goo blog サービス終了のお知らせ 

思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Fischa(オーストリアのチョークストリーム)

2010-09-12 06:42:23 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
チョークストリーム(Chalk Stream)は石灰台地を流れる川。水源は地下から湧き出た泉が多く、石灰岩を通った水はアルカリ性で多くの生物を育み、ラヌンキュラス等の水草が生い茂る。英仏海峡は石灰台地。英国の雅名Albion(Alba:白)は白い断崖絶壁をみて付けられたもの。南イングランドのTest、Avon等がチョークストリームとしては有名ですが、海を挟んだフランスのRisleもシャルル・リッツが通いこんだ有名なチョークストリームです。日本ではゆったりした流れを誤ってチョークストリームを言ったりしますが、アルカリ性の水質、湧き水に由来する年間を通じて一定した水温がチョークストリームの特徴です。

中部ヨーロッパには有名なチョークストリームは余りありません。ウィーンの南20KMのFischa川は、数少ないチョークストリームの一つです。2005年のシーズンからFischa川の年券を購入し季節の釣りを楽しみました。
ウィーンからハンガリーのブダペストまでは広大な石灰台地が広がっており、ハンガリー国境から近いFischaはアルプスからの伏流水が地上に出、石灰台地を削って出来たチョークストリームです。水温は年間を通じ12~15度と一定しており、豊かな水草を育むのみならず、多くの川虫が生息しており、魚にとって素晴らしい環境を提供しております。
ウィーン子にとり手軽に楽しめる川でもあり、オーストリア釣魚連盟所有の川の中でも、人気のある川となっております。


(メイフライの時期のFischa川)
チョークストリームである事より、オーストリアでもメイフライ(これも日本では蜉蝣を一括してそう呼ぶ傾向がありますが、さにあらず。あくまでもMay Flyはその名の通り5月、6月に羽化するEphemera Danica、Ephemera Vulgata等の大型蜉蝣の事です)の集中羽化で有名な川です。5月の最終週から6月の第二週までメイフライの釣りが楽しめます。


(メイフライ:Ephemera Danica)
夕刻にはスピナーが舞い、French Partridge May Flyで楽しめます。ダンの釣りは中々難しいのですが、ウェット、ニンフで何とか出来ます。


(真夏のFischa川)
メイフライが終わったら、Frank Sawyerの作り出したPhesant Tailでのサイト・フィッシングです。ジン・クリアな川ですので、魚の動きは良く見えます。身を隠しながら魚の動きを注視してアワセれば生き生きした魚の手ごたえを感じる事が出来ます。


(解禁当初3月のFischa川)
解禁当初は、水温は12度程度あっても殆ど釣りにはなりません。5月まで待たなければ。


(Fischaでの最初の鱒)
2005年5月7日釣った最初の鱒です。竿はPerfection 9'。


(虹鱒42cm)
ライズの上流にPhesant Tailをピッチング。ティッペットがツゥッと引き込まれたのをアワセたもの。


(ブラウン・トラウト46cm)
サイト・フィッシングで鼻先に流し込んだ結果。

オーストリアMur川

2010-07-26 14:26:10 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
とてもとても暑い日が続く今年の東京。戦前のハーディー・パラコナ竿のコーティングが溶けて緩んでいるのではと大変心配な日も続いております。

ここで思い出すのが長い間通ったオーストリアのMur川の清涼さです。7月でも乾いた空気は、日差しは強くとも日本のようなじっとりした不快さを感じさせないものでした。




(5月の増水時のMur川)


(屋根のついた歩行者専用橋)


(ちらりと見える赤い車は当時の私の車)


(増水の川からの一匹)

Mur川はオーストリアのSteiermark州を縦断しスロベニア国境を超え流れる川。欧州最大の鱒族Huchen(別名ドナウ・サーモン、イトウの仲間)も棲み、1.2mを超えるブラウントラウトが釣り上げられた川でもあります。私がこの川を知った2002年当時、Murau(ムーラウ)の町の上流5kmくらいの場所から4kmの流域は、オーストリアの釣り免許を取得していなくても入漁券を購入すれば釣りが出来、地元オーストリアの釣り人の他、イタリア、ドイツからの釣り人も訪れる川でした。




(秋も深まる10月末。定宿Hotel zum Brauhausの部屋から早朝の眺め)

