思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Water-hen Bloa(ウォーターヘン・ブロア)

2020-03-29 14:40:40 | 毛針/Flies
]
Water-hen BloaはPartridge & Orange, Snipe & Purple等と並ぶ柔らかい鳥の羽をハックルに巻いた、イングランド北部で良く使われるウェットフライ。スコットランドでも使われそこではWater-hen Blaeと呼ばれるそうです。

外出自粛のお願いが出て、且つ今年初めての本格的な雪となったこの週末、自由に釣りに行ける日を待ちわびながら毛針を作ってみました。

私の愛読書であるA. Courtney Williams氏著の「A Dictionary of Trout Flies」。そこからこのWater-hen Bloaのレシピをみますと。
Wings: Hackled feather from the inside of a water-hen's wing
Body: Yellow silk, dubbed with the fur of a water rat
Hook: 14
とあります。
ここでいうwater-henとはMoorhenの別名。ボディ材のwater-ratが手に入らなければmoleでも可ということで、moleで巻いてみました。
この毛針で気を付けなければならないのはボディのシルクに如何に疎らに獣毛を付け、そこから下のシルクの黄色がしっかり出ること。これが結構難しいのですが、シルクにワックスをしっかり掛け、毛足の短い獣毛を載せる様に付け巻いていくと写真の様に何とか仕上がりました。
またハックルのwater-henはスプーン型で裏側が艶々していなければならないとのこと。写真の毛針ではハックルを余分に巻いてしまいましたが使っているうちに疎らになるのではと思って巻いてしまった次第。
本当は3本の毛針を付けた仕掛けで釣るのが一番良いのでしょうが、養沢等毛針一本の仕掛けがルールになっている釣り場も多いので、次の釣行では多分一本鉤でその実力を試すことになりそうです。

他にCran Swallowも巻いてみました。上の本には収録されておりませんが、英国のTrout & Salmon誌が90年代終わりに発行した毛針集に載っていた毛針でスターリングフェザーとブラックシルクのみの毛針。

それにGreenwell's Gloryや、

Partridge & Orangeがあれば春の川で楽しい釣りが出来るかなと期待してます。上のPartridge & Orangeは先週末養沢で山女魚を掛けた後壊れてしまったもの。オレンジ色のシルクだけのボディですが、本当に釣れる毛針です。

養沢釣行(2020年3月20日)

2020-03-21 06:36:24 | 釣行記/Fishing Trips

季節外れの暖かさに包まれた昨日、待っていた今年の初釣行に行ってきました。3月でも行ける養沢です。

アイの無いスネック鉤に毛針を幾つか巻き貯めて、釣りの出来る日を待ちます。準備したのはGreenwell's Glory、Snipe & Purpe、Partridge&Orange等。

テグスの付いたこれら毛針を入れるのは、20年近く前にギリシャのコス島で買ったタバコ入れ。私はタバコは吸ったことがありませんが、このタバコ入れは最初からリーダーワレット代わりに購入したもの。

中には使用したリーダーを保存しておりますが、そこにテグス入り毛針を入れてみました。

地元の駅を5時32分に出発。7時1分武蔵五日市駅発のバスで釣り場に向かいます。養沢の事務棟には7時30分前には到着。受け取った番号は19番。昨年の台風以来あまり釣りが出来なかった人が多いのか、今年の養沢は平日でも人が多いようですが、昨日も人が多く昼までには竿を出す場所に困る状況でした。

前回養沢に行ったのは昨年の8月の猛暑の日。7ヶ月以上も経ってしまったのかと思いつつ晴天の空の下に佇む家々を見るとこれから日々良くなる陽気に晴れやかな感じを受けます。

事務棟から歩いて15分程。遠藤前は台風の影響で昔のポイントは潰れてしまいました。それでも昔のプールの最上流にあった大岩の上流からテグス付きのGreenwell's Gloryを流し込みます。当日使ったのはF.E. Thomas竿9'。1911年製の竿にシルクライン。リールはSt. George Jr.の無塗装仕上げ。
水中を流れる毛針が何だか動かなくなったような感じ、第六感があったので聞き合わせをすると、柔らかい長竿の先がグイッと曲がり生き物の躍動感が伝わります。毛針を咥えたのは虹鱒。黒っぽい色で尾鰭は擦り切れていない魚。越年した魚でしょうか。

朝の遠藤前は日差しもなく、この時期は寒いので日差しを求めて更に上流へ。堰堤の上流へ更に歩き日差しのある場所に入りました。穏やかな流れの中には数匹の魚の姿が見えます。ドライフライを試しますが、魚は何とも反応せず。更にGreenwell's Gloryは穏やかな流れではバルキー過ぎるのかこれも無反応。そこでPartrige&Orangeを結んで流すと漸くリーダーを引き込む当たり。年寄り竿を結構曲げてくれた魚はとても綺麗な山女魚。

更に同じO&Pで別の山女魚も釣り上げることが出来、上流から事務棟への帰路も考えると昼近くだったのでもうこれでいいかと思い納竿。

13時22分のバスまでは時間があったので、帰路に川筋を見て歩きましたが、どこも人が入っていて竿を入れるのは無理。そんな中立岩は空いていたので入ってみましたが昔は深い淵だったポイントはすっかり浅くなり魚も底にへばりついていて錘の入っていない毛針では太刀打ち出来ずでした。

