思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Hardy Perfect (最後期プロダクションモデル)

2010-05-31 15:15:54 | Hardy Reel
私がフライフィッシングを始めたのは1980年。ティムコが出版したケネス・E・ベイ氏の「フライタイイングの初歩」、沢田賢一郎氏の「フライドレッシング」で毛鉤の巻き方を試行錯誤を重ね覚え、カースティングはそれこそ先生もいないなか断片的な情報を頼りに自己流で覚えていきました。そんな80年代、ハーディーの製品は高嶺の花。何故ラインガードが付いているのか、全く理解出来なかったのですが、その独特の機構とデザインでパーフェクトは欲しいリールでした。

(左からPerfect 3 1/8、3 3/8、3 5/8)
パーフェクトにはその長い歴史の中で色々なバリエーションがあります。1912年チェック、MK-IIチェック、ブグレ、スペシャル・パーフェクト、等等、人気があります。その中で一番人気が無く何かとけなされているのが、80年代まだ手に入れる事の出来たパーフェクトの最後のプロダクションモデルである事は残念ながら論を待ちません。


確かに使ってみると、昔のパーフェクトより大雑把な感じは否めません。但し、その分思い切り使えますし、新品で購入した同士の竹竿と合わせて、年輪を積む楽しみもあります。何せ、その昔、お店のショーウインドゥで憧れたリールですから。

(Perfect 3 1/3に95年製のCC de France)


(Perfect 3 1/3に1967年製Perfection 9'でグレイリング)

他にもハーディーのリールでは、Marquis、Sovereign、Golden Princess、JLH Ultra Lite等の80年代から90年代に製造販売されたものを所有しています。それらについてはまた別の機会で触れる事もありましょう。でも、やっぱりPerfectは特別なリールなのです。
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Hardy Perfection 9' (1967年製最後期プロダクションモデル)

2010-05-30 14:36:32 | Hardy Palakona

ハーディーの竿の中で、最も長い期間製造されたPerfection。CC de FranceがPhantomに取って替わられ、De Luxeが生産終了した1960年代後半にも仕様を変えながら出荷が続きました。
幸運な事に、とある英国の釣具店が廃業した際デッドストックとして発見されたPerfection 9'を手に入れるチャンスがあり、購入しました。プラスチックカバーが付いたままのグリップを見た時のトキメキ。嬉しかった事を憶えております。


私の竿の製造番号はL/S。1967年11月生まれです。ジョイントは普通のサクション。リールスペースとグリップの境目部分は樹脂でカバーされております。

前回登場の1958年製Perfectionと並べてみると、段巻がないのは一目瞭然ですが、他にストリッピングガイドの位置がかなりトップに近い所に変更されている事が大きな違い。

またストリッピングガイドはフルブリッジではなく、多分低コストで生産可能な一体型のものとなっております。

手に持ってみると、1958年製に比べ重く感じます。竹の材質?或いはPVCライン用に多少変更を加えたのか?調子は多少モッタリ感がありますもののやっぱりPerfection。新品を買った為もっと使い込んで調子を合わせる必要がありそうです。尚、この竿にはPVCラインしか使ってません。

晩秋のMur川で釣ったグレイリング。ライズを取るため、スナイプ・アンド・パープルをクロスに投げライズ地点まで流したところに来たものです。ウェットの釣りなのでアタリは竿先で感じ、即、合わせます。合わせ切れもなく安心して使えるPerfectionならではの使い方です。


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オーストリア釣魚連盟(1880年創立)

2010-05-30 06:49:29 | その他の話題/Other Topics
ハンガリー在住中の釣り生活に彩を添えてくれたのは隣国オーストリアの様々な渓流と湖でした。最初はオーストリア中部のムーラウ(Murau)を流れるMur川とその近くにあるEtrachseeが中心でしたが、2005年に「オーストリア釣魚連盟(Oesterreichsche Fischereigesellschaft Gegr.1880)」(www.oefg1880.at)に加盟、メンバーとなってからは、そこにチョークストリームのFischa川、大物が狙えるWienerbruck湖が加わる事となりました。



