ヘミングウェイは元々毛鉤釣りをやっていたものが、ある時愛用の竿を列車で運んだ際、それがどこかに行ってしまい、海の大物釣りに転向したとどこかで読んだ記憶があります。
先日、懐かしのオーストリアへの釣行の帰路、ウィーン空港のビジネスクラスカウンターで愛用のロッドケースにクレイムタグをつけてもらい、規格外荷物預かり所へ持って行き、X線検査後、担当者が問題ないのでお預かりしますとロッドケースを奥に持っていった光景がオーストリアに持参した三本の竿との別れとなりました。
一本はLRH Dry Wet 9'3''。上の写真にあるLRHシリーズの竿三本の一番上の竿になります。
この竿はフランスのノルマンディー、オーストリア、丸沼と使ってきましたがLRHの名を冠し、ドライフライにもウェットフライにもオールマイティに使える竿とデザインされただけあり狭い渓流を除けば世界中どこでも自信を持って持参出来る竿。上の写真は2018年の10月、オーストリアのグレイリングを釣り上げたもの。
二本目はF.E.Thomas Special 8' 3pcsです。
これは繊細な胴調子の竿で日本の渓流の様なところで、漁獲マシーンの様に数を釣るのではなく、一匹一匹釣り方を吟味したゆったりとした釣りをするのに向いた粋な竿。
養沢のこのサイズの虹鱒でも満月に曲がる竿で日本でまだまだ楽しめると思われる竿。
最後の三本目はPayneの206 9' 3pcs。
HardyやPezon et Michelの竿を使い慣れた手には、異様に思える軽さの竿で、9'の長さでも軽々とした竿。その調子は胴調子に繊細なティップを持ったHardyで言えばLRH Wet 9'3''と同様のウェットフライ竿。LRH Wetと同じように短距離のドライフライ釣りにも使えますが、繊細なシルクラインを出来るだけ張ってウェットフライを流しかすかなアタリを取る釣りにその真骨頂を発揮する竿です。
今回オーストリアではEtrachbachでの短距離のドライフライ釣りに使用しましたが、このサイズのイワナの引きに竿がグイッと曲がり中々楽しめました。
今年の欧州の空港はコロナ禍の影響で人員をダウンサイズしたところから回復していないところに、コロナは既に過去のものとなった夏休みの大移動が加わり、荷物のハンドリングが追いつかず、シャルル・ドゴール、ヒースロー、フランクフルト、等々ロストラゲージの山が出来ております。
先月にはアルジェ出張でシャルル・ドゴール空港だと思いますが、預けさせられた荷物がロスト、着のみ着のまま生活を二週間程度強いられました。そのため、今回オーストリアでは奮発してビジネスクラスを予約しリスク回避を図り、往路は問題なく預け入れ荷物を受け取れたのですが、復路、カサブランカの空港に着いた途端、携帯のSMSにルフトハンザから荷物の積み込みに失敗したとのメッセージ。クレイム作業をして日々待っておりますが、10日以上経っても未だに何の進展もありません。この三本の竿は多分今、フランクフルトの行き先不明荷物の山に埋もれているものと想像しますが、ヘミングウェイの様にならない事を祈ります。
マルセル・プルーストの名著「失われた時を求めて(A la recherche du temps perdu)」はマドレーヌを食べた際、突然思い出が蘇るのですが、失われた竿が突然発掘されるようなマドレーヌがどこかにないかと毎日ルフトハンザの荷物サイトをチェックしております。。。
追記
ロンドンへの出張中、ルフトハンザより荷物が届いたのでカサブランカ空港でピックアップするようにとメッセージがあり、昨晩、カサブランカ空港への到着時、無事ロッドケース並びに三本の竿を回収出来ました。今回は7月11日〜30日の19日間のロストですみました。7月11日午前の釣りで使ったLRH Dry Wetの竿先等心配しておりましたが、ロッドケースは密封されたチューブではなく、PVCに生地をかぶせ、両端は皮を使った通気性の良いものだったので竹にダメージが出ることもありませんでした。嗚呼良かった!!