思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

シルクラインと竹竿のデザイン

2021-08-10 13:44:40 | シルクライン/Silk Lines

シルクラインは、釣りの後すっかり乾燥させなければならない、釣りの最中でも時々ミュシリンを塗らなければならない、場合により余り強くひっぱり過ぎると切れてしまう、と現代のPVCラインと比べ手間暇がかかりかつ繊細に扱わなければならないと、面倒な存在です。では、何故そんな全時代的なものをわざわざ使うのか?わざとハンディキャップを与えて釣りをより難しくするため?と世間一般では思われるかも知れません。

シルクラインはPVCラインに比べ、所謂「メモリー」が付かないので口径の小さなリールに巻いても問題なくスムーズに釣りが出来るという利点もあることはありますが、PVCラインとの最大の違いはその太さ。
元々、PVCラインは体積の大きな軽いラインが水を押しのけ、その分だけ浮力を得るというアルキメデスの原理で浮くのに対し、シルクラインはそもそも水より重く通常なら沈むラインに撥水性の油を塗り、表面張力で浮いているのが違いです。
従い、PVCラインのフローティングラインはある程度の太さを求められるのに対し、シルクラインは純粋にシルク糸の重さが適切なものになる太さだけをラインの太さに出来ます。
上は、昔、SAがバンブーラインと称して売っていたPVCラインのDT5F。下は、KaizerのNo.2のDT(#5/6)。両方とも一番太い部分を比較しておりますが、ざっくり目分量で言うと、シルクラインの太さを1とすると、PVCラインは1.5以上の太さはあります。

そうしたラインの違いが実際の竹竿にどのような影響を与えているのか、リング(ガイド)を比べることで検分します。
上から1935年製De Luxe 8'、1971年製Continental Special 7'7''1/2、一番下は1995年製Hardyに注文したCC de France 8'。

End Ring(Top Guide)ですが、右から1935年製、1971年製、1995年製と並べて見ると現代に近くにつれ径が大きくなっていることがお分かりになると思います。1935年生のものは瑪瑙が入っていて、シルクラインの編み目でザラつくことを防ぐ意図が設計に込められていることが見て取れます。

End Ringの一つ下のリングですが、1935年生のものは明らかに径が小さく、1971年製、1995年製のものは同じような大きさに見えます。

End Ringから数えて7番目のリングですが、左から1935年製、1971年製、一番右が1995年製と並べて見ると、年代が下るにつれ、径が大きくなっているのがよく分かります。

Butt Ring (Butt Guide)も同様に、左から1935年製、1971年製、1995年製と並べると現代に近く程径が大きくなっております。また、1995年製のものは、瑪瑙ではなくセラミック製となっております。
このように、リールラインがシルクからPVCにその材質を変え、ラインの浮き方が表面張力からアルキメデスの原理による浮力に変わり、空気抵抗の大きなラインを竹竿で前後に振りながら飛ばさなくてはならなくなったことで、竹竿のデザインも変化せざるを得なくなります。
戦前のHardy、或いは、他メーカーの竹竿はより細く繊細で、戦後になると同じモデル名でも太く強くなる、Hardyになると、1960年代以降はモッタリした調子になると言われる理由は、対中禁輸などの影響による竹材の品質変化も多少はあるのでしょうが、圧倒的にラインの変化に竹竿のデザインを適応させていったことにあるものと思っております。
冒頭で挙げた、何故シルクラインを使うのか?の答えですが、シルクラインを前提に作られた竿にはシルクラインを合わせるのがベストだから、というのが私がシルクラインを使う理由。逆に1995年製の竹竿にはPVCラインしか使いません。1950年代までの竹竿にはシルク。Hardyならば、製造番号がHナンバーまでの竿(1965年製まで)にはシルク、それ以降はPVCでも良いかと思います。
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Kaizer silk line

2021-08-08 15:41:58 | シルクライン/Silk Lines

手持ちの未使用シルクラインを20数年振りにおろし使うことにしました。ベルギー製のKaizerシルクラインです。

これはドイツ滞在時代に知ったシルクラインで、その後パリのLa maison de la moucheで、その昔、Pezon et Michelブランドのシルクラインを製造していたと聞かされることになるメーカーのもの。

今も入手可能なシルクラインとは違い、表面を滑らかにするためのグロッシーなコーティングは殆どなく極めて細身なシルクラインで戦前の竹竿に合わせて使うのにとても気持ちの良いラインです。No.2が#5/6となっておりますが、#6の重さがあるとは感じられません。