漁期は5月1日から10月31日まで。5月は増水で釣りは難しいのですが、6月以降、夏のイブニング、秋はグレイリングの繊細な釣りが楽しめます。


(5月の魚。竿はSteel Centre入りGold Medal 10'、1929年製)


(10月末。晩秋の一日)


(秋のグレイリング。婚姻色が出ている)


(晩秋のグレイリング)

それが何時からか定かではないのですが、多分2006~7年から、その4kmの釣り場の内上流部分の3kmは、ムーラウに居城を構えた元オーストリア・ハンガリー帝国の著名な貴族Schwarzenberg一族の末裔で、ビロード革命後のチェコの外相を最近まで務めたKarel Schwarzenberg氏が買い取り、一般人は釣りが出来なくなりました。今は堰堤とその上流流れ込み部分の1kmのみの釣り場となりましたが、それでもドライフライ、ソフトハックル、ウェットフライで15~20ヤード先の鱒・グレイリングを狙う事が出来ます。

定宿のHotel zum Brauhausは14世紀から続くビール醸造所(Brauhaus)の隣にあり、ちょっといけるビールと、ムーラウ近郊の名物Zirbelschnaps(ある木の皮を漬け込んだウォトカのような強い蒸留酒)が楽しめます。冬はスキーも出来(というかスキーの方が遥かに有名なのですが)、山で楽しむスポーツが一通り揃ったリゾート地にある小奇麗なホテルです。

Etrachseeの釣り

2010-07-04 08:14:47 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
オーストリアは東に頭を置いたオタマジャクシの形をしています。ウィーンは東の外れ、ハンガリーとの国境から70km程しか離れてません。そのオタマジャクシの頭の丁度真ん中にあるシュタイヤーマルク州のまた真ん中あたりにMurau(ムーラウ)という町があり、冬はスキーで賑わいます。ムーラウにはMur(ムーア)川が流れており、この川では過去1.2メートルの巨大ブラウントラウトが釣られており、フライフィッシングが出来ます。

そのムーラウの町から北へ山を登ったところにEtrachsee(エトラッハゼー)という小さな山岳湖があります。


エトラッハゼーとの出会いは2002年7月。始めてムーラウに釣りに来た際、地元の観光案内所でムーア川の入漁券を問い合わせた際、そう言えばこういう場所もあるわよ、と教えてもらったのが切っ掛けでした。車一台しか通れない山道を進み、車止めにある宿Landhaus Etrachsee(www.etrachsee.at)がこの湖の漁業権を持っており、宿のおばさんから入漁券を購入し、また、ボートも借ります。

最初に持ち出した竿は変り種のMarston 10'4。シングルハンドですが、ダブルハンドにもなるようにグリップが長く飛び出しており、また、スピアーが竿尻についているという物。それにセントジョージにKaizerシルクラインの2番(AFTM5-6番)という道具立て。釣り方はロッホスタイルをイメージし、3つのウェットフライのチームを使いました。


まあまあのサイズの虹鱒


シルクラインを水面に浮かべ一休み


3本毛鉤のチームに食いつくアルプスイワナ


アルプスイワナ



湖の住人は、アルプスイワナ、ブルックトラウト、ブラウントラウト、虹鱒と鱒族ばかりですが多様です。この湖の特徴は良く釣れる事。大物は簡単ではないですが小物は幾らでも釣れると言っても過言ではないと思えます。この湖には、その後、フライフィッシング初心者を何人も連れ訪れる事になりましたが、その都度、皆が楽しめる程度に釣れさせて頂きました。兎に角、日本人が誰も行った事のない隠れ家のようなところです。

ハンガリー日本人会釣り部(オーストリアGmundner Traun)

2010-05-09 04:21:16 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
Nさんの執念(オーストリア・グムンデンのトラウン川)

釣り部立ち上げの時の二人のメンバーの一人Nさんがハンガリーを去る事になりました。
帰国前に欧州の釣りを堪能しないと成仏出来ないNさんの事を思い今年は早春より何回か釣りに出かけました。氷の張ったそれは寒いエトラッハ湖(Etrachsee:爆釣の湖)にも行ったのですが、過去何度も書いてますので割愛し、この度は世界的に有名なグムンデンのトラウン川(Gmundner Traun)の報告をさせて頂きます。

