拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

『ヒーローショー』感想殴り書き

2010-06-13 02:49:33 | 映画
井筒監督『ヒーローショー』感想殴り書き。私は公開二日目に行ったんだけど、劇場ガラガラだった。ジャルジャルファンらしき若い女の子や井筒ファンらしき男性が居たんだけど、計15人居るかいないか?…まぁでも、私は凄く好きな映画よ、『ヒーローショー』。全部観たわけじゃないけど、自分が今まで観た井筒作品ではダントツ一番。犯罪を犯した若者を描いた作品だが、紋切型の「最近の若い連中は…」的なオッサンの愚痴映画ではない。大変なことをやらかした奴らが袋小路に追い込まれる様をドラマ性そっちのけで冷静に観測した、息苦しい映画だ。
些細な揉め事が集団リンチ→殺人に発展。思いがけず事件を起こしてしまった当事者たちの行動は…?というのが映画の大まかな内容。映画と同等の事件を起こした経験が無くても、物事が悪い方へ悪い方へ流れていくのを止めることができず、茫然としたり失望したり後悔したりした経験、誰にでもあるのではなかろうか。で、結局事態は解決せず、後味の悪さだけが残る。とことん救いの無い展開はエンターテイメント失格なのかもしれない。でも実際、一度起きてしまった事は無かったことにはならないし、全てを解決してくれる救いのヒーローなど居ない。そんな現実を『ヒーローショー』はきちんと描く(ただ、ネットで感想みてると、あのラストをハートウォーミングなものとして捉えて「甘い!」って言ってる人が結構いるんだよね。違くねぇ?)。私、『アリスインワンダーランド』のことは多分半年後には綺麗に忘れてるけど、『ヒーローショー』のことは忘れられない。
『ヒーローショー』の登場人物たちは、並びだけ見ればそこそこイケメン揃いで、それこそ『クローズ』や『ルーキーズ』や『ドロップ』っぽい。しかし『ヒーローショー』のイケメン達には、観る者がスカっとしたり、カッコ良と思えたりするシーンは一切用意されてない。それどころか、観客の感情移入を拒むような最低な事ばかり繰り返す。延々と痛々しい暴力を続けたり、責任を平気でなすりつけたり。「仲間同士の絆」なんてもちろん無いから、これだけ男が沢山出てても「チーム男子萌え」とか無理だろう(よくわからないけど…)。『ヒーローショー』というタイトルだけど、ヒロイックな人物は誰一人存在しない。とにかく本当ダメな奴ばっかり出てくるんだけど、みんな水を得た魚のように活き活きと『ヒーローショー』の世界を生きていた。泥だらけになりながら(矛盾してる?)。井筒監督の、役者たちを輝かせる手腕は相変わらず凄まじい。
特にジャルジャルの二人の役への入り込み。ジャルジャルに俳優としての才能があるかどうかは判断不能。多分井筒監督だからこそ二人があんなに輝いたんだろうな。あの無茶苦茶なエリカ様も『パッチギ』では完全に可憐な美少女だったからねぇ。芦屋育ちのボンボンで筋肉ムキムキ、同世代の若手芸人よりもそこそこ華のある青春を謳歌したであろう福徳は、金無し彼女無し才能無しの冴えない芸人志望の青年を見事に体現。そして後藤。「何の特徴もないルックスやな…」と東野幸治に言われ、温かい家庭に育った色白ヒョロヒョロの後藤、まさか「自衛隊上がりで地元で超有名な元ヤン」がハマるとは。ケンカのシーンで、ターゲットを「こんのヘタレ極道がぁぁ!」と怒鳴り散らしながらボコボコ殴る後藤ナイス。でも後藤がカッコいいのはそのシーンまでで、ストーリーが進むにつれ、他の野郎どもと共に迷走していく(ヒーロー性を背負ったキャラなのかな?と初めは思ったんだけどね)。野郎ども…みんな最低だけどいい味出してた。まず、渋谷で出会い系サイトを経営する後藤の自衛隊時代の悪友の新庄似の男!悪だくみを思いつき今回の事件に油を注いだ彼の調子こきっぷりとその後の無策っぷり。情けねぇ!先輩の女に手を出して事件のきっかけを作ったチャラ男のテキトーな言動の数々も印象的だ。調子乗りすぎて後藤にシバかれるシーン、「俺、中国人の俳優にツレ居るけど」はクリーンヒット。そして後藤の舎弟。全ての発言が奇跡的に緊張感が無く軽薄。リンチの末、相手が死んでしまえばサラっと「埋めます?」。大金が必要となれば「臓器とかって売れます?」。車から殺人の足がつくのでは?となれば「解体やってる俺のツレにバラしてもらいます?」。この男、「どっかで見た顔だなぁ」と思ったらHYDEファンの黒歴史(苦笑)映画『下弦の月』の三浦君!あの時の優等生君が、数年後、立派に軽薄なヤンキーを演じている…素晴らしいね。あと、鬼丸の弟…出番は少ないが観る者をゾっとさせる圧倒的な存在感。
映画の舞台は、序盤は東京だが、メインとなるのは千葉県勝浦市。海とジャスコとカラオケがレジャースポットの田舎町だ(映画で得た情報で書いてますすみません)。私は映画を観て、勝浦のどん詰まり感に妙に心惹かれてしまった。「魅力的!この町に住みたい!」とかは全然思わないんだけど…なんでだろうねぇ。湿った潮風の似合う勝浦。そこで迷走する野郎ども。これらの要素に、何故か惹かれるから何度でも観たくなるんだよね。私既に二回観たしね。海があれば私の住んでる町だって勝浦みたいなもんだけどねー。ちなみに、勝浦のシーンで使った衣装は全て勝浦(のジャスコ?)で仕入れたらしく、チャラさ全開。勝浦のヤンキーのカリスマである後藤は黒のジャージでバシっとキメてます。新庄も渋谷から勝浦に戻った瞬間にヤンキー丸だしの豹柄着る。久々に地元で後藤と再会し「やっぱ勝浦ジャージだよなぁ!」…結構イケメンなのに!
それにしても。事件から一夜明けて実家の豪邸に帰った新庄の気だるい表情はリアルだった。心身ともに疲弊しきってるのに、不安を押し殺して何事も無かったフリをしようと見せる姿の気まずさ。リビングで大画面を見つめ、事件の憂さ晴らしをするが如くXBOX360に興じる新庄弟もリアル。あと、福徳が寂しく一人暮らししてる部屋が「あるあるある!」って感じで、美術スタッフ凄いなぁと思った。キッチンの汚れ具合、グチャグチャな家具や小物の配置、無造作に置かれたプラモデル、寂れたポスター…。でも福徳がハマってるパソコンの「妹ゲーム」は古臭く感じた。彼の孤独を象徴するアイテムの一つなんだけど、もっとこう…何かなかったかなぁと。パソコンじゃなくDSだったらもっとリアルだったかも。
あと不満なのは音楽。主題歌がピンクレディーの「SOS」じゃ不自然過ぎる。監督の年齢を考えると奇跡的なぐらい現代の若者を捉えて撮ったのに、なーんでレトロな曲選ぶんだよ。ストリート感溢れるアンダーグラウンドシーンの若手ラッパーとか使って欲しかった。作中では、ヤンキーがカーステで爆音で聴いてる音楽にヒップホップがチョイスされてるが、「この国が好きな奴は手挙げろ」という不愉快なリリックで(笑)。「若い奴は大した考えもなく右傾化するんだ」的な、井筒監督の偏った視点を感じて、ちょっと…。ちなみにあの曲を提供した人はそのような思想を持ってる人ではなく、「国粋的な曲を」という井筒監督のオーダーに合わせて作ったそうだ。うーん…。