昔はシルクラインとガットを8の字巻きで結んだものですが、ブレイデッドループをタイイングシルクで留めそれをバーニッシュで固めるのが私の何時ものやり方です。

流石に本当の昔のシルクラインとは異なり表面にはよりコーティングが乗ってますが、それでも現時点で手に入るシルクラインとはコーティングの厚さが違います。このKaizerシルクラインは1990年代まではルクセンブルクのTony van der Molenという釣具店より入手出来たのですが、Kaizerは2000年を目前に廃業、シルクラインの製造機械は確か畜産業で使う道具の製造用に転売されたとの記事を以前読みました。ですのでもう入手は不可能で手持ちのものを大事に使っていかなければなりません。

何故、20数年も大事にとっていたのを使うことになったのか?
未だ、東京が今の緊急事態宣言に入る前、尾瀬に行きたいという家人を連れ丸沼湖畔の環湖荘に宿泊、3時間だけ丸沼でボート釣りが出来たのですが、その際使った元Phoenixの6番で以前自分で亜麻仁油の真空コーティングを施したシルクラインの先端を、毛針が岸の木に引っかかりどうしようもなく引っ張ったところ、ブッツリ切ってしまったのが理由。

丸沼は当然のように魚の気配すらなく完敗。

それでも、湖にボートを浮かべてラインを伸ばすのは楽しいものです。写真は元Phoenixのラインですが、今回下ろしたKaizerラインではどんな魚に出会えるのでしょうか。
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シルクラインの再コーティング(その3)

2018-02-11 09:52:57 | シルクライン/Silk Lines
さて、前回亜麻仁油が厚く乗りすぎてしまったシルクライン。取りあえず大きな輪にして干しておきました。

新聞紙の上に干したシルクラインを乗せて、

よく見ると表面はこのような感じです。

チュニジアはアラビア語が公用語。そして一般にフランス語が良く使われる国。新聞もフランス語のみならずアラビア語で書かれております。

日本で以前購入した目の細かい紙ヤスリを投入し厚く乗った亜麻仁油の表面の凸凹を荒くならしてみます。

ヤスリかけが終わったラインはこんな感じです。また、ヤスリかけをすると乾き切らない亜麻仁油のベタベタ感が戻って来ます。

そこで、再度炊飯器で保温し亜麻仁油の乾燥を行いました。

炊飯器から出したラインです。

本当はパミス(軽石粉)を使いたいのですが、チュニジアには東●ハ●ズのような便利なところは無く、どこで売っているのか皆目見当もつきません。そこで、タルカム粉を含む製品、そう、ベビーパウダーを投入しヤスリがけの荒い表面を更に滑らかにしてみます。

ベビーパウダーをシルクラインに振りかけ、キッチンペーパーでしごいて表面を滑らかにしていくと、これだけの余分な亜麻仁油が取れました。

日本なら色々揃っているのに、北アフリカではより創意工夫が必要です。ベビーパウダーくらいなら近所に売ってましたので、助かりました。
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シルクラインの再コーティング(その2)

2018-02-03 13:10:06 | シルクライン/Silk Lines

さて、炊飯器で12時間保温し取り出して冷やしたシルクラインを巻いた特性糸巻き。

寒波の日本と違い、今年のチュニスは例年より気温も高く、青空が広がります。バルコニーから見る地中海の青が鮮やか。この天気でしたらシルクラインの手入れもやり易いというもの。

1回目のコーティングは成功。亜麻仁油はしっかり乾燥し、シルクラインに浸透しております。

ブレイデッドループの部分もこの通り。但し、未だコーティングの層が薄いので、2回目のコーティングを行います。

2回目のコーティングが終わった糸巻き。シルクラインはテカテカしております。

糸巻きからシルクラインを外してみると。

亜麻仁油がどうも多過ぎた様で、全体に油が厚く乗りすぎており、そのためしっかり乾燥せず、凸凹にコーティングが仕上がってしまっております。

シルクラインの中にはしっかり浸透しているので、防水(waterproof)という点では良いのですが、この凸凹を何とかしなければいけません。

コーティングを重曹で落とした後のシルクラインと亜麻仁油を浸透させコーティングした後のシルクラインの質感の違いがお判りに成りますでしょうか。

ブレイデッドループの部分はこの通り。
東京での作業と違い、どうも勝手が違います。しかし、亜麻仁油の余分をもっとしっかり落としておけば良かったです。トホホ。
因に肝心のシルクラインですが、2回目のコーティングで既にAFTM 5番程度の重さがあるように感じます。また、コーティングを剥がす前のガビガビさも無くなり、しなやかで実戦投入出来るような感じにはなっております。凸凹と半乾きのところを何とか片付け、しっかり乾燥させたら4月以降実戦で使えそうです。
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シルクラインの再コーティング

2018-01-27 13:38:14 | シルクライン/Silk Lines


KaizerのGreen Lineシリーズのシルクラインで最後に買ったものの1つを買って直ぐ使おうとしてリールに巻きフェルトでグリスを塗ったところコーティングが剥がれてしまい、また、ラインがねじれて使い物にならなくなった事がありました。もう10数年前の事で、その一回も使わずに再起不能になったシルクラインは悔しいので捨てずにとってありました。今から4年弱程前に行った、シルクラインの再生の経験から、先日見つけたそのシルクラインの再コーティングをする事にしました。
上の写真のように重曹を湯に溶かし、そこにシルクラインを漬け込んで古いコーティングを剥がします。以前のPhoenixのシルクラインはこれで直に全てのコーティングが取れたのですが、今回のKaizerは中々手強く、湯につけただけではコーティングが取れません。そこで、鍋にお湯と重曹を入れてぐつぐつ煮込み、漸くコーティングを取る事が出来ました。
この取れないコーティング。何を使ったのか判りませんが、最末期のKaizerの品質悪化の象徴のような気が致します。

コーティングを取ったシルクラインは手製の糸巻きに巻いてしっかり乾燥させます。これは前回の経験から作成したもの。炊飯器にぴったり収まるサイズで設計してあります。

コーティングを剥がしたシルクライン。中々取れなかった古いコーティングの名残がそこそこに残っております。

机にばらしたところです。

ブレイデッドループをつけた先端部分。

シルクラインのコーティングを剥がした地肌はこのような感じです。

トルコ製でありながら、ドイツの研究センターで開発したと銘打ち、わざわざブランド名の下にドイツ語でHausgeraete(家電)と入れたトルコのFakirブランドの空き箱で作ったシルクラインコーティング用の糸巻き。因に、多くのチュニジア人がFakirをドイツブランドと信じて買っております。。。。

乾燥した無コーティングのシルクラインを丸めて、前回Phonenixシルクラインのコーティングに投入した真空容器に置きます。

今回コーティングに使用するのは、年末・年始の一時帰国時●急●ンズで購入した亜麻仁油。一回加熱したボイル油の方が乾燥が早いというのでそれを使います。

亜麻仁油に漬け込んだシルクラインから、空気を抜いていくと細かな泡が立って、繊維の奥まで亜麻仁油が浸透していくのが良くわかります。

亜麻仁油が染み込んだシルクラインを糸巻きに再度巻き込み、炊飯器で保温します。写真のものは炊飯器に入れる前の状態で、未だシルクラインは亜麻仁油でテカテカしております。亜麻仁油は事によると数週間もかかるといった程、中々乾燥しないのですが、66度程度に保たれる炊飯器の保温温度が亜麻仁油を急速乾燥させるのです。昔のレシピ通り、12時間は炊飯器で保温し、しっかり亜麻仁油を乾燥させましょう。
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シルクラインについて(Kaizerの種類)

2017-12-03 15:32:52 | シルクライン/Silk Lines

今、チュニジアの拙宅にあるシルクラインを集めてみました。HardyのCoronaを除く現代のシルクラインで所有しているのはベルギー製のKaizer 7本にPhonenix 1本。
Kaizerの中でも、1990年代にGreen Line of Kaizerという名前で売っていたタイプのものと、只のKaizer Silk Lineとタイプは2つあります。
下は、只のKaizer Silk Line。これは、HardyのCoronaの様な感じのもの。シルクを亜麻仁油の様な油分で含浸し乾燥を繰り返したという感じの出来上がりで、余りそれ以上コーティングが施されているような仕上がりではありません。

未だ未使用品なので結ばれております。

これは表面の近影。編紐的な表面である事がお判りと思います。

これは、Green Line of Kaizerの2番ライン(AFTM 5番前後)。これは編紐的なラインに何らかのコーティングを施してあり、日本の高温多湿な真夏ではベタベタになりそうな予感がします。

亜麻仁油以外の追加コーティングの為、多少ザラザラ感は減退しております。

これはGreen Line of Kaizerの3番(AFTM6〜7番程度か)。上のシルクラインよりもコーティングが厚く乗っている感じのラインです。

表面も2番のものより更にコーティングによるザラザラ感の減退が見られます。

上はGreen Line of Kaizerの1番(AFTM3〜4番程度)。1990年代より実戦投入して既に20年選手ですが、全く問題なく現役で使用中。但し色は上記の新品のものとは大分変わり茶色が強くなっております。コーティングは3番のものと同じ種類で厚めです。

これは2010年代に入ってから実戦投入したKaizer Silk Lineの表面。個人的にはこのタイプが一番信頼が置けると思っております。夏の暑さでもベタベタにはなりません。

これはPhoenixを自分で亜麻仁油だけで含浸処理し直したもの(以前の記事参照)。これは何せ炊飯器で高温に耐えて来たものなので、ベタベタしようがないのが信頼して使えるものです。

Kaizerは以前にも紹介の通り、昔はルクセンブルクの釣具店で買えましたが、2000年代初めに生産停止。昔はペゾン・エ・ミシェルブランドのシルクラインを生産していた名門だったのですが、今はその痕跡を探すのが極めて難しいブランドになってしまいました。

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シルクラインについて(接続法)

2017-11-26 13:41:59 | シルクライン/Silk Lines

シルクラインを入手して最初の疑問はどうやってバッキングラインやリーダーに接続したらよいのか?ではないでしょうか。
PVCラインであれば、リーダーとはネイルノット、リーダーコネクター、等で接続ですが、只でさえ値段の張るシルクライン。先端を切ったりする結び方はもったいありません。

そこで、私の辿り着いた方法は、ブレイデッドループをシルクラインに被せ、二カ所をタイイングシルクで縛り、更に縛った部分の上をタイイングシルクで覆い、ヘッドセメントで解けない様に固めるというもの。上のループは更に亜麻仁油での10回のコーティング(過去記事参照)がされているので相当シルクライン自体と一体化しております。
この様にループ同士で接続するのが最適と考えておりますが、例えば釣りの最中にループが切れてしまったら一体どうすれば良いのでしょうか?
そうした時に役に立つのが、昔から行われて来たFigure of Eight(8の字結び)という結び方です。

上の図の様に強く結ぶ前のラインの姿が8の字に見える事から名付けられたこの結び方、少なくとも20世紀初頭から英国のみならずドイツ語圏の釣り関連解説書にてシルクラインとリーダーを結ぶ一般的な方法として挙げられております。

結んだ後はこのような姿。結び目が大きく、シルクラインの先端が飛び出るので竿の先端のリングを通りません。従い、10フィートの竿に9フィートのリーダーという仕掛けならまだ良いですが、短竿になると結構厳しいです。テレスコピックのタモがあればそれでも何とか対応出来るとは思いますが。
私も過去色々な場面でお世話になったこの接続法を実際に試してみましょう。

1912年チェックのHardy Perfect 3 3/8リールから伸びるバッキングラインの先端にはループが結ばれており、それに元はPhoenix 6番だった再生シルクライン(5番程度)を結びます。

バッキングラインのループとシルクラインの先端の拡大図。シルクライン先端のコブは、今年7月のMur川釣行時、根がかりしてラインを引っ張ったら切れてしまった時に作ったもの。8の字結びではまずコブが無くても解ける事は無いですが、長年の習慣で作ってしまったコブです。

ループにシルクラインを通し、

シルクラインの先端を折り曲げ、

ループに再度通し、

シルクラインの先端のループの下にシルクラインの先端が来る様にシルクラインを通します。

引っ張って結び目を締めるとこの様になります。

これはシルクラインの先端が余り長くならない様に一寸調整したもの。
8の字結びは解くのも簡単です。普段リーダーとバッキングラインとシルクラインをループトゥループで結んでいてリーダー側のループが壊れた時は、ひっくり返してバッキングラインとの接続を8の字結びにすればそのまま快適に釣りを続ける事が出来ます。
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シルクラインについて(特徴)

2017-11-19 13:58:02 | シルクライン/Silk Lines

釣りシーズンが終了したので、釣行記等鱒釣りの思いでについては来年までお預け。ストーブリーグの話題はモノの話になりがちで、何となくシルクラインについて書いてみたいと思います。
私がシルクラインを使うのは、PVCでコーティングされたフライラインが登場し一般的になる前の1950年代以前の竹竿に合わせるためです。シンセティックなフライラインが何故浮くのか?それはPVCコーティングの中に気泡を入れて、重量比で容積を高めているため。つまり船が浮くのと同じような理屈。それに対し、シルクラインは水より比重の高いシルクを浮かせるために表面にグリスを塗り表面張力で浮きます。従い、PVCラインはシルクラインよりバルキーで空気抵抗も強く、同じ番手でもPVCラインを飛ばすのはシルクラインに比べ竿に対する負荷を掛けなければいけない。。。1950年代までの竹竿はシルクラインを前提に設計されているであろうため、PVCラインは荷が重いと感じるからです。

現在使っているのは、1990年代末まで入手出来たベルギー製のKaizerと、以前再生記を掲載したPhoenix。上のSt. George Jr.に巻いてあるラインと、濃い臙脂色のラインがKaizer。ストロー色のラインがPhoenix。

下のPVCフライラインはハーディーブランドのDT5F。今シーズンSawyer Nymph竿と一緒にフランス、オーストリア、日本を転戦したものです。それに比して、上のKaizer 2番(AFTMで5番程度)はハッキリと細く比重が重く感じます。ですので、1960年代以前のPVCラインには非力な竿でもシルクラインは良く飛ばす事が出来ます。

Kaizer 2番の表面。一本一本の絹糸を編んでいるので表面がざらついております。一見黒に見えますが、よく見ると濃い臙脂色であるのが分かります。

これはPhoenixの表面。通常のPhoenixラインは油の含浸処理をした後、更に別の素材でコーティング処理をするため、容積が大きくなっておりますが、このラインはそうしたコーティングを重曹で一回全て取り除き、亜麻仁油のみで含浸処理したものですので、表面はザラザラです。

これはKaizerの1番(AFTM 3〜4番程度)。色はオリーブ色。以前Green Line of Kaizerとして売っていたもの。1990年代から変わらず使用しております。
シルクラインが一般的になったのは19世紀末にHalford (ハルフォード)が相談役としてEaton & Deller商会が開発・生産・販売した亜麻仁油を芯まで含浸させた防水加工のシルクラインが登場してからのようですが、それ以前には19世紀中葉(?)まで主流の馬素を編んだライン、その後登場したシルクと馬素の混合ラインも使われ、1867年出版のFrancis Francis (フランシス・フランシス)著A Book on Angling (魚釣りの書)第5版の152ページでフランシスはシルクと馬素の混合ラインを最上とし、シルクのみのラインは軽やかさと柔軟性に欠けるとして退け、馬素のラインは竿のリングに引っかかり投げ難いとこれまた退けております。
一方、1899年に出版されたSir Edward Grey (サー・エドワード・グレイ)のFly Fishingで、グレイは防水加工されたテーパー付きシルクラインを素晴らしいとしてますが、Manchester waterproof plaited cotton line (マンチェスター防水加工コットンライン)が最上としており、シルクラインがその地位を確立した後もそれ以外のリールラインが毛針釣りに用いられていた事が伺えます。

これは大分昔入手したHardyの看板シルクラインのCorona。

ダブルテーパーで、2番、という事は、AFTMで言うと、5〜6番程度の重さ。長さは30ヤードです。

一方の端にはリールからのバッキングラインにはこちらを結ぶようにと指示されており、撚りを掛けずにリールに収納する事に非常に気を使っております。

2番のダブルテーパー、30ヤードとタグが付けられております。

色はKaizerの2番と同様の濃い臙脂色。また、表面の感じもKaizerとほぼ同じ。

数十年も退蔵されていたため、注意書きとラインがくっついてしまい、注意書きを剥がした紙の残りがくっ付いてしまっております。使う際には一寸お湯かなにかで奇麗にしないといけないですね。

注意書きには、油を含浸させた防水加工シルクラインは出来るだけ空気に触れさせる必要があり、使用後はラインワインダーに巻き取り乾燥させ、オフシーズンにはリールから出して空気の通りが良い所にぶら下げて保管するようにとあります。
シルクラインには常にグリスを塗らなければならないような記述が日本では多いですが、それは実は間違っており、グリスは使用する際に必要なだけ薄く塗り余分は拭き取る事をシルクラインメーカーは推奨しております(Phoenix等)。何故かというと、余分なグリスは汚れをラインに吸い付けてしまい、それが原因で逆にシルクラインを浮きづらくしてしまうためです。やけにベタベタするようならばそのような状態になっていると疑った方が良いと思います。そんな場合、私の対処法でありますが、石鹸水でシルクラインのグリスを取り除き乾燥させた事もあります。乾燥させ切ってから必要なだけのグリスを塗れば、ラインはまた水に良く乗る様になります。
グリスを塗り続けてしっくりした、と喜んでいると、逆にシルクラインの機能を損なってしまっていたとならないように留意しましょう。
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Restoration of silk fly lines: back to the origin (Part 2)

