢。しかしその怒涛の仕事量が祟って体壊したりとかもしてるから「あぁ、やっと『20世紀少年』終わったことだし、これからは休養しながら『PLUTO』一本に絞って頑張っていくんだろうなぁ…」なんて思ってたが、浦沢…まだまだ描くらしい。最近は描くだけじゃなくて実写版『20世紀少年』の監修や歌手デビューなどさらに多忙。……歌手として11月にアルバム出すんだってね。何してんすか先生(苦笑)。買わねーからな!!
さてさて肝心の新連載『BILLY BAT』だが…物凄い変化球だ。なんとアメコミ風の漫画。舞台はアメリカ。主人公は………犬。「のらくろ君」と「バットマン」が合わさったようなルックスの犬・私立探偵「ビリーバット」が難事件に挑む…みたいな話になるのか…?主人公が犬で、周りの奴もみんな犬。しかし犬達は皆「ザ・浦沢漫画」な表情を持ち、非常に人間くさい。そんな擬人化された犬たちが活躍…していくのかな?タイトルロゴや作品の雰囲気がなんとな~く懐かしの名作『MASTERキートン』を思い出させられるのが興味深い。しかしまだ第一話なのでよくわからないな………ってそれ珍しいじゃないか。過去の浦沢作品たちは大体、第一話で「うっっわ、なにこれ超おもしれぇ!!」と読者の期待を煽りまくってきた、ロケットスタート型漫画だったのだから。でも『BILLY BAT』は変化球過ぎて面白い漫画かどうかはわからない。期待は膨れ上がるばかりだけどね。
編集部による煽り文によれば「失われたアメリカンヒーローが浦沢直樹の手で蘇る!!」。浦沢直樹は過去に、スポーツ漫画、考古学漫画、ミステリー漫画、空想科学冒険漫画、手塚治虫トリビュート漫画と、あらゆるジャンルの漫画を描いてきたが、次なる挑戦はアメコミ風漫画、ということか。彼のチャレンジ精神というか、新たな漫画を目指すフロンティアスピリットは凄まじい。
しかし『BILLY BAT』は、単なるアメコミ風漫画とは到底思えない。この漫画は「KEVIN YAMAGATA」という人物が作者としてクレジットされており、作中には過去に出たらしい『BILLY BAT』の既刊の広告も載っている。そして紙質は昔の漫画雑誌風の古びた加工がなされている。まるで『MONSTER』に出て来た、登場人物フランツ・ボナパルタが描いた劇中絵本作品『なまえのないかいぶつ』みたいな感じだ。つまり、『BILLY BAT』も『なまえのないかいぶつ』同様、劇中作品?だとしたらこの作品の背後にはどんな物語が?…それとも、あくまでもアメコミ風漫画?浦沢直樹だけに、何か仕掛けがあるんじゃないかという期待が嫌でも膨らむけどな。つーか「KEVIN YAMAGATA」って誰だよ。日系アメリカ人?もう、気になるじゃんかよう!

…というわけで、久々に浦沢直樹の「新連載」がスタートしたので(2003年の『PLUTO』以来)、この機会に読んでみてはいかがだろうか。浦沢ファンは単行本派が多いだろうが、週刊連載で、もどかしい思いを抱えながら連載を追うってのも悪くないよ。

