思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

ノルマンディーRisle川釣行(2017年5月20日)

2017-05-27 12:44:38 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
5月はメイフライ(May Fly: 5月の羽虫)の季節です。
5月の中旬から6月の初旬くらいまでの間、フランスはノルマンディーのチョークストリームRisle(リール)川、そして、オーストリアはウィーンから車で30分程度のチョークストリームFischa(フィッシャ)川ではメイフライが飛び交います。過去3年間ノルマンディーでは鱒を釣ること能わず、苦杯を嘗めてきたので、どうしようか本当に悩みましたが、何より竿を振るのが大事と割り切り、再度ノルマンディーのRisle川に挑戦することにしました。

5月19日早朝チュニスを出発、パリのオルリー空港ではパスポートコントロールでかなり時間をくいましたが、漸く突破し、レンタカーを借りお昼くらいに出発。そこから2時間半程でGlos sur Risleにある今回の宿Le Roy Moulinに到着しました。この宿はRisle川にプライベート釣区を持っているので、これまで挑戦して挫折したRisle川のパブリック釣区よりも確率が高いだろうという算段です。
この宿の釣区ですが、シャルル・リッツが足しげく通ったRisleのAclou釣区よりも数キロメートル下流になり、Aclou釣区の脇を通る鉄道も本釣区の直ぐ側を通っておりました。

到着した5月19日は雨。荷物を開けたら、何と、テレスコピックタモを忘れてきたので、Pont Audemerの馴染みのスポーツ用品店Decathlonへ行きテレスコピックタモを購入。何と、9.99ユーロという激安価格。勿論Made in Chinaですが、兎に角タモを入手し安心しました。
その晩は宿で夕食することにし、同宿の釣り人が帰ってきた夜10時よりようやく夕食です。同席の客は、ロンドンの金融業者という英国人2人、アミアンからというフランス人1人。そこに宿のマダム、といっても小生よりも若いのですが、が加わり、5人で食卓を囲みました。
英国人は3日宿泊したそうで、「Did you have good sport?」と聞いたところ、木曜日のイブニングライズは素晴らしかったけれど、今日は夕方になっても全く跳ねがなく、惨敗したと残念そうでした。魚を数上げる、或は大きな魚を捕獲するということだけではなく、魚釣りというスポーツを楽しんだか、という意味での質問でしたが、今日は何も釣れなかったけど、good sportだった、と総括して頂きました。
その晩は皆で話が弾み、赤ワインを一体何本空けたか良く覚えておりませんが、夜は1時まで食事が続きました。

翌日は快晴。宿の3階の部屋からRisle川を望みます。

昨晩は長かったので、マダムも漸く10時に朝食の支度。二日酔いでドロンとした英国人と元気はつらつなフランス人の釣り人と一緒にバゲット、クロワッサンを平らげコーヒーを楽しみ11時半頃釣り場に出かけました。そう言えば、英国の2人は実家が英国のチョークストリームLambournの川岸にあり、子供の頃から親と一緒にそこで毛針釣りをしていたそうですが、英国チョークストリームの総本山Testの現状を非常に嘆いておりました。曰く、日釣り券を高く売っているが故に、釣り人に大きな魚を釣らせなければならないと、野生の魚ではなく2ポンドもある養殖魚をバンバン放流して、もう野生の魚は殆どいないとのこと。でも、彼らの故郷のLambournは全部野生の魚と自慢しておりました。そして、このRisleの魚もまた貴重な野生の魚だと。
残念ながら川は濁り魚の姿は見えず、また、跳ねも全くありません。

そんな状況の中、兎に角、釣り場の探索ということで上流から下流へと跳ねを探しながら歩きます。川ではカゲロウの羽化が散発的にあり、Blue Winged Oliveの鮮やかな羽化したてのダン等奇麗な羽虫も居ましたが、この時期特徴的なAlderがヘタクソに飛んでおりました。写真がそれですが、どうむうまく撮影出来ず残念です。このAlderですが、トビケラの仲間ではありません。羽は斑の入った透明で、毛は生えてません。この虫ですが、何故か魚は好むようで、オーストリアの爆釣の湖Etrachsee(エトラッハゼー)でも6月〜7月にかけAlderが飛びます。その時、Snipe and Purpleを魚に投げるとAlderと間違えるのか良く釣れるという経験を数回しました。

さて、跳ねの無いまま、日は過ぎて行き午後5時を回りました。英国人も言っていたようにそろそろイブニング・ライズが期待出来るかとそれらしい場所に向かいます、

すると、対岸に馬と羊が放し飼いにされている区間で、川藻のあるところでライズが始まりました。
川には大型のMay Flyがそれこそパタパタという感じて飛んでます。そこに白っぽいカゲロウの羽化も混じっているようです。
そういう場合に効くだろうと、事前に用意して来たGrey Dusterを結びライズの上流に投げ込みました、

このGrey Dusterですが、黒がハッキリ入ったBadgerをハックルとテイルに使い、ボディはヘアのファーという簡単な毛針。しかし、英国では1930年代には既に万能ドライフライとして良く知られたもの。日本では見ることがほぼ無い毛針ですが、Badgerハックルは見やすくかつ一般に品質が良いので毛針が高く浮き、それもこの毛針の性能に寄与しているように感じます

さて、Grey Dusterをライズの上流に投げ込んで、毛針がライズのあった場所の付近に辿り着くと、「バシャ」と毛針に魚がアタック。ムンとアワセをくれると、魚の躍動感がPezon et MichelのSawyer Nymph竿を通じて伝わって来ます。
やった、苦節4年、漸くノルマンディー、いえいえ、フランスで最初の鱒です。
それは奇麗なブラウントラウトで、9.99ユーロの中国製激安タモに収まったのでした。
それから、French Partridge May Flyに毛針を替え、更にブラウントラウトを釣り上げます。写真の魚は大型のMay Fly鈎を咥えたその魚。

May Flyが泥と粘液で使い物にならなくなったため、また、新手のGrey Dusterに取り替えてライズを狙います。昔リッツのA Fly Fisher's Lifeで、ノルマンディーのチョークストリームをエレガントに釣る英国紳士が一匹も釣れないのに業を煮やしたリッツが、「フランスの鱒は短気なので、ライズしたら直に毛針をプレゼントしないとだめなんですよ」と説明したというエピソードを思い出し、こちらもライズを見たら直に毛針を打ち込みます。

流石に、夕刻7時半を回ると、ライズも少なく成ってきました。

空はまだ明るいですが、今日はもうそろそろ手じまいのようです。

最後に散発したライズを狙い夕方8時過ぎに最後の一匹を釣り上げました。

魚は小さかったですが、ライズを待ち、ドライフライで魚を釣り上げるという、期待通りの、それこそ英国人の言う「Good Sport」を楽しむことが出来ました。
Le Roy Moulinの釣り場ですが、最上流の大きな流れに立ちこんでMay Flyを流すと、超大物も釣れるそうです。釣りの後の夕食で別のフランス人釣り師から去年の大物鱒の写真を見せてもらいました。
これは、チュニジアがラマダンで仕事にならなくなる6月にでも再挑戦しましょうか。。。