最後に。後藤が福徳にバット渡すシーン。ジャルジャルファンなら某コント思い出して笑うよね。他、後藤にボコられる福徳や、「(福徳の)相方さんですか?」と聞かれ「違います」と即答するシーンなど、ジャルジャルの二人だからこそ笑える、本来なら映画にとってノイズでしかないような部分まで好きになってしまった私は、『ヒーローショー』に関してかなり盲目的になっていると思う。

『アリスインワンダーランド』をIMAXで

2010-04-29 20:54:02 | 映画
『アリスインワンダーランド』をIMAX3D方式で観てきた。色々な方式の3D上映の中で、ネット上で最も評判の良いのがIMAX。スクリーンがでかくて迫力が凄いとか、メガネが軽いとか、メガネでスクリーンを観てもあまり暗くならないとか、鑑賞上の快適さの評判は群を抜いている。ライムスターの宇多丸も「近くにIMAXシアターがあるなら絶対行くべき」なんて言ってたし。日本に4つしかないIMAXシアター。その中の一つが運よく近場にある…行くしかないだろ。
IMAXのある109シネマは激混みだった。おそらくアリス目当ての人々が長蛇の列を作ってた。そんな長蛇の列をスルーし、ガラガラのネット予約向けのチケット発券機へ…予約最高。去年『エヴァ』公開初日に行った時、「駅前から微妙に離れた所にある不便な109シネマがこんなに混むのは『エヴァ』絡みの時だけだろーなー」なんて思ったが…3D映画ブームと「IMAXは凄いらしい」という口コミのおかげかな。私だって、宇多丸のIMAX激押しがなければ、駅から15分ぐらい歩かなきゃならないシネコンに、わざわざ、どこの映画館でもやってる『アリス』なんぞ観に行こうなんて思わなかったよ。
で、IMAXで観た『アリスインワンダーランド』の感想…「3Dじゃなくても良くね?」…見終わった後、大勢の人が異口同音でそんな感想言ったはず。私も言ったし、聞いたし。『アバター』は「3D映画革命を起こすんだ!」という意欲満々の映画だが、『アリス』は「せっかくだから3Dにしてみました」って感じの映画。2Dでも全然楽しめそうだ。初めに流れたIMAXのイントロダクションムービーみたいなやつや、ディズニーのロゴの映像は素敵だった。あの数分は映画本編と違って、3Dの真髄を見せる!みたいな気合いを感じた。
音は良かった!ズシンとくる低音。「これがIMAXか、さすが〜」と思ったよ。あと、画面、暗くなかった。私の初3D体験映画『くもりときどきミートボール』の時や『アバター』の時は画面が不自然に暗いしメガネ重いしで少し辛かったけど、その点IMAXは良かったなぁ。ただ「IMAXってこんなもんか〜」ってのがわかったので、今後は、『アバター』並に3Dでの視覚効果が重視される映画が出て来ない限り、わざわざ足を運ぶことは無いだろう。
『アリスインワンダーランド』、ティムバートンが好きならずっとわくわくしながら観てられるだろうし、『不思議の国アリス』に造詣の深い人が観たら、アリスのキャラと雰囲気を借りて作っただけの適当映画って感じだろうね。私は、相変わらずおいしい役回りのジョニー・デップに少々いらついたものの(あんまり好きじゃないので…)、普通に楽しめた。……ジョニー・デップが赤の女王側だったらもっと味わい深くなって、彼への好感度も上がったかな。私は赤の女王びいきだから。あと、白の女王のお城に咲いてた桜が綺麗だったなー。
総じて、観ても観なくても損しない、『スパイダーマン3』みたいなGW映画。お祭り気分を味わいたいなら長蛇の列に並んで3D観に行くといいでしょう。ただしIMAX以外の3Dしか近場にないなら(ない人の方が大多数だよね普通)、2Dで観てもいいのかも。特にXpanD方式は要注意。メガネ重いし、金と体力の無駄になるかもしれません。字幕/吹き替えも事前にきちんとチェックしましょう。GWのお祭り感とか興味無いならレンタルで十分でしょう。『第9地区』とか『タイタンの戦い』行った方がいいんじゃないの(観てないけど)。

そういえば、シネコンの隣にZeppNagoyaがあるのだが、そこにも長蛇が出来ていた。10代〜40代ぐらいまでの男達でごった返す異様な光景。どうやらSKE48のライブだったらしい。「異様な」なんて書いたけど、VAMPSのライブの時も異様さでは負けてなかっただろうな。黒の集団だもの。



