
大山先生の三間飛車に有吉先生は急戦のようです。

67銀と形を決めたので65歩の急戦があり、それをけん制する玉頭銀の構え。三間飛車でこうなるのは珍しいです。もし四間飛車なら65歩があるのでより強力です。

これは玉頭銀対策。形によっては55歩45銀を決めてから53金もあります。34銀の時に44金を用意する意味です。25銀33桂で銀が死ぬという変化(35歩が必要かも)を狙います。
他の対策は、75歩同歩72飛ですが、三間飛車相手にはやりにくいです。

結局中央位取りになりました。金で支えているので手厚いのですが、横には薄いです。

大山先生は横からせめるべく、端から動きます。

右桂を跳ねていないので、端は受かります。

これは軽い指し方です。86歩から飛交換のねらい。後手玉の横が空いているのでぴったりです。

有吉先生は6筋から、大山先生は8筋から。

これで痛み分けです。

大山先生は香車をおとりに飛車を使います。

桂馬を交換して飛車が成り込めるか。

86からかわしたのですが、84飛が普通だと思います。

香車を使わせた意味はあるのですが

桂馬を捨ててしまいました。

と金を使って桂香損をカバーしなくてはいけません。

香車は取り返して長い終盤戦です。

24桂26香は互いに手筋。ここで有吉先生がミスしました。

これをうっかりしたのでしょう。31金とか先に備えておかなければいけませんでした。

それでも有吉先生は最善の粘り。

香打ちも力がこもっています。

あっさり桂を交換して3段目に引くのはなるほどです。と金が使いやすいし、上からのほうが攻めやすいものです。

桂馬を使えて形勢がはっきりしてきました。

これで34の地点も狙っているので馬は逃げにくく

あとは長いけれど順当な寄せです。

端に金を打って受ける駒がなく

投了図。
大山先生の序中盤の軽い指し方に筋の良さを感じます。でも終盤の入り口では互角のさばき合いです。23桂を許したのが有吉先生のミスで、粘ったのですがその差は縮まりませんでした。長い将棋でお疲れさまという感じです。
有吉先生は火の玉流で、玉を固めて無理でも攻めるというのがスタイルです。一方、失敗したときにも悪いながら粘るのも特徴的かと思います。
大山先生は軽くさばく振り飛車も得意です。急所を見つけるセンスの良さが感じられます。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山十段
後手:有吉道夫8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八飛(28)
4 8五歩(84)
5 7七角(88)
6 3四歩(33)
7 6六歩(67)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 4八玉(59)
12 3二玉(42)
13 3八玉(48)
14 7四歩(73)
15 2八玉(38)
16 5四歩(53)
17 6七銀(68)
18 5二金(61)
19 5八金(69)
20 4二銀(31)
21 3八銀(39)
22 1四歩(13)
23 1六歩(17)
24 9四歩(93)
25 9六歩(97)
26 6四歩(63)
27 5六銀(67)
28 5三金(52)
29 4六歩(47)
30 5五歩(54)
31 4七銀(56)
32 5四金(53)
33 9七香(99)
34 5三銀(62)
35 9五歩(96)
36 同 歩(94)
37 9八飛(78)
38 8四飛(82)
39 9五香(97)
40 9三歩打
41 3六歩(37)
42 4四歩(43)
43 5九角(77)
44 4三銀(42)
45 9六飛(98)
46 3三角(22)
47 9七桂(89)
48 6五歩(64)
49 8六歩(87)
50 6六歩(65)
51 8五歩(86)
52 8三飛(84)
53 8四歩(85)
54 6三飛(83)
55 6八歩打
56 8二歩打
57 8六飛(96)
58 5一角(33)
59 7五歩(76)
60 9四歩(93)
61 7四歩(75)
62 9五歩(94)
63 8五桂(97)
