思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Hardy Palakona Fairchild 8' 3pcs (E74831 1950年製)

2024-08-31 10:38:41 | Hardy Palakona

HardyのFairchildは3pcsのライトロッドとしてカタログに記載され1909年から1957年まで製造されたとあります。

最初の頃は8'、9'、9'6''の長さがあり、そのアクションはEasy for Wet Fly、ウェットフライ用の柔らかいアクションとされております。

軽量化を図るためグリップはオールコルク。そこにリールフィッティングはUniversalを誂えております。

この竿の製造番号はE74831。そこから1950年製と判るのがHardy竹竿の良いところ。

リングはバットとエンドには瑪瑙を入れたものが使われ、その間は軽量化のためスネーク。米国竿は戦前からトップガイド(英国式だとエンドリング)も近代的に瑪瑙が入らない軽量化されたものが使われておりますが、Hardyの竿はプラスチックラインが普及する前のエンドリングには全て瑪瑙が使われ、ザラザラするシルクラインから竿を守っております。

Universalリールフィッティング。

プリンスオブウェールズ(英国皇太子)の紋章が入り、

更に英国王の紋章も入ります。国王と皇太子の御用達であることを示しております。

竿を巻くように記入されたインスクリプション。Fair-

ch

ildと竿の名称が記入されております。

瑪瑙入りバットリング。

スネークリング。

1950年代のPalakonaに特徴的なグリップ。フックキーパーはなくコルクの中から竹がそのまま出てくるもの。フックキーパーは不要で、竿の真ん中程のリングに毛鉤を引っ掛けリールの縁にナイロンリーダーを沿わせる様にすれば竿の長さより長いリーダーでも大丈夫です。

元々、ウェットフライ用のペナペナアクションだと思って入手したこの竿ですが、アクションが想像とは全然違い、Hardyの伝統的なミディアムアクションでドライフライも問題なくこなす竿。

養沢の様な渓流でドライフライ釣りをするのに向いております。尚、本竿のエンドリングは瑪瑙の口径が狭くプラスチックラインは使えません。またシルクラインでも塗りの厚いPhoenixもブレイデッドループを付けた先端は通りにくく、塗りの薄いKaizerのシルクラインで丁度良しです。KaizerシルクラインNo.2(4〜5番程度)を26〜7年前に購入した復刻版Bougleリールに巻きます。

流れの中層以上で泳ぐ山女魚はドライフライへの反応も良く楽しめます。

同じようにドライフライに出た山女魚。

写真の当日魚をかけたドライフライ。Tup's Indispensableで別々の種類のハニーダンのハックルを使ったもの。それにハックルフライバージョンでのGreenwell's Glory。

これは前回紹介のインドハックルのグリーンウェルとウィングの替わりにヘッドにOlly's Hackleのブルーダンを巻いたもの。ツートンカラーで見やすく視力の弱い私には重宝致しました。
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Thoughts on the LRH Dry-Wet fly rod

2023-11-26 22:30:15 | Hardy Palakona


Upon the latest comment to the article "Hardy L.R.H. Dry Wet 9'3" (E90785, 1953年製) dated 23.Aug.2014" I would like to express my thoughts on this rod as follows.

1. Lightness:
Among Hardy Palakona rods, this model is one of the lightest split cane rods, for it is constructed by double-built method; combining hard and steely cane on the surface of the rod with light pine in the core of the rod.
According to the "Angler's Guide", it weights 5 1/2 ozs approximately. Comparing with 9'6" Gold Medal, 3pcs weighting 6 3/4 ozs described in the same issue of the Angler's Guide, you can easily have an image of the unique lightness of the rod.

2. Balance:
I do not know exactly what effects at most for one to feel a rod "top heavy". I heard that American rods reduce its weight of the top section to avoid the rods to become "top heavy". The picture above shows the top sections of LRH Dry-Wet 9'3" and Payne 206L 9'. From top to bottom: LRH Dry-Wet (Top for Dry Fly Fishing), LRH Dry-Wet (Top for Wet Fly Fishing) and Payne 206L. Very fine top section of Payne 206L distinguishes itself from those of LRH Dry-Wet.
The Payne rod is quite lighter at hand compared with LRH Dry-Wet, but without top sections of both rods, I do not feel much difference in the weight of both rods. Probably practical and durable top of LRH Dry-Wet, or Hardy Palakona rods in general, make one feel that those rods are top heavy towards the quite light feel in hand given by American rods.

