思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Hardy Marvel 7'6'' (E87715 1953年製)

2017-01-15 12:51:30 | Hardy Palakona
チュニスの拙宅に新しいHardy Marvel 7'6''が加わりました。
製造番号E87715、1953年製のMarvelです。

3ピース、2トップ。グリップはオールコルクがMarvelの仕様。

コルクは洗ったのか汚れが付いておりません。

導入当時からMarvelには段巻きはありません。1960年代半ばまで段巻きされたタイプがHardyの竿の主流でした。

製造番号はリールを固定するリングに刻印されております。

雄フェルールは接着されただけ。ピンで固定されておりません。

トップとバットのリングには瑪瑙があしらわれております。ザラザラのシルクラインを使う前提での仕様。

グリップ上の銘はRegd Trade Mark Palakona The 'Marvel' と50年代までのチマチマした字体で記入されております。

これで、チュニスの拙宅のMarvelは3本になりました。上から夫々、E49054、1938年製、E87715、1953年製、E/S、1967年5月製の竿になります。計測機器がないのであくまで感覚的な比較ですが、3本の中で1938年製が一番軽く、1953年製、1967年製は重さに差を感じません。
アクションは、全てがミドルセクションから曲がる胴調子ですが、1953年製の竿は振り方によりトップを他の2竿よりも曲げる事が可能で、繊細なティップを持っているように見受けます。日本の渓流で近距離に毛針を早いテンポで打ち込むような釣りにも合っているかも知れません。
また、1938年製、1953年製の竿ではミドルセクションがどうも他セクションに比較し固くて重い感じがします。胴調子で一番負荷がかかるミドルセクションに特別密度の高い竹を使ったのでしょうか。私は所有しておりませんが、昔読んだ話でHardy White Wickam Fairchild (8' 3pcs、1925年〜1939年製造)のミドルセクションにはスチールセンターが入っているとありました。Marvelも同じ1925年に導入されておりますが、胴調子の竿で一番負荷がかかるミドルセクションを強くするための方策がWhite Wickam Fairchildのスチールセンターであり、Marvelは密度の高い竹の使用だったのかも知れません。

グリップ側の写真。よく見て頂けるとお判りになると思いますが、1953年製と1967年製の竿ではリングの位置がほぼ同一であるのに対し、1938年製のものはリングの位置が違っております。それもその筈、1938年製のMarvelのリング数が8に対し、1953年製、1967年製の竿は9つのリングとなっております。1920〜1930年代のHardyの竹竿はリングの数が後年の竿よりも全般に少なくなっておりますが、Marvelでも同様のデザインの違いが見られます。

トップ側の写真。

1938年製のミドルセクションの雄フェルールを見て頂くと、フェルールにピンが打ち込まれているのが見て取れます。戦前の接着剤の性能は限られていたため、フェルールを接着した後、ピンを打ち込んで抜けなくしてあるのです。

1953年製のものにはピンは既に打ち込まれておりません。

1967年製のものも同様。接着剤の性能に対する信頼・自信の現れです。但し、戦後の竿であってもフェルールが外れたりする事がありますので、何事も過信は禁物と言ったところでしょうか。

30年代、50年代、60年代夫々のMarvelの勇姿。オーストリア・ドイツの山岳渓流の釣りが可能になる6月が楽しみです。