64 6五飛(63)
65 7三歩成(74)
66 同 桂(81)
67 同 桂成(85)
68 同 角(51)
69 8三歩成(84)
70 6四角(73)
71 7六飛(86)
72 7五香打
73 7七桂打
74 7六香(75)
75 6五桂(77)
76 同 金(54)
77 7二飛打
78 4二飛打
79 同 飛成(72)
80 同 銀(53)
81 8四と(83)
82 9七角成(64)
83 7四と(84)
84 5三馬(97)
85 6一飛打
86 5四馬(53)
87 9一飛成(61)
88 7八香成(76)
89 7一龍(91)
90 2四桂打
91 2六香打
92 6九成香(78)
93 2四香(26)
94 同 歩(23)
95 2六角(59)
96 7九飛打
97 2三桂打
98 1三香(11)
99 1一桂成(23)
100 3一金(41)
101 4五歩(46)
102 同 馬(54)
103 3七桂(29)
104 5四馬(45)
105 4五歩打
106 2三香打
107 4四歩(45)
108 同 銀(43)
109 2一成桂(11)
110 同 玉(32)
111 7三龍(71)
112 3三銀(44)
113 4六桂打
114 3二馬(54)
115 4五桂(37)
116 4一桂打
117 3三桂成(45)
118 同 銀(42)
119 4三銀打
120 6八成香(69)
121 同 金(58)
122 4八歩打
123 同 角(26)
124 4三馬(32)
125 同 龍(73)
126 3二銀打
127 5四角打
128 7四飛成(79)
129 4四歩打
130 4二歩打
131 5二龍(43)
132 5四龍(74)
133 同 桂(46)
134 8五角打
135 8二龍(52)
136 6三角(85)
137 5一飛打
138 6七歩成(66)
139 同 金(68)
140 6四金(65)
141 7三龍(82)
142 5四角(63)
143 6四龍(73)
144 8七角成(54)
145 1五歩(16)
146 同 歩(14)
147 1四歩打
148 同 香(13)
149 1三金打
150 1六桂打
151 3七玉(28)
152 3五歩(34)
153 同 歩(36)
154 3四歩打
155 1四金(13)
156 3五歩(34)
157 3九角(48)
158 投了
まで157手で先手の勝ち
20160430今日の一手
3月26日の名南将棋大会から、NさんとIさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
先手の桂歩得(後手に持ち歩があるので歩はカウントしない)で馬を作っています。終盤なので重視はしませんが、先手のポイントです。
玉の堅さは先手のほうがやや堅いです。
先手の攻め駒は53馬65桂持ち駒桂で3枚。(相手玉に迫っているものだけカウントしています。)
後手の攻め駒はありません。
総合すれば先手が有利です。
大局観として
私が有利と思ってはいたのですが、43の銀が質駒で、移動しても53の馬が質駒です。だからかなり難しいなあと思っていました。後手の飛角がよく働いているということなのですね。
方針としては攻め駒を増やし、後手玉に迫るというのが本筋の考え方です。
ここでは後手の攻め駒が少ないので、自玉に手を入れておくというのもあるでしょう。後手のねらいは18角成同香49飛で、これが両取りです。でも角をもらうので、そうなってから反撃というのもあるのかもしれません。飛車を取ってもらうのは一応歓迎なのです。攻め駒が4枚になりますね。
ということで、考える材料が多く、どれが正解かわかりにくいです。こういう時に筋が悪いのは駒得を目指すことだ、とだけは言っておきます。桂得なのですから十分で、さらに(少し無理をして)駒を取ろうと考えだしてはいけません。
× 最初に飛車を逃げる手を考えるかもしれません。17飛です。
49角成68金寄28銀不成
68金寄と固められたのはいいのですが、遊んでいた銀が動き出しました。18飛29銀成とされたら37飛成だってありそうで、これはかなり怪しいです。
× 44馬とすれば飛車が取れるのですが
43飛同馬18角成同香69銀
馬を抜かれるので感心しません。
さらなる駒得を目指そうというのが間違いだとわかりますね。
△ 実戦で私は55桂としました。
43の銀にひもを付けて攻めにも利いている、ただしすぐに63桂成が成立しませんから、好手ではないけれど悪手でもないという手です。形勢がいいから、と妥協したのですね。
18角成同香28飛
これは角をもらったのでうれしい手順です。68金寄48銀成63桂成29飛成
Nさんにあっさりと指されて、安心しました。72成桂同玉61角82玉73桂成
あとは角を切れば詰んでいます。詰将棋は苦手なのですが、この日は2回詰ましました。
後手としては55桂に41金です。
金を寄せていくのは感触の良い手ですね。54銀成52歩に63馬か。
44馬だったら32歩と受けます。63馬にも62歩かあるいは63で清算するか。どれも難しいです。
△ 普通の手は54銀成です。
馬が質駒なので味が悪いのですが、飛角を取り合って49飛は
69桂と受けて指せばまあまあです。
53飛同馬52歩が嫌味な手です。
駒損を回復されそう。勢いで63成銀53歩72成銀
これが案外有力です。普通は72同角成(72同銀でも)で、64桂が急所。62馬52金71馬51飛
1段目に飛車を打てば金を取り返せるので何とかなります。
やはり後手は41金です。
44馬31飛53桂成52歩
こうなればまずいかもしれません。53桂成の前に17飛を入れるべきか。互いに最善を尽くせば難解です。
△ 54銀成は角筋に入るので、52銀不成が正しそうです。
51歩には61銀不成が狙いですが、71金の時に
これが寄せきれないと思うのです。
○ 85歩と突いて
これは多分同歩しかないでしょう。それから52銀不成といけば、51歩61銀不成71金の時に
73桂成同桂74桂が必殺の手
81玉に84歩で
寄りました。
ということで、61銀不成に金は逃げられず、41金くらい。
72銀成同玉84歩同銀71金
82玉62馬83銀に85銀と捨てて85同銀84歩
92銀73桂成同桂72金93玉73馬
81歩同金32飛に77桂から85桂打を狙うのがわかりやすいです。
長い変化ですが、追いかけてみればきれいに寄っています。
○ 52銀成は確実な手で
後手からたいした手がありません。51歩には62成銀同金同馬71銀
ここでは53桂成32飛42歩
として、馬を取らせても攻め駒4枚です。
あるいは51馬32飛53桂成
として、42歩から62成桂を狙っても確実です。
△ 玉を固める手を見れば、68金寄が普通です。
でも18角成同香49飛
これが両取りなので、実戦では受ける手はうまくないとみたのですが、54銀成53飛同桂成99飛成
この先手玉が角香だけでは寄らないので63成桂で勝てるかもしれません。実戦的に怖いですけれど。
○ 危ないようですが、固めるなら88玉です。
18角成同香28飛68金寄18飛成52銀不成
99の香車を取られないので、この方が安全です。これは全く考えていませんでした。
☆ まとめ
かなり手が広い局面でした。結論で言えば
駒得あるいは駒損を避けようとする44馬や17飛は疑問手です。
実戦の55桂や54銀成は41金と受けられたら形勢互角です。
41金を許さないという意味もあって、52銀不成や52銀成が攻めの最有力ですが、単に52銀不成は難しく、85歩同歩52銀不成が正解です。読み切れるなら一番きれいな勝ち方です。
読み切れなければ52銀成が確実です。53飛で角を渡してもよいという確認だけできれば合格です。
守りを固めるなら普通は68金寄ですが、両取りがあるので(勝ちのようですが)やや危険。88玉が欲張っているようでも安全な手です。
位取りが生きますから85歩同歩52銀不成が本筋、こういうところに手が行くようになりたいと思います。でも寄せは俗手で52銀成なのかもしれません。
一方、読みが衰えたら有利なときはじっくり88玉と守って指せるようになりたいとも思います。
人の欲には際限がないですね。でも自分の指した棋譜の検討なら、こういうことろまでしっかり考えておきたいです。
20170430図面の間違いを直しました。