Angler's Guide proudly presents the balance of LRH Dry-Wet as:

"The balance of the rods is so perfectly distributed that the user has a feeling of confidence and pleasure quite unique; and in practice it will be found that they deliver the fly true to aim."

-------

"The 'L.R.H.' 'Palakona' rods are the result of exhaustive experiments on the part of Mr L.R.Hardy, covering a long period of patient testing, comparison and adjustment. They are, Mr Hardy declares, the finest fishing rods for their purpose that he has ever handled."

--------

"The total weight of the completely assembled outfit is:

9-ft 3-in 'Dry-Wet' rod 5ozs 8drms approx.
'Lightweight' Reel 3ozs 10drms approx.
30yds No.3 Corona 1oz 7drms approx.
20yds 18 lbs B/S silk backing
Total 10ozs 9drms approx."

As far as I fished with the rod, with my Hardy Spitfire Perfect 3 1/8 Reel, LRH Dry-Wet is quite light in hand and it will not cause any fatigue on me during a day long fishing. Sorry I am too used to fish with Hardy Palakonas, especially with long rods such as 10' Gold Medal, to give fair judgement for modern anglers. I, however, can recommend to use this rod as long and light version of Palakona to enjoy your fishing at rivers and lakes for trouts.

Tight Lines!/Petri Heil!
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米国竿の意匠を採用したパラコナ

2023-03-27 00:37:59 | Hardy Palakona

以前も軽量化に重きを置く米国竿と耐久性と趣味性に重きを置く英国竿の違いや、戦前のDe Luxeを始めとしたパラコナ竿に対する米国竿の影響(飾り巻き等)について述べさせてもらっておりますが、米国竿の影響を受けたパラコナ竿が手元にあることに気付きましたので以下徒然までに。

北アフリカの西端、モロッコはカサブランカの寓居にある竿の中から米国竿とパラコナ竿を並べてみます。下からPayneの206L 9'、次はLeonardのTournament Rod No.51 9'、その上はF.E. ThomasのSpecial Rod 8'、一番上にあるのがHardy Palakona Marvel 7'6''(1938年製)

ここで米国竿の特徴と言っているのは、竿尻のキャップに刻印された六角形の枠に刻み込まれたメーカー名やモデル名のこと。Hardyの場合はGold Medal、Perfection等の英国の釣り場を念頭に置いた通常モデルでは竿尻にゴム製のボタンやスピアがつけられているのでこの六角形の刻印を持つモデルはありませんが、軽量モデルとして開発された戦前のモデルにはこの六角形の刻印を持つものがあります。
上はPayneの刻印。「E.F.PAYNE ROD E.F.PAYNE ROD CO. MAKERS」とあり、これはジム・ペインとフランク・オラムの双頭体制がスタートした1925年から法人化されシンプルに「PAYNE」という刻印に移行した1930年までの間に使われた刻印。

次はLeonard Tournament Rodの竿尻の刻印。「THE LEONARD ROD HL. LEONARD ROD CO. MAKERS」とあり、その下に「REG. U.S. PAT. OFF.」との刻印も入ります。REG...の刻印が入り始めたのが1927年、この竿はフェルールにもREG...の刻印が入りますが、フェルールの刻印は1930年頃に廃止されたとされますので1920年台の終わり頃の製造とみられます。上のPayneとほぼ同じ頃に製造された様です。

続くのはF.E.ThomasのSpecial Rod 8'の刻印。「F.E.THOMAS SPECIAL BANGOR MAINE」とあり、1938年のフレッド・トーマスの死後どこかの時点で社名がThomas Rod Co.に変更されたことからそれ以前のものかと思われます。

最後に、冒頭の写真と同様にHardy Marvelの刻印。「MADE BY HARDY BROS. LTD. ALNWICK ENGLAND」と刻印されており上述の米国竿の特徴をそのまま使っております。

