以前どこかでハックルの色の中でもブルーは入手がとても難しいと書きました。米国ジェネティックハックルではなく欧州のハックルを集めて来ましたが、Frank Elder氏が手ずから育てたオールド・イングリッシュ・ゲーム・コック(OEG)のハックルで私の手元にあるハックルの中でも正直に申し上げれば私が知るブルーの色は出ておりません。ブルーというよりスチールの色です。何故この様な不遜なことが申し上げられるのかは上の昔の英国のハックルがブルーとはどの様な色かを示しているからです。
左からHoney Dun(ハニー・ダン)、Blue Dun(ブルー・ダン)、(Honey Dun)ハニー・ダン。これらは鶏のハックルでも以前はブルーの色が出ていたことの証拠であります。
近影で見ますと、上はHoney Dunのハックル。Honey DunはBlue Dunの親戚だと言われるのですが、Blue Dunは大体においてブルー一色ではなく茶色や金色が少し乗った色をしております。その茶色や金色がより強く出てくると、それらはHoney Dun、Rusty Dunとブルーのリスト(中心部)を持ち、金〜茶色のバーブを持つ二色のハックルとして分類されます。
上はBlue Dunのハックルの近影ですが、金色が結構出ているのが見て取れます。
そして上はHoney Dunのハックルですが、Red(レッド)〜Ginger(ジンジャー/薄いレッド)と言えそうなバーブと鮮やかなリストのBlueが際立つ対照を示すハックル。
写真でもお判りになるかと思いますが、これらのハックルの色は米国ハックルと比べハッキリした発色ではなく、透明感に溢れております。
ダンやスピナーを模倣したドライフライのハックルは本物の虫の足・羽の色を超えて発色してはいけない一方、釣り人から見て見やすく、また日光を浴びて本物の虫がその身に纏う光線を再現出来ればより良し、と、釣れるハックルの重要な点の一つに「透明感」があるのではと考えておりますが、インド、チャイナ、OEG、フランスのハックルにはその透明感に溢れたものがあり、昔のハックルになると、バーブが長かったり、ハックルの長さが短かったりと、米国ジェネティックハックルには巻き易さの点では完敗ですが、魚を釣るドライフライのハックルとして中々捨てがたいものです。
今でもブルーの色はBlue Andalusiaというスペイン原産の鶏の種類が安定的に出しておりますものの、この鶏はハックルが柔らかいという致命的な短所があり、彼のDr. Baigentの娘Mrs. LodgeがDr. Baigentは良くBlue Andalusiaの雌鶏をOEGに掛け合わせていたと証言している様に色合いには貢献出来てもゲーム・コック(闘鶏)の雄鶏のハックルの硬さと艶をダメにする遺伝子を持っており、そうした遺伝の条件のため、米国の巨大メーカーであってもブルーのハックルを作り出せていないのではないでしょうか。
英国の昔のパターンブックにはブルーとその派生色を指定したパターンが多く掲載されており、かつ、そうしたブルー系のハックルを身に纏うドライフライは良く釣れるので、ブルーのハックルを常に追い求めてはおりますが、現在は本当に見つけることが出来ないハックルになってしまっております。染色して代用出来ないかとも思うものの、そうするとあの透明感が毀損するし、釣果に影響が出そうで、結論としてはドライフライ用としては手を出しかねております。