この連盟は1880年に当時のオーストリア・ハンガリー二重帝国の皇太子ルドルフのパトロナージュの下、ホヨス伯爵を会長として創設されました。オーストリアでは長い伝統を誇る組織で、彼の地で有名な人士がメンバーに名を連ねております。年次総会は、ウィーン市内で5月にありますが、正装のディナー。年により舞踏会もありました。


(上からルドルフ皇太子、ホヨス伯爵)


(シャルル・リッツと共にグムンドナー・トラウン川を釣ったハンス・ゲベーツロイター氏のカースティングデモ)


(オーストリア・ハンガリー二重帝国の将校で、第一次大戦後、フライフィッシングに関する多くの寄稿を残したクラル・クラールスベルク氏。ドイツ語圏に初めてニンフフィッシングを紹介)

オーストリアは他欧州各国と同様、川は個人、法人かの違いはありますが、誰かの所有物です。この連盟がオーストリアに多くの鱒が釣れる漁区を持っていた事より、メンバーになる事としました。尚、本連盟には彼の西園寺公一氏もメンバーになっており、その顛末と、シュバルツァ川、エルラウフ川での釣りは名著「釣魚迷」に記載の通りです。彼のHardy De Luxe 9'もオーストリアで活躍した様子が読み取れます。

2005年から2007年の3年間はFischa川の年券を購入し釣っておりました。料金は740ユーロ。当時の為替では優に10万円を超えるお値段。しかし、5月末からのメイフライ(Ephemera Danica)のスーパーハッチの釣り、ジンクリアの水中に14番のフェザント・テイルを流して大物鱒を釣るストーキングの釣り、と、欧州の釣りらしい釣りを堪能させてもらいました。

(44cmのブラウントラウト。14番のフェザント・テイルに来ました)


(メイフライ。5月末から6月第二週まで毎年スーパーハッチがあります)

お値段が高くても連盟がそれで儲けている訳ではなく、そのお金を使い川の保全、鱒の孵化・放流を行っており、日本とはかなり違う鱒釣り環境を維持しております。
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Hardy Perfection 9'

2010-05-29 07:20:52 | Hardy Palakona
島崎鱒二氏の書かれた「英国の鱒釣り」に、元世界キャスティングチャンピオンのバリー・ウェラムが、ハーディー史上最高の竿はPerfection、De Luxe、CC de Franceの順番と述べられた旨書いてあります。どの竿がいいかは個人の感性の問題でしょうから、決してこの通りだとは言い切れませんが、投げる・合わせる・引き寄せるという竿の総合性能面でPerfectionが優れている事は事実だと思います。



私のPerfectionは製造番号H16943、1958年製です。



Male Joint(上)にはフックが付き、Female Joint(下)にはフックを定位置に誘い固定するガイドが付いてます。



ハーディーの古いパラコナに良く見られるロックファストジョイント、そして、段巻。全体的に軽く感じるものの、先調子という訳でなく、徐々にティップからバットに向けて曲がっていく調子です。Gold Medalと共に最初のパラコナ竿として1883年に登場してから1971年までハーディー史上最も長く作り続けられた伝統の2ピース竿のアクションと言ったら良いのでしょう。ドライフライからウェット全てに対応し、特にソーヤースタイルのニンフフィッシングでは反応が良く使い心地の良い竿。これまで南半球を含む世界各地での釣りに活躍してきました。これからも末永く供をしてくれる事でしょう。



これは、ウィーン近郊の本当のチョークストリーム(石灰岩台地を流れる湧水の川)Fischa川で釣った虹鱒君。ライズしたので、アップストリームにフェザントテイルを投げたところ、ポクッとライズしリーダーを引き込んだので、間髪入れず合わせました。(リールはSpitfire、ラインはKaizer Silkの2番)




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Hardy De Luxe No.2 9'6''

2010-05-29 06:00:33 | Hardy Palakona
ハーディーにはその名を広く知られる名竿が数多くあります。1915年から1957年まで製造されたDe Luxeはその一つ。数多くのファンを持っております。De Luxeには幾つかのバリエーションがあります。竹の表層部分を二重に貼り付けたDouble Builtが良く知られておりますが、De Luxe No.1、De Luxe No.2という竿もあります。



(拡大:クリック)

私の持っているのは製造番号E56739、1944年製です。1944年といえば、ビルマでのインパール作戦、仏ノルマンディーに連合軍が上陸、比レイテに米軍が上陸と、まだ第二次大戦の最中。そんな時代にも竿を作っていたと思うと感慨深いものがあります。