横から見た姿。

一方、上は1953年製のHardy Marvelの竿尻のキャップにある刻印。米国竿の様なフレームの中に記載を刻印するスタイルでは既にありません。

横から見た姿。リングには製造番号E87715が刻印されております。尚、1938年製のMarvelと1953年製のMarvelのリングは同じ様な太さのものが使われております。

最後は1967年製のMarvel。刻印は1953年製のものと同様です。

横から見た姿。1967年製のものはリングがかなり幅狭のものになっており重量軽減を図ったのかどうなのかデザインの変化が1953年以降有ったことを示しております。
戦後になると、軽量クラスのHardy Palakonaで竿尻にシンプルなキャップ等を採用するものにおいて、米国メーカーの様な刻印を採用したものがあるとは寡聞にして存じません。米国流の刻印が認められるものは戦前のものに限られているのではないかというのが現時点の私の推測です。
1910年代から始まったHardyの米国市場進出のための軽量モデルの開発・投入、米国竿の意匠の取り込み、といった活動も第二次世界大戦と共に一旦終了し、Hardy Palakonaは1950年代のプラスチック製フライラインの登場によるデザインの変更も行いつつ、伝統的な英国竿の世界へ戻っていったのでしょうか。

尚、米国各メーカーの情報は錦織氏著の「The History of Bamboo Fly Rods」に準拠致しました。
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Hardy The "Traveller's Combined" Fly and Spinning Rod

2023-01-14 18:34:29 | Hardy Palakona

日本から遠く離れた北アフリカの西の外れモロッコに錦織則政氏が書かれた「The History of Lure Fishing」が届きました。
私はフライフィッシング一筋でもう40年以上過ごしておりますため、ルアーのことはさっぱり分からないのですが、私のコレクションの中にはルアー釣りに関係する竿もあります。

上がHardyのThe Traveller's Combined Rod (8'10''或いは6`10'')、下がFarlow'sのLe Voygeur Rod (8'10''或いは6'10'')です。

Farlow'sのLe Voygeurは2020年9月の佐渡外海府での釣行に使い当時の記事で触れておりますが、HardyのThe Traveller's Combined Rodは今回が初のお披露目。

両方の竿とも、10"のハンドルと5pcs、夫々2'のブランクから構成されており、旅行時にスーツケースに入れられ、且つ、毛鉤釣りでもスピニングの釣りにも使えるという竿。名前もTravellerにVoygeur(仏語で旅行者の意味)です。
所謂、キワモノ扱いされそうな竿ですが、欧州の空港が大混乱した昨年、ロッドケースがロストになり3週間程行方不明になった経験より、飛行機に乗っての釣行ではこの様なパックロッドをスーツケースに入れておく必要があると思い、前回秋の一時帰国の際にモロッコに持ち帰ったものです。

5pcsのブランクを太い順から1番とし5番まで番号を振りますと、上の写真はハンドルで5番の雄フェルールが入るところ。

上の写真はハンドルの反対側、4番の雄フェルールが入るところです。

4番と5番のフェルールの太さはこの様に違います。

製造番号はH9108。1956年製です。

5番の一番下のリングは赤瑪瑙入り。美しいものです。

1950年代のちんまりした書体でThe "Traveller's"

と書いてあります。

左から5番、4番、3番、2番、1番夫々の先端部分です。

サーモン釣り用のトップである2番を残し、ハンドルと5番、4番、3番、1番を繋ぐと8'10''の毛鉤竿となります。その調子はAngler's GuideによればGold Medalの様な調子とされております。確かに金属製フェルールの重さ等が増されておりますが、振ってみた感じではGold Medalの調子の様です。

ハンドルに4番、3番、1番を繋げば、4ポンドライン用の鱒釣り用スピニング竿6'10''となります。またこの組み合わせは短いドライフライ用毛鉤竿としても使えるとされております。この組み合わせに合わせるとすれば、Hardyが作り出した現在のスピニングリールの原型と言えるAltexの一番小さなNo.1。これはアンチリバース機構が付いていないMark III(?)。

ハンドルに5番、4番、2番を継げば、8ポンドライン用、6'10''のライトサーモンスピニング竿となります。この剛竿に合わせるのはシートラウト、ライトサーモン用のAltex No.2。これはアンチリバース機構の付いたMark IVとなります。