追記
「インシンクを日本語で(しかも10年近く遅れて)」って感じだが…好きなんだよなぁ(笑)。


『クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』感想

2010-04-25 12:24:29 | 映画
『クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』の感想。『アリスインワンダーランド』と迷ったが、あれは大ヒット作だからロングランするだろう、と。でもしんちゃん映画はゴールデンウィーク終わるといつのまにか公開終わってるイメージがあるから早めに見ておこうってことで。何しろ今作は前評判がとても良かった。タイトルからしてもうね。「ん?しんちゃん結婚すんの?つーかタイムスリップもの!?」とテンション上がったもの。そのような人は他にも沢山いたようで、興行収入は去年より大分良いみたい。
で、内容は………惜しいなー、勿体無いなー、という感じ。良い所は凄く良いのにダメな部分はとことん気になる。「2004年公開の『嵐を呼ぶ! 夕陽のカスカベボーイズ』以来の良作」というのは認めるが、それは近作がダメダメ過ぎたからだもんな。本当、良い所は物凄く良いんだ。まず世界観が良い。しんのすけがタイムスリップする数十年後の未来世界『ネオトキオ』。隕石の衝突(!)で気候が変わり、太陽の光が一日中届かぬ暗く荒廃した世界である。ここを支配するのが今回の悪役である電機メーカー社長・金有(かねあり)。暗くなってしまった街に自社の電気製品を大量投入し、ギラギラの電飾が眩しい未来都市につくり変えてしまった。これが、『ブレードランナー』に出てくるような、きらびやかだけどうさんくささもプンプン漂うゴテゴテの未来都市。ギラギラしてるのは都市の中心部だけで、その周辺はこれまた『ブレードランナー』の裏路地のように薄暗い廃墟のような建物がゴチャゴチャ蠢いている。絵に描いたようなディストピアっぷり全開の世界観は「裏オトナ帝国」とでも形容したいぐらいだ。
そしてキャラが良い。しんのすけ一行(風間・ネネ・マサオ・ボーちゃん。今回は野原一家は参加せず)を未来世界へ連れていく未来の花嫁タミコの、恋人・しんのすけへのベタ惚れっぷりはバカバカしくもロマンチック。大人になったしんのすけも素敵だ。大人なので「オラ~だゾ」なんてしゃべり方はしてないが、言葉選びのチョイスはしんちゃんそのもので絶妙なおちゃめ感がある(いや、冷静に見たらダメな大人なのだが…)。また、大人になった風間・ネネ・マサオ・ボーちゃんも登場。ディストピアな街に住む彼らは心の荒んだ大人に成長していて、とても味わい深かった(あ、ボーちゃんは違ったな)。そして未来のひろし&みさえ。老けこんで酷く笑えるルックスになってた二人だが、過去から来たしんのすけ一行を温かく迎える姿には和まされた。
で、味わい深いキャラが揃っているのに…全然活かしきれてないんだよな…。ダメ~な感じの風間くん達がイマイチ活躍できないのは仕方ない。でも、過去からやってきた子どもの頃の自分と再会した後はもうちょっと熱い展開になっても良かったのに。あんな中途半端な形で大人になった彼らを出すんだったら、大人になった春日部防衛隊メインにして一本長編作ってくれー。
悪役・金有社長に魅力が全くないのもダメだったな。しんちゃん映画の悪役って基本嫌な奴ばっかりなんだけど、過去の良作を振り返ると面白過ぎるギャグシーンが用意されてたり、同情の余地があったり、ヴィジュアルが異様に良かったり、逆にヴィジュアルがマヌケ過ぎたりと、何かしらの魅力があった。でも今回は本当にただの嫌な奴。未来のしんのすけの花嫁タミコの父親である強欲な金有社長。金有は、金にならないタミコとしんのすけの結婚を邪魔するため、あの手この手でタミコを追い詰める。「お前本当に父親かよ!」というツッコミすらアホらしくなるほど酷い仕打ちをしまくる、型にはまりきった悪役ぶりに呆れてしまった。娘に対して愛情のかけらもない父親を悪役にするのは別に良いんだけど、キャラの作りこみが薄っぺらいとひたすら不愉快なだけだぞ。「可愛い娘をしんのすけなんかと結婚させてたまるか」みたいな動機が見え隠れしてれば全然良かったのになぁ。あるいは、『カリオストロの城』方式で、父親ではなく大金持ちで性格悪いフィアンセがタミコとしんのすけの恋を邪魔するとか。それなら彼がただの薄っぺらい嫌な奴でもまだ納得できたよ。あと生身のしんちゃんVSロボット、あればっさりカットしてもOKだと思う。グダグダ。
ただ、『オトナ帝国』がウケて以降しつこく続いてきた「親子愛押し」から脱却してたし、花嫁強奪モノクラシック映画『卒業』のパロディーのようなシーンなど、個人的に笑いが止まらなかった場面も沢山あった(ハゲオヤジの頭の上で仁王立ちしたしんちゃんが真剣に「その結婚待った!」みたいなこと言ってるシーン、誰も笑ってなかったけど妙に私のツボにハマってしまい笑い堪えまくった)。そして、大人しんちゃんが子どもしんちゃんに言ったセリフ。「好きに生きろよ」…これ良かったなぁ。原作者、臼井儀人さんが亡くなってもアニメは続行すること、原作者の手を完全に離れてもしんちゃんの世界はまだまだ広がっていくことを、すぐさま思い出してジーンとした。エンドロールも感動的だった。

『しんぼる』

2009-09-20 01:37:18 | 映画
松本人志監督『しんぼる』を観た。『大日本人』の時に行ったミッドランドスクエアシネマで観たんだけど、公開してまだ一週間しかたってないのに、しかも土曜日なのに客が半分ぐらいしか入ってなくて「大丈夫かー???」って感じでしたね。しかも『ダークナイト』やってた劇場と同じの、小さめの所で。で以下、ネタばれ有りの感想。


なんか、「尼崎が生んだお笑いエンペラー」(もちろんドリームマッチの時の松ちゃんのキャッチフレーズ)が生み出す映画がコレでいいの?って感じ。白い空間で松ちゃんが絶叫しまくる「修行」パート、びっくりするぐらい笑えなかった。もちろん一切笑わなかったって事は無いけど、90分ぐらいの『しんぼる』観ても、ジャルジャルのコント一本分も笑えなかった…まぁ、それは私がジャルジャル大好きだからなんだけど。でも、松ちゃんが10年前にリリースしたコント集『VISUALBUM』と比べても、だいぶ笑いのクオリティ落ちてるような。男性の「しんぼる」を模したスイッチを押すと、色々な物がポンポン出てくるという展開は、『VISUALBUM』収録の『マイクロフィルム』を思い出した。香港マフィアに蹴られるたびに尻から物を出す男の話。肛門からウ○コまみれのゲーム機やMDウォークマンが飛び出すたびに大興奮する松ちゃん演じるマフィアのボス…ってほとんど同じじゃん『しんぼる』と!なのに『マイクロフィルム』の1/10も笑えなかったよ。笑いたかったけど、脱出劇にイライラしてばっかりだった。「もっとテープ有効活用しろよ!」って皆思ったよね。とにかく「これが、私の大好きだった松ちゃんの生み出した作品かぁ…」と思うと、ショックですらあった。思い出すなぁ、バイトして貯めたお金で『VISUALBUM』のDVD-BOXを買った高3の春…。もうねぇ、長編映画はいいや…。15分くらいのコント数本の、オムニバスとかならよさそうだけど。
松ちゃんが長編映画に向いてないのはよくわかった。じゃあ現時点で、松ちゃんが一番イキイキしている番組は?私はやっぱ『ダウンタウンDX』だと思うなぁ。出演者たちのトークに対して松ちゃんがさりげなく発する言葉はいちいち面白すぎる。「今更何言ってんだ」って感じ?でも、注意深く松ちゃんの発言をチェックしてると、改めて「松ちゃんおもしれぇなぁ~」「上手いこと言うなぁ~」とか思っちゃうよ、バカみたいに。出演者のボンヤリ発言に厳しくツッコミを入れたり、優しく包みこむフリしてボケを上乗せしたり、キレる浜ちゃんを止めようとしたり……『DX』での松ちゃんのアクションの全てから目が離せない。
現在30代の中堅芸人たちは「いまだに先輩たちが健在だから自分たちは冠番組が持てず、ひな壇芸人として生き延びるしかない」みたいなことをよく言っている。彼らが『アメトーーク』でぶっちゃけたバラエティで生き残るために身に付けたひな壇芸人テクは、とても興味深かった。しかし『DX』で、一人でさりげなく場を盛り上げまくる松ちゃんを見てると、ひな壇芸人たちの存在価値を疑いたくなる。それぐらいイキイキしている。輝いている。あー、あと最近全っっ然放送されないから忘れかけてたけど、『ガキの使い』でのフリートークでも輝きまくってたよな(どんな企画よりもフリートークが好き)。映画なんてもうやめて、30分フリートークの『ガキの使い』の収録やってくれよー。
 
そういえば。メキシコレスラーのリングネーム「エスカルゴマン」て、『ガキの使い』でダイナマイト四国と戦うことになってた奴だよね。

傾向と対策?

2009-03-11 00:14:27 | 映画
9日の日記にも書いたけど、今1番気になる映画は色んな意味で『DRAGONBALL EVOLUTION』。これはぜひ劇場に足を運び、現場で観察したいな、みんなの反応を。みんな映画が終わった後どんな感じになるのかな。本気で憤慨したりするのかな。それとも「意外に悪くなかったじゃん?」なんて言いながら映画館を後にするのか。
さて、『DRAGONBALL EVOLUTION』を迎え撃つつもりの日本人のスタンスは、以下に分けられると思う。

(1)原作がどう実写化されてるか純粋に楽しみな原作ファン
(2)実写化で原作がどう改悪されるか恐る恐る、もしくは喧嘩腰で確かめに行く原作ファン
(3)初めからネタ映画として観る気マンマンの原作ファン
(4)何を出されても食う気マンマンの呑気な原作ファン
(5)監督がジェームズ・ウォンなので実は結構期待してる原作ファン
(6)原作には関心が無いけど話題作だから観に行く人
(7)原作には関心が無いけどジェームズ・ウォン監督や出演者のファンだから観に行く人

多分こんな感じ。私の場合は(3)(4)(5)だな。『ドラゴンボール』は幼少の頃から大好きだが、今は漫画としてではなく鳥山明のイラスト集として楽しんでるので、原作のストーリーへの思い入れは結構薄い(だから話が面白くて絵が超絶にカッコ良過ぎる『Dr.スランプ』こそ傑作だと思う)。かめはめ波とかで熱くなれるような年齢じゃないしね。故にハリウッド映画化が決まっても(2002年頃だったかな?確か完全版コミックが出始めた頃だった気がする)、「どんどんアメリカ流に料理しちゃってくれ」という感じだった。あんな荒唐無稽でハイパーな原作、忠実に実写化出来るわけないんだからガンガンやっちまえ、と。その結果、娯楽大作に化けたらこの上無いし、C級ネタ映画になってしまっても構わない。その程度で汚点が付くようなちっぽけな作品じゃないしね、『ドラゴンボール』は。私はティム・バートン監督による『猿の惑星』のリメイク『PLANET OF THE APES』みたいなノリなんじゃないかと予想…それってダメじゃん。とにかく楽しませてくれ!って感じですね。
監督が『ファイナルディスティネーション』のジェームズ・ウォンってのも地味に期待出来る。飛行機事故、交通事故、遊園地での事故を、血の気が引く程リアルに恐ろしく描いた傑作スリラー映画を撮った人。これを観ておけば、『DRAGONBALL EVOLUTION』の出来もある程度占えるかもしれない…占えないかもしれない。でもねぇ、やっぱ、アニメ『ドラゴンボールZ』での、テンポの悪いバトルよりは観やすいものになるような気はするんだよな(それでも子供の頃は普通に楽しく見てたんだけど)。あの無茶な引き伸ばしこそ原作に対する冒涜だよ。
ただ最近は時間があるような無いような中途半端な感じなので、映画館行けるかなー?来たる新生活への準備は地味に面倒なんだよな。荷物まとめて整理して掃除して、残り少ない自由時間を満喫すべく遊びまくって、読みたい本や漫画をとりあえず片っ端から読んで、テレビや映画のDVDを明け方まで見まくって、聴き忘れてた新譜をチェックして(主に電気グルーヴ)、時には何もせずボーっとして、ふと我に返って…そんな日々ももうすぐ終わり。あー、なんで4月公開なんだよ『スラムドッグ$ミリオネア』!観に行けないかもしれねーよ! 

