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名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(338); 三間飛車に引き角棒銀

2016-11-14 | 大山将棋研究
昭和52年2月、中原誠先生と第26期王将戦第3局です。


大山先生の先手三間飛車、中原先生は引き角に。

玉は矢倉に囲い、棒銀です。途中角がぶつかりますが、これは8筋の関係で振り飛車が交換を避けるところ。

大山先生の48銀を見て、中原先生が仕掛けます。

7筋の歩を交換して歩を垂らす

と金は許せないので銀を引かせることになり、64歩が味よく見えます。

67歩同銀79歩成を避けるために、大山先生は桂馬を跳ね

中原先生は銀を立て直してから成り捨て

桂頭を狙います。93香の形でなければ73桂からさばきたいところなんですが。

ここでも93香がたたっています。駒組みで37角の利きを避けるために仕方なかったのですけれど。

飛車をぶつけられて8段目に歩を打つのでは勢いはありません。

竜を作ればまあまのようですが

控えて歩を打つほうが味が良いです。

大山先生は桂馬がさばけ

両取りにも

86銀と出ておけば銀を取り返せます。

竜を潜られても

78歩と打たせてしまえば歩切れでたいしたことがありません。金をどこに打たれても駒損にならないのです。

角かわして

5筋から反撃です。小駒だけでも数はそろっているので切れない攻めです。

銀取りにも中合がきき

攻めを遅らせる手筋

味よく銀を引き、一度形勢が良くなると良い手が出てくるものです。

角取りも怖くはないです。と金を作ります。

中原先生はどうにか先手玉に迫ります。

勢いはあっても2枚だけの攻めですから

端を突くくらい。

大山先生の63飛の詰めろ、受ける駒がないのです。42の銀を移動しますが

飛車で取って角を打てば詰んでいます。

ぴったり。

大山先生が37角で93香と移動させたのが勝因でしょうか。92香なら大分違った展開だと思います。中原自然流の攻め、というところがありませんでした。少しでも形勢が良くならないと現れないのです。
大山先生に味の良い好手が多く、振り飛車党なら並べておくべき棋譜です。

先手三間飛車には急戦がやりにくく、居飛車が苦労している時代です。玉頭位取りならもう少し楽だろうなあと思うのですが、後手四間飛車に比べて石田流への組み替えが2手速いわけで、うまく組めないということなんでしょうか。
矢倉の引き角棒銀は加藤一二三先生の実戦集でも読んだことがあるのですが、居飛車が苦労している感じです。
振り飛車に対しての引き角棒銀は、鳥刺しのような急戦なら有力なのですが(これは左銀で攻めていて、右銀も攻めのカバーに使えるため)、もう少し玉を囲おうとすると作戦負けになりやすいです。少し前に見た左美濃~銀冠でも居飛車が仕掛けるのは難しく、千日手狙いになってしまいます。本局は矢倉なのですが、銀冠よりも横からの攻めには弱いわけで、なおさら難しいです。平美濃(いわゆる飯島流引き角)でもこの例外にはなりません。
居飛車が引き角にするなら(鳥刺し以外では)棒銀ではまずいわけで、右銀も囲いに使うほうが良いのです。天守閣美濃の4枚で囲う作戦や(これは藤井システムで絶滅しましたが)ミレニアムや(これは振り飛車穴熊に堅さ負けする)位取りや居飛車穴熊など、持久戦の時に引き角にして、できれば右桂を使って飛角桂で攻める、さばく、という指し方が主流です。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山棋聖
後手:中原誠王将
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八飛(28)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 8五歩(84)
7 7七角(88)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 4八玉(59)
12 3二玉(42)
13 3八玉(48)
14 5二金(61)
15 2八玉(38)
16 1四歩(13)
17 1六歩(17)
18 5四歩(53)
19 3八銀(39)
20 4二銀(31)
21 5八金(69)
22 7四歩(73)
23 5六歩(57)
24 3三銀(42)
25 5七銀(68)
26 3一角(22)
27 8八飛(78)
28 7三銀(62)
29 5九角(77)
30 4四歩(43)
31 3六歩(37)
32 2二玉(32)
33 2六歩(27)
34 3二金(41)
35 2七銀(38)
36 2四歩(23)
37 3八金(49)
38 4三金(52)
39 3七角(59)
40 6四角(31)
41 4六歩(47)
42 4二角(64)
43 4七金(58)
44 9四歩(93)
45 9六歩(97)
46 9三香(91)
47 4八銀(57)
48 8四飛(82)
49 6五歩(66)
50 7五歩(74)
51 同 歩(76)
52 同 角(42)
53 5七銀(48)
54 7四飛(84)
55 7六歩打
56 4二角(75)
57 7八飛(88)
58 8四飛(74)
59 8八飛(78)
60 7八歩打
61 6八銀(57)
62 6四歩(63)
63 4八角(37)
64 8二飛(84)
65 6四歩(65)
66 同 銀(73)
67 7七桂(89)
68 7三銀(64)
69 8九飛(88)
70 7四銀(73)
71 3七桂(29)
72 7九歩成(78)
73 同 銀(68)
74 6二飛(82)
75 6五歩打
76 7五歩打
77 同 歩(76)
78 同 銀(74)
79 7八銀(79)
80 7六歩打
81 8五桂(77)
82 6五飛(62)
83 6九飛(89)
84 6八歩打
85 7九飛(69)
86 7七歩成(76)
87 同 銀(78)
88 6七飛成(65)
89 5七金(47)
90 6五龍(67)
91 6七歩打
92 6九歩成(68)
93 同 飛(79)
94 7四龍(65)
95 9三桂(85)
96 同 桂(81)
97 7九飛(69)
98 6五桂打
99 8六銀(77)
100 5七桂成(65)
101 同 角(48)
102 6五龍(74)
103 7五銀(86)
104 6七龍(65)
105 6六銀(75)
106 7八歩打
107 2九飛(79)
108 5八金打
109 6八歩打
110 8七龍(67)
111 3九角(57)
112 7九歩成(78)
113 6五銀(66)
114 7五歩打
115 5五歩(56)
116 7七龍(87)
117 5四歩(55)
118 6八龍(77)
119 6七歩打
120 4五歩(44)
121 5三歩成(54)
122 同 角(42)
123 5九歩打
124 同 金(58)
125 5五桂打
126 4二金(43)
127 5四歩打
128 4四角(53)
129 5六銀(65)
130 5七歩打
131 4五桂(37)
132 4九金(59)
133 5三歩成(54)
134 3九金(49)
135 同 飛(29)
136 4八角打
137 4二と(53)
138 同 銀(33)
139 4八金(38)
140 同 龍(68)
141 3八金打
142 3七金打
143 1八玉(28)
144 3九龍(48)
145 同 金(38)
146 1五歩(14)
147 4一銀打
148 3一金(32)
149 6三飛打
150 5三銀(42)
151 同 飛成(63)
152 同 角(44)
153 3三角打
154 同 桂(21)
155 同 桂成(45)
156 同 玉(22)
157 4五桂打
158 2二玉(33)
159 3三金打
160 1三玉(22)
161 1四銀打
162 投了
まで161手で先手の勝ち


20161114今日の一手<その417>; よい感じの手で形勢が動く

2016-11-14 | 今日の一手
20161114今日の一手

10月8日の名南将棋大会から、HさんとNさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。




一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
香と銀の交換で成香を作られています。やや先手の駒得です。
玉の堅さは同程度。47に銀がいるので先手のほうが少し堅いかもしれません。
先手の攻め駒は持ち駒角銀で2枚。
後手の攻め駒は95香と持ち駒角香で3枚。

総合すれば互角です。



<基礎知識>
角換わりで先手の腰掛け銀に後手の棒銀です。角換わりでは三すくみの関係があり、腰掛銀>早繰り銀>棒銀>腰掛銀 というのはよく知られています。ところどころ例外があって、先手腰掛銀>後手棒銀 ではないかというのがわかったので、先手は自信をもって腰掛銀を選択し、後手は棒銀で対抗できないので腰掛銀にするしかなく、現在の実戦例はほとんど相腰掛銀です。
問題図も多分(実際の)先手が腰掛銀で後手が棒銀ではあるのですが、その時に先手の25歩が26で止まっている場合に後手の棒銀に対応できるわけで、25歩と突いたためにその対応が1手遅れていて、後手の仕掛けは十分成立しています。

先手の94歩は強い反撃策で、97歩と受けていると

98歩88銀99歩成同銀26香同飛44角

で悪いです。(この場合は15角もあります。)この時に25歩と突いているのが悪い形だというのもわかりますね。26で止まっていればこの攻め筋にも対応できました。

それではうまくないので、先手は94歩とたらしたのですが、92歩と受けていても

この場合は後手が指せます(先手は66銀86歩91角83飛75銀のような反撃を見ているが)。受けずに26香

でも後手よしです。26同香に15角で飛車を取られます。飛車を逃げて桂香を拾われるのも痛いのです。

さて、実戦では26香の筋には気がつかず、98香成で問題図です。

先手のKさん、94歩は定跡書を見て知っていたのですが、受けてもらえない時はどうしましょうか。

☆大局観として

後手から26香があります。1回見逃してもらえましたが、受けるべきか、強く斬り合うべきか。角換わりという戦型は、互いに角を手持ちにしているので攻撃力が高く、少し妥協すると取り返しがつかないことも多いのです。この場合は強い手から考えるほうが良いのです。(すでに形勢が悪化している場合は強くいってもだめかもしれません。その場合は仕方ないので耐える手を探します。)


× 受ける手を考えてみます。26香を受けなければいけないので37桂

92歩58金89成桂48玉

この時に先手番でなくてはいけない(25歩が26で止まっていて、29飛と指せる)局面ですが、後手番なので99成香~98成香とか、84飛と出て95銀と使わせるとか、後手に手段がいろいろあります。桂香と銀の2枚換えですし、ゆっくりすることもできないようです。


× 実戦では66角でした。92歩に93銀

激しい攻めのようですが、歩を打たせてから銀を放り込むのは損な流れです。93同歩同歩成の時に

後手は飛車を逃げてしまえばよかったのですが、93同桂同角成でした。これで形勢は(後手は26香に気がつかなかったので)互角に近いです。

どこかで26香

としてしまえばわかりやすく後手の有利です。


この後実戦ではこういう図になって、後手が駒得を生かして攻めることになり、勝ち切りました。


△ 攻めるなら93歩成です。

歩を成るよ、と打ったのですから、成るのが当然です。
飛車を逃げてもらえば37桂から右玉でも先手が良いでしょう。26香には飛車の取り合いで先手が指せそうです。93同桂に91角(75角には84角)72飛83銀

42飛73角成41玉37桂

となれば先手有利です。

後手は41玉ではなく62金と先手を取ります。

84馬26香68飛29香成72銀成73歩62成銀同玉

くらいまで進んで、これは互角に近いですが少し後手もちでしょうか。

(ただし、93歩成同桂79金はこの後の変化に合流します。)


△ 79金がカウンターの手で、98香成をとがめています。

26香には98飛がぴったり。なので89成香同金26香98飛92歩

これは29桂を守りにくいので後手よし。

ということで26香のところで93歩成を入れます。

28香成82と29成香72銀

と進むのは先手の攻めが速いです。

ということで、79金には97歩、93歩成同桂

となるのだろうと思います。(実戦ならどちらかがほかの変化に持ち込む気がしますが。)これは問題図から93歩成同桂79金97歩でも同じ局面です。
この図がなかなか難しく、75角には84角同角同飛75角94飛53角成52香75馬

というのも難しいですし

91角72飛83銀42飛73角成62金

というのも、84馬に89成香同金26香同飛44角

という筋があるし(これを食らっても72銀成も厳しいので何とも言えない)で、これからの将棋です。


☆ まとめ
互いに不安を抱えているので、難しい戦いでした。

37桂はおとなしいのですが、駒損になるので持久戦ではつまりません。


攻めるほうが良いのですが実戦の66角は狙い過ぎです。

軽く93歩成とすべきで、93同桂に91角が筋です。(75角は同角同飛75角94飛でうまくない。これは79金97歩の交換があれば互角)そのあと後手の26香を食らって駒損になりますが、攻めが続くかどうかを読みます。

26香が厳しい(右の桂香を拾われて苦しい)とみたら、79金を検討します。この時にもどこかで93歩成同桂は利かせておきたいので、同じ局面になるかもしれません。

攻めの筋として
93歩成同桂は先手の得(後で94歩とできるかもしれないし、後手の桂馬が遊ぶ)
91角から73角成は王手なので先手の得(王手で馬を作り歩切れを解消した)
98飛とうまく転回できたら先手の得(26香を先手で避けているので)
という途中によい感じの手が入れば形勢はよくなっていくものなのです。

後手は97歩として98飛の筋を避けるのは渋い手(打ちたくはないけれど98飛を阻止した)で、先手の攻めをかわして26香の筋で反撃です。
問題図では93歩成を受けなかったのですが同じ理屈で、92歩とは打ちたくはないけれど先手の良い感じの攻めを阻止して98香成(余談ですが、この戦型では79金があるので99香成のほうが得なことがあります)や26香を狙います。相手の厳しい手を防いで後の反撃を見るというのも重要なテクニックなのです。