90年代少年マガジン的熱さ

2008-10-04 10:34:51 | 漫画
『HUNTER×HUNTER』26巻を読んだ。26巻収録部分は当然ジャンプでチェック済み。多くの読者を論争に巻き込んだキルアの「『それはどっちの?』問題」の真意や、やっと再会したゴンとネフェルピトー、ピトーの急激なデフレ(?)など、今回も重要ポイントの多い内容だったが、この巻の多くの部分を占めるはナックル・シュートVSユピーだ。
細部に渡る駆け引きや心理を逐一追った描写に沿って進む両者のバトルは、「あの、終わってから結果だけ教えてもらってもいいっすか?」と思わなくもなかった。…長いよな、本当。で、ここの部分が『HUNTER×HUNTER』に珍しく暑苦しいセリフ満載。「生きろよ!!シュートォ!!死ぬなァアーー!!!」「必ずオメーの分も!!ぶち込んで来っからよ!!!」「畜生ッ!!!あの野郎…オレを…オレを…ゴミみたいに見やがった」…この熱さは『ジャンプ』どころか『マガジン』の血みどろ漫画のノリだ。しかも最盛期だった90年代の。
「友情・努力・勝利」なんてフレーズを掲げてるから、『ジャンプ』は少年誌で最も熱い漫画のような印象がある。しかし『ジャンプ』の熱さは常に何処か少年的であり、ある意味クールと言ってもいいほど爽やかなものだ。主人公達には思春期的なモヤモヤは薄く、スカッとしている。無邪気な子供がそのまま大人になったような『ドラゴンボール』の悟空が典型例だろう。そして『HUNTER×HUNTER』のゴンも。一方『マガジン』の熱さは思春期的。コンプレックスにも性欲にもドロドロにまみれたある種のやるせなさが、『マガジン』、特にヤンキー系の漫画の熱さに繋がっている。そしてその熱さは、時に『ジャンプ』の熱血路線を凌ぐのだ。ヤンキーの世界なんて自分には無縁だけど、何故か入れ込んでしまうのだ。思春期的だから。
ルックスからして『マガジン』や『チャンピオン』のキャラっぽかったナックルの熱さは、『HUNTER×HUNTER』26巻で遂に沸点に達した(多分)。強大な敵・ユピーに、シュート共々ゴミ扱いされたナックルは、その屈辱感を払拭しようとにブチ切れる。それは90年代の『マガジン』を彩った、『カメレオン』『湘南純愛組!』等でのヤンキー同士のバトル、『特攻の拓』の壮大な「族」の抗争、『サイコメトラーEIJI』でのチーマー相手の殴り込みシーンを彷彿とさせる。ただ、『HUNTER×HUNTER』には常に第三者目線のナレーションが挿入されているので『マガジン』的熱さは緩和されているが。
それにしても、『HUNTER×HUNTER』って本当に色んな種類の漫画の要素が混在してるなぁ。キメラアント編は『寄生獣』との類似がよく指摘されてるし、絵的にはザ・『ジャンプ』な奴、『コロコロ』っぽい奴、渋い劇画っぽい奴、アニメキャラっぽい奴、少女漫画っぽい奴など様々だし、必殺技の名前はオカルト映画・漫画・小説からの引用だし、詳しくないからわかんないけどゲームからの引用も多いだろうし……。冨樫って本っっっ当にオタクなんだなぁ…(『テレプシコーラ』とかもチェック済みなのかな)。そりゃ漫画描く暇ねーわ(失笑)。
…そういえば、コムギを治療するピトーを見て、瞬時に状況を把握したキルアの思考力は「この女、王と子作りしたんだろーか…」ぐらいの考えにまで及んだのだろうか。王と軍儀やってたなんて知らないわけだし。


■「それはどっちの?」問題
「計画を実行しに行こう」「ピトーを殺しに行こう」のどっちか。幼い頃から人殺しをさせられ続けてきた闇の子供・キルアは、光のようなゴンの心に何度も救われた。故にゴンの心がピトーへの復讐心で満たされて一気に闇に転じる事を恐れている、というか寂しいと思っている。しかし、変わり果てた姿になったカイトを見たゴンが「アイツはオレ一人でやる」と言った場面、モラウに「俺を仇と思って殴れ」と言われた場面などのゴンの瞳は暗く深く沈んでいる。特に「オレ一人でやる」の部分が重要。ここからゴンの瞳の変化が顕著になり始めるから。そしてピトーの居場所を知り、ピトーと対峙した場面のゴンの瞳は復讐する気マンマン。「あー、完全にダークサイドに落ちてもうた…」と悲しげな顔をするキルア…。だから今後は二人の仲が決裂するか、逆にキルアが光に転じて、ゴンを闇から救う、とか?
…あぁ、でもこれじゃキルアが死にかけた時の「役に…立てな…か…」と上手くつながらないな。あ、これは「キルアはいいよね、関係ないから」発言とつながるのか?…もういいや…。