モロッコは昨年から雨が殆ど降らない超渇水が続き、昨年12月は給水制限で水圧が下げられ、自宅では朝夕一滴の水も出ず、水が辛くも出る時を見計らい風呂桶に溜めた水でトイレを流し、台所で沸かした風呂の水で朝の行水を行うという事態が一ヶ月続きました。今も通常であれば山地で雨・雪が降る筈のところカラカラ天気が続いております。
こんな状況ですと、モロッコでは3月のシーズンが始まっても全く釣りにならない事態も想定され、このパックロッドをスーツケースに入れて欧州に行くことが多くなるかも知れません。また、日頃釣りが出来ずにいるカサブランカの海で、スピニングによる小物釣りで無聊を慰めることも出来るかも知れないと思っております。

果たして2023年の釣りは一体どうなるのでしょうか。。。
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Hardy Palakona Gold Medal 10' (H61495/1964年製)

2022-08-25 03:23:35 | Hardy Palakona

先週末、前後1日ずつ足してまたもやオーストリアへ行ってまいりました。
私はどうも雨・風男のようで、私が行く直前までは雨なしのカラカラ天気が続いていたそうですが、私が行く前日に記録的な雨と雷で人的被害も出るような洪水が発生。そのため下のMur川は増水で釣りには全くならず、影響の少ないEtrachseeとその流れ込みのEtrachbachでの釣りだけとなりました。

そこに持参した竿の一つがGold Medal 10'です。

Gold Medal 10'は既に戦前のものと、この竿と同じ1964年製のものがあるのですが、前の記事で紹介したHardy LRH Dry Wet 9'3''とPayne、F.E.Thomas竿のロスト事件のため、7月、出張でロンドンに行った機会に、LRH Dry Wetに替わる長竿として入手したもの。その後、ロンドンからの帰りにロストした竿を回収出来たため、在モロッコの竿が一本増えてしまったのでした。

製造番号H61495は1964年の製造です。

60年代になるとプラスチックラインが主流となり、Hardy PalakonaにもAFTM表記で適合ラインの重量が記載されるようになりました。

60年代以降の特徴的な踊るような大柄で躍動するインスクリプション。The Gold Medalと書いてあります。

その下にはPalakonaとあります。

これまた戦前にはあったフックキーパーが戦後無くなったものの、60年代から復活しております。

で、この竿の最大の特徴はロックファスト・ジョイントではなくサクション・ジョイントであること。同じ1964年製の日本に置いてある同じGold Medal 10'は未だロックファスト・ジョイントが装着されているのですが、この竿は最終モデルの段巻きの無いGold Medal同様にサクション・ジョイントとなっております。この仕様の変更は1964年に行われたのでしょうか?

トップリングは従来通りのメノウ入り。

フェルール・キャップは60年代以降のメッキされたもの。

上の写真の旗が示すような強風の中、このGold Medalで岸から釣りをしたのですが、このような過酷な条件下、Gold MedalはAFTM5番のプラスチックラインを風に向かって投射することが出来、そのお陰で冒頭の写真のでっぷり太った尺上ブルックトラウトを始め、剛竿のトップをギュンと引き絞る魚達に遊んでもらうことが出来ました。
この竿は無理矢理振り回すのではなく腕と一体化した動きで竿を曲げてやるように扱うと、ラインを竿自身が思うところへ運んで行ってくれます。無論重い竿ですが、扱い方を心がければ一日中釣りをすることも可能。こうした竿でキャスティングをやっているとカーボン竿を手首てピュンピュン振り回すような癖がつくこともなく、フライキャスティングをより愉しむ基礎が出来るように思います。
10'超えのPalakonaの実力を感じることの出来た悪条件下の釣りでした。
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戦前のDe Luxeへの米国竿の影響

2021-07-31 11:50:01 | Hardy Palakona

HardyのPalakona竿が20世紀に入ると英国へ輸入されてきたLeonard等の米国竿と熾烈な競争を始めることとなり、米国市場を意識して1903年に登場したFairy等のHardy竿が米国へ輸出され、1915年に登場したDe LuxeがAbercrombie & Fitch等で本格的に販売されたという話は錦織則政氏の労作「座・ヒストリー・オブ・バンブーフライロッド」に詳述されているところです。

