Falkusによれば、Sea Troutは臆病で川で日中釣ることはほぼ無理、活動が活発化し人間の姿が見えにくい夜釣りなら妥当なレベルで釣れる可能性ありとの事。同じ夜でも、夏場が中心のSea Troutの川釣りでは、真夜中までは本当の暗闇にはなりにくく、日暮れから真夜中過ぎまでを''First Half''とし、その後30分から1時間程度を''Half Time''、それから日の出までを''Second Half''としています。
First Halfの釣りはフローティングラインかシンクティップでMedicineを泳がせる釣りが中心で、もし寒ければシンクラインを使い川底をスローに魚の鼻先に毛鉤を持っていく様なリトリーブを行うのが肝要です。
Half Timeは魚の活性スウィッチが切れる事が多く、シンクラインでの巨大毛鉤''Sunk Lure''での釣り、或いは、''Surface Lure''に切り替えてSecond Halfを待ちます。
Second Halfは魚の数は出なくとも、大物が釣れる時間帯。Sunk Lureを使う場合はスローリトリーブに徹し魚の鼻先に毛鉤を持っていく事を主眼にした釣りになり、Surface Lureは漆黒の闇の中でウェーキングを行わせて魚を誘います。
日中の釣りでチャンスがあるのは増水して川が濁った場合。シンクラインでのスローリトリーブの釣り、ルアーでの釣りで少ないチャンスをものにする様努力します。平水での日中の釣りではチャンスは殆どないのですが、僅かにUp Stream Worming、或いはWormを使った浮き釣りに望みがあるそうです。
湖と海の釣りでは、ボートからのウェットフライの釣りに分があり、Bob FlyとLead Flyをうまくアピール出来るよう、太陽の向き、風の向き、ボートの向きを良く考えながらカーストする必要があります。。。。。
と、つらつら書き連ねましたが、この本の特徴は釣りの技術だけの本では無いという事と思います。
川に立ち込んで釣りをしている時、もし流されたらどうしたら良いのか?
海のボート釣りをしていて潮が満ちてきてアンカーにボートが引っ張られたらどうやって転覆を防ぐのか?
安全に関する記述も多く含まれております。Falkus自身が、過去、自然観察フィルムの撮影で撮影クルー、夫人と共に海で遭難し、彼一人だけが生き残ったという辛い体験が、読者に安全な釣りを楽しんでもらいたいと思う彼の心の背景にあるように思えます。
パイロット、自然観察家、ジャーナリスト、ハンター、釣り人。幾つかの顔を持つFalkusは、日々の糧を得る職業の他に、洗練されたアマチュアリズムで追求する趣味を持ち、しかも自然に深く関わる事が出来ている、という点で、英国紳士の理想を体現した人物です。
彼の''Sea Trout Fishing''は1962年の刊行から今に至るまでSea Trout釣りの教科書として読み続けられております。毛鉤釣りのみではなく、スピニング、餌釣りも包括し、自然観察・自然と人間の関わり方にまで言及した釣りの本、例えば、桜鱒釣りの本が、日本で刊行されたら本当に良いだろうと思いつつ、Falkusの紹介を終えさせて頂きます。