(拡大:クリック)

この竿はDe Luxeに比べバットが強く先調子に仕上がってます。リングはフルブリッジではなく、スネーク。また、竿尻にはスピアが仕込んであり、イングランド南部で優雅にドライフライを楽しむにはぴったりの竿と思います。また、強めの竿なので、現代のPVCラインを十分使う事が出来ます。



(拡大:クリック)

私はこの竿をオーストリアの湖で良く使ったものです。ウィーンから西へ1時間30分の山中にあるWienerbruckのダム湖は大物が上がる所。ここでもこの竿は期待通りの活躍を見せてくれました。







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ケニアの毛鉤釣り

2010-05-19 13:40:04 | その他の話題/Other Topics
先月二週間程アフリカに出張しました。ケニアはナイロビでSerena Hotelに泊った際、部屋のテレビにケニア国内の他のSerena Hotelの宣伝が流れてました。その中に鱒釣りをしている場面があり、はっと見ると、Serena Mountain Lodgeでブラウントラウト・虹鱒の釣りガイド付きツアーがある由。



ホームページ:
http://www.serenahotels.com/serenamountainlodge/troutfishing-en.html

英国植民地時代、ケニアの山岳地帯には鱒が放され、植民地在住の英国人が毛鉤釣りに興じた過去が現在まで息づいている様です。そう言えば、ハーディーも「ケニア」というパラコナ毛鉤竿を製造販売しておりました。



これはナイロビ郊外の自然公園で遭遇したライオンです。ほんの目の前の出来事でした。



これはおまけのピラミッドです。


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Hardy CC de France 8' (1995年9月特注)

2010-05-16 05:32:11 | Hardy Palakona
ハーディーの経営はここ10年でどうなってしまったのでしょうか。ロンドンに行く度に訪れたペル・メルのお店は何時か憶えておりませんが、閉店となり、ハーディー自身もグレイズと合併している様です。株主利益を考え、その時点で見える経済合理性を追求していくとこの様な結果になり得るのは解かりますが、19世紀から続く歴史をブランドとして愛する向きには非常に心配な流れになっております。

さて、ハーディーは細々と竹竿の製造を続けている様で、過去の有名なパターンも特注で作ってもらえるようです。写真は1995年ドイツ駐在時、アーニックのハーディーに直接注文して作ってもらったCC de France 8'です。



2pcs、2topsで革巻きのアルミケース付きで、当時の値段で2,000マルク程度(14万円)だったと記憶してます。本当は、ドイツの代理店NDM社を通さなければならなかったのですが、ハーディーが間違って直接受けてしまったため、上記の値段でOKとなってしまったのでした。



今もお願いすれば銘を自在に入れてもらえると思いますが、この竿の銘はSept 95 for Mr. xxxx Palakonaとなっており私以外に関心を持ってもらえる事はないでしょう。



こうした過去のパターンはハーディーが保存してきた銘竿を振ってアクションを確認し、データの数値を竹の材質もみながら必要に応じ微調整し、作られて来たのでしょうが、(それらを多分売り払ってしまった)今は、データのみで作っているのかしら。

因みに、この竿は、1927年製9'3pcsのものよりティップが強く、PVCラインを使い尺物以上の鱒を上げるのも難なくこなす竿です。(写真はフェザントテイル14番で上げた42cmの虹鱒。。。日本でもこんな魚を釣れる場所はないのでしょうか)


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Hardy CC de France 9' 3pcs

2010-05-10 15:39:59 | Hardy Palakona
ハーディーの竹竿パラコナ(Palakona)シリーズには数々の名竿があり今も高い人気を誇っておりますが、その中でも最も知られている竿の一つはCC de Franceである事に異を唱える方は少ないものと思います。

私はどちらかというと、軽やかにキャスティングを楽しむよう作られた竿よりも、スピアが仕込んであったり、魚を掛けた後もその性能を発揮するような竿、例えばパーフェクションの様な竿が好みだったのでCC de France、特に一番人気のある8'以下のものには全く興味が持てず、辛うじて製造番号E6119、1927年製の9'、3pcsのものをもっているだけです。




この3pcs竿、トップが前回のOgden Smith同様、細くて華奢なものですから、魚が大きく力強いオーストリアでは全く使わずにおりました。



さて、帰国後、昨年、このコンパクトで軽やかな竿、1998年に購入したブグレのレプリカ、1995年に購入したKaizerシルクのNo.1を供揃えに数回養沢に電車とバスを乗り継いで釣行致しました。







細いと思ったトップが魚を掛けてもあまり気にならない事に気付き、日本で使うには勝手のよい竿だなと改めて認識した次第です。尚、この竿のトップリングはPVCラインが通らないので、シルクライン、それもPhoenixの様に太くない、Kaizer、Coronaでなければ釣りになりそうにありません。

前に触れさせて頂いたRod Pattern Bookには1969年7月3日付で、No.98: 6'6''、No.99: 7'、No.100: 8'、No.101: 9'の4タイプのCC de Franceの基準竿が保管された旨記載されております。そのNo.100と多分縁がある事は後日説明させて頂きます。
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Ogden Smith Warrior 8'6''

2010-05-09 08:03:25 | Fishing Tackles
持っている竹竿は殆どがハーディーですが、それ以外のメーカーの物も多少あります。シャルル・リッツのA Fly Fisher's Life、フランク・ソーヤーのNymphs and Troutを読むとペゾンのFario Clubが欲しくなる(実はペゾンは、その昔、竹竿は8'までと巷で言われていたのを信じていた時に新品で買ったSt Louis 8'1''しか持ってません)、という具合です。

さて、さして有名な逸話にお目にかかった事はないのですが、ロンドンの老舗の釣具屋にOgden Smithというお店があったそうです。これは同業のFarlow's共々自社ブランドの釣具を製造・販売していた様で、今でも結構このブランドの竹竿がオファーされているのを見かけます。

1996~99年、養沢へ時々釣行していた頃、嵩張らない3ピースで9'くらいまでの竹竿を探しておりましたところ、英国のディーラーよりのオファーでめぐり合ったのがこの竿です。



中が盛り上がり、先端がキュっと絞られたコルクグリップの形状、アルミのねじ込み式スピアという外見上の特徴を持ち、そのアクションはどちらかと言えば先調子。ティップは細く魚を掛けると大きく曲がります。ティップをあまり酷使しない様、投げる際は胴に乗せるように使っております。



オーストリア、東欧での釣りには華奢すぎて一回も使わなかったのですが、日本では出番がありそうです。これにKaizerのNo.1 (3~4番)のシルクラインを合わせて養沢にまた出かける機会があるでしょう。

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ハンガリー日本人会釣り部(オーストリアGmundner Traun)

2010-05-09 04:21:16 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
Nさんの執念(オーストリア・グムンデンのトラウン川)

釣り部立ち上げの時の二人のメンバーの一人Nさんがハンガリーを去る事になりました。
帰国前に欧州の釣りを堪能しないと成仏出来ないNさんの事を思い今年は早春より何回か釣りに出かけました。氷の張ったそれは寒いエトラッハ湖(Etrachsee:爆釣の湖)にも行ったのですが、過去何度も書いてますので割愛し、この度は世界的に有名なグムンデンのトラウン川(Gmundner Traun)の報告をさせて頂きます。

このトラウン川は風光明媚なザルツカンマーグート(Salzkammergut)にある幾つかの湖の一つトラウン湖より流れ出す世界的に有名な鱒川です。19世紀末より英国、ドイツ、オーストリアの王室・皇室のメンバーが大物釣りに訪れ、ホテル・リッツの二代目御曹司シャルル・リッツが毎年夏の休暇を釣り三昧で過ごし、リッツの友人アーネスト・ヘミングウェイ、後の米国大統領になるアイゼンハワー将軍も釣りに訪れた川です。両岸は深い緑に覆われた斜面が続き、昔は鮭と間違う程大きな鱒と大型グレーリングで有名で、往年の輝きはないものの、今も大物鱒が上がる川です。

それまでは何となく敷居が高く行った事がなかったのですが、解禁が一番早かったので4月中旬思い切って行く事にしました。Nさんと谷川(名人)と一緒です。
宿はHotel Marienbrueckeというリッツの定宿だった釣り宿です。