そのDe Luxeですが、第二次大戦前のモデルにはグリップの前に米国竿はLeonard等に見られるSignature Wrapが入っております。これは大分前になりますが紹介した1944年製のDe Luxe No.2には見られなくなっておりますので、第二次大戦中に仕様が変更されたのではないかと思いますが、今回は米国竿の仕様を取り入れた戦前のDe Luxeを並べてみました。

これは、写真の3本の一番下、製造番号E35180、1935年製の8'の竿。真ん中の太い巻きを挟み、5本の巻きが左右に配置されております。

次は3本の真ん中、製造番号E11050、1928年製の8'6''の竿。8'と同様の巻きが入っておりますが、臙脂色の絹ではないので透明に見えます。

最後は、製造番号E29795、1936年製の9'の竿。これも同様の巻きが施されております。

1930年代製造の8'と9'ではトップセクションにEnd Ringを含め5つのRingが配置されておりますが、1920年代の8'6''ではトップセクションに配置されたRingは4本となっております。そのため、1930年代では全部で9つのRingが配置されているのに対し、1920年代の竿では8つのRingが配置されております。

Gold Medal、Perfection等でお馴染みの竿尻に配置されたゴム製のButtonは無く、米国仕様に軽量化を図っております。

それでも米国竿とHardyの違いはこのRing。米国ではGuideと呼ばれるこの部品。De Luxeは米国仕様を取り入れながらも、これだけはSnakeではなくFull Open Bridgeを採用しております。

1920年代では特徴的なD型のRing。これは竿を継いで見るとトップまで穴が円形に見えるという優れたもので製造コストもFull Open Bridgeに比べれば安かったのではと思いますが、1920年代で姿を消しております。

同じ9'でDe LuxeとLeonardのTournament竿を比べてみます。

外見での最大の違いはグリップの長さとそれによるグリップ外のブランクの長さ。Leonardのものはグリップからスウェルバットになっております。当然握る位置は制限されております。一方、De Luxeは握りの位置をある程度釣り師が自由に決めることが出来ます。

LeonardのSignature WrapはGoldとBlackでこの竿では良く見えませんが、びっしりと巻かれております。

Leonardでは、De LuxeのRing数9に対し、TopとButt含めて14のGuideが配置されております。GuideはSnakeですがこのGuideの配置がアクションにどのような影響を与えるようにデザインされたものか興味深いです。

LeonardのTop Guideは英国竿同様に瑪瑙が入っております。一方、軽量化のためか支柱無しの仕様です。Leonardの短い竿では古いものでもTop Guideにざらつくシルクラインから守るための瑪瑙が入っていないものがあるようでその辺りはどのような考えがあったのか、F.E.Thomas竿の様にTop Guideはシルクラインであっても大丈夫という判断があったのか、私には不明です。

一方、De Luxeは瑪瑙入りEnd Ringを支柱が支えるHardyのスタイル安心感はありますが、LeonardのTop Guideでも60cmの鱒の引きにビクともしなかったので、軽量化のためには支柱は要らないのかも知れません。
この英米9'竿ですが、Tournament竿の方がミドルに乗ってくる感じのアクションであるのに対し、De Luxeはより硬さを感じさせつつTournament竿よりやや先の方に調子があるというアクション。どちらも実釣では20cm台の鱒から50cmを超える大鱒まで安心してやり取り出来る竿です。英米の2大竹竿マスプロダクションメーカーの面目躍如という竿かと思います。
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Hardy Palakona Marvelの比較

2021-06-06 10:37:49 | Hardy Palakona

釣りに行く気分になれないこの週末、徒然なるままに手持ちのHardy Palakona Marvelを取り出してみました。
久しぶりに4本勢揃いしたMarvel。下から古い順にE49054(1938年製)、E87715(1953年製)、E/S(1967年5月製)、H/J(1968年7月製)となります。一番古い1938年製のMarvelは5月の中旬に養沢に連れて行き、ドライフライでの反応が良くなかったので、アップストリームのソフトハックルでの釣りに使いましたが、20数センチ程度の養沢の鱒であってもまるで会津大川の60cmの虹鱒をLeonardの9フィートTournament竿で釣る如く(とはちょっと言い過ぎかしら?)、やり取りが楽しめてしまう竿。

