思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

ドライフライのハックルの真実(日本のハックル)

2018-12-09 13:35:09 | ハックル/Hackles
現在、世界中を席巻する米国のジェネティックハックル。日本もその例に洩れず、近頃はインド・中国等からの安価なハックルの入荷も細り、過去に業者が輸入した在庫の範囲内でしか入手が出来なくなっていると、以前関係者に伺った事があります。
ジェネティックハックルの存在を否定する為に記事を書いている訳ではないので、その点誤解をされない様にお願いしたいのですが、ジェネティックハックル礼賛の記事が商業誌を中心に溢れる中、そもそもドライフライにとってのコックハックルの役割と、それを果たす為に必要とされる機能、要素を、ハックルの専門書と先人が残したハックルの現物、更に、今日でも何とか入手可能なインド・中国ハックルを例に取り上げ考察して来ましたが、今回は日本で作り上げられた素晴らしいドライフライハックルにつき触れさせて頂きます。

前世紀末、小平高久氏が作り上げられたコック・ハックルをClub of Hardy JapanのK氏の大変なご好意で頂いた事を思い出し、収蔵ハックルの中を探して見つけました。

極小ハックルを除いたハックルを並べたものが上の写真です。

下の3つがハニー系のハックル。真ん中のものは写真では見えにくいですが、リスト(ハックルの軸周りの内側)が色を全く感じさせないペイル・ハニーダン。

上の方のハックルはラスティー・ダンのハックルです。

黒い背景では錆色が強く自己主張を致します。

同じハックルを白い背景で並べたもの。

ハニー系のハックルは色を失い、影は映し出すものの、透明の中にハニーの残滓を残すだけとなります。

黒地の背景ではあれほど自己主張をした錆色は、白地の背景ではその鳴りを潜め、影はクッキリと投影しますが透明感に溢れたハックルとなります。

ラスティ・ダンの中の一枚を取り出して見ます。テーブルを背景にすると、スピナーのウィングの様な透明感。しかし、光を浴びるとキラリと光る生命感を持ち合わせております。

黒地を背景にすると錆色がクッキリと自己主張いたします。

白地を背景にすれば、インキ色の軸とハックルの周縁部以外が透明で、背景が透けて見えるのが判ります。

ハックルのバーブはオールド・イングリッシュ・ゲーム・コック(OEG)のものよりも短く、今風のドライフライを巻くのに適しております。

これは、ペイル・ハニーダン。色を殆ど感じさせないもの。

黒地の背景ではハニーが自己主張を見せます。写真では見えにくいですが、リストは本当にほぼ透明。

白地の背景では透明になります。
私は小平氏とは一切面識がありませんので、確たる事は何も申し上げられませんが、ネットに載る氏のインタビューによると、氏が海外旅行で入手した中国ハックルの中に魚がいつも毛針を飲み込みよく釣れるハックルがあり、それをきっかけにハックルの研究と鶏の育種を始められた由。試行錯誤の中から開発されたのが、これらハックルの様ですが、Frank Elder氏の残したハックルに比較して全く遜色が無いどころか、透明感ではそれを上回るハックルもあります。
小平氏が今もハックルを作られていらっしゃるか全く存じませんが、これらこそOEGをも凌駕する世界に誇れるハックル。日本の伝統的な毛針釣りでは透明感のある軍鶏の蓑毛を珍重して毛針に使ってこられたそうですが、そういう軍鶏を育種して来た伝統も日本にはあります。ジェネティックの席巻で失われつつある、透明感に溢れるハックルを小平氏の例の様に日本で誰か作って頂けると良いのですが。。。但し、データによると、自然界ではダン系の色は1000羽に1羽しか出ないそうですので、全くのゼロスタートですと、この色を出すには何万羽も飼わなければいけません。餌代もかかりますので、見込みの無い鶏は最初の羽が生えるくらいのところで処分していかないと物凄いコストが生じます。ドライフライハックルの開発は左様に根気、非妥協的態度、コストがかかるものなのですね。とても思いつきで出来る事ではありません。皆様に感謝してハックルを使って行きたいと思います。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドライフライのハックルの真実(形状)

2018-12-01 15:27:04 | ハックル/Hackles

水面に6本の脚でミズスマシの様に乗るダンを表現する場合、バーブが硬くてコシがあり、ツヤツヤし太陽の光に反応して煌めく透明感のあるハックル が一番適していると昔の識者は述べてきました(水面に張り付くスピナーの場合は低く水に乗るハックルが良いと思いますが、ここではひとまず議論しません)。硬いバーブとなると、バーブの長さが長くなるに従いコシが無くなって行くのは世の習い。従い、ハックルの全長に比較し短いバーブを持ったハックルが良いとされてきました。その際、昔の識者が一つの基準にしたのが、鶏のご先祖様であるジャングル・コックのハックルとそのバーブ。上の絵は''The Book of the Hackle''のハックルの形状についての絵を私が模写したものですが、真ん中のハックルの形状がジャングル・コックのハックルの形状に一番近いもの。ハックルのバーブの長さが長いのが一番下のハックルで全体的に長細い楕円形。真ん中のものが、槍の先の様な形のハックルで、バーブの長さは下のものよりもハックル全体に比較し短くなっております。一番上はバーブの長さがハックル全長に比較し更に短くなっており、ハックル基部を除くと細長い形状。ジェネティックハックルはそれが更に非常に伸びたものと認識して良いと思います。
Frank Elder氏の著書''The Book of the Hackle''の中で、氏は真ん中の形状のハックルが自分の一番好きなハックルとしております。
因みに、右のバーブを広げた形状を見て頂ければ見て取れる様に、ハックルのバーブは基部から先端にかけ、その長さに余り差はありません。長辺三角形の様なハックルの形から、バーブは先端になればなるほど短くなるのでは?と思われるかも知れませんがさにあらず。その理由は、バーブはハックルの軸から90度に伸びているのではなく、より鋭角に伸びているからです。実際のハックルを観察頂ければそれがお分かりになる事でしょう。
ここで、実際のハックルの形状を見てみます。

これはFrank Elder氏が育てたOEGのRusty Dun。51番となってますが、番号が若い程、色は別として、ハックルの品質が高いとしております。これは確かBクラスのケープです。

形状は私の下手な模写の真ん中のハックルよりも槍の穂先が長くシャープになっております。透明感も申し分ありません。

背景を黒くすると、穂先の錆色、基部の金色が自己主張をします。

背景を白にすると、ハックル中心部(リスト)は色を失い、ハックルの軸は濃い青色のインキ色。透明感の中に錆色と金色がさりげなく浮かぶ感じになります。


上のケープは相模大野のバートンさんで数年前購入したチャイニーズコックケープ。

チャイニーズなので、ジャネティックハックルの4分の1から5分の1程の値段でしたが、透明感に溢れたハックル。光を当てるとツヤツヤに光ります。その形状は私の模写では一番下のものに近く、ハックル全長に比較しバーブが長い事が見て取れます。

暗い背景ではバーブが金色に強く自己主張します。

しかし、明るい背景では一転して透明感が増し、透明な中にキラッキラと金色が輝くハックル。非常に魅力的なハックルです。


このケープはサワダより以前購入したインドケープ。

透明感も持ち合わせるハックルです。

暗い背景ではバーブの自己主張が強い。より色が濃いハックルです。

明るい背景では、前のハックルの様な透明感はありません。かといって、このハックルがダメというわけではありません。単にバーブの色が濃いため、透明感ではチャイニーズハックルに及ばなかったという事ではないでしょうか。

これはサワダでまた以前購入したロードアイランドレッドのハックル。インドハックルですので、本当のR.I.R.ではありません。

レッドですが、イエローが強いものとは違い、ブラッドレッド的な色。透明感もありランズ・パティキュラーを作るには適当なハックルです。

暗い背景ですと、レッドが強力に自己主張します。

明るい背景でも、元々濃いレッドのハックルなので透明感という表現で言えるかハックルの儚さはさほどなく、いつでも強く自己主張するハックルです。

チャイニーズ、インディアンのコックハックルの形状をドライフライ用に飼育されたOEGとの比較で見ましたが、ハックルバーブが長いため、ハックルの形状は楕円形が強いものになってます。しかし、個々のハックルの「透明感」がWhitingのハックルよりも強い事がお分かりになると思います。透明感のあるハックルであれば、ドライフライのゲイプの1.5倍以上巻いても鱒には全く気にならない筈。また、ウィングをハックルで表そうとしたら、「ウィングの長さと同じ長さのハックルを使う」必要があります。毛針をシルエットだけにして、本物の虫のシルエットと比較すれば理解出来ることでしょう。ジェネティクハックルは、ミッジを巻くのには適しておりますが、普通の大きさのカゲロウのウイングまでを模すハックルフライを作るには適当な長さのバーブが足りず、また、大きなハックルになると透明感に問題が出てきます。今回例に載せたハックルを纏った毛針は、水面上で太陽光の透過する際、その透明感で本物のダンの様に光の輝きを帯び、水面にそれを反映する事でより生命をイミテーション出来るハックルであると思います。
ですので、皆さんにはジェネティックハックルだけではなく、インド、中国のハックルもドライフライを巻くのに適しているのではないですか、と、お伺いしたいところです。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする