昭和52年2月、中原誠先生と第26期王将戦第3局です。

大山先生の先手三間飛車、中原先生は引き角に。

玉は矢倉に囲い、棒銀です。途中角がぶつかりますが、これは8筋の関係で振り飛車が交換を避けるところ。

大山先生の48銀を見て、中原先生が仕掛けます。

7筋の歩を交換して歩を垂らす

と金は許せないので銀を引かせることになり、64歩が味よく見えます。

67歩同銀79歩成を避けるために、大山先生は桂馬を跳ね

中原先生は銀を立て直してから成り捨て

桂頭を狙います。93香の形でなければ73桂からさばきたいところなんですが。

ここでも93香がたたっています。駒組みで37角の利きを避けるために仕方なかったのですけれど。

飛車をぶつけられて8段目に歩を打つのでは勢いはありません。

竜を作ればまあまのようですが

控えて歩を打つほうが味が良いです。

大山先生は桂馬がさばけ

両取りにも

86銀と出ておけば銀を取り返せます。

竜を潜られても

78歩と打たせてしまえば歩切れでたいしたことがありません。金をどこに打たれても駒損にならないのです。

角かわして

5筋から反撃です。小駒だけでも数はそろっているので切れない攻めです。

銀取りにも中合がきき

攻めを遅らせる手筋

味よく銀を引き、一度形勢が良くなると良い手が出てくるものです。

角取りも怖くはないです。と金を作ります。

中原先生はどうにか先手玉に迫ります。

勢いはあっても2枚だけの攻めですから

端を突くくらい。

大山先生の63飛の詰めろ、受ける駒がないのです。42の銀を移動しますが

飛車で取って角を打てば詰んでいます。

ぴったり。
大山先生が37角で93香と移動させたのが勝因でしょうか。92香なら大分違った展開だと思います。中原自然流の攻め、というところがありませんでした。少しでも形勢が良くならないと現れないのです。
大山先生に味の良い好手が多く、振り飛車党なら並べておくべき棋譜です。
先手三間飛車には急戦がやりにくく、居飛車が苦労している時代です。玉頭位取りならもう少し楽だろうなあと思うのですが、後手四間飛車に比べて石田流への組み替えが2手速いわけで、うまく組めないということなんでしょうか。
矢倉の引き角棒銀は加藤一二三先生の実戦集でも読んだことがあるのですが、居飛車が苦労している感じです。
振り飛車に対しての引き角棒銀は、鳥刺しのような急戦なら有力なのですが(これは左銀で攻めていて、右銀も攻めのカバーに使えるため)、もう少し玉を囲おうとすると作戦負けになりやすいです。少し前に見た左美濃~銀冠でも居飛車が仕掛けるのは難しく、千日手狙いになってしまいます。本局は矢倉なのですが、銀冠よりも横からの攻めには弱いわけで、なおさら難しいです。平美濃(いわゆる飯島流引き角)でもこの例外にはなりません。
居飛車が引き角にするなら(鳥刺し以外では)棒銀ではまずいわけで、右銀も囲いに使うほうが良いのです。天守閣美濃の4枚で囲う作戦や(これは藤井システムで絶滅しましたが)ミレニアムや(これは振り飛車穴熊に堅さ負けする)位取りや居飛車穴熊など、持久戦の時に引き角にして、できれば右桂を使って飛角桂で攻める、さばく、という指し方が主流です。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山棋聖
後手:中原誠王将
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八飛(28)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 8五歩(84)
7 7七角(88)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 4八玉(59)
12 3二玉(42)
13 3八玉(48)
14 5二金(61)
15 2八玉(38)
16 1四歩(13)
17 1六歩(17)
18 5四歩(53)
19 3八銀(39)
20 4二銀(31)
21 5八金(69)
22 7四歩(73)
23 5六歩(57)
24 3三銀(42)
25 5七銀(68)
26 3一角(22)
27 8八飛(78)
28 7三銀(62)
29 5九角(77)
30 4四歩(43)
31 3六歩(37)
32 2二玉(32)
33 2六歩(27)
34 3二金(41)
35 2七銀(38)
36 2四歩(23)
37 3八金(49)
38 4三金(52)
39 3七角(59)
40 6四角(31)
41 4六歩(47)
42 4二角(64)
43 4七金(58)
44 9四歩(93)
45 9六歩(97)
46 9三香(91)
47 4八銀(57)
48 8四飛(82)
49 6五歩(66)
50 7五歩(74)
51 同 歩(76)
52 同 角(42)
53 5七銀(48)
54 7四飛(84)
55 7六歩打
56 4二角(75)
57 7八飛(88)
58 8四飛(74)
59 8八飛(78)
60 7八歩打
61 6八銀(57)
62 6四歩(63)
63 4八角(37)
64 8二飛(84)
65 6四歩(65)
66 同 銀(73)
67 7七桂(89)
68 7三銀(64)
69 8九飛(88)
70 7四銀(73)
71 3七桂(29)
72 7九歩成(78)
73 同 銀(68)
74 6二飛(82)
75 6五歩打
76 7五歩打
77 同 歩(76)
78 同 銀(74)
79 7八銀(79)
80 7六歩打
81 8五桂(77)
82 6五飛(62)
83 6九飛(89)
84 6八歩打
85 7九飛(69)
86 7七歩成(76)
87 同 銀(78)
88 6七飛成(65)
89 5七金(47)
90 6五龍(67)
91 6七歩打
92 6九歩成(68)
93 同 飛(79)
94 7四龍(65)
95 9三桂(85)
96 同 桂(81)
97 7九飛(69)
98 6五桂打
99 8六銀(77)
100 5七桂成(65)
101 同 角(48)
102 6五龍(74)
103 7五銀(86)
104 6七龍(65)
105 6六銀(75)
106 7八歩打
107 2九飛(79)
108 5八金打
109 6八歩打
110 8七龍(67)
111 3九角(57)
112 7九歩成(78)
113 6五銀(66)
114 7五歩打
115 5五歩(56)
116 7七龍(87)
117 5四歩(55)
118 6八龍(77)
119 6七歩打
120 4五歩(44)
121 5三歩成(54)
122 同 角(42)
123 5九歩打
124 同 金(58)
125 5五桂打
126 4二金(43)
127 5四歩打
128 4四角(53)
129 5六銀(65)
130 5七歩打
131 4五桂(37)
132 4九金(59)
133 5三歩成(54)
134 3九金(49)
135 同 飛(29)
136 4八角打
137 4二と(53)
138 同 銀(33)
139 4八金(38)
140 同 龍(68)
141 3八金打
142 3七金打
143 1八玉(28)
144 3九龍(48)
145 同 金(38)
146 1五歩(14)
147 4一銀打
148 3一金(32)
149 6三飛打
150 5三銀(42)
151 同 飛成(63)
152 同 角(44)
153 3三角打
154 同 桂(21)
155 同 桂成(45)
156 同 玉(22)
157 4五桂打
158 2二玉(33)
159 3三金打
160 1三玉(22)
161 1四銀打
162 投了
まで161手で先手の勝ち

大山先生の先手三間飛車、中原先生は引き角に。

玉は矢倉に囲い、棒銀です。途中角がぶつかりますが、これは8筋の関係で振り飛車が交換を避けるところ。

大山先生の48銀を見て、中原先生が仕掛けます。

7筋の歩を交換して歩を垂らす

と金は許せないので銀を引かせることになり、64歩が味よく見えます。

67歩同銀79歩成を避けるために、大山先生は桂馬を跳ね

中原先生は銀を立て直してから成り捨て

桂頭を狙います。93香の形でなければ73桂からさばきたいところなんですが。

ここでも93香がたたっています。駒組みで37角の利きを避けるために仕方なかったのですけれど。

飛車をぶつけられて8段目に歩を打つのでは勢いはありません。

竜を作ればまあまのようですが

控えて歩を打つほうが味が良いです。

大山先生は桂馬がさばけ

両取りにも

86銀と出ておけば銀を取り返せます。

竜を潜られても

78歩と打たせてしまえば歩切れでたいしたことがありません。金をどこに打たれても駒損にならないのです。

角かわして

5筋から反撃です。小駒だけでも数はそろっているので切れない攻めです。

銀取りにも中合がきき

攻めを遅らせる手筋

味よく銀を引き、一度形勢が良くなると良い手が出てくるものです。

角取りも怖くはないです。と金を作ります。

中原先生はどうにか先手玉に迫ります。

勢いはあっても2枚だけの攻めですから

端を突くくらい。

大山先生の63飛の詰めろ、受ける駒がないのです。42の銀を移動しますが

飛車で取って角を打てば詰んでいます。

ぴったり。
大山先生が37角で93香と移動させたのが勝因でしょうか。92香なら大分違った展開だと思います。中原自然流の攻め、というところがありませんでした。少しでも形勢が良くならないと現れないのです。
大山先生に味の良い好手が多く、振り飛車党なら並べておくべき棋譜です。
先手三間飛車には急戦がやりにくく、居飛車が苦労している時代です。玉頭位取りならもう少し楽だろうなあと思うのですが、後手四間飛車に比べて石田流への組み替えが2手速いわけで、うまく組めないということなんでしょうか。
矢倉の引き角棒銀は加藤一二三先生の実戦集でも読んだことがあるのですが、居飛車が苦労している感じです。
振り飛車に対しての引き角棒銀は、鳥刺しのような急戦なら有力なのですが(これは左銀で攻めていて、右銀も攻めのカバーに使えるため)、もう少し玉を囲おうとすると作戦負けになりやすいです。少し前に見た左美濃~銀冠でも居飛車が仕掛けるのは難しく、千日手狙いになってしまいます。本局は矢倉なのですが、銀冠よりも横からの攻めには弱いわけで、なおさら難しいです。平美濃(いわゆる飯島流引き角)でもこの例外にはなりません。
居飛車が引き角にするなら(鳥刺し以外では)棒銀ではまずいわけで、右銀も囲いに使うほうが良いのです。天守閣美濃の4枚で囲う作戦や(これは藤井システムで絶滅しましたが)ミレニアムや(これは振り飛車穴熊に堅さ負けする)位取りや居飛車穴熊など、持久戦の時に引き角にして、できれば右桂を使って飛角桂で攻める、さばく、という指し方が主流です。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山棋聖
後手:中原誠王将
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八飛(28)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 8五歩(84)
7 7七角(88)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 4八玉(59)
12 3二玉(42)
13 3八玉(48)
14 5二金(61)
15 2八玉(38)
16 1四歩(13)
17 1六歩(17)
18 5四歩(53)
19 3八銀(39)
20 4二銀(31)
21 5八金(69)
22 7四歩(73)
23 5六歩(57)
24 3三銀(42)
25 5七銀(68)
26 3一角(22)
27 8八飛(78)
28 7三銀(62)
29 5九角(77)
30 4四歩(43)
31 3六歩(37)
32 2二玉(32)
33 2六歩(27)
34 3二金(41)
35 2七銀(38)
36 2四歩(23)
37 3八金(49)
38 4三金(52)
39 3七角(59)
40 6四角(31)
41 4六歩(47)
42 4二角(64)
43 4七金(58)
44 9四歩(93)
45 9六歩(97)
46 9三香(91)
47 4八銀(57)
48 8四飛(82)
49 6五歩(66)
50 7五歩(74)
51 同 歩(76)
52 同 角(42)
53 5七銀(48)
54 7四飛(84)
55 7六歩打
56 4二角(75)
57 7八飛(88)
58 8四飛(74)
59 8八飛(78)
60 7八歩打
61 6八銀(57)
62 6四歩(63)
63 4八角(37)
64 8二飛(84)
65 6四歩(65)
66 同 銀(73)
67 7七桂(89)
68 7三銀(64)
69 8九飛(88)
70 7四銀(73)
71 3七桂(29)
72 7九歩成(78)
73 同 銀(68)
74 6二飛(82)
75 6五歩打
76 7五歩打
77 同 歩(76)
78 同 銀(74)
79 7八銀(79)
80 7六歩打
81 8五桂(77)
82 6五飛(62)
83 6九飛(89)
84 6八歩打
85 7九飛(69)
86 7七歩成(76)
87 同 銀(78)
88 6七飛成(65)
89 5七金(47)
90 6五龍(67)
91 6七歩打
92 6九歩成(68)
93 同 飛(79)
94 7四龍(65)
95 9三桂(85)
96 同 桂(81)
97 7九飛(69)
98 6五桂打
99 8六銀(77)
100 5七桂成(65)
101 同 角(48)
102 6五龍(74)
103 7五銀(86)
104 6七龍(65)
105 6六銀(75)
106 7八歩打
107 2九飛(79)
108 5八金打
109 6八歩打
110 8七龍(67)
111 3九角(57)
112 7九歩成(78)
113 6五銀(66)
114 7五歩打
115 5五歩(56)
116 7七龍(87)
117 5四歩(55)
118 6八龍(77)
119 6七歩打
120 4五歩(44)
121 5三歩成(54)
122 同 角(42)
123 5九歩打
124 同 金(58)
125 5五桂打
126 4二金(43)
127 5四歩打
128 4四角(53)
129 5六銀(65)
130 5七歩打
131 4五桂(37)
132 4九金(59)
133 5三歩成(54)
134 3九金(49)
135 同 飛(29)
136 4八角打
137 4二と(53)
138 同 銀(33)
139 4八金(38)
140 同 龍(68)
141 3八金打
142 3七金打
143 1八玉(28)
144 3九龍(48)
145 同 金(38)
146 1五歩(14)
147 4一銀打
148 3一金(32)
149 6三飛打
150 5三銀(42)
151 同 飛成(63)
152 同 角(44)
153 3三角打
154 同 桂(21)
155 同 桂成(45)
156 同 玉(22)
157 4五桂打
158 2二玉(33)
159 3三金打
160 1三玉(22)
161 1四銀打
162 投了
まで161手で先手の勝ち