まず、その1938年製の竿を見ると、写真では見難いのですが、ミドル部分のバーニッシュが他の部分と異なる色になっております。またミドル部分の重量感がバットに比べても密度が高い様な気が致します。これは以前White Wickam Fairchild竿のミドルセクションに何故かスチールセンターが入っている理由と共に述べたのですが、一回の釣行で何百回と竿を振るフライフィッシング用の三本継のミドルアクションの竿では、ミドルセクションにかなりの負荷がかかるため、同セクションの強化が必要であるためではないかと推測しております。

バットリングは他のHardy竿に見られない特徴的なものを使っております。普通のバットリングですとフルオープンブリッジと同様の構造ですが、この竿では竿にぴったりと金属製の薄片が土台の様に付けられておりそのためフットは二本の腕でリングを支える格好になっておりません。この様な特殊なリングを作るには追加コストが必要で1930年代はキチンと製造コスト計算が出来ていたのか心配になる凝り方。

同じリングを

両方から撮影しました。

一方、エンドリングは普通のものですが、径は狭くシルクラインと合わせなければなりません。

これは1953年製のMarvelのバットリング。戦後コストがよりシビアになったのでしょうか、通常のものとなっております。

フルオープンブリッジに瑪瑙をあしらったものです。

エンドリングは1938年製と同じタイプですが、より頑丈なもの。

これは1967年製のMarvelのバットリング。製造コスト低減のためよりシンプルな作りになっております。

中には瑪瑙が埋め込まれております。

エンドリングは瑪瑙が入っておりません。既に1950年代に登場したプラスチックラインの使用を前提にした設計となっております。

これは1968年製のバットリング。1967年製のものと同一です。

瑪瑙が埋め込まれているのも同一。

エンドリングもプラスチックラインの使用を前提にデザインされております。

1938年製、1953年製共にフックキーパーはありません。

一方、1967年製、1968年製にはフックキーパーが付きます。エンドリングの径が大きくなりプラスチックラインとナイロン糸の継ぎ目がスムーズにリングを通る様になったためフックキーパーを付けても釣り人が竿を壊す恐れが無くなったためでしょうか。フックキーパーが無い竿の場合、竿の全長より長いリーダーを使う際は、竿のリングに鉤を掛け、リールの外周にリーダーを沿わせて糸を張れば問題なく移動することが出来ます。

1938年製、1953年製のMarvelのリング周りのラッピングは透明。1960年代の緑とは異なります。

トップセクションを比べると、1960年代の竿はよりバルキーなプラスチックラインの使用を前提にデザインされているにも関わらず、1938年製、1953年製と太さに変わりは感じられません。全体的に1960年代以降は竹の品質の問題とプラスチックラインの使用によるパワー追加の必要性から太めになる竿が多い中、意外な感じです。

一方、写真では良く分かりませんが、バットセクションは1960年代のものの方が若干太く感じられます。Marvelはスウェルバットになっているのですが、その部分がどうも太い様です。これがプラスチックライン対応による強化策と思って良いのでしょうか。
これらMarvelは使って楽しく、40cm程度の鱒なら多少時間はかかっても問題なくタモに誘導出来る力を持った竿です。早い打ち返しが求められる場所はよりファストアクションの竿に譲るとして、数釣りではなく如何に釣りそのものを愉しむかにはピッタリな竿であります。
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Hardy The Kenya Fly Rod (E87364, 1953年製)

2021-05-23 12:24:44 | Hardy Palakona

暫くはハックルや毛鉤の話ばかりでしたので、今回は道具の話を一つ。
Hardyの竹竿には場所の名前が付けられたものが幾つもあります。竹竿では1886年に発表されたTest川に因んで名付けられたPerfect Testがその嚆矢。英米、大洋州の川湖の名前を付けられた竿々の中で唯一アフリカの地名が付けられたのがThe Kenyaです。
アフリカ大陸でも、旧英国植民地の南アフリカ、ケニアには英国人によって放された鱒が生息しております。ケニアは赤道直下で、港町のモンバサは流石に毎日暑いのですが、高地にある首都ナイロビは一年を通じて過ごしやすい気温でそこから更に山岳地帯に行けば鱒の生育に適した川が幾つもあります。
更にアフリカ大陸の北部、モロッコの山岳地帯には放流されたものではない自然のブラウントラウトの仲間が生息しておりアフリカ天然鱒の釣りも出来るのです。チュニジア在住時にモロッコで釣りをする機会はありませんでしたが。。。