このトラウン川は風光明媚なザルツカンマーグート(Salzkammergut)にある幾つかの湖の一つトラウン湖より流れ出す世界的に有名な鱒川です。19世紀末より英国、ドイツ、オーストリアの王室・皇室のメンバーが大物釣りに訪れ、ホテル・リッツの二代目御曹司シャルル・リッツが毎年夏の休暇を釣り三昧で過ごし、リッツの友人アーネスト・ヘミングウェイ、後の米国大統領になるアイゼンハワー将軍も釣りに訪れた川です。両岸は深い緑に覆われた斜面が続き、昔は鮭と間違う程大きな鱒と大型グレーリングで有名で、往年の輝きはないものの、今も大物鱒が上がる川です。

それまでは何となく敷居が高く行った事がなかったのですが、解禁が一番早かったので4月中旬思い切って行く事にしました。Nさんと谷川(名人)と一緒です。
宿はHotel Marienbrueckeというリッツの定宿だった釣り宿です。



途中迷いながらもブダペスト出発から5時間程で宿に到着、チェックイン、釣り券購入を済ませます。ホテルには釣り人が集まり庭では10人くらい集めてキャスティングの指導をやってます。指導しているのはスイスの有名な釣り師Hebeisen氏、日本でいったら、昔は11PM釣りコーナーの服部名人、最近では岩井渓一郎(知っている人はいないでしょうね。。。)という感じの、兎に角その道の御大です。



地元の釣り人っぽいオジサンにポイントを聞くと、「オメエなぁ、深場によう、シンキングラインでストリーマーをぶち込まなきゃ、ダメだべえ!オメェら、そんたがちゃっちい道具で何しようつぅーの(オーストリアの田舎は訛りが強いのです)」とのご託宣です。春の川は冷たく増水しているので、魚は深場でじっとして、目の前を小魚が通る時だけ食いつくのです。
我々はお上品にドライフライ、ニンフという羽虫のイミテーション毛鉤といういつもの道具立てでした。先が思いやられます。
とりあえず川には下りたのですが、水が多く流れが急です。それに水はまだ冷たい!!ウェーダー越しに水の冷たさが身にしみます。
初日は結局三人ともボーズ、二日目に執念のNさんがフライとは思えない小魚ルアーもどきを岸ぎりぎりにしつこく流し込み、40cmくらいのブラウントラウトを釣り上げました。谷川(名人)と私は二日やってボーズという最低のシーズンスタートでした。

二回目の釣行は気温も上がり、虫も出てきただろうと思われる5月の末で、Nさん、Wさんと一緒の釣行でした。羽虫の情報も仕入れ、夜なべ仕事でそれにふさわしい毛鉤も巻き準備万端です。
ホテルに荷物を降ろし釣り券を購入、川に向かいます。初回に行った事のある釣り場に行き川を見ると「水がやけに多いねぇ」。雪解け水の流入で前回早春の時よりも水が多いのでした。川にはあまり入れないので岸際でパチャパチャ釣りするしかないのです。魚は時々跳ねるのですが、それも川のど真ん中でとても我々の毛鉤は届きません。フラストレーションに身を焦がします。暫くしてNさんが一匹釣り上げます。岸際ぎりぎりに流して釣ったそうですが、蛭が一杯ついたブラウン・トラウトでちょっと触る気にならない魚でした。その後釣り場を変えたりしたのですが状況は思わしくなく、初日はまたまた不満足な結果でした。

二日目、後ろが開けてフライキャスティングがしやすい釣り場を選んで入渓しました。そこは浅場なのですが、なんと魚がうじゃうじゃいます。60cm以上も何匹かいます。Nさんはすっかり興奮、我先に竿を出します。朝9時くらいから釣り始め毛鉤をこれでもかと流すのですが一匹も咥えません。何か餌を食べているのは間違いないのですが。。。川に立ち込んで数時間、魚が結構近くにいるので足元をふと見るとウェーダーの表面に何か白いものが沢山ついています。それは無数のちいさな白い糸ミミズ、つまりユスリカが朝から大量に羽化していたのでした。道理で我々の毛鉤ではでない筈です。

