思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Gmundner Traun

2011-09-25 00:50:28 | 欧州釣行記/Fishing Trips in Europe
ドイツ語圏の釣師にとり、Gmundner Traun(グムンドナー・トラウン)の響きは、英国の釣師にとってのTest、Itchen、Avon、Kennet、etc、仏国の釣師にとってのRisleの様なものかも知れません。歴史的という観点からは、日本人にとっての日光湯川にも比する事が出来るでしょうか。

外国ではトラウンとのみ言われ勝ちな、この川は、オーストリア西部、ドイツ国境近くを流れる川で、ウィーンからアウトバーンを走ると、ザルツブルクの一寸手前で下り、南に30km程下道を走ると見えてきます。



ドイツ語圏ではオーストリア・ハンガリー二重帝国時代より数多くの貴顕が毛鉤釣に訪れた川として知られてましたが、特にCharles Ritz(シャルル・リッツ)の著作により世界に広く知られる事となりました。

(A Fly Fisher's Life: Ritzの名著)

Ritzと彼の友でリバーキーパーのHans Gebetsroither(ハンス・ゲベーツロイター)が、グレイリング、鱒を夫々の道具で釣り上げる記述は今でも示唆に富むと同時にトラウン川への憧れを掻き立てます。Ritzの竿はPezon et Michelの物だったでしょうが、Gebetsroitherの竿はオーストリア派の特徴であるガチガチに固い調子の超短竿(6'以下)であった事でしょう。

尚、オーストリアではGebetsroither Stil(ゲベーツロイター流)のキャスティング教本が出版される等、そのキャスティング法はポピュラーで、Brunner氏の製作した短く強い竹竿と合わせトラウンを中心に見ることが出来ます。


(Fliegenwerfen: Fly Casting オーストリア派の教本の一つ)

(Hotel MarienbrueckeにあるHans Gebetsroitherの記念碑が教本の裏表紙を飾る)


(Ritzの定宿であったHotel Marienbrueckeの前に立つHans Gebetsroitherの石碑。向かって右はHansの弟子であったスイスのHans-Ruedi Hebeisen氏。Hebeisen氏は著名な釣り人且つ業界の著名人)


(Hotel Marienbruecke。全く旧式の釣宿。でも、夕食のクオリティは馬鹿には出来ない)

この川の川幅は30m~60mくらいだった様に記憶しております。早瀬と瀞場が適当な間隔であり、水は透明度が高い場所もあれば、緑色に見える深場もありで、変化に富んでおります。









一番の圧巻は魚の数とその大きさ。川にはブラウン・トラウト、虹鱒、グレイリングとゲームフィッシュが居ます。百年以上前には鮭と間違う様な鱒で有名だった川ですが、今も50cm~60cm以上の魚を数多く育んでいます。

ブダペストからは片道500km以上離れていますので、140km~150km/hで走っても5時間はかかりますが、それでも、この川に何度か行く機会を得ました。その時の経験では、6月の釣りが一番良さそうな印象を受けました。しかし、夏の早朝・夕方はドライフライで良く釣れるそうですし、秋も大型フライで大物を狙う事が出来るようです。

日本とは違い、欧州の川は個人が所有出来ます。このGmundner Traunは90年代から2004年まで独のRudi Heger氏(或いは彼の会社)の所有になっており、入漁料が目の玉の飛び出る値段(年券のみで数十万円)だったのですが、2005年よりFreunde der Gmundner Traun(グムンドナー・トラウン友の会)の所有になり、入漁料は正確に憶えてはおりませんが、EUR 50.00程度だった様に思います。この川にしてはお値打ちではないでしょうか。

欧州に戻って、Gmundner Traunで釣りをしたい!!


(虹鱒47cm。RitzのFario ClubにあやかったSharpeのFario 8'5''で)


(Perfection 9'に1912年チェックのPerfect 3 3/8)




(コンディションが合えば、尺以上の鱒は幾らでも釣れるという感じでした)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Kaizer Silk Line No.2 (made in Belgium)

2011-09-19 05:06:15 | シルクライン/Silk Lines
今、手に入るシルクラインは、Phoenix、Thebault、イタリアのもの(名前は失念)、日本のYano、それから中国製のものもあるようです。

HardyのCorona、HardyのCoronaもOEMで製造していたCumberland社のベストセラーKingfisher Line、Pezon et Michelのシルクラインは既に30年以上前に製造を終えております。

21世紀になって直ぐ製造を終えたシルクラインにベルギーのKaizerがあります。

このラインとの出会いは、ドイツ駐在中の93年。地元のFliegenfischer誌にシルクラインとプラスチックラインを比較した寄稿があり、その中でシルクラインの間でも太さ仕上げについての考察がされ、筆者の使っているラインとして紹介されたのがKaizerでした。

パリのLa maison de la moucheのおじさんによれば、Kaizerは昔Pezon et Michelにシルクラインを納入していた由。HardyにとってのCumberlandの様な会社だったのでしょうか。



1998年に何本か纏め買いをしたので、望むらくは、一生分の在庫はあると思いますが、ハンガリー時代に酷使し、先端が切れてしまったNo.2 (AFTM 4-5)ラインを新品と交換する事にしました。


ブレイデットループ、タイイングスレッド、タイイングシルク、ワックス、等を用意します。


まず、シルクラインを束ねる紐を取り外します。


ブレイデットループにシルクラインの先端を差込み、まずタイイングスレッドで先端近くを締めます。フィニッシュはハーフヒッチです。道具が無くとも数十秒の仕事です。


次は同様に根元の近くを締めます。この時出るブレイデットループの余りはハサミで切ってしまいます。


次に、タイイングスレッドの上をタイイングシルクでもう一度巻きカバーします。ブレイデットループの余りが出ないよう丁寧に巻き、ハーフヒッチで止めた後、バーニッシュし完成。