途中迷いながらもブダペスト出発から5時間程で宿に到着、チェックイン、釣り券購入を済ませます。ホテルには釣り人が集まり庭では10人くらい集めてキャスティングの指導をやってます。指導しているのはスイスの有名な釣り師Hebeisen氏、日本でいったら、昔は11PM釣りコーナーの服部名人、最近では岩井渓一郎(知っている人はいないでしょうね。。。)という感じの、兎に角その道の御大です。



地元の釣り人っぽいオジサンにポイントを聞くと、「オメエなぁ、深場によう、シンキングラインでストリーマーをぶち込まなきゃ、ダメだべえ!オメェら、そんたがちゃっちい道具で何しようつぅーの(オーストリアの田舎は訛りが強いのです)」とのご託宣です。春の川は冷たく増水しているので、魚は深場でじっとして、目の前を小魚が通る時だけ食いつくのです。
我々はお上品にドライフライ、ニンフという羽虫のイミテーション毛鉤といういつもの道具立てでした。先が思いやられます。
とりあえず川には下りたのですが、水が多く流れが急です。それに水はまだ冷たい!!ウェーダー越しに水の冷たさが身にしみます。
初日は結局三人ともボーズ、二日目に執念のNさんがフライとは思えない小魚ルアーもどきを岸ぎりぎりにしつこく流し込み、40cmくらいのブラウントラウトを釣り上げました。谷川(名人)と私は二日やってボーズという最低のシーズンスタートでした。

二回目の釣行は気温も上がり、虫も出てきただろうと思われる5月の末で、Nさん、Wさんと一緒の釣行でした。羽虫の情報も仕入れ、夜なべ仕事でそれにふさわしい毛鉤も巻き準備万端です。
ホテルに荷物を降ろし釣り券を購入、川に向かいます。初回に行った事のある釣り場に行き川を見ると「水がやけに多いねぇ」。雪解け水の流入で前回早春の時よりも水が多いのでした。川にはあまり入れないので岸際でパチャパチャ釣りするしかないのです。魚は時々跳ねるのですが、それも川のど真ん中でとても我々の毛鉤は届きません。フラストレーションに身を焦がします。暫くしてNさんが一匹釣り上げます。岸際ぎりぎりに流して釣ったそうですが、蛭が一杯ついたブラウン・トラウトでちょっと触る気にならない魚でした。その後釣り場を変えたりしたのですが状況は思わしくなく、初日はまたまた不満足な結果でした。

二日目、後ろが開けてフライキャスティングがしやすい釣り場を選んで入渓しました。そこは浅場なのですが、なんと魚がうじゃうじゃいます。60cm以上も何匹かいます。Nさんはすっかり興奮、我先に竿を出します。朝9時くらいから釣り始め毛鉤をこれでもかと流すのですが一匹も咥えません。何か餌を食べているのは間違いないのですが。。。川に立ち込んで数時間、魚が結構近くにいるので足元をふと見るとウェーダーの表面に何か白いものが沢山ついています。それは無数のちいさな白い糸ミミズ、つまりユスリカが朝から大量に羽化していたのでした。道理で我々の毛鉤ではでない筈です。

ユスリカのような極小の虫に合わせた毛鉤は持ってませんし、そもそもそんな毛鉤では釣りになりません。そこでそれまでの一本針仕掛けに枝針をつけ全部で3つのウェットフライ(沈毛鉤)のチームにし、特にユスリカが出る時に効果ありと言われるSilver March Brownを一番先の毛鉤とし、他はシルバーボディーでキラキラ光る毛鉤をつけました。

三つの毛鉤を川の流れに合わせ下流に自然に送り込み、魚がもぞもぞ動いている所の手前でストップさせ、毛鉤に動きを与えます。数回それで試してみると手元にコツンと当たり!!間髪入れず合わせます。ヤッタ、かかった。どうも大物のようで最初は動きません。念のため再度合わせをくれます。と、魚は動きだしました。強い流れの中で上流、下流に泳ぎまわり、その度リールから糸を10ヤード、20ヤードと引き出します。丁度その日は8フィート5インチの短めの竹竿を使っていたので竿は満月、何時糸が切れるか針が外れるか気が気でありません。でも、竹竿の良いところは粘り強さ、衝撃を竹の穂先がうまく吸収し細い糸もなんとかもってます。ようやく魚が疲れて寄ってきたので見ると銀色の虹鱒です。しかもデカイ。虹鱒君は人間の姿が見えたので力を振り絞り遁走します。激流の中ですから大変な捕り物です。NさんとWさんの二人のギャラリーの前なので部長の貫禄は守らねばと無理をせず時間を掛けて取り込む事とします。15分、いや、それ以上?、どれだけやり取りしたでしょうか。力を振り絞った虹鱒はNさんが差し出した玉網にようやく納まりました。47cmの別嬪さんでした。



別嬪さんを見たNさん、Wさんは興奮しその後毛鉤を何度も流したのですが、我々が釣りをしているところにビキニのお嬢さんが日向ぼっこに来るといった邪魔も入り、後が続かず、部長の一人勝ちでその釣行を終えたのでした。

帰国を翌週に控えたNさんは部長の一人勝ちのシーンを見せられて成仏出来ず、釣り部主催の彼の送別会の席で、「XXさん、やっぱりトラウン川にもう一回行けないですかねぇ?」「でもNさんは土曜日送別会が入ってるから一泊出来ないですよね?」「そうですね。。。」「でも片道5時間だから頑張れば日帰り出来るかな?」「それ、それ、朝早いのはぜんぜん大丈夫だからそれで行きましょう!!」という話になってしまい、6月15日、日曜朝3時出発の日帰り釣行が決まったのでした。

眠い目をこすり時間通りNさん宅を出発、途中運転を交代しながらトラウン川へ向かいます。宿には事前連絡してあったので釣り券を即購入、8時過ぎには川に到着しました。場所は早春にNさんが唯一の一匹を釣り上げた場所の近くです。
到着と同時にNさんはあっという間に身支度し川におりました。ダウン・クロスで下流にウェットフライを流し込む釣り方です。こちらはまだ眠気でボーっと身支度しているのに川ではNさんの歓声が聞こえます。「かかった!!」。Nさんの竿は日本の渓流用の華奢な竿で根元からぐんぐん大きく曲がっています。最初の一匹は41cmのブラウン・トラウトでした。私がようやく川に入った頃には、Nさんもう数匹釣り上げてました。過去2回の不調を払拭する絶好調な滑り出しです。



午前中魚は活発に餌を追ってました。私は前回で味をしめた毛鉤3本チームを上流に向けてキャストし自然に流します。当たりを竿で取るのは難しいのですが、魚の動き、糸の不自然な動きを目印に合わせます。Nさん程ではないですが、私にも40cmを筆頭に数匹釣れました。



相変わらず絶好調のNさんに様子を聞くと、「いや針を伸ばされて逃げられました」、「この竿じゃ全く寄せられない大物で糸を切られました」とかとても景気が良い話ばかりです。こちらはお昼近くで魚の動きが鈍くだんだん釣りにならなくなったのでちょっと場所を変えて下流に行きました。
下流で一時間以上やったのですが魚が出ず、もう2時になったので再び前の場所に戻ります。ちょっとやって時計の針は2時30分。その晩フェリヘジ空港に客の出迎えがある私を慮ってNさんは2時45分で上がりましょうと言ってくれました。残り15分、エキストラタイムです。
最後の一投は朝最初にやったポイントで上流に向かって投げました。
上流から流れてきて丁度私の真横の方向に毛鉤が来たとき、水面下でギラリと魚が光りました。とっさに合わせた瞬間、魚は大きくジャンプします。綺麗な虹鱒です。こいつは糸を引き出し、ジャンプを繰り返し、こちらは何時針が外れるかドキドキです。時間もないので力勝負。玉網に納めたのは案外小さな39cmの虹鱒でした。
その虹鱒を網に納めた直後、Nさんが「かかった」と叫びます。華奢な竿はまた満月にしなり、かかった魚は流れの中を右に左に泳ぎまわります。大暴れです。Nさんのファイトを写真数枚に収め見る事数分、Nさんは見事に欧州最後のブラウン・トラウトを仕留めたのでした。
エキストラ・タイムでのワン・ツー・フィニッシュ、世界的に有名なトラウン川でNさんのまさに絵に描いたような釣りのフィナーレでした。


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