ユスリカのような極小の虫に合わせた毛鉤は持ってませんし、そもそもそんな毛鉤では釣りになりません。そこでそれまでの一本針仕掛けに枝針をつけ全部で3つのウェットフライ(沈毛鉤)のチームにし、特にユスリカが出る時に効果ありと言われるSilver March Brownを一番先の毛鉤とし、他はシルバーボディーでキラキラ光る毛鉤をつけました。

三つの毛鉤を川の流れに合わせ下流に自然に送り込み、魚がもぞもぞ動いている所の手前でストップさせ、毛鉤に動きを与えます。数回それで試してみると手元にコツンと当たり!!間髪入れず合わせます。ヤッタ、かかった。どうも大物のようで最初は動きません。念のため再度合わせをくれます。と、魚は動きだしました。強い流れの中で上流、下流に泳ぎまわり、その度リールから糸を10ヤード、20ヤードと引き出します。丁度その日は8フィート5インチの短めの竹竿を使っていたので竿は満月、何時糸が切れるか針が外れるか気が気でありません。でも、竹竿の良いところは粘り強さ、衝撃を竹の穂先がうまく吸収し細い糸もなんとかもってます。ようやく魚が疲れて寄ってきたので見ると銀色の虹鱒です。しかもデカイ。虹鱒君は人間の姿が見えたので力を振り絞り遁走します。激流の中ですから大変な捕り物です。NさんとWさんの二人のギャラリーの前なので部長の貫禄は守らねばと無理をせず時間を掛けて取り込む事とします。15分、いや、それ以上?、どれだけやり取りしたでしょうか。力を振り絞った虹鱒はNさんが差し出した玉網にようやく納まりました。47cmの別嬪さんでした。



別嬪さんを見たNさん、Wさんは興奮しその後毛鉤を何度も流したのですが、我々が釣りをしているところにビキニのお嬢さんが日向ぼっこに来るといった邪魔も入り、後が続かず、部長の一人勝ちでその釣行を終えたのでした。

帰国を翌週に控えたNさんは部長の一人勝ちのシーンを見せられて成仏出来ず、釣り部主催の彼の送別会の席で、「XXさん、やっぱりトラウン川にもう一回行けないですかねぇ?」「でもNさんは土曜日送別会が入ってるから一泊出来ないですよね?」「そうですね。。。」「でも片道5時間だから頑張れば日帰り出来るかな?」「それ、それ、朝早いのはぜんぜん大丈夫だからそれで行きましょう!!」という話になってしまい、6月15日、日曜朝3時出発の日帰り釣行が決まったのでした。

眠い目をこすり時間通りNさん宅を出発、途中運転を交代しながらトラウン川へ向かいます。宿には事前連絡してあったので釣り券を即購入、8時過ぎには川に到着しました。場所は早春にNさんが唯一の一匹を釣り上げた場所の近くです。
到着と同時にNさんはあっという間に身支度し川におりました。ダウン・クロスで下流にウェットフライを流し込む釣り方です。こちらはまだ眠気でボーっと身支度しているのに川ではNさんの歓声が聞こえます。「かかった!!」。Nさんの竿は日本の渓流用の華奢な竿で根元からぐんぐん大きく曲がっています。最初の一匹は41cmのブラウン・トラウトでした。私がようやく川に入った頃には、Nさんもう数匹釣り上げてました。過去2回の不調を払拭する絶好調な滑り出しです。



午前中魚は活発に餌を追ってました。私は前回で味をしめた毛鉤3本チームを上流に向けてキャストし自然に流します。当たりを竿で取るのは難しいのですが、魚の動き、糸の不自然な動きを目印に合わせます。Nさん程ではないですが、私にも40cmを筆頭に数匹釣れました。