エロと下品で勝負-『ヤッターマン』

2009-03-09 21:52:50 | 映画
『ヤッターマン』観た。『CASSHERN』、『キューティーハニー』、『デビルマン』、『NIN×NIN』、『ゲゲゲの鬼太郎』、『どろろ』、『20世紀少年』……日本の漫画・アニメの実写映画は基本的に期待外れなものが多いが、『ヤッターマン』は違ったぜ。最高!なにあの下品ギャグの数々。深田恭子のセクシーなドロンジョ様のボンテージ姿なんて序の口。メカニック、武器、小道具、攻撃技などなどに、昔のケンドーコバヤシのような…関西のインモラル芸を一人で背負ってた頃の彼のエロ漫談のような下品さがちりばめられている。あ、ケンコバが演じてるドロンジョの手下・トンズラーは別にエロキャラじゃないよ、念のため。
これ、家族連れが多そうな土日に観に行けば良かったなぁ。一応子供向けアニメの実写化だから多分PG12すら付いてないけど、良いのかこんなの子供に見せて。大丈夫か映倫!…まぁ子供には全ては伝わらないだろうな、下品ギャグは。一緒にいる親は慌てるだろうけど。とりあえず櫻井翔はジャニーズ史に残る下品シーンを演じたと思う。サソリに刺された女の子を助けるシーンでの、客席を埋める嵐ファン達(多分殆ど嵐ファンだったかも。二宮君が出てるauのCM流れた時、急に盛り上がってたし)の戸惑い気味のどよめきと笑いは忘れられない。嵐ファンには小中学生だって居るのよ、櫻井君(笑)!
…なんか「下品で楽しかった」って事しか書いてないな。でも、この映画から下品さを取ったら何も面白くないと思う。アニメと実写映画は違うんだから、普通にヒーローものとして実写化したって寒いだけだよな。実写ならではの味を足さないと。かといって『CASSHERN』みたいに息苦しくメッセージ性を込めた実写化なんてウンザリだし(あれは拷問のような映画体験でした。初めの5分ぐらいはドキドキしたんだけどな)。その点『ヤッターマン』の下品描写は、作品のテンションを活性化させるカンフル剤として機能しまくってたし、なにより監督・三池崇史の「邦画の最大のウリはエロだろうが!」という心の叫びを聞いた気がしたよ。
そもそも日本の映画やアニメが世界のヲタク達に熱く愛されたのは、エロくて下品でグロいから。この要素を全て持つ三池崇史のバイオレンスな映画は世界中の映画ヲタに愛されまくりだし(まぁ、監督作品が大量にある方なので当たりハズれがあるが)、海外で人気のある邦画クラシックたちは軒並み暴力的で、何より女優さん達がセクシー。アニメだってエロシーン多めのものが海外の市場を支えているらしいよ。世界を代表するヲタ監督タランティーノの映画『キルビル』で栗山千明が演じた「ゴーゴー夕張」は、外国人ヲタが感じている邦画の魅力が詰まったキャラクター。「美女が血まみれでアクション!邦画サイコー!」って事でしょ、要は。それが観られないなら、邦画になんて用は無いんでしょ。実際。ところが最近の邦画はセクシー濃度が底辺スレスレ。これじゃあ誰も見向きしない。『おくりびと』なんて例外中の例外。今の邦画は、おそらく世界的に見て死滅寸前だ。
『ヤッターマン』は、そんな現在の邦画の惨状を打破しようとして生まれたような、下品で楽しい悪ノリアイドル映画。ヤッターマン1号&2号によるキメゼリフが微妙に寒かったり(そもそもあんなセリフをキメられる奴アニメ界にしか居ない気が…)最後はモタモタしてて少しダレるけど(阿部サダヲの芸達者ぶりが逆に良くなかった気が…)、それでも全体的に楽しめた。エンディングで流れる嵐が歌う主題歌「Belive」も思いの外アガったなー。観る前は「『ヤッターマン』のエンディングで嵐が流れるってどうなの?」と思ってたけど、全然良かったよ。
とにかく春の映画大本命は『ヤッターマン』ですよ。あと『DRAGONBALL EVOLUTION』か。原作『ドラゴンボール』は普通に好きだけど、熱い思い入れはもう無いので普通に楽しみ。悟空が白人だからって別に不満は無いし、超可愛いじゃん、実写版ブルマ。あゆの主題歌も無駄にテンション高くて良い感じ。それに意外とファンが杞憂する程ヒドい出来じゃないと思うなー。アニメでの悟空とフリーザのグダグダの戦いよりは面白いだろ、多分。


つまらない人間

2009-02-04 15:33:33 | 映画
デカプー(レオナルド・ディカプリオ)主演『レボリューショナリーロード』を観た。世界一ヒットした化け物映画『タイタニック』以来11年振りにケイト・ウィンスレットと共演した話題作(の割には空いてたなぁ)。『タイタニック』のようなドラマチックなラブストーリーを期待して観に来た人達を徹底的に叩きのめす気マンマンの、あまりにも挑発的な映画であった。
1950年代、ニューヨーク郊外の新興住宅街に住む美しい夫婦。白く美しい家でイケメン夫(デカプー)と可愛い子供達と共に穏やかで幸せな日々を送る妻(ケイト)だったが、その穏やかさに、彼女は心の何処かで不満を持っていた。大きな夢を抱いて生きていた若い頃の私は何処へ行ったのかしら。夢を忘れて専業主婦として平凡な日々を送る私に、この先何が残るのかしら。そういえば夫は昔、パリに居たと聞いた。パリはニューヨークとは違い、芸術に溢れた刺激的で夢一杯の街だと彼に聞いた。そんな彼も今では平凡なサラリーマン。毎日毎日つまらなそうに出勤する彼。このままでいいのか。そうだ、パリへ行こう。家族みんなでパリに移住して、人生をやり直すのよ!……妻は、こんな壮大な計画を脳内で立ててしまった…。
「平凡な生活に不満を持つ主婦」という設定は日本のドラマなどでも頻繁に見かける。その場合、紆余曲折を経て最終的には、「やっぱ平凡な日々が一番幸せ。とりとめもない小さな幸せを大切にすれば、私は十分幸せに生きていけるわ」というある意味全うな結論に行き着くのが大半だろう。しかし『レボリューショナリーロード』は甘くない。大胆なパリ移住計画を巡り、デカプーとケイトは、ほぼホラーな泥沼の大喧嘩を繰り広げるのだった。「仕事辞めてパリに移住?んなバカな…」と思うデカプーだが、「パリで自由に夢を追う、生き生きしたあなたが見たい」みたいな感じでケイトに熱く熱く説得されて一度はその気になる。うん、ニューヨーク捨ててパリに行く俺、結構カッコいいかも。…でも、サラリーマン生活が染み付いたデカプーには今更叶えたい夢なんて特に浮かばなかった。大体、いくらつまらなくても、安定した収入の仕事を辞めるのには躊躇する。さらに、このタイミングで出世の話が。揺れるデカプーに対し、平凡な日々にうんざりしていたケイトには何の迷いもなかった。しかし、パリ行きが目前に迫って来た時、妻の妊娠が発覚する。専業主婦をやめてパリでバリバリ働く予定だったケイトは中絶するつもりだったが、デカプーは「パリ行き中止のチャンス」とばかりに大反対。結局夫婦は全ての計画を白紙に戻す。安堵のデカプーに対し、ケイトのイライラは頂点に達していた…。
「現状を変えたい」とボンヤリ思っていても一歩踏み出す事を躊躇しまくるデカプーに、私はあろうことか強く共感してしまった。パリ行き断念以降、『レボリューショナリーロード』はいよいよ怒涛の展開に、夫婦の激しい罵り合戦に突入する。この辺のシーンはカット割りまでなんだかホラー映画っぽくなっていて(「あぁ、その曲がり角が怖い!」的な)、異様なまでの緊迫感。そこでのデカプーは本当に観ていてムカつく上に情けないのだが(要はデカプーのダメ男演技がうますぎるという…)、私は常に彼の味方だった。
映画を観ていて、パリに執着するケイトを理解出来ない人は、きっと保守的でつまらない人間なのだろう(私も含む)。彼女のような人を「いい歳して夢を追うなんてアホらしいよな」なんて冷笑することで平常心を保つが、きっと心の奥底では誰よりもその行動力に憧れている、ただの小心者。銀幕に映し出される「つまらない自分」=デカプーに同族嫌悪しつつ共感。『レボリューショナリーロード』を観て、そんな冷や汗モノの映画体験をした。辛かった…。そしてラストをほぼハッピーエンドだと解釈する私は相当のろくでなしなのかなぁ、なんて。その人の性格や価値観や経験によって、解釈はバックリわかれるであろうこの映画。観た後の会話がこれほど盛り上がる作品って久しぶりだ。
この映画の舞台は1955年のアメリカ。デカプー夫妻には幼い子供が二人居るが、その子達が成長し、思春期青年期を迎える60年代後半~70年代は、アメリカの一大転機だった。国内では差別され抑圧されていた黒人達が各地で暴動を起こし、そんな黒人に味方して共に権力と戦おうとする白人が現れたり。国外では文字通り泥沼のベトナム戦争。世界中の活動家から非難されるアメリカ。国内でラブアンドピースを唱えるドラッグ中毒のヒッピー達…。前時代的な古きよきアメリカを守ろうとする大人達に抗うべく台頭した若者達が生まれ育った家は、『レボリューショナリーロード』みたいな状況だったのかもしれない。特にヒッピーなんて裕福な白人家庭を飛び出したような奴ばっかりだろうし、デカプーみたいなつまらない生き方をする父親に育てられ、反発したのかも。デカプー夫妻の子供たちは、映画では驚く程存在感が薄い。しかし十数年後、子供達はデカプーを激しく苦しめるだろう。デカプー夫妻は「レボリューショナリーロード」という名前の通り沿いの家に住んでいるが、まさにその家で、革命家(気取り?)を生み出してしまうのだ。子供達は親の言う事に全て反発し、新しい生き方を見つけるべく爆走するだろう。まるでかつての妻のように。


追記 
中古ショップでhideのシングル「Hi-Ho」を見つけたので即ゲット。嬉しいなー、ずっと欲しかったんだよなー。もちろん、このシングルに入ってる「Beauty&Stupid」のリミックスバージョン目当て。スカパラとhideの、最初で最後のコラボですよ!ハマりすぎ!カッコよすぎ!

La vie en rose

2008-12-20 23:41:17 | 映画
『クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲』を観た大人達がノスタルジックな気分に浸ってしまったり、「ひろし35年の歩み」に感情移入して号泣したり。出演するイケメン俳優につられて子どもと一緒に平成版『仮面ライダー』観てたら、その複雑で重厚なストーリーに夢中になったり。いくら宮崎駿が「子どもたちのために作った作品」と言っても、大人だってジブリ映画が大好きだったり。今やってるピクサー最新映画『WALL・E』も、やっぱり良質な子ども向け映画でありながら大人でも十分楽しめる力作。以下感想。
元々ピクサー映画は大人になってから観た方がグっと来るであろう作品が多く、『ファインディング・ニモ』は子を持つ親が観ればハラハラものだろうし、『Mr.インクレディブル』では、自分にとってやりがいのある仕事をし始めた途端イキイキしてくる主人公に対し、「そうそう、男っての外の世界で認められないと家庭内で良き夫・良き父親では居られないんだよ、愛情不足とかじゃなくてさぁ」と共感する男性(及び、主人公と自分の旦那さんを重ね合わせて「…やれやれ」と思う女性)が多そうだ。『カーズ』などはクラシックカー好きのオッサンにはたまらない作品かもしれない。子どもも大人も、当然のように100%楽しませられるように作られてるのがピクサー映画。…いや、でも『Mr.インクレディブル』で、外出時に颯爽と奥さんのお尻を触る主人公の心情は子どもには理解できんかもしれんが。
でも新作『WALL・E』は、大人ウケ(SFヲタク?スターウォーズっぽい音が鳴りまくり)を狙いつつも、子どもに向けた明確なメッセージをビシバシ発信している作品だ。「友達を作ろう」「勇気を出して好きな子の手を握ってみよう」「部屋に引きこもってばかり居てはだめだよ」「つーかこんな大人になるな」…こういったメッセージを直球でぶつけてくる。この映画に出てくる、友達や恋人を作ることはおろか自分の足で歩くことすら忘れて醜い姿になった沢山の大人達を観た子どもは、「うっわぁ、あんな大人にはなりたくなーい!」と思うことだろう。「ていうか映画に出てきた人間、うちの親そのものかも…」なんて思ってしまう子どももいるかもしれない。
既に各所で言われてるから結構有名だと思うが、この映画の前半40分程は、セリフが殆どない。お掃除ロボットウォーリーが、ゴミだらけの地球で、たった一人でせっせと仕事をするシーンが延々と続く。セリフは無く、ウォーリーが動く時に発する機械音が、誰も居ない地球で寂しく鳴り響く。この悲壮感…。途中で友達(ゴキブリ)が出てきて本当にホッとしたよ。でもセリフが無くても、ゴキブリとのちょっとしたやりとりや、ゴミの山から見つけたオモチャを整理するシーンなどでウォーリーの可愛い性格、人間くささ(?)が零れ落ちるので、誰もがウォーリーに感情移入してしまうだろう。大昔のロマンチックな恋愛映画をこれまたゴミの山で見つけたモニターで観ながら感動し、目をキラキラさせるシーン、この映画で一番好きだ。中盤で出てくるウォーリーよりもずっと高性能のロボット・イヴと、ウォーリーとのやりとりも、ほぼ「ウォ~リ~」「イ~ヴァ(「イヴ」と発音できないウォーリー)」という二つのセリフしか無いのに釘付け。
ムーディーなシャンソンやジャズなどをバックに繰り広げられる、無機質なルックスのウォーリーとイヴのラブストーリー。セリフが無いのが逆に良いんだろうな。生後間もない赤ちゃんとコミュニケーションを取るために母親が、ちょっとしたしぐさや発語から「お腹すいた?」「おむつ?」などと赤ちゃんの気分を推測するかのように、『WALL-E』観てる観客も、気づけば必死に、言葉の乏しいロボットたちの気持ちを追いかけてしまう。「40分セリフなし?子どもにはキツいんじゃない?」と思われるかもしれないが、誰でも夢中になれる作りになってるぜ、ちゃんと。 
ピクサー初の宇宙モノ『WALL・E』。ボロボロのウォーリーの下に降臨するウォーリーより数段レベルの高い存在、各所で流れるクラシック音楽(「美しき青きドナウ」「ツァラトゥストラはかく語りき」)、ロボットVS人間のスリリングな戦いなど、『2001年宇宙の旅』を思わせる点が多々ある。『2001年~』では主人公はロボットとの戦いを制し、サル→人間と来てさらに上の存在、精神だけの存在=スターチャイルドへと進化する。『WALL-E』では、人間達がロボット任せだったこれまでの生活を捨て、人間らしい生活を取り戻す。『2001年~』との関連は観てて私でも気づいたが、中にはSF映画マニアだからこそうならされる設定も色々とあるようですよ。


しつこく『ダークナイト』

2008-12-16 00:43:48 | 映画
『ダークナイト』のDVD購入。うーん、これでいつでもジョーカーに会える。嬉しい。でも買ったはいいが、2時間半以上あるので腰を据えて鑑賞する気にまったくならないな(笑)。既に劇場で3回も観てるしね。だからチャプターで好きなシーンだけをピックアップして観ている。あぁ、なんてキュートなんだヒース・ジョーカー。反則だ…。ジョーカーは中途半端な事を許さない。曲がったことが大嫌い。街を守るバットマンや警察に対し「おまえらの守ってるものってさ、本当に大事?」と揺さぶりをかけ、右往左往する様子を見て楽しみまくる。狂ってるけど、信念だけは強すぎる。こんな敵に、「あぁ、ヒーローを辞めるべきか、続けるべきか」とかウジウジ悩んでるバットマンが勝てるわけないんだ、普通。
ただやっぱり、もうちょっとジョーカーの凶悪ぶりが見たかったなー。自分が楽しむためだけに殺人を繰り返す狂人、という設定のジョーカーだが、彼の凶行は映画では直接的には描かれなくて。レイティング対策で、子どもでも見られるように、残酷なシーンはカットされたのだろう。でも、リアルな殺人シーンが無いとはいえ、ジョーカーの顔、神経を逆撫でする奇妙な声など、子どもが見て脅えそうな要素は沢山ある。イギリスでは「こんな怖い映画、子どもが観れないようにR指定かけろよ」と騒動になったようだし、くR15ぐらいにして、遠慮無しで撮ってくれたらよかったのになぁ。ジョーカーが香港の社長を殺すシーンとか、あれじゃ意味不明な気がする。せめて叫び声ぐらいあってもいいような…まいっか、それでもジョーカーは素敵さ。
「 ジョーカー大活躍!」みたいなシーン以外でも好きな部分は勿論ある。冒頭の銀行強盗シーンの臨場感はたまらない。あの臨場感ある映像は、グランドキャニオンなどの大自然の絶景を撮るためのフィルムを使用することで得られたものらしい。カメラやフィルム自体にかなりの重量があるのでアクションシーンの撮影には向かないようだが、費用と労力かけて強行したそうだ。おかげで、今まで観たこともないような迫力満点のシークエンスが撮れた、と。さらに不協和音が飛び交う音楽が効果的に観るものを不安に陥れる(サントラ最高)。映画館で観た時は一気に引き込まれたもんなー。そういえば黄色いスクールバスで犯罪、なんてスコルピオみたいで良いね。
さて、公開時は「バットマン映画だけど完全にジョーカーが際立ってたね」なんて思ってたが、あの救いの無いラストシーンを今日観直してみて、やっぱバットマンもいいなと思い直した。いいっていうか、「あぁ…が、頑張れぇ!」みたいな。市民を守るために色々無茶しながら立ち回った挙句、全責任を負おうとする自己犠牲の精神は誰にもマネできない。ある意味華麗に悪の道を突き進むジョーカーと比べ、反則技を駆使してジョーカーに立ち向かって行ったバットマンがカッコ悪く見えてしまうのは仕方無いよなー。ジョーカーを倒すため手段を選ばないバットマンは、まさにダークナイト。正統派ヒーローじゃないんだぜ、ということを思い出させてくれますな。余談だが、福田前首相が辞任した時、「まるで『ダークナイト』のラストシーンじゃないか!」と一部で盛り上がっていた。「野郎、ダークナイトを気取りやがって!」みたいな。

そういえば映画つながりで、『WALL-E』観たが、不覚にも4~5度程涙してしまった。クリスマスプレゼントのようなキラキラした映画だったよ!アメリカでは夏休み公開だったらしいけど(苦笑)。

とにかく『ダークナイト』

2008-09-21 00:15:48 | 映画
映画『ダークナイト』。地元の映画館では既に公開が終わってる所が多い。他の地域でもそんなもんなのかな?あんなに面白いのに。全米では『スターウォーズ』(エピソード4)抜いて興行収入歴代2位だってのに。「『タイタニック』に何処まで迫れるか」なんて言われてたぐらい大ヒットした映画なのに。まあ、今年の夏休みは『ポニョ』一色だったもんな、日本は。私なんて『ダークナイト』結局3回も見たぜ?劇場で。劇場公開中に同じ映画を3回観に行くなんて初めてだったが、とにかくヒース・レジャーの怪演…彼のジョーカーを観たくて観たくてたまらなくなって。昔、『時計じかけのオレンジ』のアレックスにハマって何度も何度もレンタルビデオを見直した時の事を思い出すなぁ。ちなみに今『ダークナイト』のサントラをヘビロテ中。とにかくあの雰囲気を味わい続けたい。
クッシャクシャの髪、白塗りの顔、白の塗料がベットリ付着した指先、ザックリ裂けた口、他人の神経を激しく逆撫でする素っ頓狂な声…強奪した金で買ったオシャレなスーツを羽織り、ゴッサムシティを混乱に陥れる狂人・ジョーカー。バットマンが鉄拳制裁をくらわせるも「暴力なんかじゃ俺をねじふせられないよ~ん」と言わんばかりに「ヒャーッハッハッハッハ」と笑い狂うジョーカーのハッスルぶりは最早演技というレベルではなく、完全に何かが憑依してるとしか思えない。ヒース・レジャー、『ブロークバックマウンテン』に出てた人と同一人物とは思えん…。声とか全っ然違うもんなぁ。『恋のからさわぎ』という映画(ちょっと前までGyaoで観れた)では、素敵な声(?)で「君の瞳に恋してる」を歌ってたこともあるよ。


とは言っても、ホモじゃないのにうっかり同性愛に目覚めてしまうカーボーイを演じた『ブロークバックマウンテン』の時も、カーボーイならではのガニマタ歩き、無骨でモゴモゴとした喋り方を完全に再現した演技を見せて評論家をうならせたらしい。特に、取材などを通して彼を知っている人は「普段はフツーの気さくな若者なのに!」と驚愕したとか。私はカーボーイの生態に詳しくないから「うぉー、アグレッシブなキスシーンですなぁ」みたいなことしか思わなかったなぁ…。
以下に、『ダークナイト』で特に心を鷲掴みにされたシーンをいくつか挙げる。観た人なら共感してもらえるだろう。

■ジョーカーのマジックショー
■最狂!「Why so serious?」と煽るジョーカー
■ジョーカーin取調室
■ある計画を成し遂げた直後、パトカーをハコ乗りして風を浴びてるジョーカー(一瞬)
■強奪した金を山のように積み、頂上からシュルルーっと滑り落ちてくるジョーカー
■起爆装置をいじりながら病院から出てくるナース・ジョーカー(ネームプレートは娘の名前!)

ジョーカーin取調室


そうそう、関係ないけど忘れちゃいけないのがエディソン・チャン。今年の冬、大量のプライベート写真流出でアジアを震撼させ、芸能界引退に追い込まれたMr.ハメ撮り王エディソン・チャン。数々の人気女優をスキャンダルに巻き込み、「香港芸能界を牛耳るマフィアに命を狙われるのでは?」と危惧されたエディソン・チャン。初見ではエディソンに気付けなかったが、「香港のシーンの最初の方でモーガン・フリーマンを迎えてるのがエディソン」という情報をネット得て、注意深く観てたら、ちゃんと居た。モブキャラの中に一人だけ居るイケメン、まさしくエディソン・チャン。しかし彼の出番はモーガン・フリーマンを社内へ連れて行った所で終わってしまったのだった…。
あとあれね、子役、見覚えあるなと思ったら『ミスト』に出てたあの超可愛い子だった。ネイサン・ギャンブル君、10歳。続編でのロビン候補か!?いやまさかな…

追記
新旧ヒース・レジャー動画を「ほらこんなに違うでしょ!」のつもりで載せたが、見比べてみると相通ずるものがあるような気もしてきた。髪型同じだし。