2015-08-08 08:47:28 | シルクライン/Silk Lines
The vacuum coating of a silk fly line with boiled linseed oil is very simple and easy, if you have a vacuum container. The most difficult and puzzling part a la F.M. Halford's method to coat silk fly lines was "to place it in an oven, heated to the temperature of 150 Fahrenheit, and bake it for about 10 hours". Ever since I read Halford's work, more than 17 years ago, I could not find a solution to realize this baking process at home, an apartment in Tokyo, until last year I found out the recipe with the buzz words "150 Fahrenheit" and "10 hours" can be easily worked out at any Japanese household.


A rice cooker will do the magic for you.
Fahrenheit 150 equals Celsius 66. And usual Japanese rice cookers keep the cooked rice with around this temperature for better taste after cooking it. Thus I wound the impregnated silk fly line around a piece of carton box made triangle and placed it in a rice cooker during a night around 10 hours, and let it be cooled during daytime while went to work.


The result was amazing. Just as described in the 19th century book, the linseed oil was completely dry and hardened.


Just like that.


After 4 times of coating, that means 4 days since the start of the coating work, the silk fly line got significant weight and coating. But due to the triangle frame, it became edgy at many part of it.


So from 6th coating, I replaced the triangle with a new weapon, fit in my small rice cooker.


The line treated with the 7th coating.


Edgy parts gradually disappear and coating and weight grew a bit.


The pure silk's pale colour became amber by the dried linseed oil.


After 10th application and finished whole process, I went to fishing to try the quality of the silk fly line, once a Phoenix Silk Fly Line of 6 weight.


I do not know what ingredient is used in the coating of a Phoenix line, but it must have contained other ones than pure linseed oil. The thickness of the line reduced somehow and the weight should not be 6 anymore. It loaded my Hardy Palakona Phantom 9' nicely from 10 yards on, so probably it has now around 5 weight.
With a smear of red tin Mucilin, it floats marvelously, and some hardness felt at first disappeared after several fishing.
There are many articles in the net how to coat, restore silk fly lines, many of them recommends a substance made linseed oil and varnish mixture. Varnish, maybe, is recommended for quick dry and grossy coat of the line. But it does harm the line becoming sticky once it is exposed to summer heat, just like my case.
A rice cooker makes the original recipe of silk line coating very handy and easy. I wish all the DIY silk fly line admirers GOOD LUCK!
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Restoration of silk fly lines: back to the origin (Part 1)

2015-08-02 10:16:19 | シルクライン/Silk Lines
I have been fishing with silk since the last century and used a few silk lines offered in the market. Kaizer of Belgium, Phoenix and Thebault.

Using silk, you will encounter some day the problem of sticky coating. Especially with modern silks coated by some other ingredients than pure linseed oil of the old days. My case was that the Phoenix's coating became sticky due to the hot and humid summer of Tokyo.

What to do? Simple answer would be replace it with a new one. But I wanted to try what I wanted to do since long: to re-coat it by myself.


This silk line became too sticky to be used for fishing.



So the sticky coating must be removed from the silk. Sodium bicarbonate will do the removal with ease.




I put some sodium bicarbonate in the bucket of warm water and soaked the line in it. No exact quantity, weight, measurement; everything on my feeling.


Already after several minutes the water becomes coloured.


And after 30 minutes or so, all the coating applied to the Phoenix line get off from the line.






Here is the silk line without coating. Without coating, the line is very elastic to my surprise.


I went back to the original coating method of 19th century. "Dry-fly fishing in theory and practice" written by F.M.Halford tells me exactly what to do.


Prepare (1) boiled linseed oil and (2) a vacuum container which I bought for USD 20 - 30 at shop.


Place the line in coil in the container and pour the linseed oil in it.


Pump out the air in the container until no bubbles comes out from the line.


Voila! The line is now perfectly impregnated by linseed oil.
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