この竿は8'の3pcs。1934年から1957年の期間製造されております。
Angler's Guideには:"A light yet powerful rod designed to handle fish up to 5lbs and to meet the special requirements of anglers in Kenya. The rod is short for transport - and capable of tackling heavy strong fish, and to hold them out of snags"とあり、持ち運びの便を考えた軽い短竿の3pcsですが5ポンドまでの大魚を障害物から引きずり出す力を備えた竿である旨の特徴が分かります。ケニアの釣り人の要請で作られたこの竿、1957年までの長い間製造されたのはケニアの釣り人のみならず、欧州、あるいは米加、大洋州でも需要があったのではないでしょうか。しかし当時のケニア植民地で繰り広げられたマウマウ団との戦いで現地はのんびりと釣りをする様な状況にあらず製造中止になったのかな、と想像しております。

段巻きはクリムゾン。リング周りの巻きはクリムゾンにスカーレットの縁取り。ジョイントは軽量級の竿と同様にサクションです。

1953年製ですので、グリップの上にフックキーパーはありません。

1950年代前半の銘を担当していた方の特徴がPの字に出ております。

竿のタイプ名、The Kanya

が手書きされております。

butt ringは瑪瑙入り。

intermediate ringはFullopen bridge。

End ringは瑪瑙入り。ザラザラするシルクラインからリングを守るための選択。

この竿にはjoint protectorが付きます。

アルミ製の円筒の内側にコルクを張っております。円筒の脇に切れ込みが入っているのはStud lock用。Kenyaはサクションなのでコルクで塞がれております。

製造番号はE87364。1953年製となります。

英国王の御用達印が刻印されております。これは1952年即位のエリザベス女王のワラントではなく多分ジョージ6世のものをそのまま継続しているのでしょう。

この竿、かなりの強竿なのですが、同じ8フィート3pcsのDe Luxeと比べて見ます。

下がDe Luxe上がKenyaですが、トップを比べるとかなりKenyaは太くなっているのが分かります。Kenyaの調子はAngler's GuideによればStiff(硬調子)。De LuxeはInclined Stiff(硬調子より)。重量はKenyaが5oz 1/2に対しDe Luxeは5oz。8フィートで1/2オンス(14グラム)の差があるというのは使われている竹のボリュームがKenyaの方が多いことを表しております。
De Luxeは日本の渓流で使うのに丁度良いのですが、Kenyaでは養沢や一般渓流の魚は役不足。私が思い浮かぶ限りですが、会津大川の50cm虹鱒あたりが丁度良さそうに思います。非常事態宣言中は養沢に行くしかありませんものの。。。
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米英竹竿の違いの軽い考察(その二)

2020-12-27 11:18:21 | Hardy Palakona

軽さを追求する米国竹竿。それに対する答えとしてHardyが作り出した軽量竹竿。その代表選手はDe Luxeで、リング(ガイド)はスネークではありませんが、竿尻のボタンもなくフェルールはロック機構の無いサクション。こうした軽量化を計る一方、特別注文があれば、竿を地面に突き刺し、誤って踏んでしまったりという事故を防ぐ事の出来るスピアをつける事も可能でした。
上は1935年製De Luxe 8'。下は1938年製De Luxe 9'。下の竿にはスピア、「Hardy's Patent 'Reversible' Spear and Button」が特注で装着されております。

下の9'竿はコルクグリップも長いのですが、スピアが仕込んであるためかリールシートも長くなっております。

ボタン部分のアップ。継ぎ目が隙間なくぴったりと合っており、一件一体成型されている様な印象です。

側面からボタンを見たところ。

ボタンを捻っていくと。

一体成型ではなくボタンは二つのパーツで出来ていることが判ります。

ボタンの外側を外すと、

スピアの部分のみのボタンが残ります。

スピアを竿尻から抜いて行きます。

スピアは竿尻に納められております。

スピアとボタンを構成する二つのパーツ。

スピアを抜いた竿尻。洋松材でしょうか、軽い木材が仕込まれスピアを固定する様になっております。

ボタンとスピアをスピアが出る様に合わせ、

繋ぎ目が感じられない精度でぴったり合わせます。

ボタンを竿尻に捻って付けていきます。

捻り終わるとスピアは直立。

幅広い面はカメラが映るくらいピカピカ。軽量のアルミ製です。

上から見るとこんな感じ。

継ぎ目もぴったりの精度です。
軽さを追求する米国竿では考えられない装備ですが、竿を踏みつけてしまわない様に精巧な部品を追加したいという釣り人の要請に答えた仕掛け。スキューズには余計な重さであると怒られてしまうかも知れませんが、釣りという遊びに使う竿という玩具に潤いを与えると思うのは私だけでしょうか。
尚、今から10年以上前に紹介したHugh Falkusは夜の釣りになるシートラウト釣りにおいてスピアは余分なラインがリールに絡む事を防ぐ素晴らしい役割があるとして、スピアが仕込んでいない竿は竿尻にショットガンの薬莢を被せ竿じりを長くしたりとの工夫をしております。機能重視に対し耐久性・安全性・玩具の楽しさも味付けした英国竿も中々捨てたものではないと思う年末の一日です。
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Hardy Gold Medal Pall Mall Centenary 8'

2020-07-19 16:49:28 | Hardy Palakona

2015年3月の記事でロンドンのPall Mall(ペル・メル)界隈を訪れたと載せましたが、少なくとも90年代末まではそこにはHardyのロンドン小売店があり、慇懃無礼な感じの販売員がHardy製品やその他の製品、書籍等を販売しておりました。ロンドンを訪問する際は必ずそこを訪れて何らかの買い物をしたものです。
そのロンドン店が1992年に開設100周年を迎えたのを記念して制作されたのが8フィートのGold Medalです。2 5/8の真鍮製のPerfect Houghton Reelと一緒にローズウッドの箱に納められたこの竿は全部で100セット制作されております。
私の手元にあるのはその中の008番目の竿。

8フィートで3本継。赤い段巻きを身にまとっております。

オスフェルールを守るための木製プロテクターも付属。

90年代の特徴的な書体でPall

Mall Centenaryと記載。

1892年から

1992年と100周年を表しております。

グリップにはフックキーパーが付きます。

一番下のリングは瑪瑙入りのもの。昔のHardyの竿では何の変哲もありませんが、制作されたのは1992年。その頃は流石のHardyもPalakona竿には瑪瑙リングは標準装備しておりません。

更にそれに輪をかけて回顧的なのがこのスパイク付きのオスフェルール。尚、フェルールには008の刻印が押されております。

一方、バットとトップ以外のリングはスネーク。Gold Medalのリングは通常フルオープンブリッジであるのですがこれはお愛嬌か。

トップのオスフェルールにもスパイクが付きまた008の刻印が施されております。

そしてトップはまた瑪瑙を入れたもの。

これは私がHardyに直接発注して1995年9月に完成したCC de France 8'のインスクリプション。1992年製のGold Medalと同じ方が書かれたようです。

更に、95年製のバットリングはその頃のPerfectのラインガードの様にセラミック。

トップはPVCラインを前提とした瑪瑙無しのもの。
この様なリングが90年代に細々と制作されていたPalakona竿のスタンダード仕様だったと思われる中、Pall Mall百周年記念竿には瑪瑙入りを特別に誂えたのです。

本当は8フィートの短竿等は日光湯川辺りに持ち出してHardy Marvelにはちょっと手強い鱒の相手をさせたいところですが、コロナ禍のここ数ヶ月中々憚られますので、同じ都内の養沢に行くのがやっと。残念ながら大きな魚は釣れませんでしたが、St. George Jr.にシルクラインを載せた胴調子気味のGold Medalは小さな魚でも楽しめる竿であります。まだまだ硬さの残る竿ですので使い込んで行けばより調子も柔らかくなるのではないかと思っております。
コメント (2)
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