思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Hardy L.R.H. Dry Wet 9'3'' (E90785, 1953年製)

2014-08-23 14:59:18 | Hardy Palakona
Laurence Robert Hardy(LRH)はHardy Brothers創業者兄弟William Hardy(兄)、John James Hardy(弟)の兄の息子として1884年に生まれ、1958年に亡くなるまで、プロフェッショナル・キャスター、Hardy Brothersの経営者として活躍した方です。
二代目経営者として様々な革新を持ち込みそれは、今日の製品にもLRH Light Weight Series Reelにその名を留めております。
そのLRHは自身の名を関したパラコナ竿を幾つも世に問うております。
最初は1928年に登場したLRH Dry Fly。最初は9'4''で登場し、段巻きを纏い、全てのリングにはメノウが使われた重厚なドライフライ竿でしたが、1948年以降は8'9''と短くなり、段巻きもなく、リングも通常のものに変わっております。
その1948年に登場したLRHの名を冠した別の竿に、LRH Wet、LRH Dry Wetがあります。


私の手元にあるのはLRH Dry Wet 9'3''。この竿は1948年から1956年の8年間と短い期間に製造されたもの。3ピースでトップセクションは2つと一見通常のHardyの3本継パラコナ竿です。


この竿が普通の竿と違うのは、トップの1本はドライフライ用、もう1本はウェットフライ用と用途が分かれたトップが夫々付いている事。

段巻きもなく、モダンな感じの竿です。


また9'3''という長さの竿にしては、軽く感じるのも直ぐ判る特徴。重さは5ozとより短い8'9''のLRH Dryの5oz 2drmより2drmも軽くなっております。カタログは沈黙しておりますが、その秘密はバットセクションとミドルセクションに竹とパイン(松材)のダブルビルとを採用した事。竹より軽いパインを使う事で重量削減を実現しているのです。


私の竿は1953年製。緑のラッピングに赤の縁取りがされております。これはLRH Dryと同じ色使い。


リングはスネークが採用され、軽量化を狙った事が判ります。この時期にはプラスチックラインも誕生し、シルクラインの様にザラザラしたラインが竿を痛める懸念が無くなった事も反映しているのかも知れません。


ちょっと見え難いのですが、これはウェットフライ用のトップ。先端がドライフライ用よりも細くなり、繊細なトップを持った3本継竿になっており、水中のアタリを感じ易くしております。


これはドライフライ用のトップ。ウェット用に比べ太く、竿を振ると先調子ではなくパラボリックというか竿全体が曲がる感じです。


このLRH Dry Wetに合わせるリールとして推奨されるのが、Light Weight Reel 3oz 8drm。そこに35yrdのFillip No.2ラインを合わせ20yrdのシルクバッキングを加えると合計で9oz15drm。この総重量を一番軽く感じる絶妙のバランスを実現出来るよう、コルクグリップは非常に短く遊びはありません。LRH Dry Wetのグリップ長14.5cmに対し、1962年製のLRH Dry 8'9''のグリップは17cmあります。


リールシートも下のLRH Dryのものより短く遊びを排除した作りになっております。




これはLRH Dry Wetのグリップ。遊びは全くありません。


それに対しこればLRH Dryのグリップ。通常のHardyパラコナと同じように随意にグリップ位置が選べます。

このLRH Dry WetはLRHが絶対の自信を持って世に出したものだったのでしょうが、その絶妙なバランス感は世の人に広く受け入れられなかったのでしょう。製造は8年間で打ち切られ、極めて稀な竿になってしまいました。
コメント (5)
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