立岩の下流も台風のため砂利のフラットな流れになってしまってました。昔の水苔がついた石と深場が転々とする養沢を知っている身にすれば何とも味気ない姿ですが、季節が進んで植生も戻り、昔のような環境に戻る日が来ることを切に祈ります。




Greenwell's Glory(グリーンウェルズ・グローリー)

2020-03-08 13:08:33 | 毛針/Flies

Greenwell's Gloryはスタンダードフライの中でも世界的に広く使われその名を知られている毛針。
元々はDurhamのCanon William Greenwell氏が1854年スコットランドのイングランドとの国境地域を流れるTweed川で5月に釣りをしていたところ、鱒達がMarch Brownよりも他のカゲロウを好んで捕食していることに気付き、Tweed川の畔で名を知られた毛針職人のJames Wright氏に彼が見た鱒が好むカゲロウに似せた毛針を巻く様に依頼、二人で考えた末出来た毛針。Greenwell氏がその毛針で他の釣り人に真似の出来ない大釣りをしたことから、「グリーンウェル氏の栄光」と呼ばれるようになった由。
そのレシピをGreenwell氏は下記のように書き残しております:
Wing: Inside of a blackbird's wing
Body: Yellow silk
Hackle: Coch-y-bondhu
Hook: 14
アイの付いたスネック鉤をH.S.Hall氏が開発したのは1879年。更にドライフライが南イングランドで愉しまれるようになるのが多分1860年代以降である事を考えると、元々のGreenwell's Gloryはガット付きの鉤に結ばれたウェットフライであった筈です。

昔入手した英国のお医者さんが残したハックル、シルク、その他のフェザー類の中にアイの無いスネック鉤やリマリック鉤があります。

鉤の入った小箱から幾つか出して見ます。

比較的大きなと言っても、12番程度の鉤の他は、

小さめの鉤15番からそれよりも小さい感じです。

雨の日曜日。徒然なるままこの鉤にGreenwell's Gloryを巻いてみることにしました。

15番程度の鉤にガットではなく、フロロカーボンの1号(4X程度)のテグスを黄色の絹糸で鉤に巻き留めます。この絹糸は昔のゴッサマー・シルク。良くワックスをかけておきます。

その絹糸のファウンデーションの上に、Blackbirdは入手不能なので、代わりにスターリングのクイルを付けます。ウェットフライのウィングは寝させるのが一般的ですが、北部イングランド等ではウェットフライのウィングを直立させていたことから、当時のスコットランドでもそうであったと想定し直立したウィングを取り付け、そこに、これまた昔の英国のCoch-y-bondhuのヘン・ハックルを巻き留めます。

出来上がった毛針を黒い背景で見て見ます。

このGreenwell's Glory。私も欧州、日本で使って大釣りをしたことがありますが、どちらもドライフライではなく、ウェットフライとして使ったときでした。東日本大震災の後の養沢は平和橋の上流の同じ場所であっという間に鱒を10数匹釣ったとか、オーストリア山中の湖で虹鱒、アルプスイワナ、ブルックトラウトを大釣りしたりとか。。。そんな数釣りでなくとも今は良いのですが味のある釣りを愉しみたいと思っております。ハックルはヘンですが、乾いていれば浮いてくれそうな毛針に仕上がったので、ドライフライでもウェットフライでも両刀使いでいけそうです。
もう少し暖かくなったらウェットフライも使えるちょっと長めの竿でこの毛針を川に連れて行くつもりです。

Blue Upright(ブルー・アップライト)

2020-03-01 14:38:22 | 毛針/Flies

Blue Uprightは英国西部のウェットフライの中でも最も効果的と言われる毛針。暗い色調のカゲロウ、或いはカワゲラを模した毛針として多くの場面で用いられるとされますが、特に春の急な流れの中で魚にアピールするとあります。
3月になりシーズンインした今日、春の養沢で数多く目にするトゲトビイロカゲロウという大きく暗い色調のカゲロウをイメージしてBlue Uprightを巻いてみました。

彼の万能毛針Tup's Indispensableを創作したR.S. AustinがBlue Uprightを作ったとも言われておりますが、彼によるBlue Uprightのレシピは:
Tying silk: Purple
Body: Undyed peacock's herl (繊毛を取り除いたピーコックハール)
Hackle: Steely blue game cock's sharp, bright, and nearly black, but with a definite blue centre(スチールブルーのゲームコックハックル。キラメキが強く黒に近いがはっきりブルーのセンターを持つもの)
Whisks: ditto(同上)
Hook: 10 to 14
R.S. Austinは素晴らしいゲームコックハックルを多く保有していた様で、Tup'sでも金色が多く乗ったブルーダンをハックルに指定しておりますが、ブラックに近いスチールブルーでセンターはブルーというハックルは今やまず入手不能。ですので、これにはダークブルーのセンターを持つフランス・ハックルのGris fume (Smoked grey)で代用します。ピーコックは戦前・戦中の英国の骨董品。鉤はこれまた英国の骨董品のダウンアイのスネック鉤。テイル(ウィスク)はスペインから入手のスチール色のものを使います。

フランス・ハックルを手の前にかざすとこの様な感じ。多少はR.S. Austinのレシピに近ずけば良いのですが。

簡単な鉤ですので、巻くのはあっという間。春の陽光に毛針を置くと太陽の光に煌きます。

黒い背景に置くと錆色が目立ちます。

左上は以前英国のBlue Dunのハックルを巻いたもの。陽光下では青白く煌きます。これで良ければですが、R.S. Austinの指定するハックルはもっとブラックに近くなくてはいけないので残念です。