相変わらず絶好調のNさんに様子を聞くと、「いや針を伸ばされて逃げられました」、「この竿じゃ全く寄せられない大物で糸を切られました」とかとても景気が良い話ばかりです。こちらはお昼近くで魚の動きが鈍くだんだん釣りにならなくなったのでちょっと場所を変えて下流に行きました。
下流で一時間以上やったのですが魚が出ず、もう2時になったので再び前の場所に戻ります。ちょっとやって時計の針は2時30分。その晩フェリヘジ空港に客の出迎えがある私を慮ってNさんは2時45分で上がりましょうと言ってくれました。残り15分、エキストラタイムです。
最後の一投は朝最初にやったポイントで上流に向かって投げました。
上流から流れてきて丁度私の真横の方向に毛鉤が来たとき、水面下でギラリと魚が光りました。とっさに合わせた瞬間、魚は大きくジャンプします。綺麗な虹鱒です。こいつは糸を引き出し、ジャンプを繰り返し、こちらは何時針が外れるかドキドキです。時間もないので力勝負。玉網に納めたのは案外小さな39cmの虹鱒でした。
その虹鱒を網に納めた直後、Nさんが「かかった」と叫びます。華奢な竿はまた満月にしなり、かかった魚は流れの中を右に左に泳ぎまわります。大暴れです。Nさんのファイトを写真数枚に収め見る事数分、Nさんは見事に欧州最後のブラウン・トラウトを仕留めたのでした。
エキストラ・タイムでのワン・ツー・フィニッシュ、世界的に有名なトラウン川でNさんのまさに絵に描いたような釣りのフィナーレでした。



ハンガリー日本人会釣り部(スロバキアOrava川)

2010-05-09 04:03:22 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
中東欧思い出の釣り場(スロバキア・オラバ川)

ハンガリーに赴任したのは2000年6月。赴任後最初に釣りをしたのは2001年3月、スキーで訪れたオーストリア山中でたまたま出会った小川でのニジマス釣りでした。

その後色々な場所で釣りをしましたが、スロバキアのオラバ川はその中でも思い出の場所です。スロバキアでの釣りとの出会いは、用事で泊まったバンスカ・ビストリッツアのホテルに紹介してもらったご当地釣りクラブからもらったパンフレットでした。2001年5月の事です。その時はスロバキアに入国するのにビザが必要で、日本人にはあまり馴染みのない国でした。コイ、パイク、鱒とスロバキアの色々な釣りと釣り場が紹介されていて、その中にポーランドの国境近くでグレーリングとフーヘン(別名ドナウ・サーモンと言われるイトウの仲間)が釣れるオラバ川がありました。ガイドが1.5メートルもあるフーヘンを持った写真が印象的でした。

その年は9月にニューヨークのテロがあったり10月にアフガン戦争が始まったりと物騒な年でしたが、そのお陰で秋は出張者が激減し時間に余裕が出来たので、秋も深い10月にオラバ川の探検に行く事にしました。特別なコネでスロバキアの6ヶ月マルチ・ビザも入手しイザ出陣です。
ブダペストから車で3時間半走るとオラフスキー・ポドザーモク、和文に訳すとオラバの城下町、という小さな町があります。オラバ川に面した絶壁の丘の天辺に中世のお城がそびえる趣のある場所です。オラバ川の釣りはそのお城から程近い場所でいた。
村人を捕まえて、スロバキアの釣りパンフレットに書いてあるオラバ川の釣り場管理人の家を探します。ヤンデックという人でパンフレットに載っていたガイドのおじいさんでした。息子さんが多少ドイツ語が出来るので、息子さんに釣りをしたい旨伝え釣り券を頼みます。ところが釣り券は別の街に住んでいるシュテファネックという人が扱っている由。連れて行ってやるからまあ一杯飲みなさいというのに甘え、ガイド親子の客になります。その後取りあえず近場の宿屋にその晩の宿を求め、息子さんの方のヤンデックさんが迎えに来た車で夕食後のシュテファネックさんのお宅に伺いました。
シュテファネックさんは英語もドイツ語も出来ないので、片言のロシア語、スロバキア語もどき、ヤンデックさんのドイツ語通訳、身振り手振りでの話しでしたが、何でもシュテファネックさんはチェコスロバキアのフライ・キャスティングの往年のチャンピオンとして70年代に知られた人のようで、毛鉤をいろいろ見せてもらったり、社会主義時代のフライ竿を見せてもらったりと大変興味深いひと時を過ごさせてもらいました。明日は自分は用事があるから釣りには行けないけどせいぜい楽しみなさいと声をかけて頂き、有難く釣り券を購入しその晩は宿屋に帰りました。

翌朝ゆっくり朝食を済まし川にでます。天気は生憎の曇り・時々雨ですが、初めての川なので胸が高鳴ります。10月のオラバ川はグレーリングの釣り場で、川を見つめていると川の流れの中でグレーリングが身を翻しギラリと光るのが見えます。
1930年製の10フィート4インチの長さの竹竿にシルク・ラインそれにウェット・フライ(沈み毛鉤) いう古風な道具立てで釣りをしてみました。まあ、日本でも世界中どこでもこんな道具で釣りをすればかなり目立ちます。
川はかなり広く50メートルくらいの幅があり、また流れもかなりあります。グレイリングは足元近くには居なく、竹竿の長さを生かし斜め上流に出来るだけ遠投し毛鉤を出来るだけ長く自然に流すよう努めます。
ところが、何度も何度もやってもグレーリングは騙されてくれないのです。多分シュテファネックさんのような腕利きにずいぶん痛めつけられているので魚もかなりかしこいのでしょう。寒いし、雨は降るし、川の中の一本の杭になって時間を忘れ集中します。
もう、釣りを始めて3、4時間も立ったでしょうか。流した毛鉤にかすかなアタリを感じました。これは釣り師の反射なのですが、間を入れず合わせます。ウェット・フライは早合わせが大事です。と、竿先に生き物の躍動が伝わってきます。ヤッタ、かかった。道具に比べ魚は大きくないので取り込みにはあまり神経を使わなくていい。リールでやり取りをして取り込んだ魚は30センチ弱の細身のグレーリングでした。銀色の魚体に羽のように大きな背びれ。びっくりしたような大きな目。オラバ川の水流をものともせず泳ぎ回る華麗な、力強い魚でした。



その時は一日がんばってもう一匹、合計2匹の貧果でした。

その後も2004年までオラバ川には何回か出かけました。何時もあまり釣れないのですが、ポーランド国境近くの鄙びた雰囲気、釣り券を買いに伺うシュテファネック老夫妻とのひと時、と何故か足を運んでしまうものがこの川にはあったのです。




この思い出の釣り場はもうありません。EUのお金が付いて、ポーランドとの幹線道路整備事業が進み、オラバ川沿いに時速100kmで走れるバイパスが出来た際、この釣り場は川底から浚渫され大きな橋が幾つも架かりました。この前もポーランドはクラクフへ車で走った時このバイパスを通りました。クラクフへの旅はちょっと便利になりました。そしてオラバ川の釣りと地元の人達とのふれ合いは今回の駐在の懐かしい思い出の一つになりました。




一度だけシュテファネックさんと一緒に釣りをした事があります。オラバ川の鏡のような水面の場所に立ちこみ、年老いた彼がかなりの遠投を決めてカゲロウを捕食するためライズするグレーリングを仕留める様はそれは見事なものでした。

ハンガリー日本人会釣り部(Mur川でのグレーリング釣り)

2010-05-09 03:10:02 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
秋のグレーリング釣り

鱒というのはサケ科に属する魚で、サケ科は大きく分けるとサケとマスに分類されます。マスと言えば、日本では、イワナ、ヤマメ、アマゴ、イワナが海に下ったアメマス、ヤマメが海に下ったサクラ鱒、アマゴが海に下ったサツキ鱒、北米原産のニジマスが知られています。ところが、世界的に見ると日本には居ないけれどもシベリアからヨーロッパ、北米にかけて広く住んでいるマスの仲間がいます。それが、グレーリングです。

グレーリング(Grayling)は英語名で、ドイツ語ではエーシェ(Aesche)、フランス語では(l’ombre)という名前です。特長は、マス族にしては小さな口、一方広げるととても大きな背びれ(ドイツ語ではFahne:旗と呼ぶほど大きいひれです)、マスでは殆ど目立たないウロコがコイ科の魚のように大きい事でしょうか。また、アユのような香りがするのも特徴です。陽気で餌に飛びつくニジマスとは違い、フランス語の「影(l’ombre)」という名前の如く、餌を食わせるのに一苦労する魚で、川の特定の流れに沿って流れてくる餌しか食べない、また、餌に不自然な動きがあると食ってくれないという気難し屋です。