完成後のブレイデットループ付きシルクライン。

このNo.2は、I.D.Iのラインに近い太さ・重さですので、Perfection、De Luxe等の9'~9'6''位までに合わせる事が出来ます。Perfectionで向かい風に向かいこのラインをキャストするのはdelightです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Hardy L.R.H. Dry Fly 8'9'' H50325A (1962年製)

2011-09-11 06:35:51 | Hardy Palakona
一時期、夏はもう終わったかのような季候になりましたが、また、暑い日が戻ってきました。9月11日。10年前のあの時、ハンガリーで見たCNNの映像には本当に衝撃を受けました。
今回はL.R.H. Dry Flyです。
I would like to introduce Palakona L.R.H. Dry Fly this time.



最初にカタログに記載されたのは、1928年。それから名前は同じでも竿の長さ、スペックを変更し、1971年まで製造されたロングセラーの一つです。
The L.R.H. Dry Fly made its first debut in the Hardy's Angler's Guide in 1928. The name of the rod remained unchanged since then but it had been manufactured with substantially different specification until 1971.


最初のモデルは9'4''でリングは全てメノウ入りという豪華版でしたが、1948年以降は8'9''と大分短くなり、スネーク或いはフルオープンブリッジと普通のモデルと同様のスペックになっております。
The first model was 9'4'' in length with all rings furnished with agate, quite deluxe rod, indeed. Since 1948, however, the length was shortened down to 8'9'', rings were either snake or full open bridge, with very common specification like many other rods.


私の竿は1962年製の後期モデル。スレッドの色は緑。そこにスカーレットの縁取りがされております。
My L.R.H. Dry Fly was made in 1962, as post-war model. Wrapping is green with scarlet crest.




バットリングには赤メノウが使われております。
Butt ring is furnished with red agate.


60年代を特徴付ける大振りで踊ったようなインスクリプト。
Big and dancing inscription of the 1960s.


リバーシブルスピアが装備されておりますが、スピアの真ん中は空になっております。
Reversible speer inside the reel seat. The middle of the speer is hollow.




グリップは私の手で余り前後に遊びが出ない程度の短さ。
Quite short grip just fits my hand.


L.R.H. Dry Flyを持って養沢に行ってきました。
I went fishing to ''Yozawa'' river with my L.R.H. Dry Fly.

以前述べましたが、60年代以降のパラコナ・ホロコナ竿には、緑、赤、黒のスレッドが使われたモデルがあります。赤はPerfection、W.F.Hardyの様な目線の高さでフライをコントロール出来る英国伝統のアクション、黒はPhantom、Continental Special 8'4''の様に目線より低くドライフライをコントロール出来るアクション、そして、L.R.H. Dry Flyの様な緑のスレッドのモデルは目線より上からWFのラインをシュートする様なアクションと言えると思います。
そう、1930年代、9'4''のL.R.H.Dry Flyに適合するラインとしてアングラーズガイドに載っていたのは、Filip No.1、No.2で、これは所謂WFラインでした。当初よりWFでのシューティングが念頭にあったのではないでしょうか。
As I mentioned before, many of Palakona rods made after mid-1960s were wrapped in Green, Red and Black. Perfection and W.F. Hardy were wrapped in red, the rods with traditional English or Hardy action which controls lines at the height of eye level. Phantom and Continental Special 8'4'' are with action able to control the lines at height under eye level, able to control dry flies just over the water. Rods like L.R.H. Dry Fly wrapped in green have action to control lines over the eye level, appropriate to shoot out WF lines further.
Yes, the first L.R.H. Dry Fly rods of 1930s in length of 9'4'' were recommended to tackle up with Filip No.1 or No.2 lines in the Angler's Guide; the Filip lines were todays WF lines. Maybe from the very beginning, L.R.H. Dry Fly rods were designed to shoot out WF lines.


養沢はいつもより水が多く、多分ブッシーなドライフライの釣りが良さそうな条件でしたが、生憎その様な毛鉤は持ち合わせがありません。仕方がないのでアップストリーム・ウェットの釣りをやります。正直に申し上げれば、この釣り方は苦手でどうしてもアタリが取れません。私はやはり、Chuck and chance itのダウン・クロスのウェット釣り師の様です。
There was too much water at Yozawa to practice my usual fishing style, maybe better for bushy dry flies to fish with, I, however, did not have such flies. No other choice than to try out upstream wet fly fishing. I do not like this type of fishing, honestly speaking, for I cannot feel the take of the fish in this very sensible type of fishing. I am a down-cross wet fly fisherman doing ''chuck-and-chance-it fly fishing.



さて、L.R.H. Dry Flyを使って判るのは、長いDTをコントロールしての釣ではなく、アメリカン、或いは、Pezon et MichelのPPPシリーズのようなWF志向の竿という事です。ブッシーなドライフライの釣りでは楽しそうです。
You may find out, when you use L.R.H. Dry Fly rod, that this rod is not designed to control long DT lines but to shoot WF lines like American rods or PPP series of Pezon et Michel rods. Enjoyable rod when you use bushy dry flies.




水が多くていつもの好ポイントも水没。
Too much water made one of the good spot completely under water.


その後、大増水の立岩でアップストリーム・ウェットをやります。水中に引き込まれたラインを出来るだけ張るとコツコツというアタリがあり、何匹か上げる事が出来ました。
I did upstream wet fly fishing thereafter at ''Tateiwa'' point with too much water. I felt takes of the fish when I kept the line tight which was drawn deep into water. I caught several fish there this way.




養沢の道端の光景。
Road side landscape of Yozawa.
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする