思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

オーストリアMur川

2010-07-26 14:26:10 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
とてもとても暑い日が続く今年の東京。戦前のハーディー・パラコナ竿のコーティングが溶けて緩んでいるのではと大変心配な日も続いております。

ここで思い出すのが長い間通ったオーストリアのMur川の清涼さです。7月でも乾いた空気は、日差しは強くとも日本のようなじっとりした不快さを感じさせないものでした。




(5月の増水時のMur川)


(屋根のついた歩行者専用橋)


(ちらりと見える赤い車は当時の私の車)


(増水の川からの一匹)

Mur川はオーストリアのSteiermark州を縦断しスロベニア国境を超え流れる川。欧州最大の鱒族Huchen(別名ドナウ・サーモン、イトウの仲間)も棲み、1.2mを超えるブラウントラウトが釣り上げられた川でもあります。私がこの川を知った2002年当時、Murau(ムーラウ)の町の上流5kmくらいの場所から4kmの流域は、オーストリアの釣り免許を取得していなくても入漁券を購入すれば釣りが出来、地元オーストリアの釣り人の他、イタリア、ドイツからの釣り人も訪れる川でした。




(秋も深まる10月末。定宿Hotel zum Brauhausの部屋から早朝の眺め)

漁期は5月1日から10月31日まで。5月は増水で釣りは難しいのですが、6月以降、夏のイブニング、秋はグレイリングの繊細な釣りが楽しめます。


(5月の魚。竿はSteel Centre入りGold Medal 10'、1929年製)


(10月末。晩秋の一日)


(秋のグレイリング。婚姻色が出ている)


(晩秋のグレイリング)

それが何時からか定かではないのですが、多分2006~7年から、その4kmの釣り場の内上流部分の3kmは、ムーラウに居城を構えた元オーストリア・ハンガリー帝国の著名な貴族Schwarzenberg一族の末裔で、ビロード革命後のチェコの外相を最近まで務めたKarel Schwarzenberg氏が買い取り、一般人は釣りが出来なくなりました。今は堰堤とその上流流れ込み部分の1kmのみの釣り場となりましたが、それでもドライフライ、ソフトハックル、ウェットフライで15~20ヤード先の鱒・グレイリングを狙う事が出来ます。

定宿のHotel zum Brauhausは14世紀から続くビール醸造所(Brauhaus)の隣にあり、ちょっといけるビールと、ムーラウ近郊の名物Zirbelschnaps(ある木の皮を漬け込んだウォトカのような強い蒸留酒)が楽しめます。冬はスキーも出来(というかスキーの方が遥かに有名なのですが)、山で楽しむスポーツが一通り揃ったリゾート地にある小奇麗なホテルです。
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英国の昔のドライフライ

2010-07-24 09:46:01 | 毛針/Flies
竹竿の紹介ばかりが続きましたので、別の話題を。

私がフライフィッシングを始めた30年前からドライフライのハックルの長さは今と変わらずゲイプの、どうでしょう。。。1.5倍か2.0倍程度で、変わっていないと思います。
ところが、渡欧して色々な昔の釣りの本を見ると、どうも英国では昔、より長いハックルが普通のスピナー、ダンのパターンに使われていた事に気付きました。



写真は英国のMatching the Hatchを扱った本に掲載されていたもので、1964年にAlbert Lunnが巻いたLunn's Particularです。

Lunn's Particularとは、かの有名なHoughton Clubの釣り場、Stockbridge近郊のTest川でリバーキーパーを勤めたWilliam Lunnが1917年に発表したドライフライで、Medium Olive(Baetis tenax, Baetis vernus)のスピナーを模したものと言われております。

Albert LunnはWilliamの息子。父親の仕事を受け継ぎHoughton Club Waterのリバーキーパーを勤めると同時に毛鉤をプロフェッショナルに巻いたそうです。

そのAlbertが巻いた上記毛鉤のハックルは、今の目から見れば異様に長いもの。現在売られているハックルで巻いたなら相当水面から離れてしまいそうです。

英国で使われていたハックルはOld English Game Cock(OEG)のもの。今のハックルよりしなやかで、かつ、透明感に溢れたものだったと色々な人が言っております。私も滞欧中はそのようなハックルを手に入れられないものかと、英国のハックル業者からOEGのハックルを購入したりしましたが、どうも、当時の最高品質のものとはかなり違うようで、満足出来ませんでした。

アップアイフック、パーソルズ社のタイイングシルク、長いしなやかなハックル、というものは日本では凄くマイナーですね。この暑い暑い夏、私の理想はAlbert Lunnの巻いた毛鉤のようなスタイルの毛鉤でのイブニングの釣り。あっ、電車釣行ではイブニングは無理ですね。
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Hardy Viscount Grey 10'6''(H6957) and Pope 10'(H26210)

2010-07-16 10:18:50 | Hardy Palakona
ハーディーが1883年最初に世に送り出した竹竿は3pcsのGold Medalと2pcsのPerfectionです。この両タイプが最も長くハーディーの看板竿として製造され、Gold Medalは1967年、Perfectionは1971年までカタログに載り続けました。
Gold Medalには目立ったバリエーションは無いものの、Perfectionには幾つものバリエーションが製造され、一つのタイプとして製造され続けました。Featherweight Perfectionは日本でも知られたものの一つと思います。


(上からPerfection 9'、Pope 10'、Viscount Grey 10'6'')



そのPerfectionファミリーの内、私が所有しているものにViscount Grey10'6''、Pope10'があります。
Edward Grey(1862-1933)は1905~1916年まで大英帝国の外相を務め、第一次世界大戦の回避への悲壮な努力と共に、ロシアの総動員開始とそれに呼応したドイツの中立国ベルギー侵攻に際し条約上同国の中立を保証した英国の参戦を主導した事で知られております。
そのGreyは、一方、1899年Fly Fishingという名著を記す程の釣り好きで、また野鳥観察にも造詣が深いスポーツマンでもありました。


(晩年のViscount Grey:グレイ子爵)


(Fly Fishing)

そのGreyは1884年にハーディーより10'6''の二本継ぎの強い竹竿を購入し、それを愛用したそうです。間違いなくその竿はPerfectionだったと思いますが、標準より強めの竿だった様で、それが1902年より''Sir Edward Grey's Perfection''としてカタログに登場しました。Greyは外相を退いた後、準貴族から子爵(Viscount)へ受爵し、竿もそれに合わせ、1922年よりViscount Greyを名を改め、1957年まで製造されました。


(1884年にハーディー製の2pcs 10'6''の竹竿を買ったとあります)

私のViscount Greyは1956年製の最後期モデル。段巻きのバーガンティー色も未だ鮮やかで新品状態です。



元々は、強い風の中でも使えるドライフライ竿という位置付けだったのでしょうが、最後期モデルではシートラウト用の竿としての性格がより強くなっております。


(Viscount Greyの銘)


(Perfectionと比べ長いグリップ)

一方のPopeも、元々はドライフライ竿として1899年に登場し1970年まで製造されたハーディーの看板竿の一つ。最後はシートラウト竿として位置付けられた所はViscount Greyと同様です。段巻きは密で、スピアを標準装備しているところがPerfectionとの違い。私の竿は1959年製ですが、段巻きのバーガンディー色は褪せ、実戦を幾度も経た事が伺えます。

さて、日本で果たしてこの二本を使う機会があるのかは疑問ですが、伝統のPerfectionのアクションで多少の魚がかかっても余裕で取り込める長尺竹竿を何時までもきれいに振れるよう頑張りたいものです。


これはViscount Greyで釣った46cmのブラウントラウト。リールはSt. John、Kaizer Silk LineのNo.3 (AFTM6~7に相当)という道具立てでした。
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Etrachseeの釣り

2010-07-04 08:14:47 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
オーストリアは東に頭を置いたオタマジャクシの形をしています。ウィーンは東の外れ、ハンガリーとの国境から70km程しか離れてません。そのオタマジャクシの頭の丁度真ん中にあるシュタイヤーマルク州のまた真ん中あたりにMurau(ムーラウ)という町があり、冬はスキーで賑わいます。ムーラウにはMur(ムーア)川が流れており、この川では過去1.2メートルの巨大ブラウントラウトが釣られており、フライフィッシングが出来ます。

そのムーラウの町から北へ山を登ったところにEtrachsee(エトラッハゼー)という小さな山岳湖があります。


エトラッハゼーとの出会いは2002年7月。始めてムーラウに釣りに来た際、地元の観光案内所でムーア川の入漁券を問い合わせた際、そう言えばこういう場所もあるわよ、と教えてもらったのが切っ掛けでした。車一台しか通れない山道を進み、車止めにある宿Landhaus Etrachsee(www.etrachsee.at)がこの湖の漁業権を持っており、宿のおばさんから入漁券を購入し、また、ボートも借ります。

最初に持ち出した竿は変り種のMarston 10'4。シングルハンドですが、ダブルハンドにもなるようにグリップが長く飛び出しており、また、スピアーが竿尻についているという物。それにセントジョージにKaizerシルクラインの2番(AFTM5-6番)という道具立て。釣り方はロッホスタイルをイメージし、3つのウェットフライのチームを使いました。


まあまあのサイズの虹鱒


シルクラインを水面に浮かべ一休み


3本毛鉤のチームに食いつくアルプスイワナ


アルプスイワナ



湖の住人は、アルプスイワナ、ブルックトラウト、ブラウントラウト、虹鱒と鱒族ばかりですが多様です。この湖の特徴は良く釣れる事。大物は簡単ではないですが小物は幾らでも釣れると言っても過言ではないと思えます。この湖には、その後、フライフィッシング初心者を何人も連れ訪れる事になりましたが、その都度、皆が楽しめる程度に釣れさせて頂きました。兎に角、日本人が誰も行った事のない隠れ家のようなところです。
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Hardy Phantom 9'(H61358) 10'(H62000)

2010-07-03 13:02:05 | Hardy Palakona
Phantomは1962年から1972年まで製造された竿で、1911年から1961年まで製造されたC.C.de Franceの後継機種として投入されたと言われております。

この竿はHollokona、つまりバット部分が中空構造になった竿です。

アクションは所謂ドライフライアクションできびきびしておりますが、強くフォーワード・キャストをしても毛鉤で水面を叩く事なくフワリとドライフライを置く事が出来ます。前にも触れましたが、黒いスレッドを巻いたPhantomはラインを目線より低く伸ばす事が出来るので、水面スレスレに、超スローに、ドライフライを何度も飛ばす事が出来、ドライフライの魚へのアピールも大いに増す様です。

私のPhantomはどちらも1964年生まれ。しかしながら、10'の方はハーディーでPhantom 10'の実物見本として長いこと保管されたため、手元に来た時は新品でした。



上は10'、AFTMで7番、下は9'AFTMで6番です。ただ、実釣では夫々6番、5番に落として釣るのが個人的に丁度良い様に思います。それからドライフライを魚にアピールする釣りではコントロールが大切なのでラインはDTが必須です。PhantomはDTを前提に設計されているのか、特にオーバーロードになる事はないと思います。


上の10'の竿尻にはゴムのボタンがついておりリールが地面に直接着く事を防ぐ様になっております。9'はペゾンの竿の様に竿尻でリールを固定するタイプです。


竿の銘は60年代の竿に見られる大振りで踊った様な書体です。


ストリッピング・リングはメノウ入りです。


しかしながら、トップはメノウ入りではなく、PVCラインの使用を前提にして設計されている事が良く分かります。シルクラインはザラザラしているので、メノウ入りリング、フルブリッジリングが竿に付けられ、リールにはメノウ入り等のラインガードが着いてました。これらはPVCラインの導入により不要になり、今の竿に見られるスネークが普通になったと思われます。


10'で7番の竹竿と言うととんでもなくゴツイと思われるかも知れませんが、さにあらず。特にボートからの釣りでは良く使いました。写真で使っているのはGolden Princess。6番のDTを巻いても十分バッキングラインを巻く事が出来るサイズのLight Weightシリーズのリールです。正確ではありませんが、90年代初めに購入した物です。
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