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名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
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大山将棋研究(122); 位取り中飛車

2016-04-12 | 大山将棋研究
昭和48年11月、原田泰夫先生と第23期王将戦です。


大山先生の位取り中飛車になりました。

対抗策は多くないのですが、原田先生は棒銀に。

いかに原田先生でも急攻はできず、少し固めてからうごきます。この形では角筋が止まっているので突き捨ててから銀を出るほうが少ないです。64か84に銀を出てから75歩のほうが普通です。

銀が進出したのは大きそうですが、大山先生は浮き飛車で受けました。

6筋の交換をされたら飛車を回って

もう一回、歩を打たせます。

45歩をけん制したという意味なのでしょうがこの桂馬が問題となります。

原田先生は中央から逆襲、浮き飛車をとがめに行きます。

「玉損の攻め」の方ですから銀を引くわけはなく、この突き捨てが狙いでした。この歩をどれで取っても銀を出られます。

大山先生は銀の取り合いにしましたが

中央は原田先生が制しました。

中央奪回に動いたところで桂頭攻め。桂馬を跳ねれば角に当たるので、怖くないようですが

原田先生は銀取りにかまわず角を追って36歩の取り込みです。25桂は無視するつもりでしょう。

銀を取られても飛車を走り

87飛成までいけば25桂の余裕がありません。

角筋を止めるのは落ち着いた手です。

67歩と垂らされるのも痛いので、大山先生は竜取りに銀を打ったのですが

原田先生はやっと桂馬を取り(ここでは37同玉しかない)、角を捨て

桂馬を打てばもう受けがありません。


通常は位取り中飛車は56銀の形にするのですが、角頭の守りが問題です。大山先生は66歩から67銀のまま待ったので、原田先生の75歩から64銀が成立しました。64銀から75歩では65歩の突き違いがあるのですが、76歩から72飛で指せるかもしれません。いずれにしても67銀のままでは55歩の位が生きませんから、棒銀は有力なのです。子供のころ読んだ桐山先生の定跡書に、位取り中飛車は1筋の歩は受けないで、56銀~67金を急ぐのだ、と書いてありました。現代的なら66歩は突かないで軽くさばく指し方かもしれませんが、研究しないとわかりません。
大山先生の指した56飛で受けるというのは斬新に見えます。そのあと37桂とはねなければどうなっていたのでしょう。45歩同歩54歩と攻められてどちらがいいのか。
銀を捨てても3筋の取り込みのほうが大きいのだ、という原田先生らしい主張が面白い将棋でした。どこで原田先生が有利になったか、という判定は難しいのですが、気が付けば大山先生に受けはなくなっていました。原田先生の会心の一局です。ここは是非後手をもって並べてみてください。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山9段
後手:原田泰夫8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 5六歩(57)
4 8五歩(84)
5 7七角(88)
6 3四歩(33)
7 5五歩(56)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 5八飛(28)
12 3二玉(42)
13 4八玉(59)
14 4二銀(31)
15 6六歩(67)
16 7四歩(73)
17 6七銀(68)
18 7三銀(62)
19 3八玉(48)
20 5二金(61)
21 2八玉(38)
22 4四歩(43)
23 3八銀(39)
24 4三銀(42)
25 4六歩(47)
26 9四歩(93)
27 9六歩(97)
28 7五歩(74)
29 同 歩(76)
30 6四銀(73)
31 6五歩(66)
32 7五銀(64)
33 5六飛(58)
34 8六歩(85)
35 同 歩(87)
36 6四歩(63)
37 同 歩(65)
38 同 銀(75)
39 6六飛(56)
40 6五歩打
41 7六飛(66)
42 7五歩打
43 5六飛(76)
44 3三角(22)
45 1六歩(17)
46 1四歩(13)
47 3六歩(37)
48 4二金(41)
49 3七桂(29)
50 6三金(52)
51 5八金(69)
52 5四歩(53)
53 同 歩(55)
54 同 銀(43)
55 5五歩打
56 6六歩(65)
57 5四歩(55)
58 6七歩成(66)
59 同 金(58)
60 5五歩打
61 5九飛(56)
62 5四金(63)
63 6六金(67)
64 3五歩(34)
65 6五歩打
66 7六歩(75)
67 8八角(77)
68 3六歩(35)
69 6四歩(65)
70 8六飛(82)
71 9七角(88)
72 8七飛成(86)
73 5七歩打
74 2四角(33)
75 6三歩成(64)
76 8六歩打
77 3五歩打
78 同 角(24)
79 8八歩打
80 7八龍(87)
81 6七銀打
82 3七歩成(36)
83 同 玉(28)
84 4六角(35)
85 同 玉(37)
86 4五金(54)
87 3七玉(46)
88 2五桂打
89 投了
まで88手で後手の勝ち

20160412今日の一手<その309>; 歩をうまく使う

2016-04-12 | 今日の一手

20160412今日の一手

2月28日の名南将棋大会から、TさんとFさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。




一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
飛と銀歩歩の交換です。(後手は持ち歩がないのでカウントします。)2枚換えというか3枚換えの場合の損得は難しいですが、少し後手のほうが得です。
玉の堅さは、先手のほうが少し堅いです。ただし後手は飛を受け駒と思えば堅さは同程度です。
先手の攻め駒は73馬と持ち駒銀銀桂で4枚。十分です。
後手の攻め駒は89飛77馬持ち駒桂で3枚。

総合すれば形勢互角です。

大局観として
先手がすぐに取れる駒は歩くらいで、後手は99の香や歩を取ることもできますから、駒損は仕方がないようです。守って長期戦にすれば駒損が響いてきます。ですから攻撃力を生かして後手玉に迫りたいです。でも後手は飛車が受けに利いているので粘りがあります。また、駒を渡すと後手の攻め駒が増えて寄せ合いで負けになるかもしれません。ですからかなり難しい局面です。

問題図の少し前

89飛に58金左としたのですが、78銀と投入すれはこの図です。99飛成に65桂が竜取りで、97竜73桂成、と進めれば

玉の堅さで優り、成桂を使っていけばよくなります。
問題図は後手の大駒3枚が働いているのでかなり難しくなっています。



△ 実戦は53歩でした。

攻めの棋風なら打ちたくなります。42金寄に83銀

でもこの銀は筋が悪いです。逃げられてもまずそうですが、99飛成92銀不成55香48金寄59香成

あとは39金に56桂で寄せられてしまいました。後手の攻め駒が4枚で銀の補充も利くのでは受けがありません。

83銀では63馬がよいでしょう。

後手は51歩と受けられないのです。99馬には54桂43金52銀

と迫れます。金を入手できれば55香の攻めには受けが利きます。

後手としては63馬に44馬から受けるのもありますが(45銀から攻めて先手よし)、最初の53歩を同金と取ってしまい、45桂43金33桂成同馬

これは互角ですが、後手だけ駒の補充が利くのでだんだん苦しくなります。


△ 54歩と控えて打てば

44馬には55銀35馬64馬

42金上46銀62馬45桂

というように攻めが続きます。

嫌なのは途中44馬ではなく61香と打たれることです。(62香のほうがいいのかも)

74馬に44馬で

これはせっかくの歩を取られることになり、思わしくありません。


× 64桂が次の候補で

42金寄には52歩

93飛62馬44馬61馬

51歩成は確実です。

でも最初の64桂に62金

74馬93飛65馬22玉

この先がありません。


△ であれば74馬と引いて

飛車を取りたくなるかもしれませんが、99馬92馬同香72飛53香57歩66歩

後手は歩を補充して馬を引いて守るのでしょう、簡単ではありません。


× だめなのは83銀で

これは筋は良くないです。93飛とされて空振りですが、そこで64桂42金右52歩

最初に64桂だと62金なので、それを回避したわけです。これには55馬51歩成同金同馬64馬

83の銀が取られるのと36桂があるのでだめですね。


○ 遅い手なのですが、85歩というのがあります。

と金で飛車を取ろうという意味です。93飛74馬99馬84歩43飛65馬

次は43馬ではなく55桂です。22玉には54銀44飛45桂という要領です。飛車をいじめつつ、ゆっくり後手玉に迫ります。これなら攻め駒4枚がうまく使えます。


☆ まとめ

元は飛銀交換ですが、玉が堅ければまあまあ、というのが(昔の)振り飛車でした。でも92飛の横利きが利いていて後手玉も堅いです。問題図の前に78銀と投入したほうがよかったでしょう。

実戦の53歩、あるいは54歩、あるいは64桂から52歩、というのは歩を使って拠点を作り、と金を作る含みで攻める確実な手です。初段くらいまでならこういう手が指せればよいでしょう。

でもこれらは後手が粘って受ける手段があるので大変です。と言って、74馬や83銀は感心しません。92の飛を取るのにコストをかけていては寄せ合いでも自信がありません。

85歩はひねった感じですが、歩だけで飛を取ろうという手です。自玉がまだ安全なのでこれでも間に合います。飛車を逃げ出せばその飛を攻めるふりをして敵玉に迫るという、難しい手です。後手の他の対応もありそうですが、互角以上に指せると思います。

いずれにしても、後手が歩切れというところをついて、歩をうまく使って攻める手はないか、と探すのが本筋です。