そのグレーリングが比較的釣りやすくなるのがヨーロッパの秋。10月末そのグレーリングを狙いにオーストリアの山中へ向かいました。

参加したのは釣り部創部時の2名、どんな逆境でもめげないと自称するハードコア・メンバーのNさんと私です。10月末の山ですから、雪、氷は覚悟の上。ハンガリーからオーストリアへ入ります。山は白く、途中早めの昼食をとったパーキングは新雪に埋もれてます。
「気温が低くてもお日様さえ出れば釣りになる!!」
とお互い気合を入れて(慰めあいながら?)道を急ぎます。
ホテルにつき、事前手配の釣り券を購入し更に川へ向かいます。気温は低いものの太陽は出ていて、水面には魚の跳ね(ライズ)がそこここに見られます。
グレーリング釣りでは、小さい毛鉤が必須です。川を横切るように対岸めがけて毛鉤を投げ、毛鉤が自然に流れるよう糸をくれたり縮めたり操作しながら、下流に流します。毛鉤が視界から外れかかったところで魚が跳ねます。
「かかった!!」
下流に流しており流れの重みが加わってますので、アワセを軽くしないとハリスが切れてしまいます。細心のアワセで魚をかけ、竹竿の弾力を生かし慎重にやりとり、取り込みます。
最初のグレーリングを釣った後が続きません。水面への跳ねは続いているので何か羽虫を食べているのですが、それがなにか判らない状況が続きます。
「何を食っているのかな。。。」ふと、水から上げた毛鉤を見ると何か黒いゴミのようなものが付いてます。よく見るとかなり小さな黒っぽいカゲロウです。魚が食っているのはその虫に違いありません。
毛鉤箱から「Snipe & Purple」という毛鉤を選び結びます。これは紫の絹糸のボディーに英語でスナイプと呼ばれる小鳥の胸毛をハラリと結んだだけのシンプルな毛鉤で、英国北部発祥、通称「Northern Country Spider Fly」と言われる毛鉤です。色合いとサイズからして今見たカゲロウに一番近い毛鉤です。
対岸めがけて投げ、毛鉤を下流に流します。
毛鉤はすっかり沈んでいるので目で追う事は出来ません。竿先にくる感触と第六感が頼りです。30ヤード程糸が出てこれ以上流せないところで魚の気配を感じます。軽くアワセを入れると竿先がグッとしなります。
グレーリングはニジマスに比べるとひれが弱いのか取り込みは楽です。慎重に取り込んだのは38cmのメスでした。


(拡大:クリック)
気温は3度程度、水温も低く、Nさんも当方も体はがちがちに凍えてます。その日は5時で釣りを終えホテルに帰り、厨房に魚を渡します。「ヘア xxxx、アーバー シェーネ フィッシェ!!(xxさん、いやまあ、立派な魚だこと!!)」
Nさんとサウナで体を解凍した後、新鮮なグレーリングのグリルで一杯やりました。
次の日はお日様の顔を見ることが出来ず、魚のライズもない厳しい状況でしたが、貧果のまま3時まで粘り、がちがちに凍った体のままブダペストへ帰りました。


(拡大:クリック)
ハードコアのNさんとは11月の第三週の週末、別のオーストリアの川で釣りをする約束でしたが、その前に雪が降り、予約した宿からも来ないほうがいいと説得され、やむなく断念しました。
寒い時期の釣り修行、それがグレーリング釣りです。体が凍えても釣りをしたいハードな皆様、一度如何でしょうか。

Etrachseeの魚達

2008-09-21 15:42:24 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe

ちょっと見難いですが、水面からツゥーと落ちていくキラーバグに食いついてしまったアルプス・イワナです。ドライフライ、普通のウェットには見向きもしなかった奴ですが、一番シンプルなソーヤーニンフには引っかかってしまいました。

懐かしのEtrachsee

2008-09-21 15:37:40 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
去る7月末、8年以上振りに帰国しました。海外生活は3回目です。最初の2回はドイツ、直近の1回はハンガリー・ブダペストに駐在しておりました。フライフィッシングは1980年より見よう見まねでやっており、2005年からオーストリア釣り協会会員としてオーストリアの川・湖を中心に釣りを楽しみました。



写真はEtrachseeというオーストリア・アルプスの小さな湖です。標高1400mの山中にあり、湖畔に立つペンションが漁業権を持ってます。魚種はアルプス・イワナ、ブルック・トラウト、虹鱒、ブラウン・トラウトで、イワナは入れ食いです。ボートを借りドライフライ、ウェットフライを気楽に投げる釣り、キラーバグ等を使い大物をサイトフィッシングで釣る等、初心者から中上級者まで楽しめます。景色を見るだけでも心が洗われますし、湖畔の宿の女将さんの人情も有難い所です。